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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編《侍編》
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第二十三話 追憶の模倣

ーー昨日の今日と色々なことがあったが、今日は何もない休日。


予定としては《平和派(ジャスティス)》の拠点、防御障壁のある部屋での個人修行だ。

この間の試合で沖に倒されたことが自分にとってかなり応えた。


まさか、《追憶の未来視(リコレクション)》があんな形で機能しなくなるのは、新島との戦闘演習以来だろうか。


とにかく、これから先戦うのが人間ではなく、アビスだということの自覚を持って強さを磨かねばならない。未完成のあの技にも、そろそろ手を出していかなければ……。


俺は考え事をしながら寮室を出て、旧校舎へ向かった。



ーー旧校舎前。

相変わらずの拠点、今日は休日ということもあってなのか。静寂が広がっていた。

普段、早朝であるこの時間帯に拠点に入ることは無いので不思議と高揚感が湧いてくる。


いつも通りの左の部屋のドアを開けるとーー



「ありゃ?おっはよー☆」


「……おはよう」


鳴神先輩と朝日奈が制服姿で店長の作った発明品を眺めていたようだ。

彼女らは俺に気がつくと、視線を向けて挨拶をしてくる。


「おはようございます!二人してこんな早くにどうしたんですか?」


賺さず返すと、鳴神先輩は笑顔で答えた。



「燈火ちゃんの魔法を見せてもらおうかなーって思って呼んだんだー☆そう言えば、夜十君の魔法ってどんなのがあるのー!?」


朝日奈は俺に視線を向けてくる。

鳴神先輩は仲間と言えどもまだ言えない……適当にお茶を濁す言葉でも投げておこう。



「俺のは見なくていいです……!魔法は昔から苦手で、見せれるようなものは特に……」


俺の返答に疑問と興味が湧いたのか、鳴神先輩は、身を乗り出して問い詰め始める。



「え!?じゃあ、なんでー!炎魔法の提唱者の子孫を倒せるの!?体術とかだけじゃ無理だよねっ☆」


残念なことに、俺が朝日奈に勝てたのは《追憶の未来視》があったからだ。

これは俺が常人よりも優れた記憶領域の広さと記憶力を有しているからこそ編み出せる体術だ。

魔力は一ミリも使っていない。



「……無理じゃないんですよ。魔法を体術で超えた結果です!」


「絶対あり得ないんだけどなあ……!まあ、そこまで言いたくないなら私と一戦交えてよっ☆あっ、これは強制だから!先輩命令ってやつ〜☆」


あまりに強引な決闘申請だったので驚愕したが、これは逆手に取れば良い特訓になる。

《追憶の未来視》がどこまで通じるか、新技完成のヒントも授かるかもしれない。


俺は彼女の声に深々と頷いた。



「へぇ?良いじゃーん☆先輩が可愛がってあげるね!」


随分と自信満々だな。

鳴神家の戦術は集団で行う戦術が多いと言われているが、単体でも強いのか?


持ってきた黒剣を右手に携えると、彼女に矛先を向けながら重心を低くして構えた。


「あっ、燈火ちゃん!スタートコールお願い!」


鳴神先輩も拳を握りながらゆらゆらと揺れて構えが完了した後、朝日奈へ声をかけた。




「ええっと……レディ!!……す、スタート!!」



即席の合図にしては良いタイミングで放たれたスタートに食らいつく。

縮地法で彼女の懐に侵入を成功すると、黒剣の柄の部分で押し出すように打撃を喰らわそうと放った。


ーーだが、

彼女の実体は消滅し、バチバチという火花が散る音を立てながら俺の後ろへ回り込む。

そして、軽快なステップと共に重みのあるドロップキックを俺の後頭部を確実に捉えた状態で喰らわすと、一気に吹っ飛ばした。


前のめりに地面へ激突しそうになるも、片手を使い、宙返りの要領で体勢を立て直すと、黒剣を構え直す。



「確かに、身体能力は高いね〜☆でも、それだけじゃ勝てないよっ!」


地面を蹴って俺との間合いを一気に詰めると、彼女は渾身の飛び蹴りを放つ。

だが、コレは避けれる……と左に回避した瞬間ーーまた実体が消えた。



「……どこっ!?……ぐぁっ!!」


俺が左に回避したことを死角と取って、右の横腹へ肉を抉るような鋭い蹴りを一発入れる。

すぐさま実体を消して、俺の体勢が崩れたタイミングを見計い、顔面へのフロントキックで地面に叩きつけた。



ーー為すすべ無し。

追憶の未来視(リコレクション)》をしようにも、彼女の情報を目で追いきれないのだ。

空気の振動も音も聞こえずに、ただただ音速を超える速度の篭った重い一撃を耐え凌ごうとするだけ。


それでは勝てない……!


俺が彼女に勝つ方法はやはり……アレをするしかないみたいだ。

組織に所属している時に思いついた技だけど、一度も成功していない。


追憶の未来視(リコレクション)》は、自分が目で見た情報を瞬時に脳内に記憶し、脳内で得た情報を未来として複製させる技。

言わば、十中八九トドメを刺すのに向いていない技だ。

俺がこれからしようとしている技は、自分の体の上限以上なことはできないけれど、攻撃にも防御にも使える。

成功して使用出来るようになればーー確実に倒せる相手は増えてくる!


考えろ……俺は何をしたい!


彼女から貰った魔法を思い出せ……!!

あの熱量、温度、形、硬さ、強さを!


今まで何度も近くで魔法を憶した。

ならば、俺が複製出来ないわけがない。


体現させるんだ……!

この掌に、全てを圧縮して!!





……だが、何も出ない。

俺が考えていた通りであれば、思い出して複製すればこの技は完成するはずだ!


なのに……何故!



