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追憶のアビス  作者: ezelu
第2章 組織編 《学園救出編》
112/220

第百十一話 オープンスクール ①

遅くなりましたー!来月は忙しいのでこの調子の頻度かもしれません!

ATS魔法学園。

KMC魔法学園とは違い、アビスを倒す教訓を学ぶ以外に魔術師や犯罪魔法師などの人間の生活に害をなす存在と闘うための術を教授してくれる場所である。


尚、体制が変わって直ぐの為に、教員は全員未成年でプロの魔法師達が請け負っている。

学園長兼生徒会長も同じく。


夜十は、長々と書き連ねられた学園の説明が載っている紙を片手に持ち、文章を読んでいた。

今日は学校説明会、およびオープンスクールの日。

これまで半年後に起こる大戦争を担ってくれる生徒を探すため、学園を再構築することに時間を使っていた夜十達。


KMC魔法学園のように、今の学園には信頼出来る実績が無い。

そこは大きな課題だが、宣伝も時間を惜しまずに行なってきたし、少なくても三十人前後は来てくれる。そう願っているばかり。


体育館では、現生徒達と教員組、生徒会長と学園長を熟す風見が集合していた。

ATS魔法学園になってから、物騒な学園から去りたいと願い、願いのままに学園を去って行った人物も少なくない。


全校生徒合わせて千人前後は居たのにも関わらず、今では半分以下の三百人である。

中には、学園の英雄と称される夜十から直接話しを受けて、やめるという意思を変えた者も居るが、過半数がそうはならなかった。






体育館のステージ上に上がった風見が教員組に真剣な表情で口を開く。



「皆で教訓を作ったあの日から今までよく頑張った!後は、成果をぶつけるだけだ!それと、夜十君、学園は君にかかっている!頼んだよ! 」


激励と共に夜十へのし掛かってきたのは、圧倒的なプレッシャー。

それもそう、夜十はこれから始まるオープンスクールの重要な役割を担う役目として、生徒達の前に立たなければならない。



「はい!任せてください! 」


元気よく返事をして、風見の瞳を直視した。

彼女は笑って、深く頷く。


周りの教員も含め、生徒達も笑っていた。

全員でこの学校の良さを伝え、十分な戦力を得なければならない。



ーーそして、オープルスクールが始まる。

門の障壁を解き、志望の生徒達が入り終わるまで門の前及び、門近くで厳重にプロの魔法師達が警備を行ってくれている。

警備会社に頼んでも良かったが、余計なコストをかけたくないという新島からの願いもあってか、教員組が出ることになった。


学園の門の前に立ち、障壁を解く準備を行う。教員組全員が配置につく。

東西南北で分かれ、正門には夜十。

東に燈火と火炎、西に虹色と黒、南に沖と鳴神、北にはミクルが立つ。

厳重警戒で怪しい人物、又はアビス出現の可能性があった場合に魔法の展開を行い、学園内の障壁の展開を店長に頼むことになっている。



「皆、準備はいいかい? 」


旧校舎の開発室で独りきりの店長が様々な文字が連ねられた液晶を覗き込みながら、全員に小型無線機で質問を飛ばす。



「こちら夜十!正門、大丈夫です! 」


「火炎、東は大丈夫だ。 」


「虹色です、こっちは問題無いです! 」


「沖、てんちょー大丈夫だよ〜! 」


「北のミクルはいつでもおっけーい! 」


全員からの返事を聞くと、店長はカタカタとキーボードで文字を打ち込むと最後にエンターキーを人差し指を強く押した。


ーーすると、学園中に張られた全ての防御障壁が解かれ、ATS魔法学園が大きな住宅街に顕となる。


そして、障壁越しで見えていなかったのか、正門に居た夜十は想像を絶する光景を目の当たりにし、思わず驚きの声音を上げる。



「えっ……!?ええええええ!? 」


「夜十、どうした!? 」


店長が反応して、夜十は恐る恐る口を開く。



「こ、こんなに、ひ、ひ、人が……!? 」


門の前から見渡す限り、大勢の人が群がり、巨大な行列を作っていた。

その中の生徒達は皆、かつてのKMC魔法学園の不祥事が無かったかのように、感激と不安を胸の内に抱える嬉しそうな表情を浮かべている。



「人……!? 」


店長も直ぐさま、正門前の監視カメラにアクセスし、見渡す限りの行列を眼に捉え、悶絶した。



「あの……ATS魔法学園のオープンスクールはいつからですか? 」


先頭に立っていた気弱そうな眼鏡をかけた黒髪の少年が夜十へ問いかける。



「あっ、すいません!もう入って大丈夫です!ようこそ、ATS魔法学園へ! 」


夜十の言葉を聞いて、喜びのままに少年は学園の中に足を踏み入れて行った。

その後、何百人、何千人の生徒達が門を潜り抜け、無事に最初の試練は無事に終わった。




「はぁ……まさか、俺がこんな役割に回るとは思わなかったな。それに、負けてはいけないなんて、手加減しないだろうし。 」


防御障壁が張られ、戦闘形式になったアリーナの控え室でATSの戦闘服に着替えた夜十は、辛そうに溜息をつく。

オープンスクール参加の生徒達は皆、アリーナの観客席で防御障壁に守られながら、今から行われる教員組が知恵を絞って行うことになった所謂、ショーを見ることになっていた。


会場がざわつく中、ステージ上でマイクを握るのは学園長の風見蓮である。

彼女は、深呼吸をして息を整えると、真剣な表情でマイクに口を開いた。



「注目、お願いします。私がATS魔法学園の学園長兼生徒会長の風見蓮です。今から、皆さんに見て頂こうと思うのは、この前まで生徒だった教員達の本気の勝負です。プロの魔法師で一線を支え続ける一人の少年と教員組の熱き戦いをどうぞ! 」



