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『侵入者だ』

「全員!一から五班訓練終了!戦闘準備!」

俺の指示に従い、ゴブリン達は武器を装備する。

「一、二班はついて来い!その他はその場で待機!」


俺達はダンジョンの入り口へ歩いていく……ダンジョンは入り口から一本の通路で旧広場に繋がっている。


「コア!侵入者はどの辺りだ?」

『入り口からそろそろと歩いているな……おそらくこのままの速度なら旧広場で鉢合わせするだろう』


……敵のレベルがわからないが、一体何の目的で入って来たのか……このダンジョンがギルドの掲示板に張り出されたとしたら適正レベルはいくつとなっているのか……


「ゴフゥー!ゴフゥー!」

俺たちの背後からゴブリンが走って来た……何かを持っている。


身体中が焼けている色をしている……おそらくビアトールの所の奴だな……


ゴブリンに剣を差し出され、俺は布を解いた。


黒々とした刀身にマグマの血管が流れているような剣だ……


……これは魔剣か……独特な形状だが、鉈?…いやファルシオンか……これならゴブリンでも問題なく使えるだろう……



「出来上がったのか?」

「ゴブッ!」

「ご苦労……」

俺はサイドポケットに入れていたシープジャーキー数枚をゴブリンに渡してビアトールの元に返した。


周りのゴブリン達の腹が鳴りはじめる。

「安心しろ、侵入者が終われば飯の時間だ……散開!」

「グォ……」

俺はゴブリンの口を即座に閉じた。

「雄叫びは無しだ……」

「ゴブ……」


ダンジョンにはゴブリンが這うことでやっと通れる大きさの通路が無数に掘ってある……この通路を通って一部のゴブリンは侵入者の背後へ廻った。


残りのゴブリン達を奥の入口に残し、俺は旧広場に出て正面入口から侵入者がやって来るのを待った。


さて……鬼が出るか蛇が出るか……


「……大丈夫か?」

「ああ、トラップは無いようだ」

「ダンジョンか?……それにしても美味そうな匂いだ……」


三人の冒険者達は広場を覗いて俺を確認した。

ビクッと身動ぎした後、俺を怪訝そうに見ている。


「何の用だ?」

「あっいや……」

「俺達は冒険者だ!突然訪問してすまなかった……気分を害したなら謝る!俺達は一つ向こうの山に存在するダンジョンを攻略し、街を目指して帰還していたんだ……しかしまだ積雪が酷く、雪の中では思うように行軍できず、食料も底をつき、街までは到底持たない……近くの山頂から山から登る煙が見えたのでここに来たんだ……相応の金は払う!すまんが、食料を分けてくれないか?」


……煙か……春になり雪が溶けて露見したようだな……しかし好都合かもな……魔剣を試すにはちょうど良い……


俺は走って冒険者達に近付いて行く。

「止めろ!戦う意思は無い!」


「甘い事言ってんな!やっぱり俺の言った通りだろ!?こんな所に住んでる奴がまともなわけねぇ!」


「お前達もやめろ!モンスターじゃ無いんだぞ?」

「俺達は腹が減ってんだぁ!限界だ!」

「構うもんかよ!」


冒険者のうち二人はやる気満々か……いいだろう!


俺と冒険者二人は詰め寄り、すぐにお互いの射程に入った……俺は剣を横振りし、相手は斧と剣を振り上げる。

剣圧で空気を取り入れた魔剣が炎を纏う……

《ボッボッボッボッ!ゴウッ!》

「グオォ!」

「まけ……グアァ!」


驚いた……


小手調のつもりで放った俺の一撃が、武器と身体を切り裂き、二人を荒々しい炎で包み焦がしていく。


「ま……魔剣だ!」

残った冒険者は後退り、後方のゴブリンとぶつかった。


「ゴ……ゴブリン!」

「ゴブッ……」

《キンッ!》

冒険者がとっさに繰り出した剣をリーダーゴブリンは斧で軽く打ち返した。


冒険者は打ち負けて背後によろける。


打ち合った感じ、おそらく先程の冒険者は60前後って所だろう……ゴブリンリーダーは既に90オーバー、サブは70……

戦闘職の一般ゴブリンでさえ60行くか行かないかだ……


「な……なんだ!やっぱりダンジョンなのか?」

「そうだ!ここはダンジョンだ」

「くそっ!どうすれば!」

「わかっているだろう?生きる為には一つの道しか残されていないない……この無数のゴブリンと俺を皆殺しにする以外には無い」


「くそぉぉぉ!」

一般ゴブリンは三体で飛び掛かり、冒険者を八つ裂きにした。


「中々の出来じゃな」

「見てたのか?工房を離れるなんて珍しいな……ビアトール」

「久々に作品の完成度が気になってのぉ……満足じゃわ」

「そんな事より、そろそろ防具と武器を作れよ?」

「わかっとるわい!それより新しい魔石はまだ作れんのか!」

『今の冒険者では無理みたいだな』

「今のお前に渡したらまた没頭しちまうだろ」

「当たり前じゃ!」

「全く!少しはマシになったが、ゴブリン達はまだまだ下手くそじゃからのう!骨が折れるわぃ!」


ビアトールはブツブツ言いながら、工房へ戻っていく……肉と卵を焼く良い匂い……飯の時間か……


「お前達!久々の実戦だったが、大したもんだ!死体を埋めたら飯にするぞ!」

「ゴブッ」

中々良い感じだ……そろそろ冒険者ギルドに行ってダンジョン探索依頼を出しても良い頃かもしれない……


片付けを済ませたゴブリン達と共に食堂へ向かう。


「今日もベーコンエッグか」

「ゴブッ!」

大きなブロック肉を卵で包んだ料理……噛めば肉汁が飛び散るこれが、ゴブリン達は大好きらしい隙さえあれば献立はこれになる。

……まぁ確かに美味いんだが……


給餌ゴブリン達が朝食を運んでいる……

ゴブリン達はヨダレを垂らして目の前の飯を凝視した。

「……食べるか」

俺が一口食べるのを確認してからゴブリン達はガチャガチャ音を立てて食事し始める。


俺より先に食べないってのがゴブリンなりの敬意らしい……


そういえば冒険者達は煙を見て来たと言っていたな……ギルドの前に一度外へ出て確認してみるか……

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