第四話 第一関門
※2017/07/16
文法や誤字、脱字の修正をしました。
ーー数分後。
長い廊下を歩いて、103号室と102号室の扉の前を通り過ぎ、101号室と表札がかかっている扉を発見し、目の前で立ち止まった。
白い扉は木製で、ドアノブが金属で出来ているようだ。
俺は、101号室と表札がかかっている部屋の扉を開けると、白い光が差し込んできた。
中からはテレビの音と積み上げられたゴミ袋の山が見える。
それに、変な異臭も。
とりあえず、一度出て表札を再度確認。
「101号室」と書かれてある。
どうやら、残念なことに、この部屋で間違いがないらしい。
恐る恐る異臭漂う部屋に、上履きを脱いで入ると、
小さなボロアパートくらいの部屋の大きさはあるようだ。
新設された頃は綺麗なキッチンだったはずの場所にも使用済みの皿が積み上げられている。
ーーすると、背後から異様な殺気が。
「……んだよ、お前、何処の派閥の回しもんだ?」
背後を取られないように必死に振り返ると、
目の前には銀髪のロン毛の男性が立っていた。
彼の前髪は目元を完全に隠しており、
瞳を見ることが出来ない。
八年間の間に、新木場さんに人と話す時は目を見て話すことを徹底されたので、こういう場合は一番困るのだ。
それに、男性は何故か白衣を着ている。
白衣姿に下が見窄らしいグレーのトレーナーにズボンも同様の種類と思われるグレーのズボンを履いている。
「……えーっと、此処に今日から住むことになった。冴島夜十です!!よろしくお願いします!!」
何か誤解されているようだったので、
急いで頭を下げて自己紹介を紡いだ。
するとーー
「まさか、お前……そんな手で俺が引っかかるとでも思ってんのか?今は十二月だぞ!」
は?何言ってんだこの人!?
と、若干頭がおかしいのかと疑ってしまった。
今の今までテレビを見ていたのに、季節を勘違い!?それとも、この人の頭は四ヶ月前で時が止まってるのかもしれない。
いや、そうに違いない。
だとしたら、訂正してあげないと全力で悪い気がする。
ーーので、俺は真顔になり、男性へ。
「今は……四月ですよ!!」
と、声を低くして言った。
「わーってるよ。うるせえな、早く入れ!!」
あまりの扱いに驚愕の表情を隠せない。
今のが冗談だと気づくのに少しだけ時間がかかってしまった。物凄く分かりづらいせいだ。
ーー数分後。
テレビのある部屋には、小さな卓袱台と二段ベッドが置かれている。
二段ベッドの上の階は、布団がくしゃくしゃに丸まって乱れており、下の階は誰も使っていないようで綺麗に整頓されていた。
「あー、お前は下で寝ていいぞ。俺んとこは上だからな!!んじゃ、俺はもう寝るぞ。おやすみ〜〜!」
「おやすみなさい……」
えっ、部屋汚いのにベッドは綺麗なの!?
下の階、凄い整ってるのにどういうこと?
率直に浮かんだ疑問だったが、聞くのも野暮なので、明日が早いということもあり、風呂などの身支度を軽く済ませて、直ぐに布団に入った。
ーー翌日。
テレビの真横にあるカーテンからは、
少しだけの陽射しが差し込み、気持ちの良い朝が感じられた。
ベッドの上の階を覗くと、
昨日の銀髪の男性はいない。
早めに何処かへ出かけてしまったのだろうか?分からないが、現在時刻は5時半。
第1試合の時間割が、七時頃からだったはず。
ベッドから降りて、身支度を済ませると、
玄関に立て掛けてあった緑色の使い込まれた感のある袋に入った愛剣を見つけた。
基本的には、俺の得意な武器は剣。
新木場さんに教わった技と、若いうちから培ってきた戦闘経験だけで場を制す。
誰にでも出来る一般的な敵の倒し方だ。
どうして、こんなところにあるのだろう?
