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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編《所属狩り編》
19/220

第十九話 その後の日常

※2017/07/12

誤字、脱字、文法等の修正をしました。

ーーその後のお話。

仁科黒を倒し、《平和派(ジャスティス)》に入れることを勝手に約束した俺は、後日。

風見に会って、昨日のことを問いかけた。



「ああ、勿論いいよ。

去年の件、私は居なかったしな」


「え?それってどういう?」


「私は言ったら編入生なんだよ。

振り分け試験も受けなかったし、身体測定も受けてない。」


「じゃあ、どうして《平和派》に?」


彼女はしたり顔で呟いた。


「適当な通りすがりの人の弱み握ったら入れたんだー!」


は?

何を軽快な感じで、怖いこと言っちゃってんのこの人!?

そんなこと言ったら異名通り、悪魔じゃん!



「え?黙り込んじゃってどうした?

ああ、私のキス待ち?」


「ちょっとお願いだから一回黙ってください……!」


なんかいい先輩感出しておいて、この人実はかなりヤバイ人なんじゃ……?

※第十話、第十七話参照。



「じゃあ、今日の授業後に拠点へ行かれると思うんで、よろしくお願いします」


「おっけー!」


風見と別れ、俺は三時限目の授業の鐘が鳴る前に教室へ戻った。

今日は、普通の授業で五時限目までしっかりとある。

五時限目が体育の授業なので、少しだけ楽しみではあるが、何をするんだろう。


席に着くと、後ろで朝日奈が机に突っ伏しながら居眠りをしていた。

後少しで授業だというのに、なんて呑気なんだ。まあ、寝かせておこう。



「どこ行ってたんだ?冴島〜」


流藤が急いで席に座った俺に声をかけてきた。後二分ほどで授業が始まるというのに、席につかなくて大丈夫なのか?



「いや、ちょっと派閥関連でね」


「成る程なー、てか冴島〜!

聞きたいことがあるん……」


ーーゴォォン、ゴォォン、ゴォォン。


鐘が鳴ってしまった、こいつが言いたいことは何となく表情だけで読み取れる。

昨日の戦闘演習のことだろう……!

「また後でグループするわ!」と言い残し、彼は去って行った。


いや、しなくていいよ!!

てか、何でグループ!?個人でいいだろ!



授業が始まると、流藤の盛大なーー



「きりっちゅ!!!

あ、悪い悪い。これは冴島の……!」


という、酷い弄りが繰り広げられた。

此れにはクラスも大笑い、さっきまで寝ていたはずの朝日奈も後ろで爆笑している。


彼は何事もなかったかのように澄ました顔で。



「起立!」



「礼!」



「着席!」



ーーと、俺の方を見ながらニヤけて席に座った。

あいつ後で覚えてろよ!?


ーーズボンのポケットにしまってある端末に振動が届いた。

音は鳴らないようにしてあるので、教室中に聞こえるようなことはない。

案の定、グループではなく、個人だった。

だよな、流石にクラスメイト全員の前で聞かないよなー、良かった!


机の中に端末を置いて確認すると。



流藤 賢祐

『冴島、さっきはごめんな。

思いの外、ウケたわ!』


夜十

『ウケたわ、じゃねえよ!

つーか、何?用件言えよ」


流藤 賢祐

『ああ、悪い。

単刀直入に聞くけどさ!

お前、朝日奈に惚れてるの?』


はぁぁぁぁぁあ!?


夜十

『い、いやあ、無いよ。

朝日奈は友達だよ!?』


流藤 賢祐

『へー、じゃあ何で今そんなに顔赤いの?」



ーーすると、流藤は教員へ手を上げながら立ち上がった。



「先生!冴島の顔が赤いんです!

熱がありそうなんで、後ろの席の人に測ってもらったらどうでしょうか!?」


は?

後ろの席からも同じような言葉が聞こえた。


「あら、そうなの?

じゃあ、朝日奈さん。測ってあげなさい!

手でもいいけど、定番なのはおでこよねぇ?」


その教員は国語の授業の教員で、年齢的には60歳頃のお婆さんだった。

てか、定番って何だよ!婆さん、いい歳して恋愛漫画の読みすぎじゃないですか!?



