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追憶のアビス  作者: ezelu
第2章 組織編 《学園救出編》
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第百十三話 オープンスクール③

遅くなりました!

目の前の沖から放たれた白刃からなる赤い斬撃を横目に、空中へ飛び上がって回避を行った夜十。



「まあ、避けられるよね。……夜十君に油断なんて一瞬でもしないよ。 」


「少しは油断してくれても良いんじゃないですか……?沖先輩! 」


簡単に回避を行った夜十に歓声が飛ぶ。

赤く光る斬撃を悠々と放てる沖にも歓声は飛んでいたが、それ以上だ。



「今のを避けるなんて……! 」

「アレって、沖家現当主の遼介さんでしょ!? 」

「有名だよね! 」

「あのビジュアルで強いなんてカッコよすぎる! 」

「私、この学園入ろっかな!! 」



様々な歓声が飛ぶ中、勝負を見続けていた風見は手応えを感じていた。

出し物の提案は様々だったからである。

皆で劇をやろうという提案もあった。

それでも、ほんわかな劇をやるよりも、プロの魔法師になるまでに至った者達の真剣勝負を見せれば、この学園で自分もこんな風になれると少しでも興味を持ってくれた方がいいと、全員が賛成をして決まった結果だ。

だが、それは結果として良かったと言える。



「一瞬で決めるとしよう、来い!時政! 」


沖は持っていた剣を地面に刺し、自らが持てる全力の全てを注ぎ込む決意をした。

呼びかける声に応じ、剣が空中へ具現される。その刀身の輝きは、時を切り裂き、新たな空間を作り出す最強の武器の証。



「早急に戦いを終わらせに来る辺り……先輩はセッカチですね。俺としては有り難いですけど……!! 」


夜十は、この勝負の決め手を考えていた。

沖に勝てると確実に理解した上での思考だ。勝てると確信したわけではないが、沖の剣術は凄い、時政の力もだ。

だが、それら全ては《追憶の未来視(リコレクション)》で見切れる。

今や、空間を亜光速で動かれたとて、恐怖も戦慄も感じない。




「やっぱり、あの技が一番かな。店長先輩にはどんな高火力の魔法を打っても防いでみせるって言われてるし!! 」


「何をゴチャゴチャ言ってるんだい?夜十君、俺はまだ君にダメージを負わされてすらないよ? 」


「それは沖先輩も同じです。俺だって、まだまだ戦えますよ! 」


時政の放つ魔力が空気を焦がし、空間を振動させた。強すぎる刀だけに発する魔力は異常を期している。つまり、それは夜十に自分の居場所を伝えているようなもの。



「この時政を持っていて、俺が負ける道理はない! 」


沖は空間を四角形に切り裂き、自分の作り出した空間へ次々と飛び込み、夜十の詮索能力から逃れようと試みる。



「それでも……俺も負ける道理はないです。新島さん貴方の力をお借りします。《光の神刀(アンスウェラー)》 」



密度の高い魔力が収束し、一太刀の光の剣を具現化させる。眩く光続ける剣の柄を握りしめ、夜十は空間の振動だけを頼りに狂える光の矛先を腕の力に委ねた。



「……てんちょー、やっぱりあの技だよ。夜十君、容赦ないね。 」


戦闘を傍観している風見は、口と耳につけたイヤホンで別室にて防御障壁を操作している店長へ戦況をいち早く伝える。



「あの場所は密度を上げて100%……いや、それ以上だ。今の俺にかかれば、あの高火力魔法も防げんだよ……ッ!! 」


カタカタとパソコンのキーボードを打ち鳴らし、夜十が放った高火力の大魔法を大切な生徒候補を傷つけない為に店長は展開した。

名前がATS魔法学園になる前のKMCの頃からずっと考えに考え、練りに練ってきた魔法武器だ。

KMCに技術を提供し、学園のアリーナに防御障壁を設けて貰った時から、彼の意思は決まっていた。

どんなに強い攻撃を受けても、絶対に壊れない魔法の防御障壁。

これさえあれば、魔術師の放つ高火力な魔法に対策だって出来るのだ。




ステージ上が全て白い光に包まれ、空気を焦がす音と轟音が周囲を包み込んだ。

軈て光は消え、轟音を静寂が侵食した時、ステージ上に立っていたのは、夜十だった。


夜十はゆっくりと歩み寄り、尻餅をついて地面を座っている沖の首筋に刀剣を突き立てた。



「沖先輩、まだやりますか? 」


「空間をも焦がし破壊するとは、その魔法、流石は新島さんの魔法なだけはある。常識と理屈が全く通用しないところとかね……」


夜十の放った高火力の魔法、《光の神刀(アンスウェラー)》は、沖の生成した空間ごと消し飛ばした。

だがしかし、観客席側への被害は全く無く、店長の貼った防御障壁によって防がれて、勝負は夜十の勝利となった。

そして、長くも短かったオープンスクールは幕を閉じた。


オープンスクールを終えて、夜十達は入場と同様に帰省時も護衛を完遂させた。

敵からの襲撃は何もなく、無事にATS魔法学園のオープンスクールは終わりを告げたのだった。


生徒が学園内に居ないことを確認していた夜十とミクルの二人は夕陽で真っ赤に染まる空を見上げて口を開く。


「……生徒、来るかな? 」


「アレだけ頑張ったんだ、俺としては来てもらわなきゃ困る! 」


「そうだよね……夜十、あのさ……」


夜十が拳を握ると、彼女は哀愁漂う瞳で視線を下に向け、何か言いたげに微笑む。



「どうした? 」


「いや、やっぱり何でもない!皆、待ってる!ほら、行くよーっ! 」


そそくさとその場から逃げるように走って行ったミクルに首を傾げる。

凄く思い詰めたような表情をしていたのを頭に浮かべて、心配そうに呟いた。



「どうしたんだよ……ミクル。 」



哀しそうに寂しそうに心配事を呟いた夜十の声音は空中を浮遊して、綺麗に消えた。

切なさも儚さも届かないのだった。


百十三話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回でオープンスクールは終わります。

次回からは第三章《新入生編》が始まります。


次回もお楽しみに!!


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!


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