第十二話 歓迎会 ①
今日は、三時限までの授業だったので、三時限目が終わると、帰りのHRをして、すぐに帰宅という形になった。
そう言えば、この学園内のことをよく知らなかった。
案内の書類には、部活動やサークル活動なんかも載せられていたが、活動場所はどこだろう?
適当に周っていれば、適当に見つかるか。
俺は教室を出ると、玄関近くの階段を登って、二階へ向かった。
するとーー
「おや……?
冴島君じゃないか!二階に何か用事でも?」
階段を降りてきた風見に出会った。
彼女は薄ら笑いを浮かべ、一年生が二階に来ることを疑問に思ったのだろう。率直に疑問に思ったことを、問いかけてきた。
「いや、二階には何があるのかなーって思って!風見さんこそ、どうして?」
「ん?どうしても何も、私は自分の教室からの帰りだよ?」
ーーということは、二年生!?
それは知らなかった……!
《平和派》を統率している人だから、自動的に三年生だと勘違いしてしまっていた。
「何を驚いているんだい?
ああ、成る程。
私は二年生だったのか!?ということだね。
ふふっ、可愛いな〜!」
表情だけで読み取ってくれたのか、彼女は優しく微笑んだ。
それでも、一応、謝罪をした方が?
「いいよいいよ、謝罪なんてさ。
よく間違えられることはあるしね。
んん、じゃあ、この辺で!
また明日!歓迎会来るように!」
と、言い残し、彼女は俺に手を振って、階段の下に消えていった。
あれ……?
俺、謝罪のこと、声に出して話したっけ?
まあ、いいか。
取り敢えず、二階の探索でもしよう!
俺は、二年生の教室ではない方へ歩みを始めた。
ーー歩くこと数分後。
廊下を歩いていると、尖った黒い髪の青年とすれ違う。
瞬間ーー
!?
背筋が凍るような殺気を感じた。
だが、彼は此方を見ずに消えていった。
なんだったのだろうか?
わからないが、今日のところの探索を終えろ!と言われているような気がしたので、一階に降りて、寮室へ向かった。
ーー翌日。
今日は授業が終わった後に、《平和派》の歓迎会があるので、旧校舎に行くことになっている。
取り敢えず、教室に向かおうと、準備を整え、寮室を出て、俺は歩みを進めた。
歩くこと数分後。
現在の時刻は六時三十分。
昨日の遅刻のこともあってか、今日は早めに起きて早めに来た。
だが、それにしては早すぎた気がする。
教室を覗くと、入学式の時、
同様に俺一人ーーだと思ったが、俺の後ろの席で目を虚ろにしながら外を眺める、薔薇色の髪の少女が居た。
「あっ、おはよ、朝日奈」
俺が声をかけると、彼女は口元を歪めながら、口を開く。
「おはよう!
昨日、遅刻したから、今日はこんなに早いのかしら?」
ギクッ!
そうなのだけど、はっきりと言われると何か嫌だなあ……。
でも、誤魔化すようなことでもないしなー。
「……そうだよ!
朝日奈は何でこんなに早いの?」
「私は、いつもこの時間よ?
昨日も!!!ね!」
そんなに強調すんな!!
今、"昨日も!!!ね!"という言葉だけで、
無数の針に刺されたような心の痛みが、走ったくらいだ。
実はこう見えて、割とメンタルは弱い方なのだ。
「今日、《平和派》の歓迎会だな。
朝日奈は、こういうイベント好き?」
彼女は、首を横に振りながら、
こう言った。
「……嫌いよ。
あまり、大人数で話すのは得意じゃないの」
意外だな!!
朝日奈家で、月一度の食事会とかないのだろうか。
あれば、家系の食事会となると大規模なものになるはずだ。
彼女は、どういう経緯で大人数を嫌うようになったのだろう?
まあ、聞くのも野暮なので、言葉を胸の奥にしまい込んだ。
「あんたは?」
「俺は、別にどっちでもないよ。
好きでもないし、嫌いでもない」
すると、彼女は怒ったように、
声を上げた。
「はぁ!?
パッとしないわね!!
男なら選べるのは一つよ!さあ、どっち?」
「じゃあ、好き、かな。」
ふーん、と声を出して、
彼女は足を組んだ。
なんて、偉そうなんだ。
まあ、お嬢様はお嬢様だな。
これも慣れたような気がする……。
その後、一頻り会話が終わると、
俺は机に突っ伏して、瞳を閉じた。
ーー授業後。
今日の授業も三時限までで、時刻は十二時を回っていた。
歓迎会の時間は、十三時から。
つまり、一時間だけ、暇があるのだ。
確か一階のどこかに、学食があったはずだ。
どこにあるっけか……!
俺は、教室を出ようと足を踏み出した。
瞬間ーー
暖かい体温の伝わるモノが、俺の手を包み込むように握られた。
背後を振り向くと、顔を真っ赤に赤らめた朝日奈の姿があった。
どうしたのだろう?
「……わっ、悪いんだけど、私を旧校舎まで連れてってくれない?
べ、別に迷子になるからとかそういうわけじゃないのよ!?
単に……」
「単に?」
すると、彼女は怒ったように声を荒げながら、俺の手を握ったまま、教室の外へ押し出した。
「いいからっ!!!いくの!!」
「分かったから、あまり大きな声を出すなって!」
俺は彼女の手を握って、玄関にある案内板へ向かった。
「あんた、どこ行くの?