「冴島、どうした?(笑)

何でそんなに俺を睨みつけてくるんだ?」


夜十

『後でぶっ殺す』


と、送ると後ろを振り向いた。

クラスの中の流れ的にやらなければならないような気がする。


ーー振り向いた瞬間だった。

彼女の額が俺の額と接触したのは。


僅かだが、彼女は汗をかいていた。

普通に授業を受けていたのに、突然変なことを言われれば、誰だって冷や汗くらいかく。当たり前だ。


すると、彼女は顔を赤らめながら、

笑顔で俺に怖いことを言い放ってきた。


「その端末で流藤ってヤツに言っておきなさい。後であんたの顔面、靴跡だらけにしてあげるってね。

その後にあんたも殺す……!」


な、なんでぇ!?

俺被害者じゃね!?


「……熱なんかなさそうですよ」


彼女はそれだけ言って、机の上に突っ伏しながら眠ってしまった。

教員もやりすぎたー、と思っているのか、愛想笑いで場を誤魔化す。



くーがん

『お前ら出来てるのか!?』


夜十

『休み時間、朝日奈に聞いてみると良いよ』


くーがん

『うん、分かった!』



久我と流藤よ。

生贄になれ……俺は逃げるぞ!

俺の後ろの席の女の子、かなり怒ってっから!



「何なのよもう……」


プスーッと空気が抜けたボールのように顔をひょっこりと出した彼女の顔は、まだ赤い。その姿を見ている人物は誰もいなかった。



ーー授業後。

久我が速攻で寝ている朝日奈に声をかけた。流石、お子様。相手のことなど考えずに直球で言葉を投げるか。



「ねえ、朝日奈!!

夜十と付き合ってんのー!?」


「…………」


彼女は黙って立ち上がると、くるりと回転し、円周力を武器に久我の顔面に回し蹴りをして吹っ飛ばした。

黒板の方へ向かっていた彼は、黒板の壁にぶつかった勢いで落ちてきた黒板消しの餌食となってしまった。

赤い顔の上から白いチョークの粉か……。何とも残念だな、ドントマインド!



「久我、そういうのは直球で聞いちゃダメなんだぞ?

あの手のカップルは二人ともピュアだから、照れ隠しに暴力を……ッぐあっ!!」


ザマァ……あっ、失礼失礼。

彼は彼女の右腕スイングを腹部に打たれ、上を向いた瞬間の踵落として気を失った。



「……ふんっ!後はあんたね」


え、ちょ、朝日奈さん違うじゃん!

俺は被害者……!!


何でこうなんだよぉぉおおおおお!!



「ちょっ!待ちなさいよ、逃がさないんだからぁぁぁああああ!!」


俺の叫びが届くことはなく、廊下へ全力ダッシュで逃げ去った。後ろからついてくる彼女をどうにか振り切ろうと。




ーー放課後。

ただでさえ、両腕両足が包帯でぐるぐる巻きになっているのにも関わらず、俺の鼻は赤く腫れ上がっている。

というのも、校内が広すぎて把握しなかった結果に行き止まりに到達した俺は絶望し、彼女の渾身の拳を鼻で受け止めたのだった。


無理だよ、逃げる側は大変!

追う側はいいよなぁ、目の前のやつについていけば良いんだもん!

そもそもの原因を考えても俺は悪くないんだがなあ……。


まあ、何はともあれ、

今日は黒が《平和派》に来る日だ。


俺は旧校舎へ向かった。



ーー旧校舎の開発部屋。

玄関を左に曲がってまっすぐ進んだ先の扉を勢いよく開くと、轟音を除いた全員のメンバーが揃っていた。勿論、仁科黒も居る。



「おー、夜十君!遅かったね、何かあったのかい?」


風見は俺が遅く来たことを気にかけ、声をかけてくれた。

理由は風見さんの後ろに隠れている薔薇色のヤツのせいですよ……!!

こう言えば、風見さんなら読んでくれるはずだ。だが、それは浅はかな考え方であった。



「えー、私の後ろに隠れている薔薇色のヤツって誰ー?」


え、ちょ!?

