第39話 ディバインナイトの弟子
祐介は天空の塔を中心にダンジョンを単身攻略し続けていた。
ジャック達以外にも3次職後半の者が増えてきていたため、1、2次職の育成は任せきっている。
そして、ゴードに新しい装備を発注してから半年が過ぎた。
そろそろ出来上がっているだろうとサンディアのゴードの店に立ち寄り確認することにした。
ゴードの店に入ると「遅かったな、もうとっくに出来上がっとるわい」
そう言われて甲冑と楯をカウンターに置いた。
「お前さんの持ってくるレアアイテムや魔法石をふんだんに使った作品だぞ、もうその装備は世界一じゃなくなったな」
ゴードは笑って「着替えてみるか?」と言った。
祐介は早速今着ている甲冑を外すと、カウンターの甲冑を装着していった。
「これも軽いな、かなり動きやすい。これで前の装備とくらべてどの程度に?」
ゴードに尋ねると
「防御力は倍以上だがの、レアアイテムの効果や魔法石で属性攻撃はほとんど跳ね返す。それに着ている重さも感じまい?」
「関節部分を改良して動きの邪魔にならんようにした。一度ダイヤモンドドラゴンとでも戦ってみてみろ、かなりの違いがわかろう」
ゴードは自慢げにそう言って
「これが余ったアイテムと魔法石なんでな、持って帰って倉庫にでも預けとけ」と大量のアイテムを出してきた。
「お前さんがどんどんアイテムを持ってくるから最高の装備が作れてこれだけ余った。まあまた何かあれば来ると良い、いくらでも打ってやる」
祐介はゴードの言葉を聞きながらボトムレスバッグに余ったアイテムを詰め込んでいった。
「あ、それなら今の装備を打ち直して貰いたいんですが良いですか?すぐ本人を呼んでみます」
そう言ってフレンドリストを開けてカラムと連絡を取った。
「はい、師匠、何かありましたか?」とカラムがすぐに訊いてきたので
「今どこに居る?手が開いてるならサンディアのゴード鍛冶師のところまで来れるか?」
祐介が答えた。
「えーっと、今はレッド達と天空の塔の100階をクリアして地上に戻ったところです、もう帰るところなのですぐに行きます」
そう言って急いで用意を始めたようだ。
1時間ほどしてカラムがゴードの店に現れた。
「何でしょうか?師匠」カラムが訊いてきたので
祐介は
「今日新しい装備を受け取ってな、前の装備をバイス用に打ち直してもらおうかと考えた」
何の気無しに言っただけだが
「ええ!?師匠の装備をですか!?嬉しいですけどとんでもない装備だと聞いてますよ?俺に使いこなせるかな」
カラムが驚きながら言った。
それを見ていたゴードが
「こいつはクルツ・レイムの正式な弟子なのか?レベルは?」とカラムに聞いてきた。
「今は魔法騎士のレベルオーバーで700位だと思いますが」
カラムはあの時よりかなりレベルを上げていた。
「700ならレイムの剣も使いこなせるはずじゃな、見たところ今使ってる剣はヴァインドソードか?
