表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

十三話 武士人形。


「とりあえず、こんなもんかな」


 三時間ほどブラウジングをして考えをまとめた終わると、早速部屋にいる五体の人形を部屋の隅に移動させて中心にスペースを作る。


 五体の人形を三時間ほど維持すると一割ほど字力が持っていかれたが、やはりまだまだ無駄が多い気がする。『傀』の練習不足なのであろう。


 『漢字』は使い慣れていくうちに、段々と無駄が減って使う字力も減っていくのだが、流石にこればかりは一朝一夕には行かない。その『漢字』を長い時間使っていくうちに少しずつ減っていくものなのだから。


「さて、そんな事よりもっと」


 部屋の真ん中に作ったスペースに人形を作り出す。作るイメージはさっきネットで見た武士甲冑だ。


 色は武田の赤備えを真似して、青をメインの青備えにする。出来上がった人形は前こそ戦国時代に活躍した武将っぽいが、後ろはイメージが甘かった所為か良く出来てなかった。


「まぁ、こうもなるよな」


 さっきは前ばかり意識してたし。


 このままでもいけないので、後ろも前を参考にしつつ字力で作り直していく。


「直したはいいんだけど」


 五分ほど時間をかけて直し終わった人形を見るが、なんかちょっと物足りない。


「下半身がちょっとイマイチだよな。あと頭も兜を作ったのはいいけど顔が木人形のままだから浮いてるし」


 甲冑としてはこんな感じでいいんだろうけども、現代人の俺としてはちょっとかっこ悪く見える。まずは足回りだ。


 さて、どうしたらかっこいいだろうか。






―――――






 ヤバイ、ちょっとやりすぎてしまった。


 あれからネットで色々画像を漁り、気に入った形に人形をどんどん改造していったら、辛うじて戦国時代にいたであろう武士の鎧っぽい原型こそ残っているものの。


「これは、ほら、あれだよなぁ。ゲームとかに出てくるただかっこよさだけを追求した改造武士鎧」


 自分で言っててこれ以上のうまい例えは無いな、と思ったが我に返るとそんな事は無かった。


 人形の各部位を説明すると。


 頭部は普通の兜にして、ほとんど手を加えなかった。兜の上部に「角」とか「愛」とか「月」とか生やそうかと思ったけど、流石にそれは止めた。だって、俺が作るのは武将じゃなくて兵士だし。


 でも顔のところだけはどうしても上手く作れなくて、某ミスター・ブ○ドーさんが着けてるような仮面を更に面積を大きくして着けた。これで、顔が上手く作れない問題をごまかせるようになった。


 胴体の鎧の部分は割と普通に作った。細部の意匠は少しこだわったがそれだけだ。


 そう、鎧の部分は、だ。


 それに追加して陣羽織風のロングコートも作ってしまったのがいけなかったのだ。これも俺が作る人形はただの兵士をだから止めようと思っていたのだが、精鋭っぽい感じなら全員が陣羽織着てても問題ないよなって事に気づいてしまったので外さなかったのだ。


 腕は陣羽織風ロングコートなので肩は剥き出しになっているので肩から上腕を守るために小札と呼ばれる板状のものを縦に六枚繋ぎ合わせるように作った大袖に、手甲と篭手を作り、上腕部も鎧で地肌が見えないようにそれっぽく作り上手く誤魔化した。


 ちょっと詳しい人が見れば分かるのだろうが、どうせ人間が着るわけじゃないしここは見た目重視で行こう。


 下半身は袴で、腰から膝までを守るように右腰から後ろを回るように左腰までぐるっと半周するように、小札を縦に幾重もつなぎ合わせて草摺にしている。足回りは袴で余り見えないが、ちゃんと脛当てを作っている。


 だが流石に毛履まではちゃんと作っては無く、ブーツみたいなものを作りそれっぽく装飾しただけだった。全体的な色合いは初めと変わらず青をメインにしつつ細部は黒を使った。


「おし、とりあえずはこんなもんだろ。名前は『僕が考えたカッコイイ武士人形バージョン1.00』ところか。略して人形か武形だな」


 あー疲れた、と背中を伸ばして欠伸しつつ時計を見ると、時間は既に朝五時。


 既に朝五時。


「うっわ、マジッかー」


 閉められたカーテンから窓を覗くと外が仄かに明るかった。


 そして、終わった頃に来る眠気。


 どうすっか、今から一時間ぐらい寝るか?いや、今寝ると絶対遅刻するのが、俺には手に取るようにわかる。


 下手すると起きたら学校終わってたとかありそうだな。なら、このまま起きてるしかないか。


 小型冷蔵庫から麦茶を取り出して一息つく。


「ふぅ。と、そういえば人形出しっぱだったか」


 人形が今まで出しっぱなしだったことに気づいて今しがた作った武士人形以外の木人形達を消す。


 武士人形を消さないのは、武士人形の形を覚えるためだ。次に作るときに、また同じ形に人形を作るために必要なのだ。


 十分ぐらい使って形を細部まで覚えると武士人形を一旦消して、から再度作り直す。


「おし、出来てる。完璧だな」


 作る箇所が木人形と比べて圧倒的に複雑で多いためか、木人形に比べても多めに字力を多めに持っていかれる。


「このぐらいなら許容範囲か。後は武装か」


 武装は明日でいっか。今からやると絶対終わらないし。


 それに字力の残りが体感だと、後四割ちょいしかないからな。


 字力は休息を取れば回復する。ただ座って休むだけでも回復するが、一番効率がいい回復は睡眠だ。


 今日は既に徹夜しちゃったから、回復しながらとはいえこのままの字力で一日過ごさなきゃいけないからな、出来るだけ字力は温存しておきたい。


 「今日は出来るだけ字力を使わないように、過ごすか」


 そう言って、俺はコップの中の麦茶を飲み干したのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