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「1番馬車!出発だ!」
お……そろそろ時間か……
馬車が次々と出発していく……
仮眠中に何かを運び入れてるのはわかっていたが、改めて見ると俺の周りには木箱が大量に積まれ、どれもギッシリと何かが詰まっているようだった。
……成功させなくては……
「そろそろ最後尾の私たちも出発致します、準備はよろしいでしょうね?」
「ああ、問題ない」
先程スオと呼ばれていた女性が従者席に座り、9番馬車を追って走らせた。
最後尾ってのは幸運だった……
馬車は夜道を走っていく……しばらくしてから俺は馬車の後ろから顔を出した……
ゴブリンが俺を確認し、馬車の後ろを静かについてくる。
「よし、どの馬車は中身を大量に積んでいる……そう易々と捨てれるものではないし、その重量から舗装されてない道を走れるものではない……お前達はいつもの場所で先頭の足止めをしろ……兎に角時間稼ぎをしろ……俺は後ろから主力を蹴散らしていく」
「ゴブッ……」
ゴブリンは走って草むらに飛び込み消えた。
俺は馬車の先頭に向かう……
……あとはタイミングだ……ゴブリン達が騒ぎを起こした瞬間、俺はこの従者を殺し、9番から1番に向けて従者と護衛を皆殺しにする!
……しかし中央2台には何が積まれているのか?……護衛が居ない理由は……まぁいい!成るように成るさ!
馬車を走らせているスオが突然、話しかけてきた。
「今日は冷えますね……」
「そうだな……」
「私と取引をしませんか?」
「なんだと?」
なんだ……こいつ?
「バルサ……いや、名も知らない人……」
偽名がばれている!
《ガチャ!》
「殺れば!困るのはあなたです!」
俺がぶった切ろうと構えた瞬間、いち早くスオは口を開いた。
「なに?」
「この依頼は補償をかけている……ギルドに確認し、バルサニコスが既に数日間行方不明な事は既にギルドは把握していましたよ……この一団が失踪すれば……西側一帯を調べ上げるでしょう……それに雇い主のルオさんは、まだまだお金を蓄えていますよ?……先程のゴブリン……ここで私を殺しても作戦はおそらく成功するでしょう……ですがそれでは報酬はせいぜい5000万ゴールドが良いところです……私は彼の隠し金庫も把握しています……協力すれば5億にはなるでしょうね……」
「お前の目的は何だ?そこまで調べておきながら何故俺を引き入れた?」
運転資金は必要だ……だが金に釣られ、やっと回り始めたダンジョンを危険に晒すわけにはいかない!
「私にとっても唯一のチャンスだったのですよ……この団の中央……護衛の無い馬車になにが積まれているか……知ってますか?」
「いや?」
「売春婦達が積まれてるのです……田舎町から都に移動する為に……」
「だからどうした?正義感か?」
「正義感……いや、違います……ルオと私は約束しました……私が孝行する代わりに妹を学校に通わせ、なに不自由無い暮らしを……」
ははぁ……見えてきたな……商人の考えそうな事だ……
「約束を破られたんだな?」
「御察しの通り、私の妹は娼婦にされていました……知ったのは偶然でした……馬車の横切る時に歌が聞こえたんです……母が作った歌……妹以外には知らないはずの歌です……」
資金は喉から手が出るほど欲しい……だが完全には信用できない……ゴブリンに見張らせるか……そろそろ約束の時間だ……仕方がない!
「まぁいい……ピィ〜!」
1匹のゴブリンを呼び寄せ、スオの首にナイフを当てさせる。
「妙な動きはするなよ?ゴブリン!こいつが動いたら構わずかっ切れ!」
「ゴブッ!」
「ご心配なく……」
先頭馬車側から声が聞こえて来た。
「全体!止まれ!賊だ!賊が出たぞー!」
スオに馬車を止めさせ、俺は9番馬車に向かった。