だが、組織の施設内から学園に配送されるという話で、昨日には全ての荷物が寮室に届くということを思い出すと、昨日の銀髪の男性が大事に立て掛けてくれたのだろう。
勝手に一人で納得すると、
愛剣を持って、寮室の外へ出た。
するとーー
寮室の扉の前には、
何故か朝日奈の姿があった。
周りをキョロキョロと見回して、困った表情で額に汗を流している。
行動と表情から察するに、それが迷子だと気づくのに時間はかからなかった。
だが、昨日のことを謝ることの出来る良いチャンスが巡ってきたと思った。
「……ッ!!な、なんであんたがここにいるのよ!!」
案の定、気配感知能力に長けていたようで背後に回った瞬間に気づかれてしまった。
流石は朝日奈家のお嬢さまといったところか。
「いや、俺の部屋ここだから。ところで何でこんなところにいるの?」
俺の質問に彼女は顔を赤らめて、
恥じるようにボソッと呟いた。
「……よったの……」
「え?」
聞こえなかったので、聞き返す。
すると、彼女はさっきよりも大きい声で真っ赤にした顔を歪ませ、瞳に溜まった涙を落としながら強く怒鳴った。
「だから……迷ったの!!!!」
「ああっ、うん。取り敢えず、落ち着こ?ね?」
彼女の体内から吹き荒れる謎の熱気に押し潰されそうになるが、意識だけをしっかりと保って呼びかけを。
「……あっ、ごめんなさい。って、なんであんたなんかに謝らないといけないのよ!!」
ええええ!?
自分から謝っといてそれはないでしょ!!
ーーと言いたかったが、言葉を喉元に押し込んだ。
「ところで、どこに行きたかったの?」
彼女は俺の質問を聞いてから、溜息を零して、薔薇色の髪を右手で整えながら言の葉を紡いだ。
「……体育館よ。なんでこうも広いのかしらね、この学園!」
体育館!?
真逆なんだけど……!?
「それじゃ、俺が案内するよ。丁度、もうそろそろ行かないとまずい時間になっちゃうからね」
時計に視線を移し、時間が6:30であることを確認すると、廊下を歩き始めた。
後ろから彼女が赤面で着いてきているのがわかると、安堵して、二人で体育館へ向かった。
ーー体育館前掲示板にて。
体育館前にある小型の電光掲示板には、
今日の試合のトーナメントが表記されている。
一緒に体育館に来た俺達は、互いに試合の相手を見て、驚愕した。
電光掲示板には、
『第一回戦
冴島 夜十 VS 朝日奈 燈火』
と、表記されている。
「……なんで何から何まであんたと一緒なのよ!本当にムカつくわね!降参しなさい!」
「はぁ!?無茶言うなよ!それとも何だよ、朝日奈は負けるのが怖いのか?!」
すると、彼女は挑発に怒ったのか、
顔を赤らめて、怒鳴り声を上げた。
「なんであんたみたいなのに私が負けるのよ!ほんっっとうにもうどうなっても知らないわよ!ズタズタに引き裂いてやるんだから!精々、後々に後悔しないことね!」
なんて短気なんだろうか。
もう少しは冗談と言うものを理解していただきたい。
軽はずみで勢い任せに言ったとは言えど、普段の朝日奈の表情と舌打ちはどうなんだ。
ーー女ってのは、なかなか難しい生き物だ。
ーー朝七時頃。
俺は、国際魔法科学園の総合アリーナ、選手入場口からそう遠くも離れていない控え室で、精神を整え、袋にしまわれていた剣を取り出して、刃の綻びを確認する。
異常は無し。
何の変哲も無い、鞘と柄、刃も含め、全てが真っ黒の黒剣とでも言える代物から視線を外して口元を歪めると、剣を鞘にしまった。
会場からは、選手入場のアナウンスと、
大きな歓声がまるで嵐のように吹き荒れているようだ。
俺は、少しの緊張と不安をグッと握り締めて、控え室から出た。
真っ暗なトンネルのような造りの、
天井の高い入り口の奥の部分は、白い光で前方の視界が遮られるかのように、進むたび、瞳を眩く照らした。
俺が会場の中へと足を踏み入れた瞬間ーー
湧き上がる歓声とアナウンスの力一杯の声が、会場中に鳴り響く。
「来ました!!第一回戦目の火蓋を切って落とそう者の一人、一般人からの魔法師志望!冴島夜十選手です!!」
そう言えば、組織にいたことは全て秘密になっているから、俺は一般人扱いだった。
最早、そんなことはどうでもいい。
俺は試合に集中しよう。
朝日奈が登場してくるまでの間、
辺りを見回して、異変に気がついた。
総合アリーナは昨日入学式に使った時とは全く別のステージに変形しており、
壁と床、観客席を覆うように強度性の高い防御障壁が用意されている。
