第百四話 進展
遅くなりましたー、がテンプレになってますが遅くなりました^^
《革命派》の活躍により、KMC魔法学園は見事、魔術師と手を組み暗躍していた柳瀬刀道を含む《正義派》の撃破に成功。
学園を管理していたKMCは、組織のトップが魔術師と手を組んでいたことを証拠に強制的に解散。
KMCが管理していた全ての項目をATSが引き継ぐ形として丸く収まった。
学園長兼理事長を新島鎮雄が務める事とし、ATSに所属していた各隊長が幹部を担うこととなった。
燈火を人質に取られ、ATSと戦わされていた炎の朝日奈家現当主、朝日奈焔も幹部に。
KMCの崩壊により、全てが変貌を遂げ、新たな国家として創り直された。
KMC魔法学園は、ATS魔法学園に名前を改名し、新たな学園をスタートさせたのだ。
ーーあれから一週間が経った。
私服姿でATSの拠点を歩くのは、夜十と燈火と虹色、ミクルの四人。
今日は、新島鎮雄にATSの拠点に集合するよう招集を受けたのだ。
「あの伝説の魔法師、新島鎮雄ってどんな人なんだろう……? 」
「燈火ちゃん、名前だけなら凄い人だけど実際に会ったらタダのおっさんだよ? 」
ワクワクしている燈火の言葉を聞いて、やや否定気味に苦笑してミクルは口を開いた。
「私の父も、外では《炎帝》なんて言われて、名が高いけど、家では喧しいおっさんだから、皆同じなのね。 」
「燈火の前だったら外だろうが一瞬で喧しいオッさんに変わってたと思うけど……」
夜十は、授業参観の時の陽気な焔を思い出しながら、口遊む。
そうこうしている内に、新島の部屋の扉の前に到着した。
手の甲で扉を叩き、ノック音を室内に響かせると、低く威厳のある声で「入っていいぞ」と新島の声が聞こえる。
扉を開くと、中心のテーブル席に腰を下ろす新島を挟む形で神城と焔が立っていた。
部屋の隅には優しい笑顔で夜十に微笑む騰と標津が居る。
相当たる顔触れに、余程真面目な話なのだと悟った。
部屋に入り、扉を閉めるなり、新島は口を開いた。
「ミクル、夜十!お前ら、朝日奈燈火さんが抱く俺のかっこいい像を「タダのおっさん」呼ばわりするとはいい度胸だな? 」
やや深刻そうに口を開いた新島に夜十とミクルは呆れ顔で軽い溜息を吐いて顔を俯かせる。
「俺はずっとカッコいいまーー」
「ーー燈火!お前もだぞ!俺のかっこいい像を「タダのおっさん」扱い……」
新島の言葉に重ねる形で焔も燈火へ口を開く。その瞬間、ご機嫌気味だった燈火の表情が暗くなり、鋭い眼差しから繰り出されるソレは、焔の口を止めた。
「……ゴホン。話が逸れたな。今日はお前らに話があって呼び出したんだった。 」
フツーに会話続けるの!?
真顔で話を続けようとする新島に夜十達は驚愕の意を隠せなかった。
「我々、ATSがKMCの代わりとなった今、アビスを討伐する部隊に赴ける人材が急激に減ってしまった。よって、今回、柳瀬刀道を討ち取った冴島夜十、ミクル・ソネーチカ、朝日奈燈火、虹色吹雪、沖遼介、風見蓮、仁科黒、朝日奈火炎、鳴神茜、以上9名をプロの魔法師として認める! 」
ーー新島の低く威厳のある声で言い渡された言葉は夜十の胸に大きく轟いた。
プロの魔法師として認める?聞き間違えはなかっただろうか。俺が遂に?
