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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編《侍編》
33/220

第三十三話 デート ①

遅くなりましたーっ!

非常にまずい展開だ。

あの銃弾を避ける術が見つからない……あるとしたら一つ、《追憶の未来視(リコレクション)》で"目を瞑らない"こと。


「そんなの簡単だろ」と思うかもしれないが、俺の《追憶の未来視》は瞳の上に無数のオレンジに発光する文字が並べられ、目を瞑ることで集中力が増して、計算出来るのだ。


この技の最大の弱点は、「具現化能力」だ。

《追憶の未来視》を使用している状態は、常に目を瞑っている為に、無数の剣を発現された時はその「数」まで把握することは出来ない。

自分に向かってくる時は、"視える"のだが。



「この手合わせ、私の勝ちね!さっさと撃たれなさい!」


彼女が放ってしまった無数の銃弾は、回転数を上げて軌道は真っ直ぐ俺へ向かう。


やばいやばいやばいやばいやば……。

やるしかない……!!

銃弾が撃ち込まれた両足と両腕を死ぬ想いで歯を食いしばり顔を歪めて必至の思いに立ち上がる。



銃弾の数45発、回転の秒速500回、角度、音、軌道、把握完了。


《追憶の未来視》に異常無し。

瞬時にデータ化、可能ーー。

暗算モードに移行しますーー。



まだだ……視るんだ!彼女が行う仕草も何もかもを!!把握しろ!把握できるものを!



ーー俺は目を見開いた。

瞳の上に連なるように流れるオレンジ色の文字で前が見えなくなる。

大丈夫、計算式は完成する。俺が今まで訓練してきた全てを以って、この銃弾を斬る!


黒剣を持ち直し、一発目の銃弾を薙ぐ為に一振りを。すぐさま黒剣の持ち方を刃が下になるように持ち替えて二発目を斬った。

何度も何度も銃弾が向かってくる軌道を先読みし、臨機応変に剣の使い方を変えながら薙ぐのを繰り返し行う。


目を開いた状態での《追憶の未来視》は、とてもやり辛い。

これに慣れていかなければーー。



「う、嘘よ!!

アレだけの銃弾を一瞬で把握して!

……ッッ!?」


朝日奈は驚愕した。

自分の銃弾を後少しで全て薙いでしまう夜十の瞳が両眼ともオレンジ色に発光していることに気がついたのだ。



「……これで最後ッッ!!

はぁぁぁぁぁああああ!!!」


黒剣を普通の持ち方へ持ち直し、銃弾を縦に切断した。カランカランカランッ、という軽い金属製の銃弾が地面に落下し、少しだけ弾んで静止する音が鳴り響く。



「はぁっ……はぁ、はぁ……!!」



「なッ……アレを斬っちゃうなんて、頭おかしいわよ!!

こ、降参する……!」



正直、次に彼女が魔法で俺を攻撃しようものならば、確実にソレは俺に当たっていた。

完全に集中力と体力が切れたガス欠に陥っている。


床に膝をつき、前のめりに倒れた。

あぁ、普通の手合わせなのに殺し合いみたいになってるじゃんか……何故だ、どうして。



「あっ、夜十君!

てんちょー、纏ちゃん呼んで! 」


「はいはい」



ーー数分後、纏が到着し血塗れの俺を見て、直ぐに手術に取り掛かる。

傷を見る見るうちに回復させる彼女のお陰か、約三十分も経たないうちに俺はいつもの状態に戻った。



「なぁ、風見。

ボスのお前が居ながら何でッ、こんなに重症なやつが居るんだよッッ!!

少しは自分の立場で止めようとしろよ! 」


「したよ……でも、止められなかっーー」


え……?

体壊れても纏先輩が居るから大丈夫みたいなこと言ってなかったっけ?

次の瞬間、店長が思ったことを代弁して言ってくれた。



「いや、纏に任せればいいだろ……みたいなこと言ってたよな?風見先輩☆ 」



「な、なんで言うのさ!!

しかも纏の目の前で!!この人怖いんだよ!?怒ると!!」



すると、綺麗な黄緑の髪をした医者は下を俯いて唇を噛み始めた。

そしてーー



「……もっと、自覚を持てえええええ!!」


精一杯の拳を風見の右頬に当て、吹っ飛ばした。



「医者のすることじゃない……!!

