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十七話 俺達模擬戦に誘われる。

ようやく時間が取れたので久々の更新です。


「いつも皆さんでご飯を食べているんですか?」


マリエッタがそんな発言をしたのは桐華がマリエッタを夕食に誘ったからだ。どうやらマリエッタは一人で食事を取っていたようで、俺達との食事に快諾してくれたのだ。


 七時過ぎの戦場と化している食堂で俺と彰は、桐華とマリエッタの女子組みに席取りを頼んで先に料理を確保している最中だ。ちなみに今日の俺の夕食はご飯に鯖の味噌煮、豚の角煮、ブリの照り焼き、和風ハンバーグ、豚汁にご飯のお供に辛子高菜、辛子明太子、きゅうりの漬物と普通の純和風な夕食だ。ただ豚汁以外のその全てが山盛りな事を除けば、だが。


 俺と同じようにお盆の上の皿を山盛りにした彰と合流して女子組が確保したテーブルへ向かう。


「お、来たわね。相変わらず大量によそってきたわね」


「剣斗さんも彰さんもたくさん食べるんですね」


 桐華はいつも通りなので呆れつつ、マリエッタは驚く。


「男だからな」


「まぁ、成長期ですし。じゃあ俺達は待ってるから交代だ」


 俺と彰が椅子に座り桐華とマリエッタを送り出す。


「なぁ剣斗、お前いつの間に人形二体使えるようになったんだ?」


 彰が椅子の背もたれにだらしなく背中を預けると、口を開いた。


「夜に人形を二体出して、練習してたんだ」


 俺はテーブルの余ったスペースに三十センチの人形を作り出して適当に動かす。


「こうやってさ」


「なるほどな」


 彰は納得するように頷く。


「彰だって夜に練習してるだろ?」


「まぁ、そりゃあ多少はな。もっとこう手早く強くなれる方法とかないのかねぇ」


「そんなもんがあったら俺がやってるわ」


「だよなー」


 などとバカな話をして男二人で盛り上がっていると女子組が料理を持って帰ってきた。


「じゃあ食べましょうか、いただきます」


「「いただきます」」


「い、いただきます」


 全員が席に着くと桐華の音頭で俺達がいただきますを唱和する。この手の事で音頭を取るのはパーティリーダーである桐華が自然にやっていた。これに初参加のマリエッタだけが少しタイミングを計りかねていたが、何とか合わせられたようだ。


 食事中は新しいメンバーも加入したということで話もマリエッタが中心の話題になった。マリエッタが話すフランスの話は海外旅行をしたことがない俺達には新鮮で楽しく会話が進んでいった。


 前世では海外は行った事はあったのだが、仕事での渡航たっだので観光はほとんどしたことがなかった。ちなみに仕事は当然化物退治でした。


 そういえばフランスって今兄貴達が長期実習で行ってるんだよな。今頃兄貴も妖魔退治してるのかな。


 ニュースだと『クラーケン』はまだフランス西側の海岸の一キロぐらいのところに陣取っているらしい。つまりフランスの『漢字保有者』は『クラーケン』を撤退させるほどの打撃を与えてないらしい、逆に市民の被害もほとんど出ていないので一進一退といったところか。


 でも膠着状態が長く続くと『クラーケン』が陸上でもお構いなしに産卵し始めるから、長引けば長引くほど不利になっていくんだけどなぁ。だから短期決戦をすべきはずに、なんでさっさと攻撃しないのだろうか。


 などと考えながら辛子高菜でご飯を食べていると、俺の目の前で味噌汁を飲んでいた桐華がいきなりめんどくさいものが現れたような顔をした。桐華の視線は俺の背後を見ているので俺もつられて振り向く。


「やぁ」


 振り返った先にいたのは笑顔の眩しいイケメンのアデルであった。


「何の用?勧誘は昨日剣斗に断られたはずでしょ?」


 早速桐華が噛み付く。


 確実に昨日だけでなく今日実技の授業の模擬戦でアデルに負けたことも根に持ってるよな。


 「いや、今日は別件だよ。確か竜胆さんがパーティリーダーだよね?」


 「そうよ。それで私に何の用かしら?」


 アデルが俺達のテーブルの席に着く、どうやら真面目な話のようだ。


 「簡単に言うと僕たちと模擬戦をしないかい?」


 アデルがそう言うと俺達全員の動きが止まった。


 桐華は眉をピクリとさせただけだったが、彰やマリエッタは箸やスプーンが止まっていた。


 俺も一瞬箸がピクリとしたが、そのまま何事も無かったかのように豚汁を啜る。


「とりあえず何で私たちなのか、何で模擬戦をするのか、その辺の理由を聞いてもいいかしら?」


 桐華は腕を組みなおしてそう言う。


「分かったよ、まず何故君のパーティなのかというとウチのクラスでパーティを組んでるのが君のパーティしかいなかったからって言うのが理由かな。いなかったらも少し待つか、他のクラスで探すか考えていたんだけど君のパーティがいたからね、誘わせてもらったよ。次の質問だけど僕はね、実戦こそが一番『漢字保有者』を成長させると思っているんだ」