観客席も相当な数があり、全てが満席と言うのだから新入生にとっても上級生にとってもこの行事は一大イベントのようだ。
「……はい!!来ましたぁぁ!!炎魔法の提唱者が誇る、朝日奈家の次期当主にして、最強の炎魔法師!!朝日奈 燈火選手だぁぁ!!!」
「あれが朝日奈家の次期当主!?凄え! 」
「女の子でまだ高校一年生の年齢なのに、才能に恵まれてるのね! 」
「魔法師としての才能なら同世代で右に出るものは居ないってよ! 」
「あの一般生徒カワイソー! 」
「この試合はすぐに終わりそうだね〜〜。 」
ーーっと、広がる歓声は俺と比較すればかなりの大差。
会場中が彼女の勇姿に視線を一点させているのだ。
それに比べれば、俺なんて一般参加の生徒で雑魚かもしれないが、それでも、負けるわけにはいかない。
「試合開始の合図まで、残り一分でございます!!選手の方々はご準備を!」
アナウンスの声を聞いてからに、
俺は剣を鞘から抜くと、重心を低くし、構えの体勢を取った。これが攻守の剣戟へ簡単に切り替えを可能とする最善の体勢だ。
朝日奈は、一連の俺の行動を見るなり、馬鹿にしたように笑ってーー
ーー右手から豪炎の如き、刀を体現させた。
「それでは、試合開始まで・・・・!
後五秒!!
4
3
2
1
!」
会場の上部分にある巨大な電光掲示板には、
自分と朝日奈の画像と名前、VSの文字が載せられている。
その直ぐ下には、試合開始の時間を表す文字があり、それはーーゼロになった。
「……はぁぁあ!!!」
俺は、彼女の出方を見るよりも先に、地面を強く蹴り、間合いを一気に詰めて、上から剣を振り下ろすように斬りかかる。
ーーが、彼女の刀によって簡単に防がれて、挙げ句の果てには剣を弾かれてしまった。
大きな隙を見せた俺の綻びを、彼女は鋭く赤い眼光で逃すことはなく。
「《朝日奈の名の下に、焔を従え、神火の如きで敵を貫け!焔弁の爆炎花!》!」
その瞬間、彼女の周りには長く伸びた鉾が炎によって具現化され、俺へ疾駆する。
光の速さで、音速で、物質を超えた速度でーー。
「……なっ!? 」
炎の鉾は腹部を容易く貫いて、
その勢いと威力で壁に叩きつけた。
拉がれた腹部から高熱を感じる。何故か、突き刺さった跡と感覚はまるで無かった。
あるのは、痛烈に体を蝕む痛みのみだ。
人間の皮膚が到底耐えきれないような高熱の剣が腹部を貫いたとなれば、血が流れないことはあり得ない。
だが、彼女の創り出した炎の鉾にはそんな常識が通じるわけがないと悟った時、彼女は嘲笑の目と口調で見るからに見下す態度を取り始める。
「興ざめね……魔法で武器も具現出来ない上に、反射速度も悪い!そんなんで、よくあんな大口叩けたわ! 」
彼女は次々と同じ魔法を連射して、俺へ高熱を帯びた鉾を突き付けてくる。
何度も何度も同じ痛みが同じ箇所へ走った。
狙い撃ちされていることは、まず間違いが無かった。
「ぐっ!!あッ……!!」
鉾が腹部を貫く度、嗚咽の混じった声を上げた。
壁に寄りかかり、彼女が魔法の鉾を疾駆する為の的になりつつある。
やはり、強すぎる……まさかここまでとは思いも寄らなかった。魔法を生成する速度、放つ速度、それら全てが組織内に居た現役の魔法師よりも格上。
そして、何よりも凄いのはコントロール力だ。
この鉾が飛び交う場所から隙を狙って、相手を攻め落とそうとするのは至難の技で、今の俺には到底出来ない行動。
彼女の鉾を必死に避けようとするのが精一杯だ。
けれど、もうあの痛みに打ちひしがれる事はない。
何故ならーー。
俺は満足に相手の魔法、攻撃、剣戟を”視た"のだから。それら全てを頭の中で瞬時にデータ化、分析すればいいだけの話。
決して難しいことではない。いつも、戦闘時に行っていることだ。
「はあ……はあ……っっ!! 」
「何をバテてるのかしら?私はまだ本気を一ミリも出してないわよ!」
この時、彼女は勝利を確信した。
自分の魔法を受け止めることさえも出来ない、か弱い男に負ける理由がないからだ。
だが、それは覆されることとなる。
ーー壁に寄りかかる体勢から生まれたての子鹿のように覚束ない足取りで立ち上がった。
吐息を荒げ、黒剣を持ち直すと、精神を咎めて、思考を始める。
俺には、様々な数値がオレンジ色に発光する数字となって視界を上から下へと流れていく光景が見え始めた。
彼女が発する言葉による影響ーー
空気の振動、魔力の増幅、炎が具現化される場所、炎の鉾が出来上がる角度、空中を浮遊する瞬間の速度、軌道、音、自分が感じられる全てを記憶した。
ーーそして、頭の中で複製する。
彼女の"未来"を!
