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十四話 新しいパーティメンバー。

祝日なので。


 寝不足の所為でモチベが上がらない午前中の座学の授業を乗り切った後、俺は、彰と桐華と学食で昼食を食べていた。


 俺はから揚げ定食で彰がきつねうどん、桐華がフレンチトーストだ。桐華、お前良く昼にそんな甘ったるそうなもの食べれるな。


「それで桐華、四人も既に人取られちゃったけど、まだ候補はいるの?」


 などと思っていると、彰がうどんをずずずっと啜った麺を飲み込んでから口を開いた。


「いないことも無いけど、その四人も含めて全員パッとしないのよねぇ」


 桐華はフレンチトーストにも手をつけずに腕を組んで考え込む。


「そういえば、アデルのパーティに入った奴って結局誰だったんだ?」


 俺が欠伸を堪えてから口を開く。


 「あー、えっとね。全員うちのクラスで、まず西田ね、確か『漢字』は『盾』。次が涼風で『剛』ね。後が笹木が『火』と三上が『土』ね」


 桐華がスラスラと話すのを頭をこくこくしながら聞く。


「剣斗、アンタちゃんと聞いてるの?」


「あぁ、すまんすまん、ちょっと寝不足でな」


「ナニやってたんだ??」


 彰がニヤけ顔で言ってくるので本当の事を言ってやる。


「『傀』でちょっと試行錯誤してたら朝になってた」


「ちっ、違ったのか」


「ほどほどにしなさいよ」


「わかってるって」


 彰はちょっと悔しそうだが、今はツッコめるテンションすら無いので放置である。


「それで話し戻すけど、アデルが集めた面子はバランスがいいな」


「そうなのよね。貴重な術系を二人も取られちゃったのは痛いわね」


 はぁ、と溜息をつく桐華を放っておいて俺は席を立つ。


「俺ちょっと調べものがあるから図書館行ってくるわ」


「そうなの?行ってらっしゃい」


「面白そうな本があったら俺にも教えてくれよ」


「あいよ」


 二人に返事をしつつ俺は食べ終えたから揚げ定食が載っていたお盆を持って歩き出した。






―――――






 御剣学園の図書館は校舎の中には無く、校舎とは別に建てられた近代的なビルのような建物が図書館になっている。だから図書室ではなく、図書館と呼ばれているのだ。


 学食から出て教室がある本校舎に一度入り、図書館へ行ける別の出口から出た俺は二度目の図書館を見上げていた。


 この前の学校案内で案内されたのは図書館の入り口までだったが、その時に教えられた図書館の大きさには驚いた。地上四階、地下二階の合計六階層なのだ。


 この全てに本が蔵書されているのだとしたら、相当の量になるだろう。


 図書館に入ると見た目の近代的な雰囲気とは逆に木の温もりを感じられる造りになっていた。床や柱、天井が木製で壁が清潔感がある白い壁だ。


 その中を歩きながら玄関を抜けて肝心の図書館の部分に入ると、ドアを開けた瞬間に本特有の香りに包まれた。図書館の中は一階と二階部分が吹き抜けになっているらしく、入り口からでも二階の本棚が見渡せた。


 目的の俺が探している本は武器に関する本だ。正直な話ネットで探しても良かったのだが、武器の種類がわからないと検索するにも検索ワードが決まらないのでまずは本で調べよう、というわけだ。図解入りなら武器のイメージもしやすいし、という思惑もある。


 流石にこの本の中から目当ての本だけを探すのは不可能なので、入り口付近にあった受付で調べてもらう。


「あのー、武器が載ってる本ってありますか?」


「武器ですか?」


「はい、剣とか槍などの武器の一覧が載ってる本を探してるんですけれど」


「少しお待ちくださいね」


 そう言うなり司書さんが、受付においてあるパソコンで調べ始める。


「このへんが、武器の種類に関する本ですね」


 プリンターで刷った紙を渡してくれる。そこには本のタイトルとその本が置いてある書架の場所が記されてあった。


 まだ「中世武器一覧」とかは理解できるけどさ。「萌っ娘擬人化武器大全」、何でこんなものまであるんだよ。学校の図書室にあるようなもんじゃねぇだろ、これ。気になるな、まずこれから探してみるか。