ヤブ医者、闇医者!医者!医者ぁぁ!!」


「もう一発殴られてェのか!?」



この三人のやり取りを見て、俺と朝日奈が感じたのはーー


「「平和っていいなー(わー) 」」





平和派(ジャスティス)》の拠点から出ると、俺達は外出許可書を貰い、校門へ向かう。今日の天気は絶好のデート日和で、空には雲一つない快晴が広がっている。


学園の外に出るのは久しぶりだ。

前に出た時は、入学当初の小型アビス討伐依頼だったか?

結局、大型アビスの巨大烏賊(クラーケン)が出てきて、最初の《願いの十字架(アウグリーオ)》を使ったんだよな。


今日は平和だが、学園外はいつアビスが現れてもおかしくはない状態につき、油断は出来ない。楽しむこともモットーだが、細心の注意を払いながらだ。



「そろそろ校門だね。

外に出たら、直ぐの《メテオバーガー》で昼食、それで大丈夫?」


彼女は俺の提案に深く頷いた。余程、嬉しいのだろう。

まあ、生まれて初めて食べるものが目の前にあるとしたならば、嬉しくて感激しないわけがないか。


防御結界を潜り抜けて、学園の外へ出た。

出てから直ぐ、目の前に《メテオバーガー》があることは調べ済みだ。

現代の端末とやらは、何でも調べられる上にゲームまで出来るそうではないか。端末を全く使わない俺も俺だが、便利な時代になったものだ。


昔、新島に言われて「おつかい」とやらを組織内でやらされたことがあるのだが、

その時は店の場所を「自分で調べろ!」 「足で調べることも大切だぞ! 」とか鬼畜なこと言われて、施設を出た、都心の中を必死に彷徨ってたっけ。


途中で小型アビスに襲われて、財布を盗まれたりして……あの時は十歳だったかな。

大変だったなー、便利な世の中になって俺としては幸いなことだ。



「え……中入らないの?」


「あぁっ、ごめん。

ボーッとしてた、中入ろか!」


朝日奈は店の前で立ち止まった俺を心配したのか、声をかけてきた。

彼女が入りたくてウズウズしているというのも理由の一つとしてと取っても間違いではないだろう。


店の中に入ると、心地の良い冷たい空気がほんわりと自分達を包み込むように迎えてくれた。

店の中はクーラーが効いていて、席数はテーブル席が十個ほどのこじんまりとしたお店になっている。



「いらっしゃいませ、お客様。

……何になさいますか?」


店員がカウンターで注文を求めてくる。

俺は迷わずメテオチーズバーガーセットというのを頼み、朝日奈の方へ視線を移した。



「んんっ……いや、でもぉ……ぁぁ!!」



どうやら、ビッグメテオバーガーセットと、メテオ&アースバーガーセットで迷っているらしい。

どちらも食べきれるか食べきれないかのチャレンジモノであり、超極大サイズだ。


食べきれるのか?

俺なら無理だな……割と少食な俺は、自分が頼んだものだけでお腹いっぱいになってしまうことを否めない。



すると、彼女はーー



「じゃあ、この二つください!」


は?!

迷ったからって両方頼む奴が居るか馬鹿!

店員さんも流石にドン引きだよ、この二つ同時に頼む女性なんて多分見たことないだろうし……本当に食べられるの?



「ええ、大丈夫?

朝日奈、無理すんなよ……俺は食べられないぞ!」



「はぁ?

……あんたになんかあげないわよ!」


寧ろ、キレられた。

大丈夫なのか……?と疑問に陥ったが、仕方ないので見過ごすことにした。



「お会計、7500円になります!」


はぁ?!値段おかしくない!?

レシートを受け取って値段を確認すると、

俺が頼んだメテオチーズバーガーセットは500円。

朝日奈が頼んだ二つのセットを合わせると、7000円なので、一つは3500円だ。


一つ3500円のバーガーセットって何!?

俺のセットは直ぐに作って貰えたが、朝日奈のは時間がかかるということで席に着いて待つことにした。



「少食なの?」



「俺はあまり食べなくても大丈夫なんだよ。

朝日奈こそ、あんなに食べられるの?」



「余裕よ!

