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アルテマのコイン  作者: 朝倉新五郎
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第6話 物語の中で

 祐介は飛空艇の中でロンディアスギルドのことをカラムに伝えていた。

 できればそのギルドに所属して欲しいとも。

 しかし、小説通りならカラムはロンディアスに入ってギルドメンバーの先頭に立つはずだ。

 レッドがローグアサシンになるためにはカラムは必須の人物である。



 ロンディアスギルド会館に入ると広間にディーハが居り、また昼間から酒を飲んでいた。


 「おう!レイムか、そいつは誰だ?またカッケー甲冑じゃねーか」

 と言ってカラムのことを聞いてきた。


 カラムは少し驚き

 「あの人は、パラディンのボルクス・ディーハさんですね?」

 祐介に小声で伝えてきた。


 「え?ディーハの顔を何故知ってる?」

 祐介が言い終わる前に

 「最強の守護騎士、パラディンのディーハって有名ですよ?会えば覚えます。レイム師匠ほど有名じゃないですけど」

 どうやらカラムは色々と情報を持っているらしかった。


 それをディーハが聞いていて

 「てめぇ、レイムほどじゃねーだと?俺は壁役なんでな、戦歴は目立たねーんだよ!」

 と言ってから

 「今、師匠つったか?レイム、お前そいつを弟子にしたのか?」

 ディーハが絡んできそうだったので祐介は

 「バイス・カラムだよ、魔法騎士のな。今からジャックに頼んでロンディアスに入れてもらう。

  酒は飲みすぎるなよ?酔っ払いのパラディンとなんか組みたくないからな?ディーハ」

 そう言って2階への階段を上がってジャックの部屋の扉をノックした。


 「だれだ?」とジャックが出てきて「あ、レイムさんでしたか、何か御用ですか?」

 一瞬で態度が変わっった。


 「一人紹介したい奴が居るんだけどね、魔法騎士でバイス・カラムって俺の弟子にしたんだ」

 祐介がそう言うと

 「レイムさんの弟子ですか!?魔法騎士って3次職じゃないですか」

 ジャックが驚いたようなので

 「俺の代わりにロンディアスのメンバーの先頭で使ってやってほしい、ダメだろうか?」

 祐介はカラムは絶対にギルドに入る事を知っていたため心配はしてなかった。

 しかし、時期がいつになるかまでは知らない。

 「レイムさんが弟子にするほどの御方なら出来れば入って頂きたいですが、ご本人は?」

 そう言われたのでジャックを1階の広間につれてきて会わせた。


 祐介は一応の仲介役として

 「こちらがこのロンディアスギルドのマスターのジャック・ラウド。

  そしてこいつが俺の弟子のバイス・カラム。俺は食客だがロンディアスと組んでる」

 そう言って紹介した。


 「バイス・カラムです、レイム師匠の弟子ですがある程度は鍛えていますのでお願い出来ますか?」

 カラムがジャックに言うと

 「願ってもない、まだウチには3次職が居ないのでこちらから頼みたいくらいです」

 ジャックはそう答えた。


 祐介はその様子を見て

 「じゃあ頼むよ、ジャック。いいね?カラム」と言うと

 カラムは

 「師匠はバイスと呼んでください、レイム師匠がおっしゃるならギルドに入らせて頂きます」

 ジャックとカラム両方の了解を取り付けた。


 「あ、そうだ、隣の棟って買えたのかな?ジャック」

 祐介が訊くと

 「空いてる建物だったんで証券を換金してその日のうちに買い取りました、今改装中ですけど1ヶ月くらいで全部終わります。安く買えたので反対側の棟も今交渉中です」

 ジャックがそう返事をした。

 「要らない壁をぶち抜いてレイムさんやディーハさんの部屋を作っています、ベータさんも時々いらっしゃるので合計で7部屋と1階に厨房と広間を。かなり広く間取りをしています」

