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追憶のアビス  作者: ezelu
第1章 学園編《所属狩り編》
15/220

第十五話 戦闘演習

※2017/07/12

文法や誤字、脱字を修正しました。

闇夜で光る眼光は鋭利に、床に転がる《戦闘派(クルーウ)》の少年達を切り裂いた。

彼らは、身体測定中に尿意を催し、トイレに行っていた少年達だ。


学年は二年。入学当初から《戦闘派》に入って、暴れてやりたいと願っていた。



「……始末完了。《戦闘派》は後60人前後だ。」


黒い狐のお面を付けた人物は、哀しげに彼らの遺体を見ることもなく、立ち去って行った。




「……よし!これで全ての測定は終わった!終わらなかったヤツはいるかー?」


アリーナ前でクラス毎に集合した俺達を、担任の彼女は問いかけた。

無論、ペナルティを受ける人はいなかった。

考えてもみれば、そんなに長い測定でも無かったし、普通に受けていても終わるようにはなっている気がする。


そして確信した。

ーー、一本取られたことに!!



「これから、戦闘演習があるから、先輩達にしっかり扱かれてきなさい!もし、勝てるようなら勝ってもいいdeath☆」


そこで解散となった。

後は、体育館前の掲示板に対戦相手の表示がされるらしい。

俺と朝日奈は、共に掲示板へ向かった。


するとーー

掲示板前には、黒い髪を尖らせた、仁科黒が立っているのに気がつく。



「お、黒先輩!こんにちはーっ!」


俺が声をかけると、黒は昨日のような殺気だったオーラを消して、笑顔で微笑んだ。



「……よう!対戦相手の確認か?」


「ハイ!俺の名前は……」



すると、瞬間。

彼の周辺の空気が尖った。


安寧だったはずの場所に、黒き刃が光を切り裂くような、そんな感覚に陥る。



「お前の相手は知らねーが、そこにいる朝日奈燈火さんは、俺の相手だぜ?」


狂気染みた声で、彼は闘争心を走らせる。

俺は、この時、気付けなかった。

彼がとんでもないことを企んでいることに。



「まあ、また二時間後な。夜十、頑張れよ」


俺は一礼し、掲示板に視線を移す。

俺の相手はーー沖遼介と書かれていた。


沖遼介!?

う……そだろ。

それに、第一試合!?もう今じゃん!

ぜ、絶対勝てない!!


二年生とは言えど、剣豪だぞ!?

結果に絶望していると、朝日奈は怒ったように俺へ声をかけた。



「あんた、彼奴がどんなやつか知ってる?」


「昨日、はじめましてだったよ。俺の同居人の友達みたいで、まあ、なんか怖い人だよね」


この段階で、定かになっていない情報を朝日奈に渡すのは間違っていると思った俺は、彼女に恐らく彼が《所属狩り》の人物であることを伝えなかった。



「ふうん。なんか、危ない人な感じはするわね。てか、あんた今からでしょ?早く行かないと間に合わないわよ!」


そうだった!

第一試合だった!


俺は朝日奈に別れを告げると、アリーナ脇の控え室へ向かった。



「……いきなり序盤から沖先輩か。まあ、コレはトーナメント戦とかではないけど、本気で!今の俺がどれだけ上に通用するかを見れるチャンスでもあるし!」


仏の顔と鬼の顔を併せ持つ、究極の剣豪と謳われているらしいが、その実力はどうなのか分からない。


それでも、やれることはやる!


俺は、愛剣の黒剣を背中に挿すと、

覚悟を決めて、控え室から出た。


前方の光が射し込む入り口に視線を移すと、もう、ステージで俺を待っている沖先輩の姿が見える。

彼は剣を二本持ち、いつもの仏のような笑顔で出迎えてくれた。

アナウンスの声と巨大な歓声も。


「振り分け試験では、多くの人を驚愕させた人物!一年生にして、その強さは無限大!冴島夜十の登場だぁああああ!!」



アナウンスの声を気にも止めずに、沖先輩は、笑顔で俺を見つめてきている。

それにしても俺の説明の仕方、少し大袈裟過ぎないか?前回は、一般人弄りしてきたくせに!