あんなのじゃ足りないくらいだわ!」


まさかの……ツンデレというオプションに+して、大食いまでーー言われただけではやはり信じられない。

ここはしっかり見てやる!!その実態を!



「ファストフードなんて久しぶりだけど、意外に美味しいなぁ」


モグモグと普通サイズのハンバーガーを平らげ終わると、ポテトに移る。

因みに、飲み物はコーラ一択だ。


ポテトの塩っ気とサクサク感で乾いた口にキンキンに冷えたコーラのしゅわしゅわ感と甘み、旨さの暴力だ。



「は、はい!お待たせしました!

ビッグメテオバーガーセットと、メテオ&アースバーガーセットです!」


お盆一個に丸々乗せられたバスケットボールくらいの大きさのハンバーガーが二個。

其々具材が変わっているようだが、そのサイズは圧巻モノだ。

それに+して特大サイズのポテトが二つに、飲み物も特大サイズで二つだ。


店側としてかなりの儲けになるのだろうが、持ってくる時の店員さんの表情は完全にドン引きだった。

まぁ、いいだろう。思うがままに食欲を貪れ……残した時は全力で叱ってやる!





ーー数分後。

俺は信じられない光景を目の当たりにしているようだ。バスケットボールサイズのハンバーガーが見る見るうちに野球のボールくらいの大きさに変貌していく光景。


彼女の食べる量もだが、食べる速度が尋常な速さではない。

「いただきまーす」と手を合わせて早三分ほどしか経っていないのだが、このペースだ。

十分もあれば、二つ食べきってしまうのではないか?



「す、すげぇ……」


圧巻さに見惚れていると、彼女は俺の視線に気がついたのか、食べるのをやめて、こう言っていた。



「あまり、見られるの好きじゃないから……見ないで!」


それは無理がある提案だが、そうだったのか。目の前に座っているから否が応でも見てしまうのは仕方ない、けれど、必死に見ないように努力してみよう。



ーー数十分後。

端末を弄ってひたすら爆食いする朝日奈に視線を向けないようにしていると、彼女は席から立ち上がる。


何事かと思って目の前を見ると、お盆の上には空になった飲み物以外を除き、全てが食い尽くされてもぬけの殻になっていた。


はぁぁぁぁぁあ!?

驚愕の一言だ。それに、今立ち上がったということは何かを追加するのではないか?

待てよ、財布持ってないだろ!朝日奈!


賺さず、立ち上がって彼女の横に並び、何を追加するのかを聞いてみた。



「何を追加するの?」


「あのアイスクリーム美味しそうだから、頼みたいなーって!」


あぁ、アイスクリームか。

確か定価100円の美味しいソフトクリームがあったっけ。

そうだよな、良かった。

ここでまた、ハンバーガー追加とか言い始めたらどうしようかと思った。



「……何になさいますか?」


「あそこのビッグメテオソフトクリームください!」



……って、オイ!?

アイスクリームにもビッグメテオとかあるの!?と思い、彼女が指を指した方向に視線を移すと。



『 夏に最適!当店のメテオソフトクリームを五倍にしたビッグメテオソフトクリームが登場!定価は1000円!!』


ーーと、書かれたチラシが壁に貼られていた。なんて酷い店なんだよ。

なんでも大きくすれば良いってもんじゃないんだぞ!!


俺の叫びは、巨大なアイスクリームを貪り食べ始めた朝日奈にも届くことはなかったのだった。


三十三話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


遅くなりました。

休日を謳歌…寝すぎました(笑)

また採点とブクマが増えました!ありがとうございます^^


次回予告でっす☆

食べ過ぎな気がする朝日奈のは猛攻を俺には抑えきれない……!!やっとの思いで店を出た俺は、近くの公園で休憩しようとするがーー!?


次回もお楽しみに!!



【夜十の財布残高】


最初→20000円。

食事後→11500円。


「内訳」

メテオチーズバーガーセット→500円。

ビッグメテオバーガーセット→3500円。

メテオ&アースバーガーセット→3500円。

ビッグメテオソフトクリーム→1000円。

合計→8500円。


ファストフード店でこんなに使う人いる!?



※彼女と出かける時はもっと多く持ってくることを決意した夜十なのだった。



拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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