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宿屋を開業して早3ヶ月が過ぎていた。
宿屋の経営はかなり上手く回っている。
宿屋の門で客の対応をする執事……地上にいる従業員は殆んど失業者……貧乏貴族にリストラされた人達だ……
「ようそこ【森の楽園】へ」
「すいません、5人なんですが空きはありますか?」
「ええ、ございます……当宿屋では部外者の侵入を防ぐ為、必ずこのバッチを付けて頂く事になっております。
付けてないお客様には当ホテルから強制的に退場して頂来ますので、くれぐれも付け忘れの無いよう……お気をつけ下さい」
「わかりました」
武具の修理や売買、レストランやベット、市場、カジノなどの娯楽施設がある出来る【森の楽園】には毎日数多くの人々がやってくる。
市場の一部の店は直営店だが、
その来客数を目当てにテナント契約を持ち掛け、薬屋を開業した商人などもいたりする。
レストランの厨房ではこれまた失業者のメイドやコックが忙しく動いている。
「3番テーブル!」
「かしこまりました!」
「オーナー用の食事はどうなってる!」
「出来次第送ってます!」
「よし!オーナーは大食らいだ!送り続けろ!」
「しっかし毎日こんな量作ってよく食べられますね……どんな巨漢なんです?オーナーは」
「お前、消されるぞ?オーナーは詮索されるのが嫌いだ……この前も興味で何処から食材が運ばれるか見ようとした奴が処刑されたばかりだ!仕事を貰えるんだ、あまり余計な事を考えるな」
コック達は大量の料理を次から次へと貨物エレベーターへ入れている。
「……規則を守らない奴には容赦無いからな……客にも従業員にもな」
「ヒェ〜」
「だが、規則を守ってるのに処刑された奴はいない、高給が貰えるんだ、余計な事はするな」
「そうっすねぇ」
そんなホテルの様子が俺の前の壁に映像として投影されている。
これはダンビジョンと言うらしい、ダンジョン内の光景を確認する事が出来るコアが新しく得た能力だ。
《カラカラカラカラ》
エレベーターの滑車の音だ……料理だな
ゴブリンはエレベーターから食事を取り出し、食卓に置いていく。
『また賊だ……』
映像を確認すると盗賊達がホテルの裏てから忍び寄っていた。
またか……今の担当班は……28〜30班だな
「4〜6班はそのまま食事を続けろ!俺は侵入者の排除に向かう」
そう、望まれざる……いや、むしろ望む客も頻繁に出没し、後を絶たない。
盗賊達の気持ちはわかる、煌びやかでたんまり儲けてる宿屋が表面上は護衛もいない状態で森の中にチョコンと存在しているのだ。
数多くの冒険者がいても侵入や盗みは簡単そうに見える……表面上はな……
「コア、何処からだ?」
『8ブロックだ』
俺は壁に設置された連絡用の管に口をつけた。
「「現時刻の防衛担当班は至急8ブロックへ向かえ!28班だけは外だ!」」
盗賊達は次々と壁を越えて敷地内に入った。
「よし!全員揃ったな?」
「うわっ!」
盗賊達20人が全員、突然抜けた地面によって、穴に落ちていく。
見張り達は近くの森に潜み、確認していた。
「ん?親分達は何処に行った!」
「はぁ?見てなかったのかよ?」
「見ていたさ!」
「おまえだじ、じぬ!」
「え?」
「ひっ!」
《ゴッゴキ!》
二人の見張りはゴブリンリーダーに首を握り潰された。