ん?ヴァインドソード?お前が手に入れたのか、ちょっと見せろ」と言われたので祐介は鞘ごとカウンターに置いた。
「使用レベル2000じゃと?噂には聞いてたが500年生きてて初めて見るレベルだの、素晴らしい」
惚れ惚れと見ながら鞘に戻し祐介に返した。
「前の剣の使用レベルは600位のはずじゃからこの若造にも使えると思うが、今持ってるか?」
ゴードにそう訊かれ「倉庫に預けてあるので取ってきますね、バイスちょっと待っててくれ」
そう言い残してサンディアの総ギルド会館へ走っていった。
「軽い甲冑だな。一切動きの邪魔にならない」
祐介が預けていた剣を持ってゴードのところへ戻ってきた。
どうやらカラムは色々とゴードに訊かれているようだった。
「持ってきましたよ」と祐介は以前使っていた剣をカウンターに置いた。
ゴードはそれを抜き「裝備レベル650じゃな、この若造でも使いこなせるじゃろ」
「で、甲冑とこの剣を打ち直してお前さんの弟子が使えるようにするのか?紋章を無くして色を変えるだけで済むな、サイズはお前さんと変わらん」
ゴードと祐介のやり取りをカラムが聞いていて
「あの、師匠の剣と甲冑を頂けるんですか?」恐る恐る尋ねてきた。
祐介はじーっとカラムを見ながら
「背丈も体つきもほぼ同じか」と言ってから「このバイスの甲冑の色と同じようにして欲しい」とゴードに告げた。
「今装備している甲冑を作って貰う前まで世界最強の甲冑と剣だったからな、お前がパーティーの柱になれ」
祐介はカラムにそう言って「打ち直しはいくらになる?」とゴードに訊いた。
ゴードは少しうなりながら
「さっきのレアアイテムと魔法石もう一回出してくれ」とカウンターを空けた。
祐介がボトムレスバッグからジャラジャラゴロゴロとアイテムを出すと「ついでにもう少し強化しておく、ダイヤモンドドラゴンの素材があるからの、あと魔法石も良いのが余っとる」
ゴードはレアアイテムと魔法石をごそっと取って「他はいらん、仕舞っておけ」と祐介に言った。
その様子をずっと眺めていたカラムが
「あのー、とんでもない裝備な気がするんですが、俺なんかが装備しても良いんですか?」
そう訊いてきたので
「ん?使えるなら使ったほうが良いだろ?ロンディアスの魔法騎士の中じゃバイスが一番鍛えてるしな」
そんなやり取りはどうでもいいという風にゴードは
「30ディルト置いていけ、3日もあれば出来上がる」と言ったので祐介は「そういうことらしい、3日の間サンディアのダンジョンを2人でクリアしておくか?」とカラムに言った。
カラムは
「ここのところ師匠と組んでなかったのでどれだけ強くなったか見て欲しいです、サンディアのダンジョンなら大体ソロでもクリア出来ます」
ということで、サンディアに宿を取ってありったけのクエストを受けることにした。
サンディアの最強ダンジョンはヒュージフレイムドラゴンがボスだが、それは難しいかもしれない。
ただ、そのダンジョンでも祐介にとっては簡単にクリアできるのでカラムの強さを見るためにも回ることにした。
あと祐介がゴードに
「紋章はそのままで良いです、バイスは俺の弟子なんでクルツ・レイムの紋章を使わせます」と注文をつけた。
それを聞いてカラムが
「師匠の紋章を俺が背負うんですか・・・甘ったれたことは出来ませんね、わかりました」と気を引き締めた。
「じゃあ行くか、ゴードさん頼みます。3日後にまた来ます」
と言って総ギルド会館へ2人で戻った。
2人で歩きながら雑談していたが、カラムの気合の入り方が言葉の端々に見て取れた。
「目標は天空の塔をソロで攻略です」とまで言い出した。
祐介は
「いや、それもいいけど出来るだけギルドメンバーを鍛えてやってくれ」と返した。
「もちろんです」とカラムは答え「師匠の裝備、師匠の紋章、ロンディアス最強の魔法騎士・・」とぶつぶつ言い出した。
総ギルド会館に着くと、クエストカウンターで受けられる限りのクエストを受け、止めていたホバーライダーに2人で乗り込んだ。
サンディアにある10以上のダンジョンを3日でクリアすることにし、最弱のダンジョンから始めた。
最初から祐介はカラム一人に任せて自分は後をついていくだけだった。