 「ウチのギルドメンバーも少し増えてますのでこっちはそのままにしてますが」

 ジャックは祐介に図面を見せて説明した。


 「あっちの棟は7部屋だけか?かなり広い間取りになるんじゃないか?ジャック」

 祐介はギルドのスポンサーなので2階の1フロア全部を与えられていた。

 ディーハやベータの部屋もかなり広い。

 「あと、街の者を雇って調理や清掃もやらせようと考えています」

 ジャックは祐介達3人の待遇をかなり良くしようとしているようだった。

 「作りかけてるなら仕方ないけど、バイスの部屋はそんなに広くなくてもいいからね?」

 「あとジャックは向こうの棟に部屋を持つように、ギルドマスターだから、いいね?」

 祐介は出来るだけギルドのことには口出ししないつもりだったが、これは違うと考えた。


 大金を出してくれた祐介への気遣いだろうが、そこまでしてもらおうとは考えてなかった。

 祐介はただの食客でありギルドの主要なメンバーではない。

 ロンディアスはこれからクルツ・レイムが頼りにするギルドなので物語に従っただけだ。


 祐介はディーハに向かって

 「お前の部屋も用意されてるらしいな、少しくらいギルドに金貨でも銀貨でも入れておけよ」

 そう言って酔ったディーハのところから離れて

 「ベータはどこに行った?」とジャックに尋ねた。


 「ベータさんは他の臨時パーティーに行ってますね、すぐ戻ると思いますが」と答えられた。


 「何十人かわからないけどこんな調子で集まるのかよ」

 祐介は愚痴ってみた。

 しかし集まるのは筋書きに書かれている。


 「誰にでも役割は有るんだぜ?レイムもわかってんだろ?」

 ディーハにそう言われて頭が冷えたようだ。

 「そうだな、今日も一つ筋書きに沿ったことをした」

 しかし、それは偶然だろう、とも思った。


 こちらの世界のことを知り、小説で確認しなければならない。

 祐介は総ギルド会館のポータルで飛び回りながらどの街がどの街へ繋がっているのかを書き止めた。

 その結果

 プレイシル中央都市はホックランド、天空の塔、夢見の空島

 イースタルードはウェンタリア、ルクオール島

 ウェンタリアはプレイシル、バスター岬

 サンディアはイースタルード、レイス島

 ホックランドはサンディア、ガルディキア山脈

 また、ルクオール島のポータルからもヤックランドと呼ばれる場所につながっていたりする。

 この世界がどれだけの都市や街を持っているのかを調べるだけで1週間はかかってしまった。

 もちろん、行ったついでに近辺のダンジョンをクリアしてきている。


 「大体の世界はわかったけど、未踏のダンジョンや塔が有るな、この世界は広い」

 祐介は地図を広げながらある程度書き込んでいった。



 その間にも元の世界での準備は着々と行っていた。

 まずは不要なものを全て売却し、コレクションも売り払った。

 祐介の実家の部屋にはベッドとTV、PCや一通りの服だけになった。


 保険や他の契約も全て解約し、銀行口座は一つにまとめてクレジットカードも全て解約だ。

 会社へ行くスクーターを残してバイクと車も売った。

 借りていた部屋は解約し、1ヶ月後には引き払う予定だ。


 携帯電話はもう少し持っておくが、アメリカに行く前に契約を切る。

 両親には数年間は連絡が取れないかもしれないと伝えた。

 これはかなり怪しまれたがヨーロッパや東南アジアにも行くからと押し切った。

 会社ではそれとなく海外留学の事を話し、下準備は整えた。

 しかし行方不明になってしまうだろう。

 社会的な自分の痕跡をできるだけ消すことに努めた。


 同時に小説を確認し、ストーリーを暗記した。

 この記憶とディーハの記憶を合わせれば大体の行動は見えてくるだろう。



 ”アルテマのコイン”を手に入れた後の行動は全く書かれていない。

 祐介は元の世界に戻れるのではないかと希望を持っていた。

 亮太はこの5年の間に諦めてしまい、異世界の方に馴染んでしまっているようだった。


 そして祐介にはまず探すものがあった。

 ”ヴァインドソード”これがある場所はわからない。

 ただスルーシアという場所にある塔の頂上に有るらしいが、スルーシアがどこなのかもわからない。

 ディバインナイトに成るためには必須の剣であり、要素である。どうしても必要だ。


 まだこちらに来だしてから一ヶ月も経っていない。余裕はあるがまとめておく必要がある。

 祐介は元の世界に戻っては小説を暗記し、異世界のギルド会館の自分の部屋で記録していった。


 それをディーハに読ませて確認を取るが、当のディーハは

 「まぁ大体そんな感じだったな、忘れてた部分が多いけど覚えてる限りは」

 5年も帰れなければ忘れてしまって当然だが、一応は何度も読んでいたらしい。


 祐介は”ヴァインドソード”を探すことにした。

 誰といつ行くことになるのかは書かれていないが、10人のパーティーと書かれていた。

 しかもほぼ世界最強の3次職ばかりを集め無くてはならない。

 こちらの世界でもやるべきことは多い。


 「まずは10人か」祐介は物語を確認しながら「変なことに巻き込まれたな」とこぼした。



 祐介は出かけるときはディーハかバイス、もしくはその二人と行動した。

 主要な5都市の周辺のクエストを受けてはクリアしていった。

 時にはロンディアスギルドのメンバーともダンジョンに行っては帰ってくる。


 そのうち気がついたが、クルツ・レイム一人ではクリアできないクエストやダンジョンも多い。

 ある程度辺境になると困難なダンジョンもあった。


 やはり仲間は必要だということがわかった。

 「最強と言われてもかなり強いと言うだけで一人でなんでも出来るってわけじゃないな」

 祐介は徐々に一人での行動を減らしていった。

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