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一話 前世の記憶が蘇る。

目標は一週間に最低一話は投稿できるように頑張ります。



「ん?ここは?」

 気がついたら俺は自分の部屋にいた。白い壁紙に漫画が積み込まれた本棚、参考書やノートが載せられている勉強机に普段俺が寝起きしているベッド。どう見ても俺の部屋だ。そういえば俺は家族と晩御飯を食べた後に部屋に戻ってきたんだった。


 でも俺、アイツとの死闘を繰り広げた後死んだじゃなかったっけ?

 

 アレ?どういうことだ?


 俺は、二つの記憶がある?片方の記憶はアイツと死闘を繰り広げて相討ちになった俺――、一橋健二としての記憶。もう片方は夕食のカレーライスを食べて家族団らんしてから自分の部屋に持ってきた俺――、藤堂剣斗としての記憶。


 二つの記憶とも違和感無く両方とも自分の記憶と言える自信がある。両方とも本当に俺の記憶だとすればこれはどういう状況なんだ?一つの体に二つの記憶、か。


二重人格?

 

 どうだろう、肯定するにも否定するにも判断材料が少なすぎて判断出来ない。何が原因なのか、今の俺がどうなっているのか、それすらも分からない。


 一旦この件は置いておくとして、改めて記憶を整理してみるか。それで何かわかるかもしれないし。





―――――






 少し考えてみた結果色々判明した。今は一橋健二としての俺がアイツと最期の戦いをしてから十五年も経っていたらしい。しかも藤堂剣斗の生年月日は一橋健二がアイツと最期の戦いをした翌日。


 つまり俺が一橋健二として死んだ翌日に藤堂剣斗は生まれたのだ。偶然なのか、それとも何かしらの理由があるのか。


...考えても分からない、か。


 そこでふと思い出したのだが、以前読んでいたライトノベルでは今の俺と同じような状況の話があった。

前世の記憶を持ったまま新しくこの世に生を受ける。転生モノ、というジャンルらしいが今の俺にぴったりの言葉だろう。


 ただライトノベルだと生まれ変わる先は異世界であることが多かったが、生まれ変わったのが現代日本だったのがなんとも言えないんだけどな。



今日はもう寝ようかな、色々衝撃的な事が多すぎて疲れた。





―――――





 翌日、目を覚ました俺はリビングで朝食をとっていた。メニューは食パンにスクランブルエッグとインスタントのカップスープだ。


 正直前世の朝食は米派だったのでパンに違和感があるかと思ったが、よくよく考えてみれば藤堂剣斗は朝食としてパンが多いので違和感は無かった。


「パンも美味しいんだけどねぇ、腹持ちが悪いのがネックなんだよねぇ」


 こんがりとキツネ色に焼いた二枚の食パンの片方にマーガリンを、もう片方にはイチゴジャムを塗って食べる。


 時間は午前九時。適当に朝のニュースバラエティ番組を流しながらの朝食だ。


 やっぱり十五年も経つと粗方番組が変わってるなぁ。仕方ないことなんだろうけど、ちょっと寂しいな。

などと感慨に耽っていると母親がリビングに来ていた。


「向こうに送る荷物の用意はしたの剣斗?」


「今日やるつもりー」


「早めにやっちゃいなさいね」


「はーい」


 藤堂剣斗としての俺は中学三年生。そして今は三月。つまり既に中学は卒業していて来月高校に進学するのだ。


 俺が進学する高校は北関東にある全寮制の高校だ。ちょっと特殊な高校なのだが、そこには俺の兄貴も通っている高校なのでほとんど心配は無い。


 朝食を食べ終え自室に戻る。


さて、寮に送る荷物を準備しなきゃいけないんだけど、こういうのって昔から苦手なんだよね。そんなこと言っても仕方ないし、めんどくさい事はさっさとやるに限るか。


 向こうに送る物は服や日用品などが主だ。制服や体操服などは向こうで配られるそうなので、その辺の心配をしなくていいのは楽だ。粗方準備を終えると休憩がてらスマフォを弄る。


 不意に右手に力を入れると手の甲から文字が浮き出た。浮き出た文字は『傀』。


これは『漢字刻印(シール)』だ。


 前世の俺は『漢字刻印(シール)』を持っていたが、どうやら今世の俺も『漢字刻印(シール)』を持っているようなのだ。前世は左胸だったが、今は右手の甲にある。



 『漢字刻印』の場所自体は人によってマチマチだからどうでもいいのだが、まさか転生してまで『漢字保有者(ワードホルダー)』になるとは。偶然なのか、それとも何か理由があるのか。


「しかし『傀』か」


 これでも色々な『漢字(ワード)』を見てきたつもりだが『傀』なんて文字は見たことが無い。どんな意味の『漢字(ワード)』なんだろうか。


 『漢字(ワード)』の効果は、その文字の意味によって決まるとされる。『剣』の『漢字』なら剣を召喚したり、召喚した剣を強化したりできるし、『火』の『漢字』ならば物語の魔法使いのように火を扱うことができる、と言った具合だ。


