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十八話 土曜は実技の日。



 アデルから模擬戦の申し出があった翌日は世間一般で言う所の土曜日であった。過去にはゆとり教育という名目で土曜日が休日になった時もあったが既にゆとり教育が廃止されて十年とちょっと、今現在の学校は当然土曜日も授業があるのである。


 私立である御剣学園も例外ではないが、普通の高校とはちょっと違う点がある。それは土曜日の授業が全て実技だって事だ。


 身体を動かす事が大好きならばそれでも問題だろうが、俺みたいなオタク系の人形遣いには正直辛い。帰って寝なおしてからラノベの続きが読みたいな、などとどうでもいいことを考えながら彰と一緒に訓練場へ向かう。


 桐華は仲がよくなったクラスメイトと一緒に俺達の少し先を歩いていた。


「しかし今日は人が多いな。見た感じ六クラス全部いるんじゃないか?」


 彰は周囲を見回しながら言う。


「そうみたいだな。土曜日の実技は全クラス合同かぁ」


「普段の実技とは違う事やるんかな?」


「どうなんだろうな。まぁ、どっちにしろ俺は身体強化が最優先だな」


 彰は昨日のアデルの一件があってから益々やる気になっている。


 「まぁ今日も何となく頑張っていくか」


 俺がそういうと彰も苦笑しながら頷いた。






―――――






 訓練場では既に六クラスの大部分の生徒が集まっていた。普段は二人しかいないのに今日は六人の教師が訓練場の中心で話し合っていた。


「今日は教師も六人いるんだな。普段は二人なのに」


「みたいだな。お、話が終わったみたいだな」


 話し合っていた教師の仲でも一番体格が大きい教師が声を張り上げた。


「全員集合!授業を始めるぞ!」


 何度が声を張り上げると生徒達が集まって整列し、いつも通りの準備体操とランニングを終えた後に俺達生徒は三つのグループに分けられた。


 まず『漢字』が使えない人用の『漢字』が使えるようにするグループだ。流石にもう『漢字』が使えない人は少ないらしく、ここで呼ばれた人は少なかった。


 次は『漢字』が使えるようになった次の段階で字力による身体強化を覚える段階だ。ここが一番生徒数が多く俺と彰もここのグループだ。教師も三人で面倒を見るらしい。


 最後が身体強化が出来るようになった人達だ。どうやらこのグループは模擬戦をするらしい。桐華やアデルはここのグループになっていた。


 他のクラスは他クラスの担任が分けているようで五組のマリエッタがどこのグループにいったかは分からないが、身体強化を使えるので桐華達と同じグループだと予想する。身体強化グループに分けられた俺と彰は改めて身体強化のやり方の説明を受ける。


「お前はもう出来るんだろ?こっちにいていいのか?」


 横で教師の話を聞いていた彰が小声で話しかけてくる。


「とは言ってもな、こっちで呼ばれたんだし、いいんじゃないか?説明終わったら直ぐに見せて合格貰いに行くつもりだし」


「そっかぁ、ところであの先生話長くね?」


「気づいた?あの人さっきからずっと話してるよな」


 生徒達の目の前で話している教師は一言で表すとザ・筋肉って感じの教師だ。鍛え上げた暑苦しい筋肉に厳つい顔に髪型は角刈り。身長は百八十程で体型は逆三角形。タンクトップから盛り上がった筋肉が見えるのが更に暑苦しい。


