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追憶のアビス  作者: ezelu
第三章 魔術師戦争編《始動編》
168/220

第百六十七話 孤独の光帝 ①

不定期更新すみません!

それでも読んでくれている方々に感謝してます!イラスト、Twitterに載せてますんで宜しければ見てください(*´ω`*)


 「俺らは市街地の小型討伐へ向かうことになったァ!輝夜!勿論、お前も来いよォ! 」

と、男から電話があったのは夜中の二時を回っていた頃だった。別に寝ていた訳ではないが、昨日の一件を考慮すれば全員参加の任務なんてやろうと思わないはずだ。

どうやら、全員頭がお陀仏らしい。どうやったって、この隊でやっていくのは無理だ。輝夜は呆れたように思い捨てた。



集合時間の二時間前に集合場所へ到着していた二人。一人は黒髪を特徴的にオールバックにした強面の男、もう一人は気弱そうな濃い緑色の髪の青年だ。彼らは黒の無地に蛍光色の緑色がライン状に入った上下同じ刺繍の服を着ている。

 「ねえ、東條(とうじょう)君。輝夜君来るかな?来なかったら嫌だよ。 」

「フッ、俺はお前ほどのお人好しを他に知らねェよォ!フツーは嫌ってもいいレベルのことをされてんだァぜ? 」

「そりゃあ、そうかもしれないけど……。僕が役立たずなのは僕でも分かってることだから。 」

青年ーー永浜和幸(えいはまかずゆき)は、同じ隊の輝夜と二人で小型アビスの討伐任務を任され、二人の間でトラブルが発生してしまった人物である。

普段から不器用で気弱、隊の新人に最初必ず舐められるが、隊の中では隊長の次に古株。


「役立たずねェ……?お前が居なきゃ、この隊は成り立たねェだろォ?(かがみ)さんが一番言ってるだろがァ! 」

「確かにそうだけど……。 」

二人が談笑していると、隊のメンバーが続々と集まってきた。

鏡隊、当時のATSでは三本の指に入るのは必ずと言って良いほどの強い隊だった。

隊員達は目線(アイコンタクト)だけで連携を取り、獲物を確実に屠る力を持つ。新島や神城からも絶大な信頼を得ていた。


 「……ったく、新入りが来ねェじゃねェかァ!!鏡さんだって、もう来てんのによォ! 」

「まだ集合時間まで十五分はあるからね。私達が早すぎるだけじゃない? 」

「ーーだとしてもだァ!新入りは先輩の前に現場入りするのが当たり前だろォ!? 」

紫髪のツインテールの少女は呆れたようにため息を吐いた。

「そういう先輩優先の世界じゃないんだからいいでしょーが! 」

「はぁぁ!?隊長が到着前に普通は現場来てるもんだろうがァ!! 」

そこへ黒髪短髪の前髪が目に掛かっている眼鏡をかけた青年が割って入る。

「ーー二人とも、任務前だよ。落ち着いてくれないかな? 」

「か、か、鏡さんッ!すいやせん!! 」

「別に構わないよ。何故君達二人は連携こそ素晴らしいのに普段は犬と猿なんだい。 」

「連携は全部……永浜のお陰だもん! 」

少女はぷくーっと頬を膨らませた。

「ははは、それは間違いないね。でも君達は鍛錬の時も一緒だろう? 」

「何で知って……!? 」

「まあそれは秘密だけどね。それと、もう新入りの輝夜君はきてるよ。君達のやり取りに呆れた顔で、ほら彼処。 」

輝夜は二人から数十メートル離れた位置で空を眺め、黄昏ているようだった。近くにいる永浜には目もくれず、誰に対しても心を開いていないように見える。


 「さあ、そろそろ行くよ。東條君、目的地までの案内をお願い出来るかな? 」

鏡は優しく微笑んで、東條へ願いを請う。

「《漂い、静寂を守りせしは導となりて。今ここに道を開かん!風来坊の道標》! 」

東條が詠唱を終えると、空気中に漂う風力が集合し、一枚の地図を具現化した。

それは、この先数キロメートルの範囲内で動く生命体、地形、建物全てを見定めることの出来る地図だ。

「小型アビスの数は五体!それも猛獣型で空中線がない分、今回は楽に倒せる。まずは二手に分かれてーー」

東條はいつもの通りに地図を見ながら作戦を立てるが、輝夜はそれを遮るように口を開いた。

「ーー鷹が五体の小型で二手やと?大型が居るわけでも有るまいし、少し慎重すぎへんか? 」

「テメェェェ!俺が今話してんだろォがァ! 」

東條は拳を握りしめ、輝夜に言葉を詰める。

「東條君、落ち着いて。輝夜君は東條君の作戦よりも良い案があるということかな? 」

「作戦?そんなもんあらへんわ!はぁ……やってられへん!アンタら、この仕事向いてへんよ。ほなな! 」

輝夜は自身を光へ具現化すると、凄まじい速度で何処かへ行ってしまった。

「オイ!どこへ行きやがる!戻ってこいやァ! 」

東條の声は虚しくも輝夜には届かない。

光の速度に追いつける者も居らず、追いかけるにも行き先が分からないからか、誰も追えなかった。


 「……俺が誰よりも先に敵を皆殺しにしてしまえば、アイツらも作戦が無意味ってことくらい分かるはずや! 」

小型に作戦?慎重すぎるのは嫌いや!今の輝夜を一単語で纏めるならばそれは間違いなく、「孤独」だろう。誰を信じることも出来なければ、誰かに信じてもらえるような行動もしていない。

輝夜は一足先に現場へと到着すると、猛獣型の小型アビス五体のうちの一体を発見し、気づかれていないことを確認。


襲いかかるべくの手筈を整え、地面を蹴ったのだった。





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