表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編《所属狩り編》
20/220

第二十話 授業参観

※2017/07/12

誤字、脱字、文法等の修正をしました。

ーー翌日。

あの日から姿を消してしまった才倍銀が居た寮室は、いつでも静寂に包まれている。

彼は、どこへ行ってしまったのだろう。

《所属狩り》の一件から2日経った今でも俺の怪我は癒えず、心の中に何かが突っかかっているような気分だ。


端末をチェックして、今日の時間割をチェックする。現在時刻は午前五時。そして俺は思い出した、今日は授業参観の日だ!


他の人は来るだろうが、俺は来ないだろう。

もし……姉が生きていたのなら話は違ったのかもしれない。

私服を着て、この学園の教室の後ろの方で笑顔で手を振っている姉の姿が思い浮かぶ。

何を考えているんだろう、俺は自分自身がバカとさえ思い、頭の中の妄想をかき乱した。


いつも通り、歯を磨いて、風呂に入り、制服に着替えると、軽くおにぎりを食べながら寮室を出た。

早朝ということもあり、少しだけ涼しい風が制服の間を通り抜ける感覚に心地よさを感じる。


廊下をまっすぐ突き進んで歩き、教室を覗くと、机に突っ伏している朝日奈が見えた。

彼女の薔薇色の髪は陽射しで幻想的に視界へ映り込む。

俺は椅子に腰を下ろし、机の上に腕を組んで顔を埋めた。



ーー数分後。

HR始まりの鐘の音で目覚めた俺は、辺りを見回した。

すると、何故か久我と流藤がこちらを見ながらニヤケている。

あいつら、何企んでやがる!


瞬間ーー端末に振動が加わった。

チャットが来たんだろう。



くーがん

『朝日奈と仲良く寝てたの?』

※画像が添付されました。


そこには朝日奈と俺が縦一列の席で並んで寝ている写真が添付されてきた。

確実に朝のやつだろう。


夜十

『言い残すことはないよな?』


くーがん

『え……?』


俺は後ろを振り向いて、朝日奈に久我とのやりとりを見せた。


ーー数秒後には、顔を真っ赤にして蒸気を発しているお嬢様が久我と流藤を睨んでいる姿がお見えになりました。



流藤 賢祐

『はぁ!?なんで俺まで!!』


夜十

『日頃の行いだな。間違いない』


流藤 賢祐

『くっそぉぉぉおおおお!!』



HR終了の鐘がなってほしくないと二人は願った。だが、時間というのはいつでも残酷。


ーーゴォォン、ゴォォン、ゴォォン。

低い鐘の音が鳴り響き、HRが終了した瞬間。久我と流藤は廊下へ逃走した。

だが、無理だよ、君らの瞬発力と朝日奈ではスペックの差が……!!



廊下を出た瞬間に二人とも同時にハイキックで吹っ飛ばされてしまった。

その二人が向かう先には、白いスーツ姿の赤髪の男性がーー


「あっ、危ない!!」


ーー男性は二人の身体を意図も簡単にキャッチして、朝日奈の方へニッコリと微笑む。

赤い髪をオールバックにして、鋭い目つきをしている男性は何処か朝日奈に似ていた。



「……全然、日は経ってないが学校には慣れたか?燈火?」


男性は朝日奈を知っているように近づくと、ニッコリと微笑んで、問いかけた。



「えっ……な、なんであんたが!!」


「あんたとは酷いぞー。

昔はあんなに可愛かったのに……パパ!って慕っててくれただろう?何でこんなに……」


「何よ……!」


「かわぁいい娘になっちゃうんだぁぁ!」


「寄るな!!くっつくなぁぁ!」


アレは朝日奈の父親か。

性格全然似てないな……俺の知ってるクソエロ野郎とは似てる。

容姿は火炎に似てるな、分家と本家だから実際のところ遺伝子は引き継いだりするのかな。



「ところでこの子達は?

燈火、蹴り飛ばしてたみたいだけど!!」


「あー、それクラスメイト。

適当にどっか投げといてー」


「おっけー」


朝日奈の父親は適当な位置に久我と流藤を投げ捨て、教室に入った。


えええええ!?

投げ捨てちゃって良いの!?

まあ良いか……あいつら自業自得だし。



ーー教室内には早くもクラスメイト達の両親が教室の後ろの方で生徒達を見ている。

中には知り合い同士で固まって話をしている親御さんも居た。



「あっ、もしかしてアレって……!

朝日奈焔(あさひなほむら)!?」

「マジかよ!朝日奈家の当主だぞ!?」

「娘の授業参観に来るなんて、良い父親なのね!」


朝日奈の父親を見て、何やら野次が飛んでいる。まあ、朝日奈家の現当主ともなれば有名で強い人物だということは歴然。

ざわつく気持ちもわかる。



ーー俺は次の瞬間、教室に入って来る人物を殴り飛ばしたくなった。

あんた、自分の立場分かってんの!?


黒いスーツ姿で登場したのは、組織のトップにしてこの世界の魔法師であれば知らない人はいないと言われるほどの有名な実力者ーー新島鎮雄だった。

何があった……来るならあんたじゃなくて、新木場さんだろォォォ!!


