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追憶のアビス  作者: ezelu
第二章 組織編《成長編》
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第百五十九話 突然の朗報

「……625.626.627.628!! 」

雲一つない青空の下、夜十は日課である筋トレをしている。腕立て、腹筋、背筋千回。走り込みを100km。大体、朝の三時からスタートし、終わるのは六時頃だ。

ハードなトレーニングだとは思うが、これも全てrevoluciónの件が原因。

最後、自分に出来たことは何も無かった。


あの件の後、revoluciónはfamiliar(ファミリア)という組織に改名をして、魔術師との戦争を援護してくれることを約束してくれた。

familiarの最高管理者はリアンとなり、ルーニーから一転した組織の変化でも誰一人として辞めることはなかった。


筋トレを続けていると、夜十の端末がポケットの中で振動した。端末を取り出し、電話に出る。

「こんなに朝早くからどうしたよ、ミクル。 」

「今日の夜、二人で話せない? 」

その声音は怒りを帯びているようだった。

「別にいいよ!場所はどうする? 」

「それじゃ、夜の九時にATSの演習場でどうかな! 」

「了解ー!それじゃ、その時間にまたな! 」

「うん、またね。 」

そう言ってミクルは去って行った。

二人で話したいこと、疑問よりも確信に変わるような議題が浮かぶ。きっと、familiarのことだろう。ルーニー・パズが死んだとしても、ミクルにとっての仇であるギルやジャックは生きている。同盟を組むのも苛立ちを覚えるはずだ。

どうすれば最善なのか、一日を使ってゆっくりと考えてみることにした。





 「おはよう、クソ夜十! 」

朝の筋トレを終え、寮室から職員室までの廊下で虎徹に会った。虎徹は夜十を目視するなり、右手を上げて笑いながら挨拶をする。

最近、familiarとの同盟関連で新島からATS本部に呼ばれていた夜十が虎徹と会うのは実質、久しぶりだった。

「うん、おはよう。虎徹。俺が居ない間、皆はしっかり稽古してた? 」

「当たり前だろ!普段の基礎稽古は勿論、俺は沖先生とタイマン張ったくらいだからな! 」

虎徹は自慢げに口元を緩める。

「沖先輩と!?結果は……? 」

「残念ながら負けちまった!急に刀が変わって、それからは目で追えなくてな。 」

時政に持ち変えさせる事までは出来たのかと、夜十は感心した。沖が教員になってからというもの、彼に時政を抜かせたのは生徒で初だろう。沖には毎日何十人の決闘者が現れるが大凡(おおよそ)、素手か木刀のどちらかであしらわれる程度だった。

「何で目で追えなかったとか分かる? 」

「空間切除か、空間切断かは分からねえが、空間を斬って中を移動しているようだった。目で追おうと必死になればなる程、追うのが困難になったわ……」

「そうだよ、沖先輩の刀、沖流-時政-は空間そのものを切り取ることができる。実際、時間まで斬れるんだけどね。 」

「気配察知能力を高めるべきだな……。夜十、今日霜月さん空いてっかな? 」

「帳なら今日は遠征任務だよ。輝夜隊の一人がこの間の件で負傷したから、穴埋めとして助っ人任務。今頃、扱かれてるんじゃないかなー! 」

「前線での任務か。俺も早く前線に出れるようになりてーよ! 」

少なくとも後半年経てば、日本の命運が掛かっている前線に駆り出されることになるのだ。それに対して、何の抵抗感も出さず、向上心だけが高まっていく虎徹に夜十は多大なる関心を抱く。

「よっしゃ!じゃあ、今日の授業で俺が気配察知の特訓を組んでやるよ!新木場さん考案の方法だから、死ぬ程辛いけどな? 」

「マジか!それはお願いするわ!今日は熱矢、面会の日だから居ねえしな! 」

「おう!任せろ! 」

一ヶ月に三回か、四回のペースで熱矢は燈火と火炎とで娯楽を嗜んでいる。

最近では、料理対決をしたりと中々楽しくやっているようだ。偶に熱矢と燈火で演習式の稽古試合をすることもあるらしく、燈火の口から熱矢の最新情報は聞ける。

「熱矢はもう一種類の炎を生み出したんだろ? 」

「よく知ってんな!そうだ、アイツは死に物狂いの特訓で蒼い炎を勝ち取ったんだよ。 」

虎徹はまるで自分のことのように自慢げに話す。その顔には笑顔が目立っていた。

夜十も虎徹の表情を嬉しく思った。



ーーその頃、熱矢は。

新島に夜十が自らお願いし、受理されて建築された特別演習場に来ていた。学園の生徒達がより良い環境で着実に強くなれる方法をと建築されたこの施設は学園の《祈願派(プレア)》の教会のある森林の敷地にある。普通に入れば形状は真っ白い正方形の広大な部屋だが、環境を"設定"することで白い部屋が自分の設定した場所の環境に変化するという不思議な部屋だ。


 「今日は俺だけの貸切だぁぁぁぁああ!! 」

「何言っていますの熱矢、それを言うのなら俺だけじゃなくて俺達、でしょう? 」

興奮状態で叫んでいる熱矢に呆れた表情で肩を叩くのは明刀六花(めいとうりっか)

今日は鮮やかで綺麗な赤色のストレートヘアーをヘアゴムで纏め、ポニーテールにしている。とても動きやすそうな髪型とジャージで如何にもやる気のある姿だ。

「って、何でお前まで居るんだよ!! 」

「それは!後半年後の戦争に向けてのパワーアップの為ですわ〜!後で倉橋さんと燈火先生も合流する予定ですのよ! 」

「姉貴も!? 」

熱矢は裏返ったような高い声を上げる。

「ええ、熱矢に個人戦を挑むと仰ってましたけど、知らなかったのですか? 」

「個人戦!?……俺と姉貴が個人戦だなんて、何年ぶりだよ。 」

熱矢は、突然知らされた姉との一対一の勝負に想いを馳せ、小さいガッツポーズをしたのだった。


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