 そんな教師が暑苦しいぐらいの大声で既に十分程話し込んでいた。


「――と、この三段階を全て使えることで身体強化が発動する事になる!一つ一つの段階を確実に出来るようにしていくのが一番の早道になる!」


 と、ここでやっと筋肉教師の話が終わり、他の教師からの注意事項に移る。


 注意事項と言っても危ないので人にぶつからないようにやりましょうとか、出来たと思った人は先生に見せに来てくださいとかそれぐらいだ。


 早々に話が終わり自由練習になる。


「じゃあ、俺は早速行ってくるわ」


「あいよ、行ってこい」


 彰に一言告げてから教師が待っているところに向かう。生徒を見回る前に打ち合わせ兼雑談をしているようで三人の教師が集まって話していた。


「身体強化できたんですけど見てもらっていいですか?」


 俺の言葉に三人の教師が振り向いた。


「もうですか、早いですね」


 そう言ったのは三人の教師の中の一人、細身で糸目の教師だ。年齢は二十代後半のジャージ姿で身長は日本人の平均ほどで温和そうな印象だ。


「二組の藤堂だな。早速やってみろ」


 俺の体操着の名前を見てから、身体強化を促してきたのはタンクトップ姿の教師だった。隣の細身の教師がいそいそとクリップボードから紙を捲った。恐らく生徒名簿なのだろう。


「はい」


 短く返事すると、早速身体強化を纏う。当然出力は最低限だ。


「身体強化までの時間が早いですね」


最後の教師が俺を褒める。最後の一人は小柄な女教師だ。ショートカットの髪にメガネをかけている。どうやらジャージのサイズが合っていないのか、少しだぼついている。


「合格だな」


 筋肉教師が低い声で言うと細身の教師が、一の二藤堂合格っと、と言いながらクリップボードに貼り付けられている紙に何かを書いた。


「はい、それじゃあ藤堂君はあっちにいる木下先生の所に行って、合格したって言ってね」


「はぁ、わかりました」


 木下先生の担当は模擬戦をするグループらしい。そこに行けって事は俺もアッチで模擬戦をしろってことか。小柄のメガネ女教師に言われるままに木下先生のところに行く。

「先生。合格したのでこっちに行けって言われました」


俺が普通に言うと、木下先生が振り向いた。


「早かったな。昨日の内に出来ていたのか?」


「そうですよ。昨日は合格貰う前に授業が終わっちゃったんですけどね」


「そうか、ここのグループはずっと練習試合だ。確か藤堂は竜胆と仲が良かったな、詳しい話は竜胆にでも聞いておけ」


「はい」


 頷いてから、桐華を探し始める。


 とはいってもこのグループは二十人いるかいないかといったところで、すぐに見つかった桐華の元に行く。


「よっ桐華、俺も終わったからこっちに来たぞ」


 アデルと名前の知らないクラスメイトと話し込んでいる桐華に後ろから声を掛ける。


「剣斗も来たのね」


「やぁ藤堂君。君も来ると思っていたよ」


 桐華とアデルが俺に話しかけてくる。


「そうなのか?」


「僕がパーティに誘ったくらいだから、これぐらいは出来るだろうと確信していたよ」


「そう、か」


 俺が適当に相槌を打ったところで最後の一人が話しかけてきた。


「よろしく、同じクラスだけど話すのは始めてよね。アタシはアクア・ボニーっていうの。アクアって呼んでね。コートジボワールからの留学生なの」


 そう言ってきた彼女は一目で分かる外国人だった。


 肌の色は浅黒くチリチリした黒髪を肩の辺りまで伸ばしていて、すらっとした手足が体育着から覗いている。顔立ちが整っているように見えるのは俺が異国の人の顔立ちを見慣れてないからだろうか。


「よろしくな、俺は藤堂剣斗だ。俺も剣斗でいいよ」


 俺とアクアの自己紹介が済むとアデルが口を挟む。


「パーティの件は断られてしまったけど僕も剣斗と呼んでいいかい?僕はアデルでいいよ」


「お、おう。よろしくなアデル」


「それで練習試合するんだけど話は聞いてる?」


 アクアやアデルと話し終わった俺に本題を振ってくる桐華。


「いや、その辺も含めて桐華から聞けって木下先生に言われたな」


「なるほどね。私達は今日は練習試合しかしないわ。ここの担当の先生が二人しかいないから同時に二試合しかしないのと、試合している人以外は試合の邪魔にならないように見学しながら休憩らしいわね。後は今組み合わせを作っているから、それまでは適当にしていいって」


「そんな感じなのか」


 桐華から説明を受けた俺は、そのまま練習試合が始まるまで四人で雑談をして過ごしたのであった。






―――――






 雑談の内容がお互いの『漢字』の話に移った時に木下先生からの集合の号令がかかり、グループの全員が木下先生ともう一人の男性教師のところに集まった。案の定マリエッタもこのグループだったようでこの場にいた。


