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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編《侍編》
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第二十五話 二人の侍

随時修正はして行く予定です!

また何かあればご指摘ください!

重い瞼を開き、俺は目を覚ました。

目の前には真っ白い天井が広がっている。

ああ、そうか。俺は、虹色吹雪にボコられて……気を失ったんだったな。

誰か医務室に連れて来てくれたのか!


薄っすらと覚えていたはずが記憶の断片はしっかりと残されている。

流藤賢祐という人間がどういう人間で、

彼が何故、沖先輩のせいで人生の半分を諦めねばならなかったのか。

やはり、問い詰めるなら本人に……。


いや、でも、それは危険過ぎる。

ならば、沖先輩に現在最も近い人ーー風見先輩に聞くのはどうだろうか。

本人に聞かれる心配がなければ、危険も増しはしない。

それに……今度、虹色が現れるのがいつかも分からない為、情報を共有しておくことは大切なことだ。


俺は布団から出て、壁にハンガーで吊るしてある制服に身を通すと医務室を後にした。



ーー現在時刻は21:30。

風見先輩がいつも通りの日常を送っているのであれば、この時間帯は店長(みせなが)先輩との発明に明け暮れている時間に違いない。


明かりの灯った《平和派(ジャスティス)》拠点へ足を踏み入れると、防御障壁が一面に貼られた部屋ーー発明室に向かった。

玄関から入って、左の通路を真っ直ぐ直進すると着く部屋だが、いつもは強固な鉄の壁が塞がるように設置されていたので、入ってはいけないような感覚に陥ることも無きにしも非ずだった。


ーーだが、虹色吹雪によって斬られてしまった扉が無き今。


電気がついて話し声がしている部屋の入り口には何故か……「女」と書かれた温泉の女湯の入り口に掛けられる赤色の暖簾(のれん)が掛けられている。


うん、これは女湯ではない。

関係ないからに、入っても大丈夫なはずだ。



「こんばんはー!」


暖簾を右手で持ち上げ、顔をひょっこりと出すとーー



「きゃぁぁぁぁぁあああ!!……変態ぃぃぃいいいい!!」


「……」


俺が無言を続けていると、絶叫した声の持ち主は焦ったように駆け寄ってきた。



「ちょっ、夜十君!?怪我は大丈……お願い、やめてその顔!!いや、一度はやって見たいなぁっていう出来心だからホントに!」


制服姿で貧相な胸を必死に隠している風見先輩を見たら、どういう顔したらいいのか分からなかったんだ。仕方ない。



「ひ、貧相って……ッ!!」


「あ……今の嘘です。取り消してくださ」


「無理に決まってるでしょうが!!あぁぁ!!もう!」


怒り気味に拗ねてしまった風見を慰めようともせず、横から入ってきた店長は俺へ問いかける。



「夜十君、ここに用があって来たんじゃないのか?」


「あっ……!実は風見先輩に話があったんですけど、話してもらえないですよね?」


風見先輩に教えなければならないことがある。

そして教えてもらわなければならないことも。俺の心の中の声が聞こえたのか、彼女は立ち上がり様にーー



「てんちょー、ちょっと夜十君と話してくるよ。新型の武器、後で試そ!」


「おう!後で沖に来てもらおか!」


「うん。それじゃ!」


風見先輩と俺は残った店長に一礼して、発明室を後にした。

二人で話せる場所を知っているのは風見先輩だ。


正直、拠点のことをよく知らない俺は、ずっとついていくと、回す式のドアノブがついた扉の前に立ち止まった。

ドアノブを回して中へ入ると、室内の状況は驚きを隠せないような光景が広がっている。



「ここは……!!」



「ここは、私と沖の思い出の場所だよ。私はここで沖という人間を知ったんだ。君は何を知っていて、何を知ろうとしているんだい?」


真っ白い正方形の何もない部屋の中心を引き裂くように、黒い液体が床を侵食して壁に飛び散った跡が存在していた。

これを見て、どう思えというのだろう。


「沖先輩の鬼についてです!

発動条件は分かりますが……止める方法は?」



「……止める方法は無いよ。あっても、君達には教えられないんだごめん」


それは、どういうことだ?

