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俺は毒の影響をより受けている方へと歩いた。
《バババババッ!》
遠くに一点光が見えたかと思うと突然、光の波が押し寄せてきた。
「くっ!うぐぁ!」
咄嗟に木に飛び移ったが……少しかすった様だ、全身に痺れを感じながら、引っかかる様に枝に捕まった。
「ゲヒッ!キシシシシシ!」
鎧が錆び、両手にレイピアを持った騎士が片足を引きヒタヒタと歩いてくる。
雷神……だろうな……右脚が不全なのか?
俺は木の上で、痺れの抜けと騎士の様子を確認していた。
《バババババッ!》
騎士は全身から無数の針の様な光を放った。
「ギヒ!ギヒヒ!ミッケタ!」
その光が収まると騎士はこちらを見た。
何故ばれたんだ?……
騎士は光を放ち始める。
《ギャイン!》
「ギヒッ…爆ぜろ…ライニーザー……」
俺は咄嗟に斧を投げたが、騎士は斧を弾き輝きを増す。
俺は急いで木を飛び降りた。
次の瞬間、閃光が走り、木が割れて炎が灯る。
《ゴロゴロッ!》
落雷だ……
「ギヒッ…キキキキキキキキ!」
肩は震え、鎧の金属音が木霊する。
兜に覆われ、確認は出来ない……だが、騎士はほくそ笑んでる事は見て取れた。
「ラ……ライラ……カハッ……ライニーザー!」
俺は騎士から距離を取る為、騎士を視界にとらえながら走った。
《キィー……》
耳鳴りだ……
《ドゴッ!ゴロゴロ!》
俺の足元に天から落雷が落ちて俺は近くの木に吹っ飛ばされた。
「ぐあっ!」
「ギヒヒヒ!……ラ……」
くそっ!まただ!何なんだ……どうやって……また来る!
俺は走り続け、洞穴を見つけて逃げ込んだ。
「はぁはぁ……」
ここなら天空からの落雷も……
《キィー……》
また……耳鳴りだ……なんだ?これは……
俺の体が光ってる……いや無数の針が刺さって……
雷は洞窟の入り口に落ちる直前、身体中の針に吸い寄せられるように動き、直撃してきた。
「グアアアアア!」
《シュッバ!ゴロゴロ!》
「カッ……ガハ……グハッ……」
焦げ臭い……俺か……
《キィー……》
そう何度も耐えられる気がしない……駄目だ!動き続けないと殺られる!
俺は急いで洞窟から飛び出し、全力で飛んだ。
《ドゴッ!ゴロゴロ!》
俺は転がる……先程までいた地面は抉れている。
急いで立ち上がり、両手斧を構える。
「ギヒヒヒ!」
「行くぞ!」
俺は雷神ファリスに突撃した。
《キィーン……ピシャッ…ゴロゴロ!》
「くっ!」
前面に転がり、落雷を回避した。
耳鳴りのお陰でギリギリ避けることができる。
……捉えた!
俺は大きく振りかぶり、斧をファイスに叩きつけた。
《ガインッ!》
踏み込みが甘いな!
ファイスは両手の武器でそれを受けるが、俺は斧を押し込み、奴の兜を叩き割る。
ファイスの顔の皮は兜ともに剝がれ落ち……脳天から血が滴り落ちる。
「ギヒッ!」
《バババババッ!》
「グアアアアア!」
電気が斧を伝って俺の身体中を駆け巡る。
「くそっ!」
「ギヒッ……ラ……ラライ……ジュウ……」
ファイスはレイピアを繰り出した。
《ギャイン!ガンガン!》
ファイスのレイピアと打ち合う……多少ピリピリするが、踏み込みが甘い為、攻撃が軽い。
打ち合いながら二本のレイピアから光の針が発せられる。
何かやる気だな……させるか!
「フンッ!取った!」
俺は斧を思いっきり横に振る……渾身の一撃だ……その片足では防げないだろう。
《ガインッ!》
「なに」
「ギヒッ!」
《グルルルル!》
無数の針で形どった虎が俺の斧を受け止めていた。
「グアアアアア!」
虎は形を崩して斧から俺へと移動し、いつまでも痺れさせてくる。
くそ!逃げられない!
「ゲヒッ!」
ファイスは後退りし、少し離れると二本のレイピアをクロスさせた。
《ピシャッ!バリバリバリ!》
ファイスは落雷を受け、眩い光に包まれていく。
「ゲヒッ!ち……肉を焦がす……ライデル……レーザー」
《ドンッ!》
ファリスから俺へと巨大な光が放たれる。
「グォォォォォ!ウォォォォオォ!」
どんなに気合を入れて力を込めても、虎は俺の体を掴んで放さない。
くそっ……
「ブラッディ!サイクロン!」
俺の顔前に風の横槍が入り、ファイスの放った光を捻じ曲げた。