「これから練習試合を始める、名前が呼ばれた者は前に出るように。まずは二組藤堂と五組マールだ」


 お、いきなり俺か。


 確かマールってマリエッタの苗字だったよな。ということは相手はマリエッタか。


 俺とマリエッタが前に出る。


「お前等はあそこだ。先に行ってろ」


 木下先生の指示通りに二人で向かう。


 そこは長方形に白線が引かれていた。恐らくここで練習試合をするのだろう。


「マリエッタもこっちのグループだったんだな」


「そういう剣斗さんは最初いなかったですよね?」


「あぁ、俺はさっき身体強化の合格を貰ってこっちに来たんだ」


「そうだったんですか。そういえば剣斗さん昨日オススメしたラノベ読みました?」


 挨拶を早々に終え、昨日俺が借りたマリエッタのオススメのラノベの話に移る。申し訳ないがマリエッタ、俺は昨日ラノベを読んでないんだよな。


「まだ読んでないんだよな。結局昨日は人形の練習して寝ちゃったし」


「夜も練習してたんですか?」


「あぁ、ちょっとやりたい事があってさ」


「剣斗さんは熱心なんですね」


「そうでもないって、ただ少しでも時間があるなら強くなりたいだけだから」


 俺がそう答えるとマリエッタは不思議そうな顔をした。


「強くなったら何かしたいことがあるんですか?」


「あるな。ラノベ読んでアニメ見てゲームがしたいな」


 俺が即答すると一瞬でマリエッタの表情が崩れて何言ってんだコイツ、って顔をされた。


「いや、だってさ。今の内に強くなっておけば、今後の訓練の時間を趣味に費やせるようになるだろ?」


「ぷっ、あはは」


 俺の答えを聞くとマリエッタが吹き出すように笑った。


「なんで笑うんだよ」


「剣斗さんって面白いなって思って」


 そんな事は無い思うんだけどなぁ。などと思っていると、木下先生がこっちに向かってきたのが見えた。


 木下先生の後ろに十人弱の生徒がついて来る。もう一人の男性教師は別の長方形の白線が敷いてあるところに向かっていた。


 こっちの練習試合の担当が木下先生で、向こうが男性教師の担当なのか。向こうにも生徒が行っていて、こっちに来ている生徒と同じぐらいの数だ。


「始めにって言っておくぞ。審判は私だ。勝敗は私が判断する。他にも白線の中が試合場なので白線の外に出たら失格になるから気をつけるように。それに身体強化は初めからしておくこと、試合中に身体強化が切れても負けになるからな。後遠距離攻撃は周りの生徒に当てないように気をつけること。」


 木下先生がそう言うと俺達は長方形の試合場の両端に俺達は立たされた。どうやらここが始めの立ち位置らしい。


 こちらに来た生徒は白線の外側に観戦する者もいれば、少し離れて身体を軽く動かしている者もいる。


「では始めるぞ、用意はいいな?」


「はい」


「わかりました」


 木下先生が俺達の反応を見た後、試合開始の合図を出す。


「始めっ!」


 その合図と共に俺とマリエッタは『漢字』を使った。


 俺とマリエッタはほぼ同時に木人形とクロスボウを作り出して俺は木人形を、マリエッタはクロスボウを字力で強化する。


 マリエッタの『漢字』は『弩』だ。分類は遠距離武具系。『漢字』の『矢』を使う事により『弩』から矢を発射させる事ができる。


 これが俺が『弩』に関して知っている事だ。俺は『弩』の『漢字保有者』を見るのはマリエッタが始めてだ。


なので基本的な事しか分からないが、この前話した限りでは『矢』の『漢字』は開放されて無い口ぶりだった。ならばどうやって攻撃するのか、『弓』には無くて『弩』にはある別の攻撃方法が存在するのか。それとも他の『漢字』を持っているのか。