会場の照明が全て防御障壁内になると、控え室のあるアリーナ入り口から出てきたのは、黒い戦闘服を身に纏う真剣な表情の冴島夜十。


「右コーナー!かつての学園を大型アビス世界蛇(ヨルムンガンド)の魔の手から救った英雄、冴島夜十!! 」


観客側に笑顔で手を振り、逆側の入り口から出てくる少女を見据える。


「左コーナー!炎魔法の提唱者の家柄にして、現当主朝日奈焔の娘!朝日奈燈火! 」


彼女も出て来ると同時に観客席へ笑顔と共に手を振った。

入学当時の彼女ならあり得ないことだ。

夜十はその光景を見て、そう思った。



「……さて、燈火。俺は一切の手加減はしないよ。死ぬ気でかかってこい! 」


「分かってるわよ。本気でやらなきゃ、意味ないって! 」


夜十は、勢いよく掌を叩き合せ、生成した黒い刀剣を重心を低くして構える。

燈火の片手に熱で具現化された剣が発現し、彼女は真剣な表情で夜十を睨みつけた。


「アレって朝日奈燈火さんよね!一年前のニュースに出てたー! 」

「武器生成だけであの魔力って……! 」

「勝負形式でプロの戦い方が見られるなんて素敵! 」


会場中のざわつきが聞こえ、普段の練習とは違った緊張感が体を駆け抜ける。



「それでは……バトルスタート! 」


開始の合図と共に夜十は燈火の懐へ真っ先に駆け出した。

一瞬で懐へ入り込む移動技術に観客席は騒然とする。

だが、次の瞬間、夜十の行動を予期していた燈火は、熱となって消え、夜十の背後へ回り込み、剣を振り下ろした。



「……そうくるのは分かってたよ。 」


背後へ方向転換し、黒い刀身の峰で燈火の剣を受け止める。

夜十は既に目を瞑り、《追憶の未来視(リコレクション)》を発動していた。


「うおおお!!なんだ今の! 」

「すげええええ!!全然見えなかったけど凄いことは分かる! 」

「何で目を瞑ってるの?!どういうこと!? 」


今の一瞬の攻防のみで観客席で勝負を観戦していた生徒達が歓声を上げる。



「燈火、また腕を上げたね。俺を分かってるような動きだったよ。 」


「あ、当たり前じゃない!てか、私を前にしてよく激励なんて余裕があるのね! 」


「ははは……そりゃ違いない! 」


乾いた笑いを飛ばし、燈火の剣を振り払って一歩後退する。

夜十には未来が見えている。

燈火が生み出す全ての癖、音、空気に伝う振動を記憶して、データ化、常に最善の未来を映し出す事が出来る。

それが、夜十の専売特許《追憶の未来視》だ。



「朝日奈の名の下に、焔を従え、神火の如きで敵を貫け!焔弁の爆炎花(アキメネス)! 」


熱で具現化された宙を舞う焔の鉾が無数に発現し、夜十へ矛先を狙い定めて真っ直ぐに貫こうと放たれた。


勿論、夜十には全てが見えている。

燈火の発現した焔の鉾が狙ってくる場所も軌道も全てだ。目を瞑ったまま、軽々と彼女の懐へ侵入することに成功する。


けれど、夜十は自分の下に緋色に光り輝く魔法陣が展開されていることに気がついた。


これは、緋色の情熱花(アンスリューム)の魔法陣。爆炎と共に巨大な炎柱を具現化させる燈火の一回消費の魔法。

連戦が待ち望む夜十が今、こんな効果力の魔法を食らってしまっては今後の勝負に勝ち目はない。


焔弁の爆炎花で誘い込むことに成功した燈火は思わず笑顔を見せていた。

それに、夜十が飛び込んでくるタイミングと同時期に爆発を行うように早めに展開しておいたのだ。

これで幾ら強く無敵な夜十でもこの魔法から逃れることは出来ないーー


「まだまだ、甘いよ。燈火! 」


ーーはずだった。

巨大な魔法陣が輝きを帯びて、魔法を発動する寸前に夜十は自らの黒い刀剣で燈火の緋色の情熱花を叩き切った。



「魔、魔法を切った!?なにあれ! 」

「まさか、魔法破棄(ディスポーション)を使える人が居るなんて……!! 」

「す、凄すぎる!ここまでハイレベルな戦いが出来るの!? 」


歓声を背後に致命傷を与えられるはずだった燈火は思惑が外れ、下唇を噛み締めた。


「今の一撃を斬られるなんて……やっぱり、あの一手を使うしか無さそうね!! 」


「え、……と、燈火!?俺の読み通りだと、その技は!! 」


夜十は既に未来を覗き、燈火が行った選択に苦難の表情を浮かべていた。

それは、随分前に夜十が燈火と一対一で勝負を行った際に使用してきた技で《追憶の未来視》をその場で行い、身体を強制的に動作させる暗算モードで防げた技だった。



「今からは私の本気!全部受け止めなさい! 」



燈火は熱で具現化した剣を捨て、二丁拳銃を発現させると構えの体制を取った。

夜十は、未来予測通りの展開に溜息を吐き、剣をしっかりと構えて燈火の猛攻を防ぐ準備をするのだった。

百十一話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!

投稿予定日や更新に関しては、後書きやTwitterなどでお知らせする予定なので、ご了承ください。

TwitterID↓

@sirokurosan2580


今回は燈火と夜十の勝負です!


次回、奥の手を使った燈火。

夜十は彼女の猛攻を止める事が出来るのか!?


次回もお楽しみに!!


拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!


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