 それに対して俺の『傀』はどんな効果なのか、意味を調べてみるしかないか。スマフォで漢字を調べてみると、傀は傀儡という漢字の片割れでカイライやクグツと読み、傀の単体でも音読みでカイ、訓読みでデクやクグツと読むらしい。


 傀儡の意味は操り人形や自分の意思を表さずに他人の言いなりとなって利用されている者、という意味があるようだ。


なら俺の『傀』の意味は恐らく操り人形の方かな。


『漢字』の効果はたぶん人形を操る事、だと思われる。物は試しだ、ちょっと使ってみよう。



 『剣』や『槍』、『盾』といった武具系の『漢字』は武具を作ることが出来る。作っても短時間しか持たないし、破壊されたりすると消えてしまうがそれでも使い勝手のいい事には違いない。


 ならば『傀』の効果が人形を操る効果ならば武具扱いで人形を作ることが出来るかもしれない。早速『傀』を使ってみる。


 人形を作るのも以前持っていた『輪』で円月輪を作るのと同じだろうから、それと同じ要領で人形を作る。


 淡い光がどこからか湧き出てきて人形を形作った。


 光が消えた後に、そこにあるのは体長三十センチほどの人形だった。


 素材は恐らく木製で手足に胴体、頭と五体満足だが足先は靴の様になっていて手先に指は無く、頭部は顔はおろか頭すらなく、木製の円柱が頭として嵌っているだけだ。だが肘や膝、股関節、肩などに当る部分には間接のようなものがあるようで手で弄ってみるとしっかりと可動する。



「最初はこんなもんか。ショボイなぁ」


 などとボヤキつつも人形を動かしてみるか。


「しかし、どうやって動かすんだ?」


うーむ、分からん。円月輪は『操』の『漢字』で動かしていたんだよな。後ろから回り込めとか、左右同時に攻撃しろとか、アバウトな命令を『操』で意識しながら頭で思うだけで使えたんだっけ。案外それと同じ方法でいけるかも。


 目の前の床に横たわる人形に、動け動け、と頭の中で命じてみる。すると俺の願いが通じたようで人形がバタバタと上体を動かし始めた。


「おぉ!」


これでいいのか。


感覚は円月輪を『操』で操ってるときと同じでいいみたいだな。


 次に立って歩けと命じてみると、人形もその通りに立ち上がって歩き始めた。


「おぉー」


 一定の速度で人形が円を描くように歩き回っている。


これはこれで楽しいな。


「次は、どうしよっかなー。そうだ」


 次は戦うように命じると、何も無い相手に向かって拳を振るい始めた。その姿はあたかもシャドーボクシングをしているようだ。


「こんなことも出来るのか。人間サイズの人形が召喚できれば戦わせることも出来そうだな」


 しかも人形は終いには蹴りまでし始めた。アバウトな命令を出してもちゃんと聞いてくれるのは便利だな。


更に色々と人形を動かしていると不意に思った。そういえば俺の前の刻印はどうなっているのだろう、と。

やっぱり無くなっているのだろうか。


 左胸の『生』の『漢字刻印』があった場所に力を入れて『漢字刻印』を浮き出そうとするがやはり何もな――。


――あった。


 服に隠れて見えないけど、そこに『漢字刻印』が存在している感触がある。実際に服を脱いでみると左胸に『漢字刻印』が浮き出ていた。


 『漢字』は『生』、前世の俺が持っていたのと同じ『漢字』だ。


マジで?


 驚きのあまり二度見をしてしまうが、『生』の『漢字刻印』は変わらずそこにある。ついでに右手の甲も見てしまうがそっちにも『傀』の『漢字刻印』が浮き出ていた。


アレ?


 『漢字刻印』が二つある?本来一人に一つしかない『漢字刻印』が二つ。もしかしてこれも転生した影響なのか?


まぁいっか。


力はあるに越したことはないから、無いよりはマシだ。


 改めて左胸の『漢字刻印』を良く見てみると『生』の『漢字』しかなく残り六つの『漢字』が消えていた。


 『漢字刻印』は最初に開放される『漢字』を含め七つの『漢字』を覚える。覚える『漢字』は法則性は無いといわれていて、同じような『漢字』を覚える人も居れば前世の俺の様にすべて別種類の『漢字』を覚える人も居る。


 流石に十五年前の知識なので今の時代なら何かしらの法則性が発見されているのかもしれないが。


まぁ、法則性の話は置いておくとして。


前は七個すべて開放されていた『漢字』が今は一つだけか。


もう一度『漢字』をすべて開放するのは骨が折れそうだな。


しかも今度は『漢字刻印』が二つだから労力も二倍か。


今回はすべて開放するのに何年かかることやら。




でも、『漢字刻印』が二つあるならその苦労も嬉しい悲鳴になるかな。

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