 本来の目的より少しズレつつも「萌えっ娘擬人化武器大全」がある書架がある場所を見つけたんだけども。


「なんで、この辺の本棚に入ってる本がラノベばっかなんだよ」


 周囲の本棚のどこを見てもラノベしか入ってない。書架を見ると今絶好調の良作から過去の名作までなんでもござれ状態だ。最近の高校はこんなにラノベがあるのか。


 前世でもかつて通っていた高校の図書室はラノベが入ってたけど、ここまでの蔵書数は無かったぞ。


「色々あるなぁ」


 あ、これ完結したんだ。最後まで読んでないんだよな、読みたくなってきたな。


 ちょっと借りていくか。ヤバイ、探し出すと止まらなくなってきたな。前世はオタクだったので色々ラノベは読んでたから、読み残しが沢山ある。


 とりあえずラノベは五冊だけ借りる事にして、本題の本を探そうと別の棚に移ったところで女子生徒に出くわした。


 出くわしたとはいっても気づいたのは俺だけで相手の女子生徒は俺に気づかずに本棚を眺めている。女子生徒は学年は分からないが、身長が低いので恐らく一年だろう。


 後、髪が金髪なので留学生である事も間違いないな。


 その女子生徒は目当ての本が見つかったのだろう、女子生徒の視線か固まった。だが、その目当ての本は本棚の一番上にあるようで、女子生徒の身長だと届きそうに無い。


 女子生徒が爪先立ちになり手を伸ばしても届かないようなので、俺が取ってあげようと近づくと、その瞬間――。


 女子生徒の全身が字力で覆われ、強化された身体でジャンプして本を取る女子生徒を俺は目撃した。


 ついでに、その時にめくりあがったスカートの中身も目撃した。


 スカートの中身の話は置いておくとして、彼女が一年なら結構な戦力になるのではないか?ちょっと興味が沸いてきたな。学年を聞くだけ聞いてみるか。


「あの、すみません」


 「え?」


 まさか、後ろに人がいるとは思わなかったのか驚きの表情で振り返る女子生徒。肌も白く顔立ちも外人っぽいので、やはり留学生なのだろう。顔も可愛く、仕草もオドオドしていて小動物っぽい可愛さだ。


「ちょっと聞きたい事があるんですけど、いいですか?」


「あ、は、はい。どうぞ」


 ちょっと、どもりながらも頷く女子生徒。


「何年生ですか?」


「一年生ですけど......」


 質問の意図がわからないといった表情の女子生徒を尻目に俺は心の中でガッツポーズをする。これで遠距離系の主漢字だったらパーティに誘ってみる価値はあるな。次に彼女の主漢字も聞こうとしたところで彼女が口を開いた。


「あ、あの、あなたが持ってる、その本って」


 女子生徒の視線が俺の右手に持っているラノベに注がれていた。


「これのこと?」


 俺が持っているラノベは、とある科学と魔術が交差する話のやつだ。旧約は全て読んだのだが新約に入ってからは二、三巻辺りまでしか読んでないので心機一転で新約を初めから読もうと思ったのだ。


「はい、その本です。好きなんですか?」


「好きだよ、旧約は全て読んだから次は新約を読もうと思ってさ」


 俺の言葉を聞いた女子生徒の顔がパッと輝いた。


 「あ、あの!私と友達になってくれませんか?」






―――――






 図書館の読書スペースで椅子に腰掛けて俺と彼女は堂々と話をしていた。話題はラノベの話だ。


「え?知らないんですか、このラノベ。かなり面白いんですよ!主人公が吸血鬼なのに教会に入って悪魔と戦うっていうストーリーなんですけどね」


 読書スペースに他の生徒が誰もいないからこそできる所業だ。他人がいたら迷惑で堂々と話が出来ないからな。


「そうなの?それなら次に読もうかな」


 彼女は大人しそうな見た目だが、好きなことの話になると口が止まらなくなるタイプらしく、初めのオドオドした感じも話していくうちに無くなっていた。


 俺としても、ここまでコアなオタクと話したのは前世を思い出してからは初めてなので会話が楽しかった。藤堂剣斗は漫画を読んだり、ゲームはするがオタクではなかったらしく、その手の友達はいなかったし彰もメジャーなゲームの話は出来たがオタクではなかったので、その手の話はしなかった。


