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十二話 身体強化と兄貴の電話。


「あー色々あって疲れたー」


 夕食を終えて桐華達と別れ部屋に帰るなり、俺はベッドにダイブした。まさか、俺が他のパーティから勧誘されるとは思っても無かった。


 あ、アデルをパーティに誘うの忘れてた。まぁいっか、向こうもパーティ組んでるんだし、どうせ断られてただろう。でも、そうなると他の候補を探さないとなー。


 アデルが組んでるパーティがウチのクラスの生徒で構成されてたら、クラスの中で誘えるパーティ候補が一気に減るな。


 探す範囲を他のクラスまで広げるか?でも、まだクラスメイトの名前や顔をほとんど覚えてない状態で他クラスまで範囲を広げるのは無理か。


 俺の探し方は他人が『漢字』や字力を使った時に字力の量や精確さが何となく分かるから、それを元にしてるんだよな。


 その際に何の『漢字』を持っているかとかどんな戦い方をしているかとかは分からないから後から調べなきゃいけないし。


 あー、何か考えるのがめんどくさくなってきたな。自分から探さなくてもいいか、偶々見つけたら誘うぐらいでいいかな。それがいい、そうしよう。


 懸念が一つ取れた事で、俺は次の考え事に入る。


 そうだ、一回字力で身体強化できるか試さなきゃ。当面の実技の授業は字力による身体強化になりそうだし、そもそもこの体になってからその辺何もやってなかったし、ちょうどいいか。一々起き上がるのはめんどくさいのでベッドに寝ながら身体強化をする。


「ぐぉっ」


 思わず声に出てしまったがそれも致し方ないだろう、物凄く字力の体の通りが悪くなっていたのだから。それに強化したの字力のロスが多い。


 数字で表すならば十の字力を使って身体強化をするが、実際に強化されたのは一ぐらいの字力だったって感じだ。


 字力による身体強化は字力を体に纏わせる時に、いくらか抵抗や字力のロスがあると言われている。この抵抗やロスの大小で身体強化の適正が決まる。


 簡単に言えば術系の主漢字を持っていると抵抗やロスが大きく、肉体系や獣系といった主文字を持っていると抵抗やロスが少なくなる傾向があるのだ。稀に例外もいるのが。


 当時は俺や仲間の経験談だったが、この前教科書をパラパラ見ていたら書いてあったので統計でも取って証明されたのだろう。


 前世の俺の主漢字の『生』は特殊な分類だったが肉体系だったので身体強化ともすこぶる相性が良かったのだが。もしかして『傀』を手に入れたから、身体強化との相性が悪くなったとか?


 ありえそうだなぁ、そもそも『漢字刻印』を二つ持っている人なんて俺以外に確認されてないんだから何があっても不思議じゃないんだよな。


 そう思うと急に色々疑問が沸いてくるな。そもそもの話『漢字刻印』が二つあるというのは、持てる『漢字』の数が二倍になったということでもあるけれど、字力の出口が二つになったという事でもあるんだよな。普段は意識して無いけれど『傀』を使うときは右手にある『傀』が主漢字の方の『漢字刻印』から字力を出して使ってるのだ。


 左胸の『生』が主漢字の方から字力を出して『傀』を使おうとしても発動しない。というかしなかった、今試してみたけど。それもすこし考えれば当然の話だ、『傀』の『漢字』があるのは右手の『漢字刻印』で左胸の『漢字刻印』にあるのは『生』なのだから。


 簡単に説明すると字力が詰まっている藤堂剣斗と名のタンクがあるとする。通常は『漢字刻印』という名の蛇口は一つしかないのだが、何故か俺の場合は蛇口が二つあってそれが『生』を主漢字とする『漢字刻印』と『傀』を主漢字とする『漢字刻印』なのだ。


 ここでさっきの字力による身体強化の話に戻るのだが。俺は思ったのだ『傀』の『漢字刻印』から取り出した字力は体の通りが悪いけれど『生』の『漢字刻印』から取りだした字力は体の通り良いのではないかと思うのだ。


 主観時間では約二週間ぶり、現実時間では十五年ぶりに左胸の『漢字刻印』から字力を引き出すが、やはり使い慣れた『漢字刻印』だけあって俺の思うがままに字力を引き出せる。


 そして、引き出した字力をそのまま体に纏わせる。予想通り『傀』の方の『漢字刻印』から引き出した時よりも圧倒的に抵抗とロスが少なく身体強化ができた。


「だけど......」


 ちょっと違和感というか、抵抗を感じるというか。死ぬ直前の全盛期だった俺の時と比べるとほんのちょっと抵抗を感じるが、よくよく考えればこの体になってからほとんど字力で身体強化はしてないのだ。体が字力に慣れてないというのもあるのだろう、それを考えればこの程度の抵抗は誤差みたいなもんか。


 ちょっと気になる事があって身体強化したままベッドの上に座りなおすと、『傀』で三十センチ程の人形を作り出す。


 それを右手で軽く握ると。


グシャッ!