「なーに!やってんの〜☆」


ーー直後、空中に飛び上がった鳴神先輩は仰向けに倒れている俺の腹部を強く踏みつけて着地する。



「ぐあっ……!!」


普通の蹴りよりも強い衝撃が腹部に走り、体重の重みによって吐き出された空気を吸い込もうと肺が血眼になっている。

身長の低い女の子とは言えど、あれ程の戦闘をする一流名家の魔法師だ。


長くも短くもない脚には凄い筋肉が付き、腕やお腹にもソレはある。

故に、かなり重いのだ。轟音先輩が悶えながら自己紹介を聞かせていたのも分かる。

寧ろ、この状態で声を出せるなんて轟音先輩を少しだけ敬う気持ちが出てきたくらいだ。




「えー、夜十君ってー、マゾ?!戦闘中にこーんなところに寝そべってたら踏んでください!お願いします何でもしますから!っていってるよーなもんよ☆

んじゃ、そろそろ決着つけないとねー☆」


俺に乗ったまま右手を高く掲げると、

バチバチという音と共に現れるは、雷で発言された剣。それは、剣というには荒々しく、刀身の部分も雷で出来ているのか黄色く眩い光を放っている。




「これで、終わりぃぃいいいい!!」


彼女が終わりの宣告を叫んだ瞬間ーー俺はふと、気がついた。


そうか……!!

憶していたモノを思い出すんじゃない……思い出した状態で引き出すイメージだ!




「はぁぁああああああ!!!」


憶していた魔力の質感、熱量が俺を一時的に支配する。あっ、熱い!!

いや、それでも前の《魔力渡(オーバー)》の時よりは幾らかマシだ!!


そしてーー俺は心の中で彼女に言った。




"朝日奈、お前の力借りるぞ!!"




鳴神先輩は、俺へ、一切の容赦も無しに剣を振り下ろすーー


その瞬間だった。

俺の周囲に刀身と柄が眩い光を放ち、高熱を帯びた四本の鉾が具現化される。

鉾は、荒々しい雷の剣から俺を守るべくして彼女の攻撃から守ってくれた。


剣を弾かれ、俺から降りた彼女は思わず後退する。

元々、俺の《追憶の未来視》対策で空気の振動も音も出さない隠密な攻撃的戦闘を行なっていた彼女だったが、ここに来て不思議な力が自分を遮ったかと思うと警戒せざるを得なかったのだ。



「あ、あれは……私の!!」


朝日奈は思わず、声を上げる。

夜十の周りを浮遊する鉾は自分の魔力消費技の一つである《焔弁の爆炎花(アキメネス)》に酷似していた。



出来た……!!

これが俺の新しい技……!!


追憶の模倣(メモリーレプリカ)》だ!



後退した彼女を見据えて立ち上がると、

赤い刀身の、炎で具現化した剣を空中へ四本程、自分の右手に一本発現させた。



「鳴神先輩、体術が魔法を超える瞬間を見てもらいます!!」



「あの剣は燈火ちゃんの!?あっ、あり得ない……魔力を消費しないでそんな所業、出来るわけないじゃん!……はぁぁぁあああああ!!!」


彼女はもう一度、雷の剣を発現させて俺との間合いを一気に詰め、斬りかかる。


ーー今度は、空気の振動、音、剣の軌道も彼女が動き出すタイミングの微妙な癖など俺が見える範囲内で憶せるモノを憶せた。


今は、俺の《追憶の未来視》に気をつけて戦っている場合ではないと、判断したのだろう。

ひたすらに斬りかかる彼女の剣戟を絶妙なタイミングで全て回避成功ーー。



全ての行動、軌道、音、振動もズレ無し。

計算に間違いがないか……該当無し。


追憶の未来視(リコレクション)》に異常なし。


俺はゆっくり目を瞑って、

"未来"を複製……完了。



「……鳴神先輩の剣戟、把握完了ッ!」


ゆらりゆらりと振るわれる剣の位置と真逆の位置へ回避を続ける。

相手の剣が自分に届く瞬間は来ない……それであれば、トドメを刺そう。


この戦闘で使えるようになった新技!

追憶の模倣(メモリーレプリカ)》で!


鳴神先輩への感謝の手向けを!!



「はぁぁぁぁぁああああ!!」


彼女の攻撃を避けるとーー俺は相手の綻びを、大きな隙を逃さなかった。

相手を倒すときはいつも全力でーー発現させた四本の炎の鉾を彼女へ放つ。

自分もその鉾と同じくらいの速度に近づけるよう、縮地法の応用で間合いに入り込んだ。



《追憶の未来視》では、雷の剣で四本全ての鉾は弾かれてしまう。

なれば、俺の一撃をその間に食らわせればいい!



「うぉぉぉおおおおおおおおおお!!!」


炎で発現させた剣を真っ直ぐ、何処にも曲げることなく放つ。

相手の胸元を絶妙に捉え、放たれた剣が彼女へ接触するというタイミングで決闘は遮られた。



ーー部屋の入り口の扉へ罰印の斬撃が飛ばされて、鉄で出来た扉は簡単にも斬り刻まれてしまったのだ。




そして、中からコツコツという足音を立てながら、歩いてきたのはーー。




二十三話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回から《侍編》に突入しました。

今回の話で目立つ予定の主力メンバーがまだ出てきていませんが、安心してください!次回からはしっかり顔出します^^


また、TwitterのDM等で好きなキャラクターについての熱弁等ありがとうございます!

感想じゃなくてもそういったお話があれば、作者は泣いて喜びます!

よろしくお願いします!!


次回は……何で貴方がここに?!

ちょ、ちょい!鳴神先輩、勝負邪魔されたからって鈍器は不味いですよぉぉぉおおお!!



拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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