「……確かに、俺は魔法で武器も複製出来ないし、君みたいに上限回数を少しだけ消費することで放てる魔法を打てるわけでもない。でも……まあ、把握完了……かな」
徐ろに剣の矛先を地面に向けながら、俺は歩き始める。精神は咎めたまま、目を瞑って時の流れと空気の振動、感じることの出来る動作を頭の中で複製。
行動パターンに異常はなし。
相手は、何もしない俺の行動に怒りを覚えて、もう一度同じ魔法で鉾を具現して俺を攻撃してくる。
当然、彼の視界は真っ暗で、感じることが出来るのは耳と肌に伝わる空気感の振動のみ。
だが、彼の頭の中には既に彼女の行動パターンの選択肢の限界が把握されている。
「はぁ!?なんで何もしてこないわけ!?さっきから、あんたやる気あんの!?《焔弁の爆炎花》!」
俺に放った炎で具現された鉾を、
目を瞑ったままの俺はーー容易く避けた。
「……っ!?ま、マグレに決まってるわ!!」
だが、彼女の鉾は俺には届かない。
過去に自分が体験したコトを細かく記憶して、分析し、次の一手を読む。
言わば、未来を読むことの出来る力、だ。
「マグレかどうか試してみるか?魔法が"使えない"俺に唯一許された、一つの体術《追憶の未来視》の力を!!」
「た、体術!?何よそれ!!でも、避けてるだけじゃ意味ないのよっ!」
彼女は俺が目を瞑っていることを、
死角と取ったのか、炎で具現化した剣を手に持ち、持ち前の高い瞬発力で一気に間合いを詰めて、目標を俺の腹部に見定めた。
心拍数の速度上昇、地面を蹴る音、彼女が加速したことによって生まれる空気を裂く動き、目を瞑っていても俺には"視えて"いる。
どんな動きで圧倒しようとも、
一度、記憶したことは絶対に忘れない!
俺は彼女の攻撃をするりと受け流して、懐へ侵入すると、黒剣の柄の部分で強い打撃を腹部へ食らわせた。
「……ぐあッッ……!!」
攻撃をマトモに食らってしまった彼女の身体は、食らった時に吐き出した空気を急激に吸い込もうと、肺が必死に空気を欲している。
今の一撃は少なくとも、通常の成人男性であれば一発でKOするレベルの威力だ。
だが、それでも倒れない。
寧ろ、逆に魔力が上昇しているのを確認出来た。
こうしてみると、朝日奈家の次期当主に抜擢されている理由が手に取るように分かってしまう。
段違いな魔力量と魔力消費量の少なさ。
身体能力と剣筋も良い。
一見、俺が押しているように見えるが、
ギリギリでやれることをやっているだけの俺に残された選択肢は数少ない。
だが、彼女は違う。
自分がやりたいことを実現することが出来るだけの力があり、選択肢も数え切れないほど存在する。
だから、俺は早めに勝負を決めなければならなかった。
「……そうだね。避けるだけは意味がない。そろそろ、本気を出さないと!」
俺は目を見開き、彼女に視線を向ける。
彼女の周りにある、矛先を俺に向け、空中に浮遊させてある炎で具現化した剣はーー刹那。
ーー目を見開いた少年の、目にも留まらぬ速度による一閃の斬撃で消滅した。
「なっ……!?こ、こうなったら私の……」
「……次の攻撃は、回数を一度使う威力の魔法が来る。分かってるよ。でもね……君の最大規模の魔法をこの身で食らったら流石に身体が持たないだろうから、これで……終わらせるよ!!」
彼女の魔力が剣に宿り、
一瞬のうちに幾つもの爆発を繰り返して膨大な魔力の塊に変わっていくのが理解出来た。
現在は"臆する"ことは出来ても、
"視る"ことは出来ない。
ーーので、次の一手を読むことは出来ない。
「……《烈烈たる噴火の如き熱で敵諸共溶かしなさい!緋色の情熱花》!」
俺の立っている位置の地面が高熱を帯び始めると、地面から噴出する系統の魔法だということが分かった。
