第二十四話 来訪者
また近いうちに修正を行うと思います。
修正次第、前書きの方に記載させていただく予定なので、お手数ですが確認の方お願い致します。
鳴神先輩との勝負の幕を下ろそうとした刹那ーー防御障壁のある部屋の扉は、音を立てながらバツ印の形で一刀両断され、欠片が散らばるように落下した。
「沖遼介君は居るですか??」
欠片を踏み躙りながら、刀を肩に乗せて部屋にに入ってきた少女は、虹色吹雪だった。
彼女が部屋に入った瞬間。
俺の近くに居たはずの鳴神先輩は実体を消し、一瞬で虹色の間合いへ飛び上がって、鋭い蹴りを放った。
この一瞬であれば、不意打ちとも呼べる卑怯な技だが攻撃が当たらないことはきっとないであろう。
だがーー
「……危ないですね〜!名前だけ平和で頭は戦闘ですか??」
「ぐっ……!?なに……これ、動けない!」
瞬間。
鳴神先輩は時が止まったような感覚に陥った。
意識はあるものの身体が動かないーー目の前で黒い笑顔をした銀髪の少女の瞳が笑いによって歪んでいる。これは魔法か?
だとして、こんなところで使うのであれば……上限回数に特化した燈火ちゃんのような魔力量が多いタイプか。何れにしても、どんなに強い力で動こうとしても動けない。
「私にとって貴方など止まって見える塵以下にしか見えません。そんなんで鳴神家を背負って生きているのですか?全く……楽な人生ですね。……御愁傷様です!」
そしてーー
鳴神は劈くような悲鳴と、瞳から涙を滴らせ、白目剥き出しの状態で仰向けに倒れた。
「なっ、鳴神先輩!!
お前……なにをしたぁぁぁああ!!」
彼女は死んではいない。
それは自分でも分かっていたが、突然拠点に侵入してきた部外者がこちら側に牙を剥くというのであれば話は別だ。
俺が此処で出しゃ張らなければ、怒りで拳を握った朝日奈が魔法で襲いかからんこともあり得なくはなかった。
右手に異常な熱量を帯びた剣を発現させると、ニッコリと微笑む虹色に斬りかかるーーこの間合いであれば、これをフェイクとし、そのままの起点で攻撃を叩き込むことができるだろう。
だが、俺はソレを行動に移せなかった。
どういう風に頑張っても、自分の身体が動かないのだ。
地面を蹴って間合いを詰め寄っていた時、地面に着くことなく俺は空中に静止した。
まるで時でも止められた様な感覚だ。
目の前のありとあらゆる事象が止まって見えるーー横を振り向くことさえ出来ない。
だが、目の前の彼女だけは目視が出来る。
ならば、憶せ!!
俺は身体が動かないことで諦めたかのように目を瞑った。
すると、オレンジ色の光を帯びた数値が瞳の裏側で上から下へ消えていくのが見える。
《追憶の未来視》であれば、複製出来ない未来はない。
体を動かせないようにされていたとしても、きっと脱出口はある!
"どんな迷路にだって出口はあるんだ!"
空気の振動、音、彼女の視線、剣を持つ角度、軌道、刀身の長さ等……。
自分が今この静寂の世界で受け止められるだけの知識と記憶を計算ーー
「……ぐぁっ!!」
俺の腹部に脳を刺激するような痛みが走る。まるで人間の上に隕石でも降ってきたかのような想像を絶する痛みだ。
これでも割とタフな方ではあるが、今の一撃を連続で行われれば気を失うのは歴然。
それにーー今の一撃のせいで《追憶の未来視》の計算式が消滅してしまった。
もう一度……計算し直しだ。
目の前の彼女は、狂気を帯びた表情で俺が抗おうとしていたことを声に出しながら、もう一度強い衝撃を生み出す攻撃を放った。
「君の未来を視る力は分かってるよ!それの壊し方もねェ?アッハハハハ!!」
「がはっ……!何故ッ、《追憶の未来視》のじゃ、弱点をッ……!!」
瞑った瞼を開き、彼女を目視した。
手には何も持っておらず、先程まで手にしていた剣は地面に突き刺さっている。
俺を痛めつける方法は、軽く握った拳を何らかの形で爆発的な威力にしている攻撃だ。
「そんなの普通に考えればわかるよー!君が目を瞑るのって集中するからだよね?……なら、集中させなきゃいいんだ。全部、ぶっ壊してさ!」
狂気的な考え方に頭が痛む。彼女は俺の技の根元が全て見えているのか?
確かに、俺の《追憶の未来視》は凄く繊細な技。少しの集中を乱すようなモノがあれば、計算式は瞬く間に消滅してしまう。
「もう抗おうなんて気、起こさなくなったか……なッ!!」
何度も何度も振り下ろされる拳を受け止める位置は同じで、俺の腹部は青色に酷く腫れ上がっているに違いない。服で見えなくても、痛みがそう物語っている。
何故だ、何故、体が動かない!
このままでは、鳴神先輩の二の舞にならざるを得ないようだ。
「……貴方は今日ッ、沖先輩に何の用があったんだ!!」
痛みに耐えながら振り絞った声で、狂気の微笑みのままに、
俺が気絶をしていようが殴ってきそうな拳を続ける彼女は殴るのをやめた。
「へぇ……?あれだけ殴ったのにまだ意識あるんだね、バケモノかと思ったよ。まあ折角だし、お話ししてあげようかな。流藤から聞いてない?自分のこととか」
流藤?何故、そこに流藤が出てくる?
