第二十八話 鬼の目覚め
今回は少し短いですが申し訳ございません。
また修正入ると思うので、ご協力よろしくお願いします!
「 いつだって……護ってもらった。
大した日数も重ねていない、きっと心だって許していなかった私を何度も……何度も救ってくれた!!
火炎に敗れた時、巨大烏賊の時、所属狩りの時!
あんたがどれだけ優れた人間でどれだけ強いかとか、そんな薄っぺらな情報はどうでもいい!!
今ここで……護れるものを護るだけよ!」
燃え盛る焔を具現化するは、彼女の意思そのもの。赤き高熱を帯びた闘志が冷静さを失い、復讐に邪魔な存在を断ち切ろうとする流藤を射止めようと剣を交えるか。
「……やっぱりお前ら出来てたじゃねえか。
けッ!魔法師よ、俺に斬られるがいい!」
赤い刀剣を両手で持ち、刀身を頭上に持ってくると重心を低くして構えの体勢に入る。
緋色に輝く刀身は血液を吸収しているわけではないが、その鮮やかな「赤色」はまるで、ソレのようだった。
「……はぁぁぁぁぁあ!!
《朝日奈の名の下に、焔を従え、神火の如きで敵を貫け!焔弁の爆炎花!》 」
時間稼ぎであるならば、一番回数消費の少ない技を連続して行うのが得策。
下手に回数消費の大きな魔法を出せば、彼女の身体は再び悲鳴を上げて戦うことがままならなくなってしまう。
そうならない為に"選択した魔法"だ。
炎から具現化された無数の鉾は、先程の数倍以上の速度で流藤の目の前を、背後を、横を、自由自在に駆け抜ける。
何処から剣が襲ってくるか分からない、相手に油断させない為の一手。魔法師の魔力を自在に操る技術は必要不可欠にして、最大の難易度を誇るモノ。
だが、彼女は齢16歳でそれを完璧なまでに会得しているのだ。
通常の数値であれば、確実にありえない。
「此れだけの技術力、流石は朝日奈だな。
だがな、どんな魔法も俺の剣の前では無にしかならねえ! 」
ーー瞬間。
彼女の鉾が一斉に四方八方から流藤目掛けて襲いかかった。当然、反射神経が高いとは言えど、全てを避けきるのは至難の技。
だが、それを、重心と身体の柔軟さ、ステップ、幅の広い視野で全てーー叩き斬った。
「そ、そんな……!
……全ての剣を一瞬でッ!!」
彼女の剣は相手の剣が触れれば消えてしまう程、ヤワなものではない。
けれど、現在交戦している中で流藤の"緋色に輝く赤い刀剣"に触れた瞬間、空気に混ざるかのように消滅していた。
「あんたのっ……その剣!
一体、な、なんなのッ!?」
彼は刀剣を持ち上げて、舌で舐めずるように視線を移し、彼女の問いかけに答える。
「……俺の《復讐の魔剣》は魔法を斬ることの出来る刀剣だ!
俺の剣が触れた魔法は、絶対に斬られる。
ふはははははは!!冴島の魔法も凄いとは思ったが、魔法とは所詮、付け焼き刃の力に過ぎない!
真に強くなれるのは、剣術使いだ! 」
そうか。これで全てが繋がった。
彼が今の世界で《無刀侍》《剣を握ってはいけない侍》と呼ばれる理由。
それは、KMCという国際的に有名な魔法を管理する協会が現代の魔法技術の邪魔者になると、早々に判断した為かと思われる。
自分達が作り上げてきた魔法による魔法のための制度が、彼の存在によって意味をなさなくなってしまうことを恐れるのも無理はない。
「つまり……あんたに幾ら魔法をぶつけても無意味!
私は無駄に回数を消費するところだったのね。そうであるなら最初から言って欲しかったモノだわ!」
魔力を消費して流藤を止めることをやめる、と言ったようなものの発言は、彼を驚愕させた。
「ふうん?
良いところで良い風に育ったお前如きが、俺の剣に勝る動きをするのか?」
「……私は私のスタイルを貫くだけよ!」
彼女は魔法生成を辞め、身体の重心を全体的に低めで構え直した。
彼女の瞳の中には燃え盛る炎が宿る。
「はぁぁぁぁぁあああ!!
俺の剣に斬られてお前ら邪魔虫は終わりだッ!……俺の手で沖を必ずッ!」
瞬発力は夜十の数倍か。それ以上の速度で間合いを詰め、相手を破壊しようと、様子を伺う残酷な剣戟を浴びせ続ける流藤。
彼女は絶妙なタイミングで剣戟を避け続け、くるりと回転すると牽制の為に彼の剣を回し蹴りで吹き飛ばした。
「……なッ!でもなァ、良いところのお嬢様が調子に乗ってんじゃねえ!!」
剣を吹き飛ばされても尚、彼の闘志が簡単に折れることも、止まることもなかった。
拳を強く握りしめ、反撃必勝で彼女の頬を殴りつける。
殴られた彼女は、地面に叩きつけられるように吹き飛ばされると、すぐさま起き上がって、血反吐を吐いた。
すぐに立ち上がったのは相手からの猛追を防ぐ為だ。
「お前が魔法を使わないのならば、俺が剣で戦う理由はねえよ。
……かかってきやがれ!」
「はぁぁぁぁぁあああああ!!!」
たった一発の拳で倒れるわけにはいかない。いつだって、あいつは私の為にボロボロになりながらも戦ってくれたんだ!
なら……その想いに応える為に!!私はこいつを食い止める必要があるッ!!