この先輩はぁぁぁあああ!!


「……一撃じゃ殴り足りなかったかしら?

どうせなら焼かれてみる?」


「朝日奈待ってくれ、誤解だぁっ!

今日の件も全部!!」


すると、風見は俺の言った言葉に強く反応した。


「今日の件?何かあったのかい?

私の情報網によれば、1-Aで何か面白いことがあったと聞いたのだが?」


なんて情報網なんだ!!

あの件はダメだ教えられない……そもそも朝日奈が阻止するだろ!



「へぇー?朝日奈ちゃんが何かしたの?」


あっ!俺は、風見の魔法を思い出した。

視界に捉えた対象を丸裸にする効果を持つ、弱みを握りやすい最低の能力だった。



「夜十君、全部読めるからね!?

私の能力のこと、あんまバカにしないで!」


あ、うん。

てか、風見先輩を止めてくれる沖先輩もなんか壁に立っててウトウトしてるし、

黒さんはなんか鳴神さんのされるがままになってるし、どういう状態!?


ちょっと風見先輩、無視しよ。



「ねぇぇぇ、夜十君!!

先輩、無視されたら存在感なくなる!」


よし、無視だ。

まず最初に、沖先輩のところへ行こう。


壁に寄りかかっている沖の肩をポンポンと叩くと、目を覚まして、笑顔をこちらへ向けてきた。



「ああ、夜十君か。

俺が倒れた後に身体張ってくれてありがとう!心から感謝しているよ、今なら風見を止められるけど、どうする?」


後ろから「無視しないで」を連発している風見を止めると言ってくれている沖。

俺がそれを断る理由はなかった。お願いすると、快く引き受けてくれた沖は後ろを付き纏っていた風見の首元の服を掴み、開発室を出て行った。

出て行きざまに風見はーー


「私ゃ、猫か!!!

沖、わかったら下ろしてえええ!!」



ーー数分後。

今度は手を繋いで開発室に戻ってきた沖と風見。風見は心なしか満面の笑みだった。


「あ、お帰りなさい。」


「私は頼られてる。


えーとっ!これから仁科黒さんの歓迎会を開始するよッッ!」


ん?今何か最初にボソッとこぼさなかったか?気のせいだな、うん。



「私が《平和派》を統率している風見蓮だよ、よろしくね」


「あんた……俺らの学年で一番性格悪いって言われてる人だよな」



ええっ!?

風見先輩、まあ風見先輩ならあり得る!

強ち、クラスメイトの好きな人とか心の中で読んでそれを弱味として色んなことさせてたんだろうな。



「夜十君!私はそんなことしない!

た、確かに……好きな人とかは教えて貰ってたけどさ」


それ、教えて貰ってたんじゃなくて、ほぼ強制の盗み聞きみたいなもんだから!

何を公正な状態で聞いたみたいな言い訳してんだこの人!



「そんなに弄ると怒るよ!?」


逆ギレ!?

ちょいちょい、落ち着きましょうよ!



「落ち着いてられるか!

あ、沖、分かった!分かったから!!」


沖先輩、何を考えたんだ?

風見先輩が冷や汗をかきながら必死に抵抗してる様が見えるけど……!


「次は僕か。

僕は沖遼介、よろしくね」


「ああ、銀にボコられた人か」


ちょ、黒さん容赦ないな。

え、仏が鬼に……え、怖い。



「沖、落ち着こ!!

ね?ほら、落ち着こう!」


「うん、大丈夫だよ。

僕は怒ってないからね」


いや、絶対怒ってるよ。

弱いとかそういうワードが、鬼にさせる禁句ワードってのは分かってますよ先輩!



「ちょっと、外の空気吸ってくるね」


すると、彼はドアノブを強く握りしめ、外へ出て行った。

出て行くことに対して仕方ないと思ったのだが、我々が目にしたモノ、

何よりもそのドアノブの形がーー


ぐしゃりと潰れていた、

ええ、怖……!?


また、新たな沖の怖さを見たのだった。



十九話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580

変更で《無所属編》の中身の訂正を行う可能性がございます。

また随時報告はします!

次回は……暫く日常ですが、授業参観?


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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