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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編 《祈願派編》
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第三十九話 降りかかる猛威

休日だったので寝て起きてを繰り返して、その間に書き進めていたのですがまた寝落ち。

みたいな感じで……こんなに遅くなりました!



「老人?幽霊でも見たのかな? 」


星咲と風見は目を丸くして、俺の言動を疑った。当然、幽霊などでは無い。

祈願派(プレア)》の体験に行った時に色々と教えを貰った人物なのだ。

あれが幽霊だということはないはず。




「……ちょっと待ってね。

《祈願派》のボスに連絡取るよ 」


「え、星咲……ここに呼ばないよね?」


すると、彼は風見が嫌がるのを分かっていたかのようにニッコリと黒い笑顔を浮かべ、端末に視線を移した。



「ねぇ、やだって!!

……あいつうざいじゃん!言ってることわけわからないし……! 」



「大丈夫大丈夫、風見が会いたいって言ってるって伝えておくからさ 」



「何も大丈夫じゃないよね!?

えええええ、あいつやだぁぁ!! 」



普段はキリッとしていて、頼り甲斐のあるリーダーも嫌いな人が来ると思えば幼稚園児がお菓子を買ってもらえなくて駄々をこねるような、そんなレベルの低さになってしまうようだ。


それに加えて、星咲先輩がお母さんに見えてきた。「ダメ!今日はダメです! 」

みたいなのを笑いながら……いや違うな。

なんかこのイメージで続けていくと、お母さんがどんどん下衆になっていく。



「あ、繋がった!

もしもし?オレオレ!オレだよ! 」


オレオレ詐欺ですか、先輩……。


端末を耳に当てて、会話をし始めた星咲は向こうの相手に生徒会室へ来るようお願いをしたようだ。



「で、なんだって? 」



「来るってさ。あと二分待ってろ!だってよ 」


「え、そのパターンって……」


「ああ、そうだな。扉側に伏せろ! 」



二分?!

どんな速度で入って来るんだよ!!

てか、え?伏せる?はい……!!


三人で窓へ顔を向けながらしゃがみ、頭を伏せる。二分と言っていたので、数えていたが……あと三十秒だ。

俺はその三十秒が来る前に衝撃に扮した。




ーー急にガタガタと震え始めた窓ガラス。

風邪でも強くなったのだろうか?

だが、この疑問は一瞬で解決した。



「いやっふぅぅぅぅうううううう!! 」



パリィンッと、甲高い音が聞こえ、光速で入って来たのはーー



「黒龍……ッッ!? 」


何故この学園に来て、何度も何度もこの忌まわしい黒龍に会わねばならないのか。

これは運命なのか……?

ならば、一匹残らず穿つしかない!!


俺の感情が怒りと憎悪に変わり、一瞬のうちに殺意が芽生え始めた時、星咲先輩が俺の後頭部を掴んで地面に叩きつけた。



「痛っ……!? 」


おでこが床に直撃した痛みは意外と高く、皮膚が切れて少し血を垂らす。

星咲は俺の顔を覗き込むようにして、口パクでこう言った。



〈落ち着け〉


……?アビスが目の前にいるというのに随分冷静だなぁ?と、疑問をこぼす。

すると、目の前の黒龍から降りて来たのは、綺麗な水色の瞳をしたハゲ……坊主頭の人物だった。

彼は降りて来るなり、第一声を黒龍へ放つ。



「黒ちん、もう帰っていいぜ!

迎えは後で呼ぶわ!耳を澄ましておけよ」


すると、黒龍は突き破った窓を方向転換でさらに破壊し、羽を広げて、大きな音を立てながら飛び去って行った。



「んだよ……俺は黒ちんと白ちんと大切な休日を戯れていたかったんだが?

……ん?君はウチの体験の約束をすっぽかした冴島夜十君ではないか! 」


彼は星咲に荒げた声をお見舞いすると、今度は俺の方を向いて、思い出したように接して来た。なんと、忙しい人間か。


……へ?

あの日、時間通りに俺は行ったはずだぞ?



「すっぽかしてないですよ!

しっかり、行ったじゃないですか!! 」


「そんな報告は来てないぞ。

まさかあの新人か?あいつがここを説明できるほど、アビス愛があるとは思えんし……」


その新人ってまさか……老人?!


「その新人って……? 」


「老人顔の新人でね。やけにアビスのコトが詳しかったから、勢いで入れてやったんだ。じゃあ、君はあの日あの場所に来たのか?

