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観客席にはゴブリンと傭兵達の戦いを一目見ようという客で溢れかえっている。


客層は貴族から商人、冒険者や傭兵……そして大農家……彼等は娯楽を求めてやってくる。


「ギャアアアア!」

「コフゥ!」

「助けてくれぇ!」

「いてえって!……イテェ!やめろ!……グエッ!」

闘技場のゴブリン達は客の要望通り、参加した傭兵達に惨たらしい死を提供していた。


傭兵の生き残りは足を潰されて闘技場の真ん中に座らされていた。

「グゥゥゥ!……誰か!助けてくれよ!」

「「ガハハハ!頑張れ!」」


観客達はそんな傭兵を指差して笑うばかりだ。

「ふざけろ!こんな状態で……うっ!来るな!やめろ!やめてくれ!」

ゴブリンは傭兵の腹を掻っ捌いて行く……


「ギャアアアア!」

「「ウォォォォ!」」


ゴブリン達は捌かれた腹から赤茶色の内臓を取り出し、蹴飛ばしたり、千切り飛ばしたり、ブリ回したりしている。


傭兵はまだ生きており、バタバタと痛がり暴れるが、観客達はそれを見て歓喜する。


司会は声を張り上げる。

「「……やはり!傭兵では相手にならない!圧勝!ゴブリン達の圧勝です!……お客様は自分の目を疑った事でしょう……しかし、これが!今や有名になりつつある、森の楽園のゴブリン達なのです!……この凶悪なモンスター達を倒す勇者は居るのでしょうか!皆々様!次の相手に期待しましょう!……次の相手はBランク冒険者!チーム名ライド!三人組でBランクの依頼を受ける彼等はいずれも実力者!本当の冒険者達です!」」


《ゴゴゴゴゴゴ!》

三人の冒険者が闘技場に入場し、ゴブリン達と睨み合う。


「「オォォォォ!やってくれ!ライド!ゴブリン達をブッ殺せ!」」


今出ているゴブリン達はまだ新人……レベルは300程

それに対してあの三人のレベルは700前後……勝つ事はほぼ不可能だ……


「ゴブゥゥ!」

「行くぜ!」

ゴブリンと冒険者は切り結び、ゴブリン達は次々と斬り殺されていった。


「グェェェ!」

「お前が最後だ!……ん?ギャハハハ!こいつ!泣いてやがるぜ!」

「ほぅ?泣いてはいるが、目が死んでねぇな!」

「気にいらねぇ!」


ゴブリンは両目をくり抜かれて首を落とされた。


「リーダー!ほら見ろよ!」

冒険者の一人がゴブリンの頭を股間に当てて腰を振る。

「ギャハハハ!悪趣味な野郎だぜ!」

「ギャハハハ!貸せよ!……私、ゴブ子!今夜は娼婦じゃなくて私を抱いてね」


もう一人は悪乗りし、そのゴブリンの口を動かし、裏声で腹話術をした。


「ギャハハハ!」

「「ワァァァ!」」


「よし!帰るぞ!こんな割の良い仕事はねぇーぜ!」

冒険者達は観客に手を振りながら門の前に行く。

「グズグズしてねーで!早く開けろや!」


「「少々お待ち下さい……門を開ける前にこの映像をご覧ください……この映像は当ホテルの監視カメラが捉えたものです……」」


《やめて!やめて下さい!》

《ヒヒヒ!良いじゃねぇか!ネェちゃん!》

…………

《私は許さない!強い者は何をしても良いのでしょうか!?》

巨大スクリーンには男達が女を無理矢理、連れ込み、殺されるまでの映像が映され、娘の父親の恨みのインタビューも放送された。


「おい!映像を止めろ!」

男達は汗って大声を出した。


「「ブウウウウウウ!」」

観客達は一様にブーイングを発している。


「「ご覧頂けたでしょうか?……彼等は弱者を貪る鬼畜!彼らを許して良いのでしょうか!?」」

「「殺せ!殺せ!」」


「勝手な事言うんじゃねぇ!」

「お前ら!見てるだけじゃねぇか!……とやかく文句言うんじゃねぇ!」


「「皆様の気持ちは伝わりました!それでは彼に引導を渡して頂きましょう!……あれは半年前……今や上級騎士となり!国の五本の指に入ると言われるようになった!……あの盲目の騎士!ライオネルと互角に戦った猛者!ゴブリンマスターの!バットボーイ!」」


「「ワァァァ!やってくれ!お前だけが頼りだ!」」


俺は観客に応援されながら入場した……

「ケッ!騎士と互角か知らねーが!俺達に叶うかよ!ぶっ殺して出てやるぜ!」


観客達は建前では冒険者を批判しているが、映像を見る表情は正反対の反応だ……彼等にとっては犯罪者の行為ですら娯楽……


「おい!あんたも俺らを批判するかい?」

「いや……俺の周りに危害がなければ正直どうでも良いよ!」

「はは!殺さなきゃならないなんて!悲しいぜ!話が合いそうなのによ!」


「さっさとやるか……」

俺は斧を構え、冒険者達も臨戦態勢に入った。


この場に善人はいない……


冒険者達は一斉に襲い掛かってくる。


俺は斧を力一杯、横一線した。

冒険者達は斬撃に反応し、盾でガードした。

《グシャッ!》

《ゴシャ!》

「グェェェ!」


右二人を盾を鎧ごと砕き割り、最後の一人はその衝撃で吹っ飛ばされた。


「なっ!……ガハッ!……何が……お前ら……」

壁に叩きつけられた冒険者はヨロヨロと立ち上がり、共に飛ばされた仲間の死体を確認した。

俺は冒険者に向けて全力疾走した。


「ヒュー……ヒュー……強え……運がなかったな……」

冒険者は諦め、へたり込み……走る俺を眺めている。


「「ワァァァ!」」

「おいあんた……何レベルだい?」

「950だ……」

「そうか……先に行って待ってるぜ?……地獄の酒はうめぇかなぁ……」

《グシャッ!》

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