今から旧校舎じゃないの!?」
「いやあ、飯を食おうと思ってさ。
そうだ、朝日奈も食うか?」
学食の場所は、旧校舎へ続く渡り廊下の入り口前にあるらしい。
随分近くだな、これならゆっくり食べれる。
「じゃ、じゃあ、要る……」
「……はいよ。
ところで、そろそろ手離してもいい?」
彼女は、自分が手を握ったことを忘れていたのだろうか。
カァァァと、顔を赤らめて、早急に手を離した。
「んっ!!早く行くわよ!!」
来た道を戻っていく朝日奈に、若干呆れ気味で声をかけ、俺は学食の方へ向かった。
「そっちは来た道だっての!!
ほら、行くぞ!迷子娘!!」
彼女は"迷子娘"というワードが気に入らなかったのだろう。
俺の背中に飛び蹴りを放つ、だが、彼女の行動を予知するのは、目を瞑って《追憶の未来視》を発動する必要もない。
しゃがんで、彼女が頭上を通り過ぎて行くのを確認し、肩をポンっと叩いて、学食の方へ走り逃げた。
「ちょっとおおおお!!!
待ちなさいよおおおおお!!」
ーー食事後。
学食で適度な食事を終えた俺と朝日奈は、手を合わせて"ご馳走様でした"をすると、
学食から出て、そのまま旧校舎に向かった。
旧校舎の建物は相変わらず、古びた木造建築の建物で、外見は所々が破壊されている。
玄関の扉を開いた瞬間ーーー
この間のツインテールの少女が、正座をしながら、頭を下げてきた。
「おまちしていやがりました。
この間、ご案内した左のほうへお進みしやがってください」
そう言い残した彼女は、
とてててて、と走って左の道へと消えた。
あの女の子は誰なんだろう?
どういう経緯でここに……まさか生徒じゃないだろうし。
取り敢えず、靴を脱いで、左の道へと歩いていった。
ーー数分後。
扉にぶつかると、俺達は勢いよく扉を開いた。
その刹那ーー乾いた音が無数に聞こえ、
中にはクラッカーを発射した複数名の生徒が並びながら笑顔でこちらを向いていた。
サンタさんの帽子を被った風見が、笑顔で歩いてきて、俺達を木で出来た椅子に座らせる。
「さあさ、座って座って!!
今回の主役達!」
長い机の上には、ご馳走が並べられ、椅子は何故か二つしかなかった。
こうして見ると、《平和派》って割と人数が多いのかもしれない。
「じゃあ、主役も来たことだし!!
私達の自己紹介を始めるよっ!!」
パチパチパチと、手を叩く音で、
まず最初に登場したのは、風見だった。
「こういうのは普通、乾杯してからなんだろうけど、知らない人と乾杯ってのも嫌でしょう?
少し人数が多いけど、飲みたいものは飲んでていいから、見てて欲しいな!!」
そこら辺の配慮に関して、完璧だなあ。
全員の名前と顔も把握したいし、
断る理由もなかった。
朝日奈は、緊張しているのか、愛想笑いで、目の前に並んでいる複数の人達に、ワザと視線を向けなかった。
「じゃあ、轟音君、よろしく!」
金髪のモヒカンがトレードマークの青年が、風見の合図に従って、マイクを持ち出すと、ニッコリと微笑んだ。
「まずはこの人!!
二年生にして、《平和派》のリーダー!
頼れるリーダーだが、自分の能力を悪用する傾向があるので気をつけた方がいい!!
《六神通》の使い手にして、
ついた異名は《心眼の悪魔》!
風見ィィ、蓮!!」
聴きやすく良い声、丁度のいいボリュームで、轟音と呼ばれた青年は紹介し始めた。
「まあまあ、私の紹介はこんなもんかな。
多分、この《平和派》に所属している人であれば、私の性格をクソ野郎だと思っている人は多いかもね!
改めてよろしく!」
何したんだこの人……怖い。
凄い、嫌な予感がする……!!
「お次は!!
頼れるお兄さん、《平和派》の武器発明に関して、持っている才能は未知数!!
けれど……弱い……!!
《武器発明家》の異名を持つ、防御障壁を完成させた天才の!!
店長弓弦!!愛称は、てんちょー!」
キリッと出てきた青年は、
眼鏡をクイっと持ち上げる仕草をして、ドヤ顔で出てきた。
「先輩、やっぱり弱いんすね。
なんか、すいません……」
※第五話参照
「経費削減をなくしてやるから、全力で戦えっていう脅しで、やっただけだからいいよ。きにすんな!」
ええええ!?
あんなにカッコよかったのに、強さのかけらも無くて、自分の発明の欲だけで戦ってたの?!
なんか、カッケェ……!!
「後、何人居るんですか?」
風見が口を開く。
「えーと、五人だよ。
私達、《平和派》は全員で八人の少数精鋭の派閥なのさ!
大丈夫、これでも一応、数に頼る《戦闘派》よりは質のいいメンツが揃ってるから!」
たった八人で《戦闘派》よりも質がいい!?凄い……!!俺は、残る五人のメンツに視線を移したのだった。
十二話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。
TwitterID↓
@sirokurosan2580
遅くなってすいません!
今日の投稿はしっかりやります!!
それでは、次回もお楽しみに!!
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