 人形が潰れた。壊れた人形の字力の維持を止めると右手の中で無に還る。


「やっぱりこうなるよな」


 身体の強化率が強すぎる。もしかしたら、と思ったらやっぱりか。


 いや、これでも最低限の強化でしかない。主にどんなときでも咄嗟に動けるように長時間維持できる程度の強化で、前世は寝ているとき以外はずっと常用していたのだ。


 それでも高校生としちゃ強すぎるよな。昨日桐華の身体強化を見たけど、これよりもっとレベルが低いものだった。恐らくだがクラスの中でも上位の強さを持つ桐華であれなのだ。


「なら、これも封印だな」


 そう呟いて身体強化を解く。身体強化も普段は『傀』の方ですることによう。それに加えて、身体強化を今以上の最低限ですれば、何とかなるだろ。


 ついでに今日の夜一日かけて練習したら出来るようになった事にするか。


 それがいい、そうしよう。


 と、今後の方針が決まったところで不意に俺のスマフォが着信音を告げた。電話番号は見たことが無い番号だ。


「はい、もしもし」


「もしもし兄貴だ、よぉ弟よ」


 電話は兄貴からだった。


「で、どうしたんだ兄貴?」


「いやな、お前が学校馴染めてるかなって気になってな」


 おぉ、弟の事が心配で電話をかけてくれるなんて、いい兄貴じゃないか。


「と、いうのは冗談だ」


「おい」

 

 前言撤回。やはり兄貴は兄貴だった。


「ハッハッハ、まぁいいじゃねぇか。それで聞いてくれよ!昨日な、後方支援してたらさ、前線の一部が崩

壊しちゃって小型の『クラーケン』が俺達がいるところまで流れてきたんだよ」


 それは中々にまずい事なんじゃないだろうか。確かフランスにも一人『十字将』がいたはずだから、世界中の『漢字保有者』の中でも最強と名高い『十字将』が一人でも出張っていれば前線が崩壊するなんて事はありえないはずだ。


 確か超大型の妖魔『クラーケン』は単体での強さは超大型の妖魔の中では弱いほうだが、真の強さは数にある。『クラーケン』は産卵と呼ばれる行為で小型の『クラーケン』を増やす事ができるのだ。原理や仕組みは不明だが、一度に千単位で増やす事ができるらしい。


 俺も以前、一度だけクラーケンと戦ったことがあるのだが、小型のクラーケンの余りの数の多さに本体のクラーケンまで近づく事すら出来ず撃退出来ただけだった。


 本体の『クラーケン』から生まれる小型の『クラーケン』も時が経つにつれて成長し、最初は小型の妖魔だが中型、大型となっていくのだ。そんな『クラーケン』と戦って戦線が崩壊するとは、余程小型の『クラーケン』の数が多かったのだろう。


 俺が考え事をしてる間にも兄貴の話は続く、どうやら兄貴が話したかった事は自分のパーティの武勇伝のようだ。


「俺達が幾ら後方支援が任務だって言っても目の前まで妖魔が来てるんだから戦うしかなくてな、ひたすら戦ってたのよ。まぁ俺等のところまですり抜けてきたのは小型がメインで中型がたまにいるくらいだったんだけどな、前線の再構築自体はすぐに終わったみたいで、すぐにこっちに『クラーケン』も来なくなったんだよ」


「なるほど」


 とりあえず適当に相槌を打っとく。


「それでな、やっと本題なんだけどさ。その時に仲良くなったフランスの『漢字保有者』の人が人形遣いでな、人形の事をいろいろ聞いておいたけどお前も聞くか?」


「兄貴ありがとう!聞くよ」


 前言再撤回。やはり、いい兄貴だった。


「それでな、聞いた話によると人形遣いはな、とにかく字力を大量に使うらしい。人形遣いは人形を作り出す、維持する、操作するの三つの動作が必須で、その動作全てに字力を使うから字力量が多くないと人形を作り出せる数という戦力、その人形を維持する継戦能力に関ってくるんだと。だから、まずは字力を徹底的に増やす事。字力の増やし方は分かるよな?」


