第21話 初級者達と遊戯
ロンディアス立ち上げから半年もすると100人以上の1次職が新規でギルドに入ってきていた。
もうこの世界に居続けることになった祐介は最終的にアルテマのコインを見つけるのが目的になる。
物語はそこで終わりだが、続きはあるだろう。
日々冒険か遊ぶしかなくなった祐介はやっとこの世界でも落ち着けるようになった。
いつも通り独りで各地のダンジョンを周り、大量のレアアイテムと大金を持って帰る。
それだけが祐介のやれることであり、またすべき事だった。
ある日、アテナシアのミラーから連絡があった。
初心者達の戦いぶりを見ないか。と言う誘いだ。
1次職のフルパーティーと同行するのだが、4ギルドの混成パーティーだった。
プレイシルからそう遠くないダンジョンで、ボスがオーガナイトという簡単な場所だったため気楽に同行した。
しかし、祐介はその戦いぶりを見て驚いた。こんな低レベルの者達でも立派に連携が取れている。
もちろん指示を出しているのはアテナシアギルド所属のメンバーだが、戦い慣れしている。
しばらくの間いろいろなパーティーを見たが、かなり効率の高い戦い方だ。
「ミラーさん、アテナシアのメンバーは皆こんなに視野が広いんですか?」
祐介が尋ねると
「低レベルであっても連携のとり方を教えこんでいますから、育成には自信があるんです」
ミラーは笑って答えた。
それにしてもかなり早い。
モンスターハウス状態の場所でも前衛と後衛の攻撃のタイミングや回復が手慣れている、
とても低レベル1次職とは思えないくらいだ。
「レイムさんはずっと独りだったからでしょうけれど、パーティーは生き物です、各自が各々の仕事に徹すれば2段階上のダンジョンも攻略可能なんです」
ミラーはそう言って眺めていた。
2人は短剣のみを持ち、不意に後ろから現れる敵を軽く片付けるだけだ。
「これなら安心ですね、メンバーが多いと経験値が少ないが危険度は低く効率は高い」
祐介は自分達の前で戦う者達を見ていた。
「そろそろボスのオーガナイトが出てきますよ、我々なら一撃ですがさて、どの程度で倒せるか」
ミラーはじっと見ていた。
剣士やモンク、シーフ等の前衛が一斉に攻撃し、続けてバードや召喚師が回復や強化を行う。
ガンナーやアーチャー、魔法使いにソーサラーが遠距離攻撃を行いプリーストは前衛の回復を行っていた。
戦いは1分もかからずに終わった。
「このレベルでこんな短時間ならかなり強いというか、戦い慣れしてますね」
祐介はギルドメンバー達が楽しみながら戦っていることにも気がついた。
『冒険もいいけど、この世界の楽しみ方をもっと増やさないとな』祐介は考えた。
この世界には会社というものがない。勤めはあるが職人達や作業員のような者しか居ない。
祐介は初心者パーティーから離れて一旦プレイシルへ戻った。
プレイシルの方にもある自分の部屋へ行き、ノートを取り出した。
「さて、何から作るか」そう言って書き始めた。
「日本人だしな、将棋か囲碁かリバーシ・・・チェス、あとは」
祐介は思いつくだけノートにまとめて木工師に発注した。
引き続きギルドメンバー達の戦闘を見ながら過ごし、自分でもダンジョン攻略を行っていった。
大陸を隅々まで走ると知られていないダンジョンは無いことがわかった。
総ギルド会館のデータベースに全て記載されているのだろう。
クエストをこなし、ある程度レベルを上げると新しいクエストで新たなダンジョンが地図に表示される。
祐介の持っている地図には全てのダンジョンが書かれていた。
「この大陸のダンジョンでクリアしていない場所はなさそうだな」
クルツ・レイムは地図の全てをクリアしてしまっているようだった。
そうしている間に祐介が木工師に頼んだ品々が出来上がった。
まずはディーハ、それにミラーに見せると
懐かしがり、そう言う遊びもあったな。と2人は思い出したようだ。
一通り遊んでみると、誰かがルールを覚えているようだったので暇つぶしにはちょうど良かった。
「この世界にはこういったゲームはほぼ無いですからね」
ミラーは長年過ごしているが、そういった遊びを見聞きしたことは殆ど無いという。
「俺は体育会系だったんでこんなゲームはほとんど知らねーんだけどやってみると面白いな」
ディーハは冒険主体で過ごしてきているためそれしか知らない。
祐介がこの世界に新たな遊びを作り出すと、ギルド内でプレイする者達が増えた。
アテナシアでは特に戦術を鍛えるために推奨されていた。
「レイムさんの考えたゲームは難しいけど楽しいですね」
ベータがディーハとチェスをやりながら話していた。
1次職や2次職達は少額で賭けを行っている者達も居た。
ジャックが大金を掛ける事を禁じているため最高でも1ラフルだが、金がかかると本気を出すようだ。
祐介はデジタル世代なのでアナログな遊びをよく知らない。
転移者達を集めてどんなゲームがあるのかを調べていった。
総ギルド会館の地下へ行けば何らかのデータベースはあるかもしれないが調べるには時間がかかる。
祐介とミラーは引き続き探索することを決めていたが、延ばし延ばしにしていた。
まずはパーティーメンバー集めだ。