まあ、集団なんてそういう生き物さ。


俺は彼に笑顔で話しかけた。



「先輩、まさか……こんなに早く戦えるとは思ってもいませんでした。俺は全力で行かせてもらいます!!」


彼は俺の声に笑顔で応答してくれた。



「まぁ、お手並み拝見といこうか」



試合開始の合図がステージ上のモニターに表示されている。

まさかの、

残り5秒だ。


アナウンスも声を張り上げて、

スタートコールを紡ぐ。


4



3



2



1



START!」



俺は、朝日奈の時のように突っ込むことはしなかった。当然、それは相手の力量を測るためだ。

格上なのか、格下なのか。

それが分からなければ、迂闊に動くことはできない。


朝日奈と戦った時は、彼女から感じるものが特になかったので、力量を調べるために突っ込んだのだ。



「まぁ、一本で良いかな」


背中に挿した二本の剣のうち、一本を鞘から引き抜いた。

ーー刹那。

物凄い熱量を帯びた殺気と威圧感が俺を襲う。今の瞬間だけでも、分かってしまった。

相手がまさに格上だということを。



「行きますッッ!!」



俺は、両足のタイミングを同時に行った。

その技法を用いれば、50mを一秒で走り抜けることができるのだ。

ーーそして、彼の間合いに入った。

剣の位置と角度を憶す。

大丈夫、ここまでは順調。



「……なるほど、縮地法だね。古武術を体得してるなんて、これは驚いたよ。けれど!!」


俺は甘かった。

彼の間合いに詰め寄ったなんて、そんなこと……出来るはずがなかったからだ。



空気の振動で俺は、把握する。

沖先輩の間合いは、半径5mの円内だ。

その円内で繰り広げられているのは、空気が無数の刃となって、周りの空気を切り裂いている光景。

俺は驚愕し、思わず後ろへ後退した。

突っ込めば木っ端微塵だろう。それは読めていなくとも、理解が出来た。



「ふうん。気がついたんだね、中々鋭い!」


このままでは間合いに入り込むことさえ出来ないので、ダメージを与えられない。

俺は必死に考える。


今、彼に勝つ方法を……。


それでも、俺がやるべきことは一つだった。

最初から決まっていた。



「……はぁぁああああ!!」



堂々と彼の間合いに入り込み、剣を振ろうとする。

だがーー間合いに入り込んだ瞬間、彼の鋭い蹴りが俺の腹部へめり込み、腹の肉を抉りながら吹っ飛ばした。



「血迷った?気がついていたなら、やめときなよ。

今ので君を62回切ってしまった」



今だけで62回もか。でも!何も切られてはいない。

腹部を蹴られたことによるダメージ以外は、俺に届いてさえいない。

どういうことだ?ハッタリか?



理解に苦しむが、俺がすべき事は一つ。



「 はぁぁぁぁぁあああ!」




ーー憶するんだ。何度、蹴られて、斬られても!俺は……倒れないッッ!!

臆することに勝利への絶対条件が隠されているから!!


何回も繰り返した後、

俺の身体は、彼の鋭い蹴りによる打撲痕が絶えなくなった。

皮膚は青く、口から赤い血液が吐かれる。

身体が立っていることを限界と感じ、足の震えが止まらない。


もう、限界か。

でも、まだ、後一つ情報が足りてない。

後一つだけいいんだ……後一つ!!


大切な情報源になる、一つの条件が!!



「はぁぁあああああ!!」


なりふり構わず、斬りかかってくる俺に、彼は油断さえしない。

ここまで来ると、少しの油断があっても良いとは思うのだが、それが無いところを見ると、剣豪と謳われているだけの強者であることは一目瞭然だった。



また、鋭い蹴りが来る。

俺は彼の足を避けることに成功すると、黒剣を大きく振り上げた。よし、これなら!!


ーー、一閃。

俺の剣は、当然のように届かない。

朦朧としていく意識の中、彼の剣は右斜め上から左斜め下にかけて、俺を斬った。


飛び散る血液と、破れた服の断片が空中を一緒に舞いながら、地面に落ちていく俺を見送る。


そして、俺は意識を失ってーー




「あらら、二本使うまでもなかったね。

まあ、まだ青二さッ……!!」


ーーない!!

地面につく、僅かな瞬間で俺は足を踏ん張った。鈍い体勢から繰り出される拳は、然程の威力をなさないであろうことは、まず間違いがない。


だが、ここで距離を取ることは大切だ!!