 そう言いきると、テーブルの上に置いた手を組みなおすアデル。


「だから出来るだけ実戦で近い形で訓練したいんだ。こんな感じの答えでいいかい?」


「なるほどね。その模擬戦の話こっちもいいわよ。やりましょう」


 アデルの話を聞いた桐華が即答する。


 確かにアデルの実戦に近い形で訓練がしたいという話には俺も同意するので口を挟まずに、鯖の味噌煮を口に入れる。


「なら日にちは一週間後でいいかい?」


「随分後ね」


 桐華が率直な疑問を挟むとアデルが本音を語る。


「参加条件の話に関ってくるんだけどね。実はウチのメンバーのやる気を更に出させてあげたいのさ」


「どういうこと?」


「どうにもね、メンバーの身体強化の習得が上手くいってないんだよ。それで模擬戦に参加できるメンバーは身体強化が使える人だけにするって事にしようと思って、身体強化が使えないと模擬戦は危ないって理由もあるけどね。これならメンバーもやる気が出るかなって」


「そういうことなら私も賛成ね。時間と場所は?」


「日時は一週間後の金曜日の放課後、場所は今から決めるから追って連絡するよ」


「わかったわ」


 桐華の了承を得るとアデルは立ち上がって立ち去った。


 残された俺達はこれ以上話すと流石に夕食が冷めると思い先に夕食を食べ終えてから話すのだった。





―――――





 アデルから模擬戦が申し込まれるといった出来事があったが、無事に夕食も終わり部屋に戻ってきた俺はスマホで音楽を聴きながら今日図書館で借りてきた本を読んでいた。ライトノベルではなく武器の一覧が載っている方だ。


 三冊借りてきたので、その全てに目を通す。


 剣、槍、斧、盾、メイスからマニアックな武器まで色々あるな。人形と一体化させても見た目や使い心地に違和感がでない武器を選ばなければいけない。


 とりあえずは手の延長に備え付けるとすると。剣、槍、斧辺りはダメだな。


 武器の柄を人形の手の位置に固定する以上、ちゃんと刃を立てて攻撃出来るとは思わない。固定して簡単に運用するならメイスとかの方がいいな。刃の位置意識しなくてと薙ぎ払ったり降り下ろしたり出来そうだ。


 後は盾もアリだな。武器で相手の攻撃に当てて防ぐのは難しそうだから、いっそタワーシールドみたいな体の半分以上が覆うことができる盾で防げばいいし。


 とりあえずはこんなもんかな。


 他の案は鍵爪とかトンファーとか刺突剣とかも考えたけど、どう見ても使い方が難しそう何だよな。その内やってみたいっちゃやってみたいんだけどさ。


 まずはメイスと盾でいいだろう。


 右手にメイスで左手を盾にして、使い方は攻撃はメイスで叩くだけ、防御は盾をかざして防御する。これだけで十分だろ。


 もっと扱い難しい武器を使うのは、人形の扱いがもっと上手くなってからでもいい筈だ。武器が決まったので、練習がてら武器込みで人形作ってみる。作る人形は三十センチ台の武士人形だ。


 試しに作るだけなのでメイスとタワーシールドは本で見たままにする。


 字力を込めるとテーブルの上に淡い光と共にタワーシールドとメイスを持った武士人形が現れた。


 タワーシールドは武士人形の半身が隠れるぐらい巨大な物でメイスは柄が細長くて柄頭がトゲの着いた鉄球のような形をしている。


「うんうん、上出来だな」


 言葉で自画自賛しつつ出来上がった人形を動かす。メイスを振り下ろしたり、なぎ払ったりタワーシールドを構えたりなど様々な動作をさせる。ある程度試して問題が無いのを確認したところで一旦止めた。


 次はパソコンの電源をつけてメイスとタワーシールドの形決める。某検索エンジンの画像検索でメイスとタワーシールドの画像を見ていく。やっぱりというかなんというかゲームやアニメの画像が多い。


 たくさんあって迷うよなー、どれにしよっかなー。


 十分ほどネットを漁って画像を探し終えると、次はメイスとタワーシールドの形を考え始める。


 人形を武士っぽく作ったのだから、武器も和風に作りたい。


 メイスに関しては既に形は決まっている、金砕棒だ。金砕棒とはことわざの「鬼に金棒」で知られる鬼が持っている金棒の事だ。


 次はタワーシールドだ。こっちはまだ決まって無い。


 和風のタワーシールドかぁ。想像がつかないな。そもそも戦国時代って手に持つ盾の数が少ないから、イメージしにくいんだよなぁ。


 うーん、どうしたものか。作った武士人形を見ながら考え込む。


 確か戦国時代に盾が普及しなかった理由って刀が両手持ちだったり、弓を使うから盾が使いにくかったみたいなんだよな。


 それに置き盾が主流だったし、それで十分だったらしい。矢を弾くのなら大袖もあったから益々盾が普及しなかったらしいんだよな。


 いっそ盾を止めるか?それだと左手が手持ちぶさになっちゃうんだよなぁ。


 なら、それっぽい盾でもいいかな。最悪防御力は字力で強化すれば補えるし。


 ちょっと無理やりだけど作ってみるか。鉄のタワーシールドの外側から貼り付けるために鎧の肩部分、大袖を作るときに使った小袖を使う。小袖を縦に重ね合わせるようにしてタワーシールドに貼り付け、盾の裏側の持ち手は武者人形の手首の部分に合わせられるようにする。


「こんな感じでいいかな」


 大まかな盾の構造は決まったので、今度は実際に作ってみる。先程作ってテーブルに置いたままの武士人形を元にタワーシールドを和風タワーシールドに、メイスを金砕棒に変化させる。


 三十センチ台の人形だが俺の想像したとおりの形で作られる。


「完璧だな」


 俺は作った武士人形を動かしながら、人形の出来具合に満足する。


 その後は字力をギリギリまで使ってから寝たのであった。





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