まだ期間は有るのだが既にアテナシアに連絡を取ってきている者が居るという。
ミラーに会うために祐介はプレイシルへ走った。
ホバーバイクでアテナシアに到着し、ミラーを待っている間に周囲を見回すと皆チェスや将棋で対局していた。
「速いですね、改良型だとは聞いていましたが飛行機並じゃないですか」
ミラーが設計して改良型の図面も書いたのだが考えていたような性能を越えているようだ。
「ミラーさんの設計に少し注文を追加しました。で、早速ですが本題に」祐介がいうと
「そうでしたね、ミトロ・シンティってご存知ですか?」
アテナシアには数人来たと言うが、ミラーが気になる一人らしい。
「竜殺しのシンティと呼ばれるローグアサシンですが、レイムさんと同じく独りでの狩りを好む強者です」
ミラーの言い方でかなりの強さだとわかった。
ローグアサシンの150レベルでスキルもステータスもレベルオーバーしているという。
「それで、人物の方はどうでしたか?」
祐介がミラーに尋ねると
「寡黙ですね、実力は申し分ないですが何を考えているのかわからないといったところです」
ミラーが答え、更に祐介が
「他の者はどうですか?数人来たんですよね?」と訊くと
「そうですね、一応3次職の150レベルですが、我々と比べると経験不足です」
そもそもクルツ・レイムと同じ程度にレベルを極め尽くした者は居ない。
ミラーやティレンド、ディーハクラスの者もほとんど居ないのが現状だ。
その中でもミトロ・シンティはミラーやティレンドに匹敵する実力の持ち主らしい。
「一応ですが、全てフレンドリストには登録していますので連絡は取れます」
ミラーはその点にかけては抜かりはない。
まずはシンティの内面の良し悪しでパーティーに加えることにした。
基本的にこの世界に悪人は居ないので問題はないはずだが、連携を取れるかが問題だ。
シンティを何処かの強力なダンジョンに連れて行って見極めることにした。
「天空の塔と同等のダンジョンを知ってますか?」
ミラーが祐介に訊いたが、クルツ・レイムは知っていたかもしれないが祐介は知らない。
クルツ・レイムほどの強さであるなら天空の塔以外にもかなりのダンジョンにも行っているはずだ。
しかし祐介の記憶にはなかった。
「調べてみます」祐介はそう言ってまだ行っていないダンジョンへ行くことにした。
最初に行ったのは夢見の空島だった。文字通り空に浮かんでいる島だ。
スルーシアと思われる島よりも小さく塔が一つ中央に立っているだけだった。
塔に入り、ある程度登ったが出現するモンスターはそう強くはない。
その上10階まで登るとそれ以上は進めない作りになっていた。
例の金属製の石棺に有ったような何かを嵌め込む分厚そうな扉に遮られていた。
レイス島やルクオール島、ヤックランド、パラディム平原、ポンテック島にも行った。
しかし各場所に幾つものダンジョンが有るため行き方だけを書き留めた。
簡単に行ける天空の塔より困難な場所は必ず有るはずだが祐介には見つけられなかった。
そのため、ミラーに訊くことにした。
アテナシアギルドに行き、ミラーに
「行けるだけの場所に行ってきたんですが夢見の空島は10階からは進めませんでした」
「ミラーさんは天空の塔と同等の場所を知りませんか?」
そう訊いたのだが、ミラーは知らないダンジョンには安全のため極力行かないようにしていたのでパーティーが全滅するようなダンジョンの知識は多くない。
無茶をするクルツ・レイムのように全く知らないダンジョンに単身突っ込むようなことはパーティーでは出来なかった。
祐介は諦めて、自分で探すことにした。
ルクオール島の死者の要塞とパラゴン島へのダンジョン。
ヤックランドのワイバーンの塔とガルムダンジョン。
バスター岬の断崖の塔
レイス島の赤の塔、青の塔、灰色の塔、黒の塔
ガルディキア山脈のガルディキアダンジョン
コールードの鏡池のダンジョンとスノーキメラのダンジョン
デレル平原の灼熱のダンジョンと氷の城
パラディム平原の熱砂の塔、パラディムダンジョン
ポンテック島の溶岩ダンジョンとアメジストの塔
祐介はポータルで行けるところは全て行ってみた。
最後となるブルーノ島のグランデドラゴンの塔へ入るとかなりの強敵ばかりが出現した。
各ダンジョンのボスクラスが頻繁に出てくる。
「ここなら試せるか?」自分の実力でクリア出来るなら意味がない。
祐介は時間を掛けて戦いながらも50階の最上階へと登った。
そこには塔の名前であるグランデドラゴンが居た。
「倒せるかな?」祐介は突進した。
ドラゴンは即座に祐介を見てブレスを吐いた。
楯でそのブレスを受け止め、攻撃を加えると天空の塔のダイヤモンドドラゴン程ではない。
ゴードの剣でも手こずった相手だったがグランデドラゴンの鱗はバッサリと斬れる。
「違うな、ここもパーティーで来るほどじゃない」
祐介は手こずりながらもドラゴンを倒した。
すると消えてゆくドラゴンがカチャリと何かを落とした。
ペンダントのようだったが、それには見覚えが有ったので祐介が拾ってみた。
「これって夢見の塔の扉に合いそうだな」祐介は引き返し夢見の塔へと向かった。