「流石にそれはわかるよ。字力を限界まで使ってからの休息を繰り返すんだろ?」


 字力は相当な量を持っているつもりだけど、人形遣いとして戦っていくなら字力をもっと増やしたほうがいいかもな。


「わかっているならいい。次は人形を使った練習だけど、最初は字力が少なくて小さい人形しか作れない時期に人形の動かし方を覚えておいたほうがいいって。この時に人形を自由に自由に動かせるようになれば、人間大の人形を作れるようになった時にすぐに人形の戦闘訓練に移せるからだってさ」


 やっぱり誰もが最初から人間大の人形が作れるわけじゃないんだな俺の場合は字力が前世と同じだけの量があったってのが理由だし。


「次に人間大の人形が作れるようになったら、とにかく人形で模擬戦をすること。これは人形を使った戦い方を覚えるためらしい。その後は字力に余裕ができて、人形一体での運用が片手までもこなせるようになったら人形を二体に増やしていくみたいだぜ。その後は人形を増やしていくのをループだな」


「なるほど」


 やっぱり人形遣いは人形の同時運用数を増やしていく形になるのか。なら、俺も同時運用数を増やす練習をするか。


「これが基本的な練習だな。後は人形の形とか武装だな」


「人形の形とか武装?」


 見てくれと装備の話なのか。


「そうそう。その人の人形は槍を持った西洋のフルプレートアーマーの騎士だったんだよ。剣斗は木製の人形に素手だろ?だからさ、早いうちにお前だけの人形を考えたほうがいいんじゃないかって思ってな」


 確かに、どうせ人形作るんならカッコいいほうがいいわな。後で色々ネットっで参考画像を探してみるか。


「それもいいかもな。そういやさ兄貴、人形の武器ってその武器の『漢字』を持ってないとやっぱりダメなのか?」


「まぁ、基本的にはそうだな。人形の武装を作るのは、それに対応した『漢字』が無いと作れないけど、これには裏技っていうかテクニックがあるらしくて、身体の一部なら大丈夫らしいんだ」


「つまり『剣』の『漢字』が無いと武装で剣は作れないけど、腕の先に手をつける代わりに剣をつけられるって事?」


「要はそういうことだな。擬似的なものらしいから『漢字』で作るものよりも弱いらしいけど、それでも殴る蹴るよりはマシらしいぜ」


 あんまり拳を馬鹿にしちゃいかんよ兄貴。鍛え上げれば大型の妖魔だって一撃で倒せるんだからな。

その反動で拳が壊れるのはご愛嬌ってことで。


「簡単に言えば武器が人形本体と一体化してればいいのか」


「そうこったな。おっと、そろそろ集まらなきゃいけないみたいだ。また今度な!じゃ、切るぞ」


 そう言うなり一方的に言い残して通話を切る兄貴。


「兄貴も向こうで色々忙しいみたいだな」


 確かこっちとの時差が九時間ぐらいだったから、今の時間が八時なので向こうは十一時か。向こうが昼前なら仕方ないか、兄貴もこっちの時間見計らって電話してくれたみたいだし。兄貴に感謝しつつ、この時間は普段ならゲームとかアニメ鑑賞をするところを予定変更して、パソコンで人形の新しい外見の為の検索するか。


 その前に、字力を使うために人形を召喚させる。毎日の実技の授業を放課後の自主練だけだと字力はほとんど減らないので、字力量を増やすならばこうやって暇な時間に無駄に字力を使うしかない。


人形は動かさないで立たせておくだけにするので、二体目、三体目とポンポン召喚していく。五体目を召喚するとやっと字力量が二割ほど減った気がする。


 数を召喚するのも慣れれば、もっと字力の負担が減るのかな、などと考えつつも人形達を字力で最大まで強化していく。これを維持する事によって、字力の底上げと人形の維持の訓練を同時にしようという腹積もりだ。


 この間に何もしないのは時間の無駄なので、ネットで色々検索していく。やっぱり向こうが西洋騎士なら、こっちは武士で対抗するしかないよな。


 俺は画像検索で武士の甲冑について色々探していった。



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