15
「マリブ!マリブ!」
歌は既に止まり、スオは暗闇の中……女達の顔を確認する……暗くて中々見つからないらしかった。
「おい!そこの!」
「あ?」
縛られながらルオは俺に話しかけてきた。
「スオに幾らで雇われた!?私ならもっと出せるぞ?」
「……5億だ」
「くっ!スオめ!私の隠し財産に手をつける気だな!……私は6億出そう!……それと、そうだ!私は顔が広い!私に付けば!付き合いの有る貴族に口利きする事もできるぞ?どうだ?今の傭兵稼業で満足してないんだろう?」
「……」
別に出世欲はない……今回は金が入れば文句は無い……しかしこのルオと言う男はスオとの約束を破ったやつだ……信用出来るとも思えないな……
「おい!聴いているのか!?」
「いない!マリブ!答えて!」
「良い子〜♫青い……」
またあの歌だ……
「マリブ!そこに居るのはマリブなの!?……明かりを!早く!」
少女だろうか?小さな影を揺すりながら、スオは叫んでいる……
やれやれ、やっと見つかったか……
俺は馬車に備え付けられているランプを外してスオに渡した。
スオは奪う様にランプを取り、人形を抱えた少女を照らす。
「マリブ?……いや……あんた……誰よ!……なんでその歌を!」
「ギャハハハ!」
ルオは少女を乱暴に揺らしている。
「痛い!……私、知らないよ!」
「その人形は……」
スオが人形を掴んで引き寄せようとする。
「知らないよ!知らない!これは私んだ!」
「痛っ!」
少女に噛まれ、スオは腕を引き……放心し、後方に数歩後退り、へたり込んだ。
「そんな……一体何が……」
「私は悪くない!貰ったんだ!」
「ギャハハハ!まだ分からないか?スオ!マリブは生まれつき身体の弱い女だったようだ!体を壊して、もう何年も前に死んだんだよ!ガリガリに痩せてな!今更助けようなんて片腹痛い!ギャハハハ!」
「そん……な……私は……何の為に……」
「俺にとってはどうでもいい……さっさと話を終わらせてくれないか?……」
無言か……なら仕方ない……
「よし、皆殺しに……」
「待ってくれ!もうその女は使い物にならんが!俺は金を積む!どうだ?傭兵!」
……客観的に見てこの商人は信用ならない、スオが使い物にならないなら5000万で手を打つだけだ……
「ダメだ!お前は信用ならない」
「そんな!やめてくれ!」
「スオ!お前の都合は知らん!約束を果たせ!」
「私は……もう……わからない」
甘ったれが!
《バキッ!》
俺はスオの胸倉を掴み、思いっきり引っ叩いた。
スオが口を切り、ビチャッと吐血する。
「甘ったれるなよ!スオ!テメェの生きる意味や死ぬ意味を他人に押し付けるな!……ゴブリン!ナイフを寄越せ!」
後手にナイフを受け取り、スオに握らせる。
「俺は金が欲しい!だから少しの間待ってやる!そのナイフで!妹の為、ルオに復讐するのか?自害するのか?その女達に八つ当たりするのも良いだろう!……死ぬのが怖いなら俺が殺してやる!……なんにしてもテメェで決めて行動しやがれ!待たせるようなら斬り殺す!」
「貴方に何が分かるっての?」
「……」
「でも……そうね……確かに今の私に出来ることは……」
「や!やめろ!来るな!スオ!……おい!あんた!金が欲しいんだろ?俺は稼ぐぞ?お前の為に命を賭ける!……だから助けてくれ!こいつを止めてくれ!」
「旦那様……貴方の言葉を誰が信じると思う?……私の妹を殺した貴方の言葉を!」
「ひ……スオ!俺が!悪カッタァァァイタタタタタタ!ひぃぃ!」
スオは何度か刺して傷口を踏みつけて広げている。
「よし、時間だ!ゴブリン達!掃除しろ!」
「待って!……殺すのは待って!」
「良いだろう!ゴブリン達!お前らは戦利品を入手して戻っておけ!」
「ゴブッ!」
ゴブリン達は馬車や死体を片付けて去っていく……
「ふぁ〜ぁ……じゃあ都市ウローンに馬車を進めるぞ」
俺はあくびしながら、従者席から馬を操舵した……
「うぅ…もうやめてくれぇ……」
「ありがとうございます……うぅ……」
「私達!自由なのね!お母さん!」
「……何故なの?」
「え?」
「何故マリブは死んで貴方達は生きてるのよ」
「それは病気で……」
スオは女達の顔を見た。
「嘘ね……何故死んだか言いなさい!」
その問いに女達が沈黙しているとスオはポーション片手にルオの腹を割いて腸を出した。
「ギャギャギャ!」
ポーションを掛けて、ルオの腹の傷は治っていく……腸は外に出たままだ……俺はその様子を横目で見ていた。
「ひぃ……ひぃ……」
「私の部族に伝わる拷問法……ブンガフンガ……」
詳しくは見てないがルオの脱腸はナイフで輪切りにされたり、ハイヒールで踏まれたりしていた。
「ポーションで痛みになれる事すらお前には叶わない……」
「ひぃ!もうやめてくれ!私は知らん!気がついた時には死んでいたんだ!」
「どんな風に?」
「わからない!食事を与えても次第に痩せて行き……ガリガリになって死んだんだ……そういえば腹だけは何故か膨れていた……ギャッ!」
ルオは喉を搔っ切られて絶命した。
「理解したわ、殺したのは貴女達ね……」
「ごめんなさい……でも生きる為だったのよぉぉぉぉ!」
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静かな馬車に揺られ、都市が見えてきた。
「……ついたな」
「えぇ……」
……さて、あとは約束通り金をもらうだけだ




