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俺達は突撃して行く……兵士達はお互いの顔を見てザワザワと動揺している。
「全員!構え!」
騎士の号令で兵士達は訓練通りの全員、毅然とした態度をとった。
やはり訓練は本物だ……騎士の号令というスイッチで緊張や焦りとは関係なしに体が動いている。
やはり普通に戦ってはゴブリン達に部がない事が伺えた。
だがな……俺だって必死に抵抗するさ!
「させるかよ!」
片手斧を手にし、大きく振りかぶった。
「全員!……」
時間は無い!俺はそのまま腕がちぎれんばかりの力を込めて斧を隊の端……騎士が対応できない箇所に投げつけた。
《ゴッ!》
俺の斧は空を切り、兵士の頭を割った。
〈〈ワァァァ!〉〉
「へっ?」
「おい!押すな!」
「グアッ!」
《ガチャガチャ》
「……ってーな!何やってんだお前!ん?……おい!……死んでるぞ!」
「死ん……でる?」
綺麗に整列していた事が仇になったな……頭を叩き割られた兵士が倒れ、それを中心にドミノ倒している。
「ゴブリン共!雄叫びだ!」
《ガァォォォォ!》
総勢200名の雄叫びだ!兵士達の動揺を掻き立てた事だろう。
「お……くす……な……ぜ……とつ……き!」
騎士の号令もゴブリン達の雄叫びにかき消され、端まで届いてない……
騎士とその号令が届いた中央の兵士達は突撃してくる。
俺がゴブリンに出来る事はここまでだ……あとはどれだけ序盤に数を減らせるかだ!
俺は力一杯息を吸い込み、指を咥える。
「「ピィッピィーーーーーーー!」」
ゴブリン達は中央を最低限に薄くし、端に戦力を集める……端を突破後に回り込む作戦だ。
《ヒュー……》
ん?……
俺達の辺りに涼しい風が流れてくる。
まずい!ダンジョンに風など!
《ビュュュュュ!》
「ゴァッ!ブゥゥァ!」
警戒した時には既に遅かった……俺の隣にいたゴブリンリーダーは騎士のランスに腹を貫かれて掲げ挙げられ、吐血し、もがいていた。
「はっ!生命力は一丁前だな!」
《ゴォォォォ!》
「ギャアアアア!」
騎士のランスを中心に竜巻が発生し、リーダーはズタズタにちぎれて飛散した。
《キンッ!》
リーダーの持っていた片手斧とファルシオンが高速でぶっ飛んできた……
「調教師!貴様もただでは済まないぞ!」
《ガンッ!》
《ヒュー》
騎士は受け止めたそばから体に風を纏い始める。
《ブンッ!》
俺の斧の一撃は空を切り、騎士はヒラリとジャンプし、くるりと回った。
「くっ」
《ゴッ!ガンッ!》
騎士は上がった時とは裏腹に落ちる時は風を纏い、荒々しく落ちてきた。
「グアッ!」
「ハハハッ!避けただけでも褒めてやろう!」
俺はやっとの事でそれを流して避けたが、奴のランスは地面を砕いて俺に炸裂し、肉に食い込む。
「ゴブ?」
ゴブリンは倒れる俺を不安そうに見ている。
「構うな!命令通り!突撃!」
「ゴブッ!」
「ハハハッ!動揺しているとはいえ、お前のゴブリンに私の兵士が……」
《ボォォォォ!》
「ギャ〜!」
「何だ?」
騎士の見た方、中央の兵士達がゴブリンの放つ炎によって一部、火達磨になっていた。
両手斧では間に合わん!
俺は近くに落ちてたファルシオンと片手斧に持ち替える。
「魔剣……だと?……これは」
「余所見するなよ!」
《ガガンッ!》
「くっ!士気が下がっている……良いだろう、調教師!認めてやる……だがな、お前とあの魔剣を潰せば他には何の問題もない!」
《ビョョゥゥゥゥ!》
一撃受けたり、与えるだけでレベルアップを実感する程、レベル差は歴然だった……この騎士は俺よりも強く……風魔法が使える。
できるだけの時間を稼ぎを……
「そういや……名前を聞いてなかったな……」
「フフフッ!私の名はライオネル……ライオネル・ディバイアス」
《ガンッ!》
俺は力一杯斧を振り、ライオネルはそれを咄嗟に受けて少し後退する。
「くっ!卑怯者!貴様も名乗れ!」
「はっ!俺は貴族じゃねぇ!」




