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追憶のアビス  作者: ezelu
第2章 組織編 《新入生編》
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第百十四話 憧れと因縁

遅くなりました、ってテンプレですか、、、

オープンスクールの日から一ヶ月の日々が過ぎ去り、季節は春を迎えていた。

校門前の木々には、綺麗な桃色の桜が咲き誇り、風に(なび)かれては花弁をひらひらと地面へ散らせる。


今日はATS魔法学園の入学式の日。

早朝の朝六時頃、誰も居ないはずの校門前では、拳を胸に当てて余韻に浸っている夜十の姿があった。


一年前、組織から学園へ行くことになり、早くに着きすぎて朝六時頃に校門を通った夜十。そこで素早く走り抜けたら、燈火とぶつかりそうになって怒られた。


今思えば、あの出会いでここまでの発展。

あんな出会い方をして、最初は嫌われていたのに友達になって、好きになって、恋人になって、人生は本当に何があるか分からない。


余韻に浸っていると、校門前に人影が見えた。一年前の自分と同じで早めに到着してしまったのかもしれない。

人影は校門の入り口に手を出す。

入学時に登録していない人物だった場合、障壁が赤くなり通ることは出来なくなるのだが、今回は登録した生徒だったようだ。


障壁は何の変化もせずに、外からやってきた人物を歓迎して門の先へ通した。


外からやってきた人物は、黒髪の少年だった。

前髪が長めで、真っ黒く透き通った瞳を隠している。

真新しい制服を身に纏い、オドオドとした表情で校門を通った少年は校門前に居る夜十と目が合った。



「あっ……お、おはようございます! 」


「うん、おはよう。随分早いね? 」


賺さず挨拶をしてきた少年へ笑顔で挨拶を返す。序でに自分が気になっていたことも付け足して問いかけてみた。



「あ……駄目でした? 」


「いや、そんなことはないよ!ただ、まだ登校指定時間には一時間も余裕があるのに、どうしたのかなーって思ったから、聞いてみただけだよ。 」


少年は焦ったように夜十へ問いかける。

夜十も夜十で自分の言葉で動揺させてしまったのかと思い、慌てて訂正する。



「良かったです!あ、冴島夜十先生ですよね? 」


「うん、そうだよ。 」


「わぁ!やっぱりそうだ!オープンスクールの時の試合、凄かったです!!感動しました、いつか僕もあんな風になりたいです! 」


少年の眩しい笑顔に強い憧れを感じる。


「大丈夫、ここで君も強くなれるよ。一緒に頑張ろう! 」


「はい!ありがとうございます!! 」


少年は頭を下げて、校舎の方へ走って行った。


最初は誰一人として救えず、何にも立ち向かう勇気すら無かった自分が人に憧れられるようになったとは、自分自身で驚く。

だが、ここで終わりの冴島夜十ではない。

もっと強くなって、目の前で人が死ぬことが絶対に無い世界、アビスの居ない世界を実現する!



「……オイ、退けよ雑魚! 」


またまた感傷に浸っていると、目の前に少年が立っていた。真っ赤な髪の少年は、見た目だけで言えば火炎を幼くした感じだった。



「ああ、ごめんね。 」


軽い挑発にも乗らず、謝罪だけしてその場から退く大人の対応をする夜十へ苛立ちを覚えたのか、少年は拳を握った。

少年の拳は緋色に光り、熱を帯びて、夜十の眼前へ走らせる。



「学園内での魔法使用は原則上禁止だよ? 」


だが、今の彼にそんな甘い攻撃は通用しない。眼前に迫る熱い拳を掌で受け止めて、牽制させた。



「チッ!じゃあ、テメェをぶちのめすにはどうしたら良いんだよ? 」


「決闘形式で勝負ってことになるよ。校則にも書いてあったと思うけど、教員に申請すれば誰でも戦える。 」


夜十は、この少年の正体を理解した。

この赤髪に、気性の荒い性格、鋭く尖った緋色の瞳から察するに朝日奈家の人間だろう。

であれば、火炎か燈火に事後報告すればいい。



「じゃあ、俺と戦えよ!冴島夜十!テメェなんかじゃ頼りないって姉貴に分からせてやるんだ! 」


「良いよ。じゃあ、少し移動しようか。 」


誰の弟……もしかして、燈火?

聞いたことはないが、可能性がないわけではない。

魔法師の名家は、それだけの人数が所属している一つの組織なのだ。家族絡みだけではなく、外部から属性系統魔法を提唱したいと願う人物も多く所属している。


二人は校庭の方に移動して、一定の距離を取った。



「時間制限無し、一本勝負、武器と魔法の使用は可能。ルールはコレで大丈夫かな? 」


「うるせぇ!さっさと始めるぞ!クソが! 」


少年は大火を具現化し、短剣を作り出した。

魔力量は燈火よりは少なく、火炎よりは多い感じだ。魔力の制御もしっかりと出来ている。短所は目立った口の悪さ以外に見当たらなかった。



「いいよ、いつでもかかっておいで! 」


「……舐めやがって!!殺す!俺は自由になったんだ!あの高い塀の中で死ぬよりも楽しくな!! 」


少年は殺気を帯びた瞳で夜十を捉え、一度しゃがんで地面を蹴った。


短いリーチの短剣を武器に選んでいるからに、速度重視の戦闘スタイルであることは間違いない。

地面を蹴った時点でかなりの速度を出し、夜十へ近づいていたが、残念ながら彼には見えていた。



「自分の身体を半分だけ熱として具現化して、小刻みな爆発を行い、速度を上げるなんて考えるなあ。 」


「いつまで余裕ぶっこいてられるか、そんなの今だけだ!! 」


棒立ちで少年の速さのカラクリを分析していた夜十の背後に、彼は既に迫って来ていた。

確実に首筋を狙って、短剣の一振りを一閃。

手応えアリーー、通過すると同時に短剣に付着した血液と肉を斬った感触で心が満足する。

少年は思わずガッツポーズをして、血塗れになり、拍子抜けた表情の夜十へ嘲笑した。



「今日がお前の最後だったな!俺を舐めてるから悪いんだ!ははははははははは!!! 」


ーーだが、少年は気づいていなかった。

その空間がjackされていることに。



「……君こそ、俺を舐めてもらっては困るな〜。 」


突如として現れた夜十に驚きを隠せない少年は、正面から腹部へ強烈な蹴りを喰らってしまう。数メートル先に吹っ飛ばされながらも、受け身を取って立ち上がった。


「なっ……、どうしてだよ!? 」


短剣を構え、戦闘態勢を取るが、見据えた先の正面に夜十の姿はない。

キョロキョロとして見つけようとするが、どこにも居なかった。



「まだまだ甘い、気配と殺気の察知を使い分けられないようじゃ、俺には勝てないよ。 」


背後から迫る夜十の影に気がつけない少年はそのまま、頸に強い衝撃を食らって気絶した。



「やれやれ、まさか入学式に一戦交えることになるとは思わなかったな。燈火に連絡するか。 」


首を振り、地面に転がっている少年を背中に乗せた。


入学式前に一汗かいた夜十は、背中に乗せている少年が誰なのかを考察しながら、保健室へ向かっていったのだった。


百十四話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回は突然の強襲、新キャラの登場です!

新入生編が始まりました!半年後の魔術師戦争に向けて、夜十達の覚束ない教員生活が始まります!


次回、今朝倒した少年について、夜十は燈火に呼び出しを食らう。そこで言われたこととは!?


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!


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