 判断がつかないな、仕方が無いが出たとこ勝負しかないな。


 マリエッタは遠距離攻撃が出来ないと仮定して木人形をマリエッタに向かわせる。


 マリエッタがどんな事をしてくるか分からないので攻撃半分、様子見半分といった中途半端な攻め方だ。


 俺が作り出した木人形は一体で装備は無く素手だ。昨日考えた金砕棒と和風タワーシールドは武士人形用の装備だから使わないとして、メイスと普通のタワーシールドを装備させてもよかったのだが、まだ練習試合の一試合目だ。手の内を隠す意味も含めて、始めは素手にした。


 本音を言えば仲間をメイスで殴打したくなかったので素手にしたのだが、本音は隠すとしといて。


 メイスとタワーシールドの練習もしたいので次ぐらいからはちゃんと装備することにしよう。木人形がマリエッタに様子見の一撃を繰り出す。


「ふっ!」


 木人形の拳をマリエッタはクロスボウを両手で引き金と先端を押さえて盾にして防ぐ。


 マリエッタは拳の威力を利用して一旦後ろに下がると、体制を立て直してから木人形に向かって叩きかかってきた。


 叩くものは当然マリエッタが手に持っているクロスボウだ。字力で強化されているクロスボウの先端が木人形の肩に命中する。


 叩かれた衝撃で木人形は仰け反るが、その身体に目立った損傷は無い。


 マリエッタがクロスボウを鈍器にしてくるとは。予想の一つではあったがマリエッタの攻撃方法はクロスボウの物理攻撃だけか。


 他の攻撃方法があったとしても、それはここぞという時の単発の攻撃になるはずだ。そうでなければ普段から使えるはずだし。


 俺が考えてる間にもマリエッタの攻撃が木人形にダメージを与えていく。


「やぁ!はぁ!とぅ!」


 木人形は腕を交差させて防いでいるので細かい傷は出来るが、字力を使って直すほどではない。見ている限りではマリエッタの攻撃はちゃんと訓練したものではない、どうみても動きが雑だからだ。


 剣、槍、刀、拳どんな武器を使った戦闘方でもそれ特有の間合いの取り方、脚運び、重心の位置、視線の動きがある。


 だがマリエッタにはそれが感じられない。つまりマリエッタは近接戦闘を学んだ事がない。


 まぁそれも当たり前か、マリエッタの『漢字』は遠距離系だ。近接戦闘なんて覚える必要が無いもんな。


さてマリエッタの強さも大体分かってきたし、そろそろ勝ちに行くか。


「やぁ!ってうわぁぁぁあ!」


 木人形はマリエッタの大振りの一撃を片腕で受けると、もう片方の腕でマリエッタの腰を持ちかったし上げて肩に担ぎ上げるとそのまま白線の外へ向かう。


「ちょ!ちょっと!なんなんですかぁぁああこれぇぇぇぇええええ!」


 木人形の肩の上でマリエッタがジタバタするが、木人形はそんな事は全く関係なく白線の外まで歩ききってマリエッタを下ろした。


「はい勝者、藤堂。しかしお前はもうちょっとまじめに戦えなかったのか」


 木下先生が勝利の審判と共に俺に苦言を呈す。


「これでも十分まじめだったんすけど」


「はぁ、そうか。ならさっさとそこからどけ次の試合の邪魔だ」


 溜息をついた木下先生に言われるまま白線の外に出るとそれに変わって次の生徒が二人入っていった。それを見送ってから白線の外でようやく立ち上がっマリエッタに話しかける。