後ろから見る限りかなり強くなっているのがわかる。ほぼ1撃で殆どの敵を倒していた。
「この程度のダンジョンなら簡単なようだな、うん、かなり腕を上げているね」
祐介に褒められてカラムは有頂天になりかけたが、冷静さは失わない。
まるで自分の後ろにパーティーメンバーが居るような戦い方で進んでいく。
1日で5つのダンジョンをクリアして帰った。
次の日も、また次の日もダンジョンに潜り続け、塔を攻略し、ヒュージフレイムドラゴンの塔だけになった。
「ここは少しキツいですけど、師匠は出来るだけ手を出さないで下さい」
カラムはそう言って50階ある塔を登っていった。
このドラゴンの塔には多くのドラゴンが現れるがほぼ単体で出現する。
カラムは戦いながらポーションで回復し、危なげなく倒していった。
そしてとうとうヒュージフレイムドラゴンの居る最上階へ達し、カラムは身構えた。
祐介は戦いを見ていたが、終始カラムが攻撃で圧倒していた。
「戦い方が上手くなりすぎてるな、しかもパーティーが居るかのような戦い方だ」
カラムは祐介が考えていた以上に成長していた。
しかしダイヤモンドドラゴンに次ぐ強さのドラゴンの1種だ、ポーションをかなり使っている。
無理をしているようには見えないが明らかに手こずっていた。
祐介が手を貸そうとした時に
「ソードエクスキューション!」とカラムが止めを差した。
カラムはかなりHPを減らしていたがソロでこの塔を攻略してしまった。
「ここはかなり厳しいですね、ポーションが尽きました。けど前なら手も足も出なかったので強くなっています」
どうやら大量に用意していたポーションを全て使い切ったようだ。
「そうか、じゃあ下りは俺に任せろ」祐介は自分のポーションをカラムに渡し、全回復させた。
祐介が先頭で下って行くが、ブルードラゴンであろうとブラックドラゴンであろうとスキルで1撃で倒していく。
新しい甲冑と楯にはドラゴンのブレスや攻撃がほぼ効かない。
前の裝備と比較して倍以上というのも頷ける。
祐介とカラムはゴードのところへ行き、裝備が出来ているか確認しに行くと、出来上がっていた。
「ほれ、甲冑と楯と剣を置いておくぞ、前よりも強力に出来たんで試してみろ」
「あと、これが余ったアイテムと魔法石だ」とカウンターに出された。
またかなりの数を使ったようだ。
そう言われてその場でカラムが着替えた。
「ものすごく軽いですね、動きに制限が無くなる・・・楯は左腕に取り付けるんですね」
カラムは剣も手に取り
「これも大きさの割にかなり軽い」
「良いんですか?こんな裝備」カラムが訊くと
「寝かしておいても無駄だろう?」と祐介は答えた。
すぐにでも戦いたいと考えるカラムを連れてまた総ギルド会館へ向かった。
祐介がボトムレスバッグの中を見て
「大量だな、倉庫に預けておくか」と祐介は総ギルド会館のカウンターに前の甲冑とアイテムをすべて預けた。
目録を見ると種類も数も倍近くになっている。
「使い道がないなあ」そう言って目録をバッグに入れ、総ギルド会館を出た。
「じゃあ俺はプレイシルから天空の塔へ行って新しい裝備を試すんでバイスは新しい裝備を試してみろ」
そう言ってカラムと別れた。
プレイシルのポータルから天空の塔に出て、いつものように単身乗り込んだ。
低層階はスラッシュの1撃で倒せるためどんどんと登っていった。
そこそこ苦労する80階や100階もスキルで乗り切り、更に上へ上へとポーションやヒールを使いながら登った。
「ダイヤモンドドラゴンねぇ」と言いながら200階に来た。
当然ドラゴンとの1対1の戦いになったが、前の甲冑と比較して倍以上、防御力が向上しているのがわかる。
驚いたのはブレスを浴びせられてもほとんどHPが減らないということだった。
攻撃力はヴァインドソードで向上している上にディバインナイトのレベルやスキルレベルも上がっている。
無敵ではないし、簡単にではないが天空の塔を危険性無くクリアできるようになっていた。
それでもまだ例の島にある2つの塔と2つのダンジョンは無理だろう、行く気にもなれない。
祐介は天空の塔をクリアすると、イースタルードへ帰っていった。




