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「マリブ!マリブ!」

歌は既に止まり、スオは暗闇の中……女達の顔を確認する……暗くて中々見つからないらしかった。


「おい!そこの!」

「あ?」

縛られながらルオは俺に話しかけてきた。

「スオに幾らで雇われた!?私ならもっと出せるぞ?」

「……5億だ」

「くっ!スオめ!私の隠し財産に手をつける気だな!……私は6億出そう!……それと、そうだ!私は顔が広い!私に付けば!付き合いの有る貴族に口利きする事もできるぞ?どうだ?今の傭兵稼業で満足してないんだろう?」

「……」

別に出世欲はない……今回は金が入れば文句は無い……しかしこのルオと言う男はスオとの約束を破ったやつだ……信用出来るとも思えないな……


「おい!聴いているのか!?」

「いない!マリブ!答えて!」


「良い子〜♫青い……」

またあの歌だ……

「マリブ!そこに居るのはマリブなの!?……明かりを!早く!」

少女だろうか?小さな影を揺すりながら、スオは叫んでいる……

やれやれ、やっと見つかったか……


俺は馬車に備え付けられているランプを外してスオに渡した。


スオは奪う様にランプを取り、人形を抱えた少女を照らす。

「マリブ?……いや……あんた……誰よ!……なんでその歌を!」

「ギャハハハ!」

ルオは少女を乱暴に揺らしている。


「痛い!……私、知らないよ!」

「その人形は……」

スオが人形を掴んで引き寄せようとする。

「知らないよ!知らない!これは私んだ!」

「痛っ!」


少女に噛まれ、スオは腕を引き……放心し、後方に数歩後退り、へたり込んだ。

「そんな……一体何が……」

「私は悪くない!貰ったんだ!」

「ギャハハハ!まだ分からないか?スオ!マリブは生まれつき身体の弱い女だったようだ!体を壊して、もう何年も前に死んだんだよ!ガリガリに痩せてな!今更助けようなんて片腹痛い!ギャハハハ!」


「そん……な……私は……何の為に……」

「俺にとってはどうでもいい……さっさと話を終わらせてくれないか?……」

無言か……なら仕方ない……

「よし、皆殺しに……」

「待ってくれ!もうその女は使い物にならんが!俺は金を積む!どうだ?傭兵!」

……客観的に見てこの商人は信用ならない、スオが使い物にならないなら5000万で手を打つだけだ……

「ダメだ!お前は信用ならない」

「そんな!やめてくれ!」

「スオ!お前の都合は知らん!約束を果たせ!」

「私は……もう……わからない」

甘ったれが!

《バキッ!》

俺はスオの胸倉を掴み、思いっきり引っ叩いた。

スオが口を切り、ビチャッと吐血する。


「甘ったれるなよ!スオ!テメェの生きる意味や死ぬ意味を他人に押し付けるな!……ゴブリン!ナイフを寄越せ!」

後手にナイフを受け取り、スオに握らせる。


「俺は金が欲しい!だから少しの間待ってやる!そのナイフで!妹の為、ルオに復讐するのか?自害するのか?その女達に八つ当たりするのも良いだろう!……死ぬのが怖いなら俺が殺してやる!……なんにしてもテメェで決めて行動しやがれ!待たせるようなら斬り殺す!」


「貴方に何が分かるっての?」

「……」

「でも……そうね……確かに今の私に出来ることは……」

「や!やめろ!来るな!スオ!……おい!あんた!金が欲しいんだろ?俺は稼ぐぞ?お前の為に命を賭ける!……だから助けてくれ!こいつを止めてくれ!」

「旦那様……貴方の言葉を誰が信じると思う?……私の妹を殺した貴方の言葉を!」

「ひ……スオ!俺が!悪カッタァァァイタタタタタタ!ひぃぃ!」


スオは何度か刺して傷口を踏みつけて広げている。

「よし、時間だ!ゴブリン達!掃除しろ!」

「待って!……殺すのは待って!」

「良いだろう!ゴブリン達!お前らは戦利品を入手して戻っておけ!」

「ゴブッ!」

ゴブリン達は馬車や死体を片付けて去っていく……


「ふぁ〜ぁ……じゃあ都市ウローンに馬車を進めるぞ」

俺はあくびしながら、従者席から馬を操舵した……


「うぅ…もうやめてくれぇ……」

「ありがとうございます……うぅ……」

「私達!自由なのね!お母さん!」

「……何故なの?」

「え?」

「何故マリブは死んで貴方達は生きてるのよ」

「それは病気で……」

スオは女達の顔を見た。

「嘘ね……何故死んだか言いなさい!」

その問いに女達が沈黙しているとスオはポーション片手にルオの腹を割いて腸を出した。

「ギャギャギャ!」

ポーションを掛けて、ルオの腹の傷は治っていく……腸は外に出たままだ……俺はその様子を横目で見ていた。


「ひぃ……ひぃ……」

「私の部族に伝わる拷問法……ブンガフンガ……」

詳しくは見てないがルオの脱腸はナイフで輪切りにされたり、ハイヒールで踏まれたりしていた。


「ポーションで痛みになれる事すらお前には叶わない……」

「ひぃ!もうやめてくれ!私は知らん!気がついた時には死んでいたんだ!」

「どんな風に?」

「わからない!食事を与えても次第に痩せて行き……ガリガリになって死んだんだ……そういえば腹だけは何故か膨れていた……ギャッ!」

ルオは喉を搔っ切られて絶命した。


「理解したわ、殺したのは貴女達ね……」

「ごめんなさい……でも生きる為だったのよぉぉぉぉ!」


ーーーーー


静かな馬車に揺られ、都市が見えてきた。

「……ついたな」

「えぇ……」

……さて、あとは約束通り金をもらうだけだ



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