夜十の胸はいつもよりもずっと、震えていた。
「マ、マジですか!?俺、姉ちゃんと同じ土俵に上がったんですか!? 」
「嗚呼、お前は今日から魔法師だ。それと、夜十とミクル、吹雪については隊長として動いてもらう。自分の隊に所属させたい五人を選んで俺に言え! 」
「……は、はい!ありがとうございます!! 」
夜十は床に崩れ落ちて、頭を下げた。
姉と同じ土俵に立てただけでも嬉しかったのに、ATSで自分の隊を率いて戦うことを許された。これ以上光栄なことはない。
周りの皆も自分がプロの魔法師になれたことを痛感し、涙を流していた。
「焔、私……」
「おっ!俺の胸に飛び込んでこい! 」
「いや、良いよ。そういうの要らない!……火炎の件で後で話があるの。 」
ガーンと顔を青白く染める焔は、火炎の名前を聞くと素直に頷いた。
「話はこれで終わりだ。夜十、隊員の件は早急に頼む。焦るなと言いたいところなんだが、アビスの討伐の手が間に合ってないんだ。決まったら出動してもらう形だ、頼んだぞ! 」
「はい!失礼します! 」
夜十達は新島の部屋を後にした。
「ちょっと燈火、話があるんだけど良いか? 」
「うん。 」
「それじゃ、燈火と話してくる。ミクルと虹色、またな! 」
二人に別れを告げて、夜十と燈火は施設内の夜十の部屋に向かった。
誰にも聞かれたくない内容と言うわけではないが、新島や焔に二人きりで一緒にいるところを見られたら冷やかされそうだったので部屋にしたのだが。
部屋の扉を開き、電気をつける。
地下に作られた施設なだけに窓はない。
その為、電気が無いと真っ暗で何も見えないのだ。
夜十の部屋は至ってシンプルで、白いベッドと古いアナログテレビ、筋トレグッズに戦闘服が何着も干してある。
「なんて言うか、全く突っ込みどころの無い悲しい部屋ね。 」
「そんなに長居する場所じゃないからな、寝るだけに来てる部屋だよ。昔はミクルとよく遊んだっけな。 」
燈火はテレビが乗せられているテレビ台の近くに飾られている、黒髪のポニーテールの女の人と黒髪の少年が笑顔でピースをしている写真を見つけた。
「あっ、これ……! 」
「嗚呼、俺の姉ちゃんだよ。《戦場の歌姫》。 」
笑顔でピースしている写真。
その頃は永遠に姉が居て、自分を守ってくれるのだと信じきっていた。
8歳だったからだとか、年齢はこの際関係ない。意識の問題だ。自分で何も出来なかった俺が、自分の悪い所に気がついたのは姉が死んだ後。
何故、もっと早く気付けなかったのか。
暫くは、そんな気持ちに押し潰されそうになっていた。
「……十っ!夜十! 」
「あっ……ごめん。ボーッとしてた! 」
「大丈夫?熱でもあるんじゃない? 」
ふと、彼女は夜十のおデコに自分のおでこを重ねて熱を測った。
前に学園で夜十が熱を測った時みたいに当たり前でそれとなくな感じで。
「燈火……」
「夜十……」
二人はお互いの名を呼びあって、お互いの唇を重ね合わせた。
唇独特の柔らかい感触が身体の中を滞りなく流れ、夜十の心を、燈火の心を締め上げる。
唇を離し、両手を背中に回して抱きしめた。
手に当たる暖かく心地のいい感触。
ずっとこうしていたいとさえ思えてくる。
夜十は、燈火の目を見て、お願いを紡ぐ。
「燈火、隊員の選択だけど、俺の隊に入って、アビスを一緒に駆逐してくれるか? 」
「……うん、勿論だよ。夜十の役に立てるように私、頑張るから! 」
冴島隊の一人は朝日奈燈火に決定。
二人は、二人の感じ合う熱で蕩け、永遠に繋がれていくのだろう。きっと……。
「じゃあ、そろそろ戻るか。ミクルと虹色が隊員をどうするか聞いておきたいしな。 」
「うんっ! 」
二人は部屋を出て、ミクルと虹色の元へと向かったのだった。
第百四話目を御拝見頂き、誠にありがとうございます!
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@sirokurosan2580
今回は久々の燈火と夜十回でした。
文字数が若干少ないです。すいません!
後、《異世界召喚されたけど、ラーメン作ります!》の連載を三月か四月に予定していましたが、まだ書溜めを終えられない状態なので未定にしておきます!
次回、ミクル、虹色、夜十の三人が隊長になったことが組織内で話題になっていた。
そんな彼らを戦闘演習場で待ち構えるのは、ATSの精鋭達だった!
次回もお楽しみに!
拙い文章ですが、楽しく面白い作品を作っていきたいので、是非、応援よろしくお願いします!!




