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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編《所属狩り編》
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第二十一話 屋上での会話

2017/07/12にここまでの話の修正を行いました。お手数ですが、読み返しをお願いします。

屋上はこの学園の広大さを一望することで有名なデートスポットらしい。

今は授業中ということもあってか、俺と新島以外に誰も居なかった。


落下防止用に建てられたフェンスに両腕を掛けて、深刻そうな表情の新島の言葉を待つ。



「まあ、テメェならこの授業参観なんてモンに来る奴なんざ居なくて、居たとしても新木場くらいだと思ってだろ?」


「何であんたが来たんだよ!

身バレしたら終わりだぞ!?」


スーツの内ポケットから取り出した葉巻に指を弾いて火を点けると、口に咥えながら話し始めた。

葉巻独特の煙の匂いが懐かしさを感じさせ、それは直ぐに風に流されて消えた。



「わーってるよ、だからこうやって変装もしてる」


新島鎮雄が伝説的な魔法師で姿を見せないタイプの魔法師でなければ確実にバレてたよ!?ただ、グラサンかけただけだろ!!



「単刀直入に言わせてもらうが、

新木場がアビスと交戦して、負けた。

この言葉の意味はわかるな?」


「負けた……?死んではないですよね!?」


思わず耳を疑ってしまった。

俺の師匠で、姉を最も近くで守って来てくれた親のような存在、新木場さんが負けたということ。



「ああ、命に別状はねェが、意識が戻らない。」


俺の心拍数が上がっていくのが分かった。

新木場さんが負けて意識不明?

あの新木場さんが負けるなんて、どんな相手だったんだ!?



「どんな相手だったんだよ……!?」



「それが……俺が来たタイミングで逃げちまってよ。人の形をしたアビスだった。」


人の形をしたアビス?

組織が厳重に保管しているアビスの生態をチェックし、種類を載せている図鑑にも載せられていない。

頭の中を幾ら探っても出てこないのだ、人型のアビスなど。



「新種が出たってことかよ!?」


「そうだ。

我々人間が進化していくうちにアビスの方も進化していくらしいな。


おい、待て!夜十、どこへ行く?」


俺は屋上から出ようと足を踏み出した。

そのタイミングで新島が声をかける。

どこへ行くか?そんなものは決まっている、新木場さんの元へ向かいたい!



「……新木場さんのとこにだ!

あんた、車だろ?連れてけよ!」


「まあ、お前ならそう言うと思ったがな。

残念ながらそれは出来ない!」


「何でだよ!」


新島の言葉に応答した瞬間、理解した。

俺はもう組織の人間ではないから、だ。


どんなに長く組織に携わっていたとしても、機密を守れていて信頼があったとしてもだ。それに、組織を抜けた理由が一流の魔法師になる為の修行なのだ。

何は一つにしても俺を許してくれるわけがなかった。



「クッソ……!

あんなに良くしてもらったのに、助けられないなんて!!」


「そりゃあ、しょうがねえ!

誰にだってピンチはあるモンよ!全部助けるなんて不可能な話だぜ」


葉巻を吸い、今度は笑顔で俺の頭に右手を置いた。

髪の毛をワシャワシャと撫でながら、俺に激励の言葉を送る。



「そういや、振り分け試験とかいうので朝日奈家の次期当主をぶっ飛ばしたみたいだな!すげえじゃねえか、流石俺の弟子!」



「《追憶の未来視(リコレクション)》のお陰で勝てたんだ。

この技を生み出してくれた、あんたと新木場さんには感謝してるよ」


珍しくも反抗しない俺に気持ち悪さを感じたのか、新島は驚いた表情と共につまらなそうな顔をして、こう言った。



「つまんねーな。

俺に対して礼とか言うんじゃねえよ、気持ち悪りぃ!」



「はぁぁああ!!?

俺がお前に礼を言ってやってんのに、何でそんな態度なんだよ!

大体、授業中、女子生徒見過ぎだから!グラサン越しでも分かるわ!」



「《追憶の未来視》で俺の未来を予測してんじゃねえよ!そんなに俺が大好きかよ!……っっ!!」


ーーと、久し振りの戯れをしている刹那。

屋上の端から人の目では捉えられない速度で現れて、新島へ蹴りを放った人物は彼にすんなり、攻撃を避けられてしまった。



「オイオイ、才倍!

速度落ちたんじゃねえの?現役の頃はもっと速かったぜ!」


「はぁ?お前が変わらなさすぎなんだよバーカ!大体テメェ、その変装バレバレだぞ?」



新島に蹴りを放った人物は、

前まで俺の寮室に住んでいた才倍銀だった。


キョトンとしている俺に、

新島は言の葉を紡いだ。



「俺と銀はこの学園の同級生だったんだよ。つか、こいつも組織の人間だぞ?

長い間、ここに潜入してるからお前と面識ないだけで!」


「え……ちょ、理解出来ない。

じゃあ、何で《所属狩り》なんか!」


銀は所属狩りに加担していた人物だ。

何故、黒の姉の仇を取る為に動いていたのか、必死に考えても答えは見つからなかった。



「話は新島から聞いてるが、お前も姉を殺された身だろ?なら、分かるよな。

そん時の辛さと胸の痛みは……!