ーーとなると、申し訳ないことをした。」


淡々と進んでいく話だが、俺は彼の名前を把握出ていなかった。

話を真剣な表情で聞いている風見先輩に恐る恐る声をかけてみる。




「風見先輩、あの人は? 」



「あぁ、あいつは、《祈願派(プレア)》のリーダーにして、異形性愛者のめっちゃ気持ち悪いやつ。八城朋也(やしろともや)だよ。通称、ハゲ!よろしくしなくてもいいよ! 」



「誰がハゲだよ!!てか、よろしくしなくて良いって何ッッ!? 」



彼は先ほども説明した通り、

綺麗なまでに光り輝く薄い水色の瞳をしていて、こちらも日光を反射してくれそうな性能を持っている坊主頭だ。

容姿はスラリとした体型と屈強なまでに膨らみ上がった腕や足、胸筋などの筋肉を持ち、戦えば見た目だけでは相当、厄介に思える。

彼の身に纏うコスチュームは、教会の神父さんがよく着ておられる黒色の修道服だった。



「確かに教会にいそうな感じですね。」



「教会……? 」


八城が拍子抜けた言葉を紡いだ。


「……そうだよ、《祈願派》の活動拠点はあの教会だろう?」



「はぁ?まさかお前……あの旧校舎の裏の呪われた教会へ行ったのか?」


呪われた教会?

あそこは《祈願派》の拠点ではないのか?

だとしたら、俺に拠点の場所を教えてくれたのも、全てあの老人が仕組んだこと?



「あ、あとな。あの老人の魔法……かなりヤバイぞ!」


「なんだよ、八城!そんなヤバイやつ入れて《祈願派》強化しようとしたのか? 」


「いや、俺は強さを求めてるわけではないんでな。それは違うが、あの老人の魔法は……アビスを無限に作り出す魔法なんだよ 」



その言葉を聞いて、完全に辻褄が合った。

合ってしまった。今回の件の黒幕は間違いなく、あの老人だ。

生徒でもない老人は一体何者なのだろう。

そんな疑問が募った時ーー風見の端末に振動が伝わった。

端末をタップして、耳にあてる。



「えっ、《ヘレティック》が?数は?

確認しているだけでも二十!?あぁ!今から、夜十君とそっちに戻……ッッ!! 」





ーードォォォン!

という爆発音と共に生徒会室の扉が破壊された。煙幕と熱気が伝わる中、目の前に現れるは廊下にギッシリと詰められるように出現した《ヘレティック》だった。



「纏ちゃん、黒ちゃんと沖に少し時間がかかりそうだと伝えておくれ! 」


端末の電源を切ってポケットにしまうと、再度目の前の光景を確認する。

数は恐らく百をゆうに超えているだろう。



「夜十君は分かってるよね? 」


「でもっ……! 」


ここでも待機?

先輩、そんなの俺の性分に沿って出来るわけがないじゃないですか!!

それに今の電話……どういうことですか!?



「《平和派(ジャスティス)》拠点に、二十体の《ヘレティック》が出現。

今は何とか残ってる全員で食い止めてるみたいだけど、沖も回復し切ってないし……私達が行かないと! 」


だが、この局面……どうするべきか。

するとーー星咲が前に出た。



「オイ、八城。これはテメェの不祥事でもあるんだから、片付けないとな?」


「わぁぁぁ、こんなにアビスが!!