「大丈夫か?」


「ヒドイですよ剣斗さぁん。持ち上げるなんて」


「はっはっは、わるいわるい。出来そうだからつい、な」


 マリエッタから非難の声が飛んでくるが、俺が笑いながら言うとジト目で睨まれた。


「俺は桐華のところ行くけどマリエッタどうする?」


「私はクラスの友達がいるので、そっちに行きますね」


 それじゃ、と言ってマリエッタと分かれる。


「お疲れさま、剣斗」


「アンタもうちょっと真面目な勝ち方しなさいよ」


 二人の所に着いた早々桐華から苦言を呈される。


「あれが一番簡単な勝ち方だったんだし、別にいいだろ。そういやアデルは?」


「アデルはあっちで試合があるので向こうに行きましたよ」


 俺の質問にアクアが答えてくれる。


 もう一つの試合場を見てみると今からアデルの練習試合が始まるところだった。


「ところで桐華とアクアの試合は何時なんだ?」


「私はこの次の試合ね」


「アタシはもうちょっと先だから、今は休憩ね」


 三人で今やっている試合を観戦しながら、対戦している生徒について話し合う。


「右の人の『漢字』って何かしら?獣系ってのはわかるけど」


 桐華が見ているのは、両手が巨大になり爪が鋭く伸びて腕全体が茶色の毛で覆われている生徒だ。


「狼かな」


「熊とか猪の可能性もあるぜ」


「ありえそうね」


 その生徒は両手を攻防一体の武器にして相手生徒を果敢に攻めていた。


「中々に攻めるな」


「相手の方は避けるだけだけど、カウンター狙いかしら?」


「どうなのかしらね。カウンター狙いだとしたらそろそろ反撃しなきゃまずいと思うけど」


 桐華の声もむなしく相手の生徒は反撃も出来ないままやられてしまった。


「あちゃー駄目だったかー。次は私ね、行ってくるわ」


「いってらー」


 生徒二人が出てきて、その代わりに桐華とその相手の男子生徒が入っていく。


 さてさてどっちが勝つのかな、と面白半分に眺めていると隣のアクアが話しかけてくる。


「ねぇねぇ剣斗。桐華って強いのかしら?」


「うーん、どうなんだろうな。俺は強いと思うけど、昨日はアデルに負けたしなぁ」


 俺が率直に答えるとアクアはふーん、と小さく呟く。


 「そういうアクアはどうなんだ?アデルや桐華と闘って勝てそうか?」


 「うーん、どうかしら。勝てはしないけど負けもしない、といったところかしらね」


 防御系か回避系の『漢字』で持久戦をメインの戦い方をするってところかな。


 「なるほど。おっとそろそろ始まるみたいだぞ」


 俺の言葉でアクアが試合場の方へ顔を向けるとちょうど試合が始まる。


 桐華は開始の合図と共にロングソードを作り出し、対する相手の男子生徒は指をまっすぐ伸ばして手刀の形にして両手で構えているだけだ。


 先手必勝とばかりに桐華がロングソードで斬りかかる。その斬撃を相手の男子生徒は手刀の形をした両手の側面で受ける。


 そのまま弾き返すと手刀をさも刀の様にして、桐華に斬りかかった。桐華もすかさずロングソードを構えて防ごうとする。


 桐華のロングソードと男子生徒の手刀がぶつかると、ガギンという金属音が鳴り響く。


 なるほど、今のロングソードと手刀が当ったときの音から推測するに、あの男子生徒の『漢字』は金属系か。


 金属系の『漢字』は『鉄』を初めとする何かを金属にする事ができる『漢字』だ。あの男子生徒は自分の手か腕を何かしらの金属に変化させているのだろう。


 俺の隣のアクアも男子生徒の『漢字』が分かったような顔をしている。


「桐華、勝てるかしら」


「勝てるな」


 アクアの呟きに対して俺が肯定して返す。


「桐華を信頼してるのね」


「そりゃあ、ウチのパーティのリーダーだからな」


 俺がさも当然そうに言うとアクアは驚いた。


「なに、貴方達もうパーティ組んだの?」


「登録はまだ出来ないから仮だけどな」


「早いのね」


「まぁ、俺は桐華から誘われただけなんだけどな」


 そうなの、と呟いて腕を組んで黙り込むアクア。俺達が会話をしている間にも桐華と男子生徒の戦いは佳境を向かえ、横薙ぎの一太刀で桐華の勝利が決まった。


 試合途中はアクアと話しててよく見てなかったけど、試合には桐華が勝ったから問題ないな。


「おつかれ」


「まぁ、こんなもんよ」


 意気揚々と帰ってきた桐華を出迎えて、その後も三人で練習試合を観戦したのであった。






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