「それがいいですよ。後はこれとかこれとかですかね」


 と、彼女が手に持っていたラノベを紹介された。どれも結構な巻数が刊行されているらしく、面白そうだった。


「あ、そういえば何で私に話しかけてきたんですか?」


 話が一段落したところで、彼女が思い出したように話題を変えてきた。俺も話が弾んで、忘れていたが『漢字』の事を聞かなければいけなかったんだ。


「そういえば話が楽しくて忘れてたわ。いやね、パーティメンバーを探しててさ、それで身体強化を使ったのが見えたから、ちょっと声を掛けてみたんだ」


「パーティですか?」


 どうやら彼女は知らないようなので詳細を教えてあげる。先輩に知り合いがいるとか、入学初日に貰った分厚い冊子のパーティのページを読むか、とかでもしない限りパーティ制度は流石に知らないか。


 担任の教師も説明してないし、申請が出来るようになる五月になってから教えるのかもしれないな。


「そんな制度があるんですね」


 なるほど、と彼女は頷く。


「それでね、よければ主漢字を教えてくれないか?」


「私のですか?」


「頼むよ」


「わ、私の『漢字』は『弩』ですね」


 俺が両手を合わせて頼み込むと、彼女はちょっと言いづらそうにしながらも教えてくれた。


「ど?」


「お、おおゆみ、ともいしゆみとも読むらしいです。俗に言うクロスボウのことですね」


 クロスボウか、ありだな。


 クロスボウなら遠距離武具系に分類される『漢字』だろう。同じ系統には他にも『弓』と『砲』がある、後はエリアーヌ先輩の『銃』も恐らく同じ分類のはずだ。


 この系統の特徴は発射する『矢』、『弾』などの『漢字』が無いと攻撃出来ないが、その分二つ目の『漢字』の開放が早く二つ目の文字は『矢』、『弾』になるのだ。前世での部下に何人か『弓』持ちがいたので、そいつらから聞いた事でもある。


「ウチのパーティに入ってくれないか?」


 桐華には話すらしてないが、四月の段階で身体強化が出来る遠距離系なら彼女も賛成するはずだ。


「え?私がですか!?」


 彼女はまさか自分が誘われるなんて思っても見なかったような驚き方だ。


「うん、実は後衛を探してたんだ。それに話も合うしな」


「え、でも、ホントに、私なんか誘って大丈夫なんですか?」


 喜びと不安が入り混じったような表情をする彼女。


「大丈夫だから、誘ったんだって」


 俺としてもラノベの話が合う彼女がパーティに入ってくれると楽しくなりそうなのだ。


「いや、でも、私っておっちょこちょいなので『矢』が使えるようになるまで時間が相当かかるかも知れませんよ」


「平気だって、絶対使えるようになるから」


 この子、結構自己評価が低いな。だが、俺が何度も言うとようやく納得したようで。


「そこまで言うなら、よろしくお願いします。えーっと、そういえばまだ自己紹介してませんでしたね」


 彼女の指摘で未だに、碌にお互いの名前も知らなかった事に気づいたので、自己紹介もしておく。


 「そういえばそうだったな。よろしく、俺は一年二組の藤堂剣斗だ。主漢字は『傀』。趣味はアニメ、漫画、ラノベ、ゲーム。好きな名言は『逃げちゃダメだ』と『お前が信じる、お前を信じろ』だ」


 俺が自己紹介をするとツボったのか、プっと吹き出した。


「良く知ってますね。相当昔のネタですよ、それ」


 彼女もこのネタを知っているようで、机に縦に三角形を作るように腕を組んで頂点の指が交差しているところに顎を乗せてゲ○ドウごっこをしたり、「俺のドリルは天を突くドリルだ!」とか色々言っている。


「次は私ですね。フランスからの留学生で一年五組のマリエッタ・マールです。主漢字は『弩』で、まだ『矢』は使えませんがよろしくお願いしますね」


「おうよろしく。なんて呼んだらいい?」


「マリエッタでいいですよ。私も剣斗さんと呼んでもいいですか?」


「おう。よろしくマリエッタ」


「よろしくお願いしますね。剣斗さん」


 と、お互いの自己紹介がちょうど済んだところで昼休み終了の予鈴が鳴った。


「おっと、今日はここまでのようだな」


「そうみたいですね」


 まだまだ、ラノベの話をしたかったのだが予鈴がなった以上仕方ない。


「あ、そうだ。スマフォのアドレスを教えてくれよ。他のパーティメンバーにも紹介したから、後で連絡する必要あるし」


「そうですね、わかりました」


 そして俺とマリエッタは、アドレスを交換してから、分かれたのであった。








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