グラサンかけてるとは言えど、自分の正体バレたら終わりなんだぞ!?

俺を発見した新島は、ニッコリと笑顔でグッドサインを出した。


いやいやいやいや、帰れ!!

やっぱりあのエロ親父……!!ここの女子生徒見に来るのが目的だったなー?!


俺の視界には、新島が鼻の下を伸ばしながら女子生徒をグラサン越しに見つめている光景だった。その瞳の目線が朝日奈に止まった瞬間ーー事件は起きた。


「オイ、そこのお前!

俺の大切な愛娘をクソな瞳で見たな?

……表出ろ!!」


焔が新島に喧嘩を売り始めてしまった。

不味い……こんなところで朝日奈家の当主と世界有数の魔法師が戦闘なんてしたら、一瞬でこの辺の地域が滅ぶわ!!

隊長、頼むから抑えて、短気なの知ってるけど抑えてくれ!



「ん……?

なんか言ったか?ちょっと寝てたんだが、起こしてくれたのか?」



「マジか……俺の気のせいだったか。

すまん、だがもう少しで授業始まるから起きておいたほうがいいぞ!」


グラサンを応用した巧妙なテクニックに、バレない演技派の出す欠伸による絶妙なコンボで朝日奈の父親は勘違いだと勘違いしたようだ。でも来て早々寝ることに対して何もツッコミを入れないなんて!

天然かバカなのか?

まあ、ことはいい感じに進んでよかった。



「はーい、親御さんがいる中なんだから、集中しなさーい。

今日は、世界で有数に語り継がれている伝説の魔法師の話をするわよー!

今日紹介する魔法師は三人death☆」


え?今日の授業の題材にするべき人、後ろにいるんですけど!?



「はーい、先ずはこの人ね!

炎魔法の提唱者の血筋を引いた朝日奈家の当主で、そこの後ろに立っている朝日奈焔さん。

彼は、娘さんの燈火さんと同じく、魔力のコントロールと技法が多く見られるキレた頭の持ち主で有名な魔法師death☆

炎で物を具現化させる具現魔法の達人でもあり、一人で大型アビスを倒したという逸話まで残っているほど、天才級の魔法師よ。


夕霧が説明をし終わった後に、生き生きとした姿で一礼した焔に燈火が向ける視線は、相当に残酷なものだったように見えた。


伝説級の魔法師ってなると、新島鎮雄も当然出てくるだろう。

何であんたなんだよ……新木場さんがくれば良かったじゃないか!あの人なら顔バレしても影に生きてきた人間だから問題ないだろ!でもあんたはこの間も大型アビスを駆逐するとか何とかでニュースに載ってたじゃないか!



「お次は、

女性で魔法師を志すものであれば一度は憧れたことがあるんじゃないかしら?

私も彼女のことは忘れられない。あの歌声は世界を調和で満たしてくれるような存在だった……!

戦場の歌姫(アーサー)》の名を持つ、冴島美夏という魔法師の名前を知っているでしょう?」


姉の名前が出た時に殆どの人の視線が俺へ向いたが《戦場の歌姫》の家族構成等の個人情報を知っているのは組織内の人間だけだ。

嫌な噂でも立たないと良いが、ここは勘付かれるわけにはいかない。


生憎、夕霧は俺の姉を見たことがあるのか。今は亡き伝説の魔法師にして、世界に富と調和を与えた救いの歌姫。

俺の姉の名前はこうやって語り継がれていくんだな。



「お次は!!

破壊者(シヴァ)》の異名を持つ、歴代最強の伝説の魔法師、新島鎮雄!

彼の姿を見たことがある人はそうそう居ないんだけど、まさか知らない人はいないわよね?」



流石にいないだろ。

歴代最強の魔法師で、大型アビスを五体一度に殺すような奴だぞ。

なんか笑顔でこっち見つめてるし、あのおっさん本当に何しに来たんだ?


特に用がないから速攻で帰ってほしいよ。こんなところで身バレしたらマジでヤバイぞ?



「はい、そんなところかしらね!

じゃあ、今日の授業はここまで!」


全然時間経ってないし、鐘も鳴ってないんだけど!?

まあいいや……!

これでバレずに済むってもんだ!



「鐘が鳴るまでの時間、親御さんとお話ししてていいdeathよ!

教室の外へ出るもよし!では、解散!」



俺が新島の元へ向かうと、

彼の表情は深刻になった。どうしたのだろう?わからない……。

取り敢えず、どこか静かな場所にでも。


俺は新島を先導して、屋上へと向かった。


そこで紡がれる彼の深刻な表情に隠されたメッセージとは?

俺は思わず、息を飲んだのだった。







第二十話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


早くも二十話到達しましたね!

しかも、後少しで十万文字達成です!

しかもしかも!!現在198ptなので後少しで第一目標の200pt達成になります!

ありがとうございます!

今回のお話は普段に比べればだいぶ短かったかもしれませんが、次回は長めに頑張ります!


次回は……深刻そうな新島から紡がれる言葉とは?



拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