瞬発力は、朝日奈よりも流藤の方が圧倒的な速度を誇り、間合いを詰めてからの連続技に繋げる剣筋のしなやかさから逃れるのは至難の技である。
だが、今はお互いが丸腰だ。
拳と拳で語り合うのは、男同士の仕事で女が出る幕はない。そんなことは分かっている、
それでも……私はもう二度と後悔しないように自分がやりたいと思ったことは実現してやるんだ!
必死に流藤の猛追から、逃れようと悶え、拳を振るっていく勇ましい姿はーー数々の暴行を涼しい表情で必死に耐え凌いだ男の闘志に火を灯し始めた。
「クッソ……手間とらせやがってッ!
わーったよ、お前を全力で相手するだけの敵として見なしてやる!
喜べッ!!三秒でケリがつくさ」
瞬間。
彼から周りに放たれ始めた赤く黒い異形の光は、彼の力を抑えるリミッターを破壊し、動きの上限を解放した。
凄まじい熱量が当たり前のように襲いかかってする感覚、流藤は常にこの状態を保ち続けねばならない。
だが、修羅の道に進んだ鬼であればこの状態で維持することなど朝飯前も同然だ。
ーー逆立つ髪の毛、周囲の空気の振動やコンクリートの壁がヒビ割れる事象で、
彼の本気の力の凄さが丸わかりだ。
朝日奈は自分に残された三秒をどう耐え凌ごうか、それを自分自身の感覚に委ねることに決めたのだった。
三秒。
重心を大きく踏み込んだ相手がどんな攻撃をしてくるかを全て運任せで、身体の反射神経の全てに委ねる。
実際のところ、感じ取れるのは静寂に包まれた場所から現れる一強打の攻撃、一つだけだ。
それに、相手がどれだけの速度がわからない以上は迂闊に攻めるのもよくはない。
ので、どんな攻撃が来てもいいように必死に精神を咎めながら護るべき存在を護る。
二秒。
ゴクリと生唾を飲み込む。
彼女の思考の中には、攻撃を受け止めながら、耐え凌ぐことしか既に頭にない。
ギリギリの戦いの中で必死に頭を回転させる。
一秒。
三秒が経過する瞬間ーー
あれ程、耐え凌ぐことに力入れたのにも関わらず、だ。
必死に警戒したがーー反応すら出来ない速度で放たれた拳に痛みも意味も感じさせない。
鉄の梯子の方へ吹っ飛ばされ、頭からコンクリートに突っ込んだ彼女には、少しだけだが辛うじて意識は残っているようだ。
「ふっ、笑えるな。
……終わりだよ、朝日奈ァ!!」
再度、瞬発力が異常なまでに上がりきった彼は、一気に朝日奈との間合いを詰めてから、強く握りしめた拳を掲げる。
間違いなく当たれば、彼女の意識どころか命までをも奪ってしまう強力な一撃になることは、放つ相手が本気の流藤という時点でバカでも分かる案件だ。
絶体絶命……拳が当たる寸前で、鎖が千切れる音が部屋中に鳴り響いた。
ーーパキンッ!
「うぉぉぉおおおおおおおおおお!!!」
真っ赤に滾る魔力を全身に纏い、朝日奈を庇うように拳の前へ出てきた鬼は、彼の全力の拳を受け止めて、反撃の拳を痛烈にも頭の中が響くほどの威力で殴り飛ばした。
鉄の梯子がある位置とは真逆の位置、鎖と白い十字架を巻き込んで破壊するが如く、彼の身体は吹っ飛んだ。
そしてーー遂に流藤が望んできたコトが実現した。
それは、沖の鬼との対峙だ。
赤く滾るような沖に秘めたる鬼の力を倒せば、昔の沖家を流藤は超えたことになる。
腐れ果ててまで負けず嫌いの剣士だ。
自分が最強になるのは、前提条件として欲しいらしい。
「……俺がお前を叩き斬ってやるよ。
《赤鬼》ぃぃぃ!!!」
長年夢見たことが今現実として目の前に蹂躙している。
この状況を楽しむというのは、相当、頭のおかしい戦闘狂しかあり得なかった。
だが、現在、やりあおうとしている二人ーー沖も流藤も、浮かべた表情は満面の笑みだ。
「やれるもんならやってみろ!
俺がテメェを殺してやんさァ!!」
《赤鬼》の闘志は、以前鬼になった時とは違うものがあった。
それは確実に彼女から貰った"心境の変化"からくるものになるであろう。
直向きに、真っ直ぐ自分が信じたものから目を背けようとしない。
ただずっと本気でぶつかり合い、彼が帰ってくることを信じて命ある限り戦い尽くす。
流儀や礼儀なんてものに頼らずして、流藤と沖は会話を交えようか。
拳と拳ーー語り合うのは。
《赤鬼》と《無刀侍》だ。
第二十八目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。
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@sirokurosan2580
またブックマークが増えて、昨日のPVも歴代一位を獲得するレベルまで伸びました!
ありがとうございますー!
また、よろしくお願いしますー!
それでは次回予告でぇーす☆
何とか夜十を守り切った朝日奈が倒れた後、本気を出した流藤へ《赤鬼》が立ち塞がる!
《赤鬼》と《無刀侍》の戦いの行く末とはーー!?
次回もお楽しみにーー!
【作者談】
誤字は治すようにしてはいるんですが、
最近手直しした誤字で一番恥ずかしく悲しかったものがあります。
それはこちら!!
「これからも「追憶のアビス」をやらしくお願いします!」
やらしくってなんだよ!!
アダルト系の官能小説とかではないし、夜十君はとても純粋な男の子だよ!追憶のアビスを自分自身で汚すなァ!!
※様々な打ちミスで苛つくことは多々あります。
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