首を横に振ると、彼女は続けた。
「……だよねー。
流藤が言うわけないか!!彼奴は、今《戦闘派》の部隊《侍》の隊長を任されているんだよ」
侍!?それって前に流藤が虹色の説明をする時に言っていた部隊名と同じッ?!
「そ、その部隊は君が潰したんだろ?それは聞いたぞ!!はぁ、はぁ……」
「うん、そうだよー!私が二十五名全員を潰したの!……流藤に言われてね」
え?流藤に言われて?
どう言うことだ?自分の隊を襲わせる意味って何だ?
「冴島君さ、《無刀侍》って知ってる?知らないよね?なら、教えたげるよ」
何も知らない無知な俺に、彼女は紡ぎ始めた、流藤という人間を。
「《無刀侍》は流藤の二つ名だよー。またの名を《剣を持ってはいけない侍》。どうして彼が自分の隊を壊滅させて欲しいなんて頼んだと思う?」
「わ、分からない……ッ」
「それはね……目障りだったからだよ。
刀を使わない侍が目の前に居て、自分の隊長になったとしたらどう思う?それが《戦闘派》の剣部隊だよ?
……二十五名全員が反発したの」
あんなにも笑顔を振りまいていた奴が実は影でこんなにも辛い状況に苛まれていたのか。それに、流藤が《戦闘派》の隊長?言わば、あの憎たらしい火炎と同じ立ち位置だぞ!
「……んと、私がここに来た理由はね。流藤の人生の半分を壊した沖遼介を殺す為だよー!私の刀があれば、君を今ここで殺すことも、沖遼介を殺すことも簡単に出来る!」
地面に突き刺さっていた刀を引き抜いて、刃を俺の首へ突き立てた。
少し触れただけで皮膚が斬れ、微量の血液が刀に付着した。
「流藤の人生を……!?どういうことだ、教えてくれ!」
「ここ迄だね。入り口から複数名の足音が聞こえる。目的の人物も居そうだけど、一度出直すとするかなー!じゃあね、冴島君!」
刀を腰に挿している鞘へ戻し、彼女はその場から消えた。
消えた瞬間に体が動くようになり、俺の腹部には骨と肉が中で混ざり合うかのような激痛が襲った。あまりの痛みに悶え苦しみながら、思わず地面に転がる。
「……大丈夫!?あんたッ!!しっ、しっかりしなさいよー!」
朝日奈が近くで呼びかけてくれる、今の今まで一言も発さなかったということは……何らかの空間が生み出されて俺はそこに入れられた?と考えるのが妥当かもしれない。
時を止めたという線も怪しくはないが、魔法であることはまず間違いが無さそうだ。
それでも今はお腹が張り裂けるように痛い!
あの時もしっかり痛みは食らったのに……なんで、どうして!!
俺が床に転がって悶え苦しんでいるとーー壊された入り口に驚愕した風見、店長、沖が駆け寄って来た。
「……夜十君、どうしたの!?燈火ちゃん、何があったの!!」
風見は必死に俺達へ説明を求めるが、俺にそんな余裕もないし、朝日奈が虹色を知っているはずもない。
取り敢えずで、沖はこの場を収めようと、俺を背中に乗せて医務室へ向かったのだった。
ーー俺は《無刀侍》
《刀を持ってはいけない侍》。
過去……其れは辛いものだ。
あの時の事件が俺の人生の半分を破壊した。
ーー○年前。
○○家と書かれた表札には、血が飛び散り読めなくなっている。
笑顔が絶えず、汗と血と涙の結晶となっていたこの地は今……悲劇しかなかった。
そんな中独り、押入れの襖を開けて血塗れになった自分の姿を、割れた鏡で確認した俺は頭を抱えながらその場に座り込む。
もうどうすればいいのか分からない。俺は目の前で……何も出来なかった!!
ああ、全ての魂胆はあの鬼だ。
鬼がいけない……!!そうだ!!
必死に悶え苦しみ、目からは返り血の混じった涙を滴らす。
ーーすると、何故か声が聞こえた。
俺の中に眠る「何か」の声だ。
低く野太い声の持ち主は、幼き俺へ残酷な選択を手向ける。
血に塗れたお主の刀がもう一度輝く日は来ん。
刀は血で錆び、主の心は鬼で朽ちる。
刀を用いない侍など……侍ではない。
主は侍の抜け殻だ。
主は何を望む?
復讐を遂げようものならば、鬼を弑せ!
此処で切腹するならば、それも良い!
さあ、択べ!
「俺は……」
二十四話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。
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@sirokurosan2580
今回で《侍編》の序章……いや、全然進まない。
虹色の能力は一体なんでしょうかねェ〜!
あっ、誤字とかここの文法おかしいよーっていう報告あれば随時、Twitterや感想欄などで気軽に教えてくださいッ!!
それじゃ、次回予告しますよーっ!
虹色に色々な情報を与えられた夜十は、沖のことについて風見に問いかける!!
そこで風見が発した言葉とは……!?
【その後】
「ちょ、沖!私達、筋力無いから、鳴神も背負ってってー」
「か、風見、二人で持てばいいじゃないか!
僕はこう見えてそんなに筋力無……ぐはぁっ!」
※この後、風見に滅茶苦茶説教した。
次回もお楽しみに!!
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




