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追憶のアビス  作者: ezelu
第2章 組織編《revolución編》
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第百五十一話 凍槍龍(トリシューラ)

居住区。一般的に魔力を持っているが戦闘向きではない者や、平和に暮らしたいと願っている者達の住まう区。

日本の人間の半分以上は居住区に住んでいると言われ、その周辺は一定数のプロ魔法師が交代で見張って守りを固めている。


「通達します、居住区のお住いの方はシェルターに避難してください。繰り返します、大型のアビスを数百キロメートル圏内に感知、直ぐに避難してください。 」

街中に流れるアナウンスに住民は急いで街の至る所に設置されているシェルターへの入り口へ足を急ぐ。

「急げー!シェルターはこっちだ! 」

「手が空いている大人は子供を抱えて、シェルターに連れ込んでくれ! 」

居住区の家の中には必ずシェルターへ逃げ込むための入り口が設置されている為、外出途中の者は皆が一丸となってシェルターへ逃げ込む。魔法師はその近辺の護衛をしなければならない。



「今回の大型アビスは何ですか、光明様! 」

ビルの屋上で一点の先を見つめ続ける光明へ、護衛の魔法師が問いかける。

「今回は厄介なのが出てきましたね……。凍槍龍(トリシューラ)、今日は寒くなりそうです。 」

護衛の魔法師は光明が見続ける先の方角から凍りつくような寒風を感じた。

「何や何や、この寒さは!光明様、今回の敵は強そうやな! 」

「輝夜さん、今日も大変お元気ですね。今回は凍槍龍(トリシューラ)、ちょっとばかり火力が必要になりますね。 」

困った表情の光明に、輝夜は思いついたように言った。

「それやったら、今日は前線に冴島隊が来てるで!使ってあげたらええんちゃう? 」

「冴島隊ですか、良いですね。ATSの新隊の実力、見せてもらいましょうか。 」

光明は人差し指で何もない場所に四角形を描く。魔力の篭った指先からは、炎の魔力が四角形のマスが均等に入った基盤を生成した。


「今の戦況は……成る程。冴島隊の位置は大変良いですね、それではっ!! 」

基盤には凍槍龍の位置と護衛の兵士及び、自分の魔力が届く範囲内の生命体が立体で表される。冴島隊の位置に指を乗せると、光明は口を開いた。

「冴島隊、聞こえますか? 」

「はい、聞こえます。 」

今日は援護任務で前線近くの護衛をしていた夜十達の脳内に直接、光明の声が届く。

前線での指示は光明が自分の魔法を通じて、命令を下し、対策を取るようになっている。これに関しては前線組の輝夜から事前に聞いていたので、特に驚くことはなかった。


「南の方向へ百四十キロ地点に大型アビスが出現。 冴島隊で対処願えますか?勿論、援護隊として輝夜隊をつけます。 」

「了解しました。因みに大型アビスの名前、教えてもらえますか? 」

夜十は大型アビスの図鑑を頭の中に記憶している為、名前を聞けば何らかの対策は先に思いつくかもしれない。

凍槍龍(トリシューラ)です。今回は少しばかり厄介ですが、皆さんを期待しています。 」

「凍槍龍……攻撃特化の災害龍ですか。分かりました、任せてください! 」

そこで光明からの通信は切れた。

護衛任務として来たのに、まさかそんな大役を任されようとは思わなかった。


「燈火、帳、黒、鳴神先輩、初めての大型アビス討伐だ。目標は凍槍龍、大丈夫。皆となら、やれるよ。行こう!! 」

夜十は空間魔法を展開しながら、四人の仲間へ言った。

「ああ、任せろ!俺がぶった斬る! 」

「黒〜、突っ走っちゃダメだよ〜? 」

「分かってるっつの!てか、燈火、ビビってんのか? 」

鳴神に馬鹿にされ、面倒臭そうに返した黒は遠くを見つめる燈火へ問いかける。

「ビビってないですよ!ただ、魔法師になったなーって実感が湧いてただけです! 」

「ははは、変なこと考えるんだなお前。 」

「黒先輩が考えなさすぎなんですよ! 」

パンッと手を叩く音が聞こえると、三人は黙った。


「無駄口は良いかな?それじゃ、帳。 」

「はいッス。輝夜さんの魔力で飛ぶなら、目標と目と鼻の先ッスよ。」

「分かった、構えて行こう。 」

その場から全員の姿が消え、亜光速で移動。

一瞬で輝夜の前に冴島隊が現れた。


「ミクルの魔法使えるんやったな。ホンマ、便利魔法やでそれ! 」

「輝夜さん、速いから問題ないじゃないですか。 」

「まあ、それはそうやけど。全員一気に飛べるのは魅力的やろ! 」

輝夜は意気揚々と笑みを浮かべた。

大型アビスが目前というのにも関わらず、現役の魔法師は余裕がある。



季節は秋に近づいて来たとはいえ、吹雪が吹き荒れ、微かだが雪が積もり始める程の異常気象。

それも、自然の摂理で起きたわけではない。

アビスという存在が任意的に災害を引き起こしているのだ。

それが一般的に災害龍と呼ばれるアビスの種別名、魔力や存在のみで周囲に甚大な影響を与える最恐最悪のアビスだ。


「どういう作戦でいくんや? 」

「凍槍龍は鋼のような鉄壁の鱗の上に、自らの魔力で生成した防御性に優れた氷を纏っているんです。 」

凍槍龍は、攻撃特化の災害龍とされているが、防御力も高い。特に氷を纏っている時は、氷を剥がし、鉄壁を砕かねばならない。

それでいて火力は高く、氷の魔力で生み出される氷槍は限度を知らず、どこまでも追尾してくる。

「そんなん、どないしてダメージを与えるん!? 」

「ただ、弱点があるんです。大きな弱点が……それが熱を持つ魔法です。 」

「熱か……じゃあ、作戦はーー」

「ーー輝夜さんと燈火、鳴神先輩に氷と鉄壁の破壊、黒と俺と輝夜隊の隊員で鉄壁に亀裂が入ったところを斬る。帳は常に戦況を把握し、指示を出すこと。この作戦でいきましょう。 」

「うっし!乗ったるわ! 」

輝夜は、にししと笑った。


「この光帝の力、いっちょ見せたるわ! 」

輝夜の持つ魔力が高まり、バチバチと黄色く白い電気が彼の身体に走った。

他の隊員も身構える。これから来る最悪の大型アビス、凍槍龍を倒すために。


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