俺は、彼の顔面へ拳をめり込ませると、力強く吹っ飛ばした。

絶望的な敗北状況でも、俺はまだ勝利を信じ続ける。

格上相手の攻撃は、一つ一つが勉強になるからだ。


そこから答えを導き出すことなんて無限にできる!




「……はあ、はあっ!!まだ、終わってないッ!!」



「ふっ、面白い!それでこそ、風見が見込んだ人だよ。」


殴り飛ばされ、地面に尻餅をつきながら衝撃で口の中を切ったのだろう。ツーっと口元から流れる血液を征服の袖で拭いながら笑みをこぼした。

地面に落ちた剣を拾い、持ち直すと、貫くような視線を俺へ向ける。


普通であれば、次の一手を読むことはできない。

だが、もう俺は彼の次の一手を確実に読むことが出来るようになった。



「把握完了……っと!」



行動パターンに異常はなし。

空気の振動も、音も、彼の剣の角度、軌道、力量も完璧だ。



憶せるモノは全て憶した。

俺は、真剣な表情で瞳を閉じる。


もう、これで俺が視えないモノはない。


彼の過去の行動からーー憶したことからーー全てを分析……完了。

"未来"に反映……完了。


追憶の未来視(リコレクション)》に異常なし。


だが、俺の勝利は予期できるはずも無く、ここで簡単に打ち砕かれた。

彼は次に俺へ走り込み、一太刀の大技を放ってくる。

俺が回避することは、どんなに速度の速い動きをしたとしても持ち合わせているパターンでは避けきることは出来ない。

それはつまり……負けが確定しているということ。



「君のお得意の未来は見えたかい?僕に斬られて終わる未来が……!!」


彼は、ハナから俺を見ずに走り始めた。

そして、通り過ぎる。



「《空気の刃(エアーキリング)》!僕の剣が届かないことはない!」



ーー瞬間。

俺に通算380回以上の斬撃が走った。

痛烈にも残酷で無限に続くかに思えた激痛と生傷に、身体から噴出した血液は、細かく切られて、消滅する。

380回以上の斬撃を食らった俺の意識が残っているわけもなく。



今度は本当に意識を失ってしまった。

湧き上がる歓声とアナウンスで、俺の魔力測定演習は終わった。


沖が剣を鞘に戻し、俺をステージの上から防壁の外に出してやると、救護班が駆け寄って俺を搬送していった。


そんな彼に、入り口から忍び寄る影が。

それは彼にとって忘れたくないような人物からのものだった。



「やれやれ……もう終わったのか?テメェは相変わらず、強いんだなオイ!」


ステージを出た後の彼へ、

何処からか直接的な拳が放たれる。

当たった影響によるダメージと威力で、防壁の壁にめり込んだ。


突然の拳に、恐れをなした彼が向けた視線にはーー



「この演習、中止にしてやるよ。……お前の全てを失わせてやる!!」


銀髪のお面を被った男が居た。

白いジャージ姿で彼へ、残酷な通告を明け渡す。


「この背中の傷の痛みを、お前に知ってもらうためになァ!」



「《所属狩り》か。やれやれ、面倒だね。ここは公共の場だよ……?そんなことも分からないなら、僕が叩き出さないといけないなー」



銀髪の男は、思わず

笑顔をこぼした。


「面倒ってのは、良いもんだな!お前に脅威だと思われている時点で嬉しいよ。沖遼介!安心しろ、お前は俺に倒される!」



突如として、ステージを襲った銀髪の男の強襲。

彼は二本の剣を背中から取り出した。


相手に敬意を表し、強さを認めたからこその二本だ。


仏が剣を二本抜いた、その意味は。

全力の鬼を出す……決意を固めた証である。


沖は、お面の男を凝視して、

相手の強さに敬意を払いながら構え直した。


闇が光を切り裂くのか。

光が闇を切り裂くのかは、分からない。

現時点で、誰も知る由などない。





十五話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580

最近の投稿が前に言っていた時間よりも遅くなっている件に関しては、本当に申し訳ないと思っています。そこで!!

投稿時間は不定期にします。Twitterや活動報告で随時お知らせしていくという形で!!

急な変更で申し訳ありません。


また、「追憶のアビス」をよろしくお願いします!それでは、次回もお楽しみに!

次回もモロに戦闘シーンです☆




拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!

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