まあ、そういうこった!

俺は俺が助けたい奴を助けてんだよ。そこに理由もクソも要らねえ!

お前の決意は何だ?」



「あの辛さは……忘れられない!

だから、俺はアビスを駆逐する!

この世から消し去って、姉の仇を!」



「……お前はお前の信念を最後まで貫き通していけ!新島も俺も新木場もそれに応えられるような努力はするだけよ!」


この人の性格を直訳すると、

お節介焼きの馬鹿と言ったところか。

俺の銀に対する信頼と好感が少しだけ上がった気がした。



「んで、お前ここ数日どこ行ってたんだ?」



「あー、傷を癒してたんだよ。

《吸収》使ったんだが、俺の残されている体力よりも上回るレベルの魔法だったんだ。

学園内の化け物って言われてる、剣豪、沖遼介の一回レベルの魔法だ」



「沖って沖家か?」


新島は意味深に声を発した。

沖家?聞いたことのない家だな。



「ああ、そうだ。

そして彼奴は自分の家を滅ぼした鬼だ」



それは沖先輩に向けられた言葉なのだろう。どういう意味だ?沖先輩が、家を滅ぼした鬼って……!!



「それはどういう意……」


「そんなことよりも新島。

お前好みの生徒なら2-Cと3-Aに居るぞ!

帰りに見ていくか?」


ーー銀に遮られてしまった。

クソエロ親父こと、新島は銀が持っている小さい写真に視線を向けると、顔を赤らめながら興味津々の表情へ変わる。


ああ、ダメだ。

この状態の新島を止めることは出来ない。

一度、好きなものを見てしまったが最後、自分が満足するまで実行するのをやめない。それが新島がエロクソ隊長と称されるようになった理由の一つだ。



「銀、いい仕事してるじゃねえか!」


いや、ただの盗撮だからそれ!

生徒達の許可も得ずに撮ってる犯罪画像だから捨てろよ!隊長はそんなことするやつじゃないよな!?


ーーいや、駄目だ。

笑顔で貰っていくタイプだ。



予想通り、彼は笑顔で写真を手に持って、懐のポケットに押し込んだ。



「ところで、夜十。

なんか言ったか?」


銀が気を利かせて、聞いてくれた。

良かった、聞いてなかったわけではないんだな!



「沖先輩って、何かした人なんですか?」



「嗚呼、これは言ってもいいのか分からないけど、本人には言うなよ?」



「……はい!」


銀はゆっくり紡ぎ始めた。



「元々、剣の名家ってのがあってだな」


彼が言っていることを分かりやすくまとめるとーー


この世界には剣の名家というものが三家、存在している。

強さの順に、獅子王(ししおう)、沖、虹色(にじしき)という名家があり、それぞれが自分達に合った剣の道を歩み、極めている為か、魔法師にも劣るとも劣らない力を持っているという。


魔法師の名家は基本、自分達の魔法を極め、武術を極めることで自分の魔力と武力を酷使して先頭に励む場合が多いのだが……剣の名家は、一切、魔法を使用してはいけないという暗黙の了解が存在する。


何故、魔法を使ってはいけないのか、の理由は判明していないとのことだ。



「ココからが本題。

沖遼介は、この世界の剣の名家の者が一番首を欲しがっている人間なんだよ。


理由は、一人でたった一夜にして沖家の人間すべてを惨殺してしまったのだからな」


一人で惨殺?それも一夜で?

どういうことなのか、イマイチ理解に苦しむ言葉だ。

ーーだが、俺は沖遼介という人間にある特殊な人格を思い出した。


"鬼"。

銀が先程言っていた"自分の家を滅ぼした鬼"と何か関係がありそうだ。



「んでよ、それは彼奴が10歳の時なんだが、発見された時、返り血塗れで楽しそうな表情をしていたことから《赤鬼》の忌み名がついちまったんだ。本人はそれを嫌うらしいぞ!


……とまあ、こんな感じだ。

俺にとってはまだまだ青二才だがな!」



「《吸収》なかったら負けてた癖によ。

青二才をぶっ倒すなら気迫で余裕だろ!」


この時、俺と銀は思ったことが一文字の間違いもなく完全に重なった。


「……お前と常人を一緒にすんじゃねえ!!この変態野郎が!!」


何もかもが規格外の魔法師に言われたら、誰と口が出せなくなってしまう。

俺が倒した大型アビスの巨大烏賊(クラーケン)が五体並んでいても軽く凌駕し、殺してしまうほどの力を持った男だ。


それにしても、気になることが増えた。


新種の人間型アビスのこと。

沖遼介のこと。


沖先輩に関しては、

そもそも沖家を潰した話が本当なのかさえ分からない。噂なんて幾らでも膨れ上がるからだ。


俺は、屋上のフェンスに腕を掛けながら空を見上げる。

青い空は何処までも青く、

自分を吸い込んでいってしまうようなそんな気がしたのだった。


二十一話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回も少しだけ短いような気がする。

あっ、昨日のPVが600を超えました!

新記録です!

ありがとうございました!


今回は様々なことが判明しましたが、

次の《侍編》に向けての下準備です!


次回は、バスケの助っ人!?

オイ、流藤!俺バスケなんかやったことねえんだけど!?



拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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