やべ……勃ってきた!! 」


「今から殺すんだよ!?分かってる!? 」


「わーってるよ。アビスはこの世に存在してはいけないもの、分かってる。

けど、存在していいアビスだって居ても良いんじゃねーのって考え方だから、安心しろ! 行くぞ、星咲! 」



この人はしっかりと考えた上でアビスという存在を愛しているんだ。

つまり……世界を滅ぼそうとはしていない。単に、自由なだけなのかもしれない。



「黒チィィィィィン○ォォォォォォ!!」


何かイケナイコトを思い切り叫んだ気がするが、この局面で気にしてはいけない。

そんな気がしたので、突っ込むのはやめた。

風見も星咲も呆れたように溜息を吐く。



「オイ、風見ィ!!こっちは俺らが引き受ける!だから、黒ちんに乗って拠点へ向かえ! 」


バサッバサッという羽を動かす音と共に現れたのは先程の黒い龍。忌まわしい存在に乗るのかと思うと、不思議な気持ちになった。だが、最初みたいに殺そうとは思えない。

どうやら、八城という人物を俺が好いたせいなのかもしれない。



「んじゃ、夜十君!行くよ! 」



「はい……!! 」


俺達は黒龍に乗って、《平和派》拠点へ向かった。



ーーその頃。

《平和派》拠点。

沖と黒、小日向、店長戦って、纏は非戦闘員の為に、奥で療護室を必死に守っているといった状態だ。


意識を取り戻した鳴神と轟音が外の異常に気がついて、立ち上がった。


「外で何かあったのか?まさか敵が……! 」


「纏!私達を行かせて!!」


彼らの言葉に纏は怒りをぶちまけた。

病人を戦わせるわけには行かない。今はあの三人に食い止めてもらうしかないのだ。

彼らを信じた上で風見達を待っているのに、ここで病人を放てば裏切り行為に等しくなる。



「ダメだ!!俺はお前らの手足捥いででも止めるぞ!? 」


その言葉と表情にぐうの音も出なくなった彼らは、下を俯きながら諦めたのだった。




ーー発明室。

ここは《平和派》の拠点の中で一番広い場所。

《ヘレティック》の殆どはここに流れていた。奥の部屋で三体程、店長が止めているみたいだが。




「……なぁ、沖!!」


「ッんだよ!!」


黒は二刀を駆使して《ヘレティック》の突進を受け流して小さな傷を体に刻み込むように斬撃を増やしていた。だが、相手は思いの外倒れない。関節らしい関節を狙って攻撃をしても、意味を成していないようだ。



「……こいつら、軟体動物か何かか!? 」


「知らねーよ!ただ、関節は無いんじゃッ……ねーのッッ!? 」


白銀刀(アルジェント)》が魔力で真っ赤に染まりながら、相手の猛攻を必死に防ぐ沖。

だが、沖もこの攻撃に意味があるのかを考え始めていた。



「お主ら攻撃の仕方が間違っていやがりますよ。受け流す際に大打撃を与えるならば、頭を潰せ!でいやがります! 」


次々と《回避》をしながら、遠慮なく《ヘレティック》の顔面を潰していく小日向。

彼女の武器は手に持っている大きな扇。自分の身長よりも遥かに大きな扇から繰り出される受け流しからの大打撃は、強固に頑丈に作られている《ヘレティック》の顔面を卵のように容易に叩き潰す。



「流石は先輩……!!」


「感心してやがる暇があったら、攻撃してくれやがりますか?! 」


黒が手を抜こうとした瞬間、小日向はその小さな瞳で彼の手抜きを指摘した。



「おぉ、こわ……!!

じゃあ、俺は本気を出すかな!! 」


かつて、夜十が本気になって止めた姿にもう一度なるのは制御が効かないかもしれない。

でも、あの時は"そういう状態"だったからだ。今は……違うと言い切れる!



「……はぁぁぁぁぁああああ!!

大切な仲間を……こんな俺を受け入れてくれた派閥を、壊そうとすんじゃねぇぇえ! 」


真っ黒に尖った魔力が周囲に溢れ始める。その姿は異形ーーではなく。

黒そのものだった。彼の黒く尖った髪型が垂れ下がり、形が崩れたように瞳を隠す。

長い前髪から隠れた瞳は緋色に光り輝き始めた。

二つの刀が一つの大きな大剣へと変わり、彼の右腕と繋がった。

つまりは、刀と一心同体だ。



「……いよいよ頼もしいな。

纏ちゃんから俺は本気ダメ絶対!って言われてるからもし試せば死ぬし……。ここは黒にいいとこ取りさせてやるよ! 」



「チッ、好き勝手言いやがって!

良いよ別に……手柄とかそういうものに興味はまるで無いんでな。今あるのは、自分を救ってくれた楽しい場所を守るって覚悟だ! 」


黒の目の前に広がる《ヘレティック》の数は五体。ある程度、小日向が顔面を潰すことで動きの権勢を行ったことは確かなのだが、それはあくまで牽制。

百%倒せているわけではない。顔面を潰すことで牽制になるのならば、どうすれば相手は潰れる?


そう考えた時、戦闘狂で剣を振るうだけの策士でもない黒に何が出来るか……?



「どうするかなんて。

……壊すだけよ。全部!!」



重心を低くして、相手が突進してくるのを剣が触れる万全の位置で待機。

この体勢であれば、どんなに強い攻撃に苛まれたとしてもーーいま繋がるこの剣で相殺。いや、粉砕出来る!!


黒は五体の《ヘレティック》相手に、自分の護るべき場所を守ろうと右腕を振るうのだった。

三十九話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回は、内気だった黒の心境の変化です!


あ、後……引っ越し作業が無事終わりました。

ありがとうございました!!


それでは、次回予告ですっ!

次回は、《ヘレティック》の猛攻を必死に防ぐ《平和派》と星咲、八城。

全員が必死に食い止める中、黒幕の老人が現れてーー!?


次回もお楽しみに!


【黒龍の名前】


「八城、あの黒龍の名前って? 」


「え?黒ちん○だよ 」


「分かった、んじゃ次から黒ちんの後は言うなよ!?言ったら殺す!! 」


「どうしたんだよ、星咲。

読者はある程度の下ネタも許してくれるよ。」


「お前のせいで評価減ったらどうすんだよォォォ!! 」


※メタ発言でしたー。


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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