発動してから地面が赤くなって、
噴出する速度が異様に早いことが噴出する前に分かったことが救いーー
ーー俺は、走る時、両足を出すタイミングを全くの同時に行うと、まるで瞬間移動でもしたかのように彼女の懐に潜り込むことに成功した。
「なっ……!?なんで、そんなに速く……!?」
「……これでっ、終わりだぁぁぁあ!!」
下から上へ突くかのように、剣を彼女の胸部に放ったーーだが、俺はそれを手放す。
宙に浮いた剣が彼女の刀によって弾かれた直後、軽く握った拳を彼女の顎の下に強く放って、殴り飛ばした。
「……はあ、はあ!!」
殴り飛ばされ仰向けの体勢になった彼女は、
片手に剣を持ったまま目を瞑り、意識を手放した。
「し、しょ、勝者!!!冴島夜十ぉぉぉおおお!!」
湧き上がる熱のこもった歓声と、アナウンスに、強く握った拳を掲げて答えた。
「それでは、ジャッジの方に入ります!!各派閥の隊長達は、二人の名前を呼ぶので欲しいと思った方に旗を上げてください!」
よく見ると、試合をしていたフィールドの防御障壁外には、三人の少年少女が立ち、こちらの方に視線を向けて、口元を歪めていたり、冷たい表情をしていたり、と感情を露わにしているようだった。
アレが、各派閥の隊長達か。
女が一人と男が二人、全員の面持ちが普通の人間とは違うように思えた。
何せ、ケムシが管理する魔法学校の頂点に近い少年少女だ。
使える魔法も体術も計り知れない。
「それでは、ジャッジタイムです!!
まず最初に冴島夜十!
一回戦目を面白い動きで相手を魅了し、打ち砕いた少年です!
欲しい派閥は赤旗を!!
要らない派閥は白旗を!!
……どうぞ!!」
ここで全てが決まってしまうのは紛れも無い事実。
だが、出来る限りのことはやり尽くした。
大丈夫、きっと!!
ーー各派閥の隊長達が、
俺へ掲げた旗の色は……赤だった。
全員一致で真っ赤、となると、全ての派閥が俺を欲しがっていることとなる。
こういう場合はどうしたらいいのだろうか。
「……出ましたぁぁぁぁぁぁあ!いきなりの全員一致の赤旗!この場合はですね、夜十選手に決定権が譲られます。どうされますか?」
しっかりと、全派閥を理解しているわけではない。
ただ、名前の通り、平和を望み、力を蓄えるのが《平和派》。
強い力を持ってして、相手を駆逐することを楽しみとして活動するのが《戦闘派》なのだろう。
最後のはよく分かっていないが、
取り敢えず、俺はこう答えた。
「……まだはっきり分かってないんで、後日に色々体験してから決めてもよろしいですか?」
「成る程!今までに無いケースですがそれも面白い!
隊長さん達、いいですね〜!?」
三人の隊長が口元を歪めながら、
深く頷いた。
「次は朝日奈燈火選手です!!」
ーー翌日。
昨日の疲れが微妙に取れていないのか、寮室から起床した時間が六時を回っていた。
いつもであれば、五時半や五時に自分で目覚めることが多いのだが。
今日は、昨日宣言した通り、
三つ全ての派閥の体験をさせてもらうことになっている。
一番最初は《平和派》
二番目に《戦闘派》
三番目に《祈願派》
ーーという順番でまわることになっているのだが、最後の《祈願派》だけは本当に分からない。
上の二つは名前から想像がつくのだが、
最後は名前からも想像がつかない派閥。
"未知の領域"だ。
四話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。
TwitterID↓
@sirokurosan2580
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!