キョトンとした表情でこちらを疑問げに見つめ始めた風見はーー



「君の知っていることって?」


少しだけ笑みをこぼしながら話を続け、俺は問いかけた。教えられないことを誤魔化そうと必死に笑顔を出しているのだろうか。作り笑顔に見えてしまう。



「……沖先輩が狙われてます。

虹色吹雪っていう俺と同学年のやつに!」



「なんだ……そんなことか。大丈夫だよ、彼奴は誰にも負けない。沖に挑む奴は今までも沢山居たけど、全員返り討ちにしてるしさ」



「そうですか……なら、良いんですけどね」


すると、彼女は安堵したように笑顔を振りまく。

俺の知っていたことがもし、安堵しない方の何かだったらばどういう表情をしていたのだろう。



「うん!あっ。ちょっと電話だ。

……出るね!」



必死に笑顔を振りまく風見は、腰ポケットに入れている端末が振動しているのに気がつく。

そのまま画面をタップして耳元に押し当てると、誰かと話し始めた。



「……お、沖がッ!?場所は!?うん、うん!分かった!纏君はそのままの場所で待機!」



「……何かあったんですか?」


「沖と一年の女の子が玄関前で交戦中って……」


に、虹色!!

マズい、彼奴の魔法は沖先輩をも葬りさることができる。



「風見先輩、俺が行って来ます!絶対に沖先輩は助けますから!!」



俺は彼女にそう言い残し、全速力で玄関前へ走り去った。

俺の縮地法を利用すれば玄関前に着くのは、一分もいらない!



ーー玄関前の噴水広場。

もう22:00を回っているせいか、辺りは闇に包まれている。

その中で二人の侍ーー虹色と沖が剣を思いのままに操り、自由な剣戟を交わしていた。



「あんたが居なければッ!!はぁぁぁぁああああああ!!」



「僕に倒された人達の弔いかい?辞めなよ、君では僕に敵わない!」


虹色の一振りをギリギリの位置で重心を斜めに向けることで回避し、彼女の懐に入った沖は大きな一振りなどをせずに細かい振りで足や腕に切り傷をつけた。



「……くっ!あんたは私が殺さないと!!彼奴がッ、報われないんだよッ!!」


一歩下がって後ろへ後退すると、もう一度地面を蹴って沖との間合いを詰める。

お次に横振りの一撃を放つと、これもまた回避される。

恐るべき、身体能力と反射神経だ。

だが、避けられることはもう予測済み。


横振りの一撃を避ける際には、身体の重心を移動させる細かな技術が必須になってくる。彼女はその部分の細かな技術が沖に出来ることを信じて、次の足払いという一手にかけたのだ。


ーーこれを避けることは並以上の使い手でも不可能だろう。重心を崩しやすい体勢で死角からの足払い。

沖は重心を崩し、尻餅をついてしまった。

賺さず、立ち上がろうとするが時既に遅し、相手の刀剣が首元に当てられる。



「……並みの使い手ではないね。流石は、虹色家の現当主、虹色吹雪さん」


「やっぱり、知られてたんだ。さぁ、観念しなよ!」


虹色の刀剣は握られる力が強くなり、首元に刃がより押し当てられた。

その影響で皮膚が斬れ、赤い血液が刀身に垂れた。



「まあね、剣士を志すものであれば君を知らない人こそ珍しいと思うけど?おや?夜十君、いつからそこに?」


沖は、到着した俺を瞬時に目視して手を振ってきた。

自分は、尻餅をついて銀髪の少女に刀剣を首に当てられている状態なのにも関わらずだ。



「沖先輩、早く逃げてください!」



「君はこの人殺しを庇うんだね。ああ、可哀想に、彼は怒っているようだよ。ねぇ?流藤?」


彼女が見つめる先、アリーナ近くの階段には制服姿の流藤が居た。


「流藤」という名前と姿を確認した沖は驚愕にも目を見開いて、絶望に陥ったような表情を出す。

流藤は、俺を見つめるなり、悲しそうな表情を浮かべ、言の葉を紡いだ。




「冴島、大丈夫だ。俺はそこに居る沖遼介を殺さないよ。ただ、少しだけ貸して欲しいんだ!」



「駄目だよ、流藤。沖先輩には、沖先輩のために嘘でも笑顔を振りまこうとする人が居るんだッ!!俺は、君らを止める!!二人掛かりでも関係無い!!」


ーーすると、アリーナの階段前に居たはずの流藤がその場から消えた。


どこへ!?

その考えが頭に浮かんだ直後には、彼の拳は俺の腹部を貫くように殴り飛ばし、その威力は、容易にも噴水をぶっ壊し、地面にヒビを入れるようなレベルのものだった。



「ぐぁっ!!る、るッ、流藤!!」


俺は立ち上がり、流藤へ向かって拳を振るおうと腕を引いた。

だがーー


「冴島、残念ながら俺はお前よりも強い!!!吹雪!!」


「はいはいーー!ここでジッとしててよ、夜十君?」


ーーまた、あの時のように俺の身体は硬直してしまったらしい。何をしても、何をしようとしても、ビクともしない。



「クッソ……!!

沖先輩、逃げてくださいッッ!!」


「夜十君、ありがとう。でも、僕は逃げられないかな。この過去にケジメをつけなきゃ……!!」


俺の身体、動け動け動け!!

頼む、この瞬間に動かなかったら後々、俺は風見先輩にどんな顔をして会えばいいんだ!


頼む、動け!動いてくれ!


ーーだが、俺の身体は動かなかった。

必死に抗っても届かない。

……力量の差は歴然だ。



「必死に抗う姿、かっけえなお前。でも、強くなきゃ……今はねえよッッ!!」


流藤はまるで弓矢を放つかのような鋭い拳で、悶え苦しみながら必死に抵抗する俺の腹部を確実に射止め、貫いた。



「ぐぁぁッッ!!」


この前の連続で食らった拳よりも強い!

痛いなんてものではない……あまりのダメージに体が耐えきれなくなってしまったのだろうか。それとも、昼間に虹色にやられた傷が完全に完治していなかったのか。


俺は無念にも意識を手放した。


俺の意識が飛んだことを確認し、視線を外した流藤は虹色に声をかける。



「沖を固めて運ぶか。……暴れられると勘弁だしな」


「そうだね。一応、沖家の最後の生き残りだもん」


二人は無抵抗の沖と共に何処かへ消えていってしまった。

意識を無くし、地面に転がっている俺をただ一人残して。




ーー23:00頃。


「はぁっ……はぁ!!はぁっ!」


玄関前の噴水広場に到着した風見と店長は、破壊された噴水の近くに横たわっている俺を発見した。


必死に駆け寄り、胸に抱いて起こすと、破壊された噴水の水を手で掬って、俺へかける。

何往復したか分からない時ーー


俺は意識を取り戻した。

細々と瞼を見開いた瞬間、一番顔を合わせたくなかった人物と目が合ってしまう。



「夜十君、お、沖は……?」


「……」


俺は無言で立ち上がり、店長と風見に背を向けた。

合わせる顔がないのもそうだが、一刻も早く流藤を見つけて沖を助け出さねばならない。

ならば、あの力を使ってでも……!!


俺は覚悟を決めて、歩みを進め始めた。


だがーーその進路を店長が遮り、怒鳴り声を上げた。



「……ここは通さない!

何があったかを言うんだ!!」



「どいてください……!!沖先輩が二人に攫われました……救うと約束したのに守れない奴が風見先輩に合わせる顔なんてありません!!俺が絶対に助け出します……!!だから、待っていてくれませんか!!」


俺は店長先輩の横を通り過ぎて、流藤の寮室に行けば何かがあるかもしれない。そう願い、全速力でその場から消えた。



「……沖が敗れたのか!今回の相手は只者じゃないな」


「そうだね……あの沖が、沖……」


悲しそうな表情を浮かべる風見を店長は、優しくソッと抱きしめた。



「彼奴、風見にそっくりだな。自分のことなんか考えないで人の為に必死こいて命を賭ける……。俺はああいう奴、嫌いじゃないよ。大丈夫、全員で戦えば救えるさ!」


「うん……ありがとう。早速だけどさ……てんちょー!私達は、拠点に戻って作戦立てるよ!全員招集して!」


「切り替え早っ!?……はいよ!!」



私達は私達に出来ることをする。


だから、夜十君。

沖を救ってあげて……彼奴を過去から!!


彼女は星空の下で願った後、

走って《平和派》の拠点に戻ったのだった。






二十五話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


個人的に今回は書いてて短いかなー?って思いましたがツイッターで調べたら五千文字超えてました(๑>؂•̀๑)テヘペロ


えーと、次回予告です!


攫われてしまった沖を助けるべく、《平和派》が動き出す!二人の侍が沖を攫った理由とは……また目的とは!?


次回もお楽しみにー!


【その後】


「てんちょー!自販機でジュース買って!全員分、奢りな!」


「はぁぁぁ!?!?

立ち直り早すぎだろ!!つか、俺をパシリに使ってんじゃねえよ!!」


※結局、全員分奢りました。


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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