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十話 実技の授業と身体強化。

短いけど、どうにか更新...

翌日の午後も俺達は練習場で実技だった。


というか、ここは『漢字保有者』を育てるための学校なので実技は毎日二時間分が割り当てられていた。時間割上では五、六時間目の二時間ぶっ続けだ。


今日も一組と合同なので、一年の他のクラスも二クラス合同の授業なのだろう。昨日と同じく三十分間続いた地獄のランニングを警察学校や自衛隊の訓練生ってこんな感じなのかなとかくだらない事を考えつつ終えると、また名前が呼ばれた生徒が分けられた。


だけど今日の分け方は何となくだがわかる、基準は恐らく昨日『漢字』が使う事ができたかそうでないかなのだろう。現に昨日合格してた人は全員俺と同じほうに分けられたし。


「今日は何をやるんだろうな」


横にいた彰が話しかけてくる。並び方が五十音順だから彰はいつも俺の後ろにいるんだよな。


「わからないけど、そんなに難しくないといいよな」


そう言いながらも実は結構楽しみなのは秘密だ。昨日は初めだから自分の『漢字』を使えるようになる事だったけど、今日はどういうことをするのだろうか。


俺が若干楽しみに待っていると今日もまた木下先生が話始めた。


「今日は字力を使った身体強化を覚えてもらう。字力に関しての基本的な知識は今日の午前中の授業にやったからみんな覚えているはずだ」


字力の身体強化か。


 言葉で表すのならば簡単だ。『漢字刻印』に眠っている字力を引き出して身体に纏うようにすればいい。

これだけだ。


 だが、これだけの事をするのすらいくつかの難関がある。


 まず字力だが、これを自分の力で引き出すのが難しい。『漢字』を使う際に消費される字力だが、これは『漢字』を使う時に勝手に引き出されているだけで自分で意識的に引き出しているわけではないのだ。


 それを自分で字力を意識的に引き出さなければいけない、まずこれが最初の難関だ。


 次に、その引き出した字力を身体全体に纏わす。これが二つ目の難関だ。


 この工程は自分が持っている『漢字』の主漢字の種類によって難易度が物凄く変わる。これが得意な『漢字保有者』は体全体又は一部を強化する身体強化系や攻撃力や防御、早さなどの身体能力の一点大幅に強化できる肉体系、身体の一部を獣に変えることができる獣系だ。


 逆にこれが苦手なのは術系や身体を直接使わない特殊系の『漢字保有者』だといわれている。


 ちなみに武具系の『漢字保有者』は武器に依るが全体ではやや得意ってところだろうか。


 後これは余談だが、前世の俺の『生』は特殊系だったけど身体に関係する『漢字』だったからか身体強化は得意だった。


 最後の三つ目の難関は纏った字力を維持する事だ。

 

 最終的には字力の総量も関ってくるから一概には言えないけど一定時間、それも戦闘中に維持するのが難しい。戦っている最中なのに常に一定の意識を強化に割かなければいけないからだ。


 ちなみに昨日の模擬戦中に桐華のロングソードの強化が追い詰められるにつれて弱まっていったのも、追い詰められて強化に意識を割くのが難しくなったからだ。


「――の三段階から身体強化は成り立っているのだ。今日中に全て出来るようになるのは無理なので今日の目標は字力を意識的に引き出せるようになる事。各自他人の邪魔にならないように散らばったら始めてよしっ!」


 その合図で生徒が練習場の散らばると桐華がこちらに近づいてきた。


「今日の課題こそ私が一番貰うわよっ!」


「おう、がんばってくれ。先に終わったら俺に教えてくれ」


「俺も頼む」


 俺と彰の言葉にげんなりした顔になる。


「ちょっとアンタ達も真面目にやりなさいよ」


「そりゃあ、真面目にやるけどさ。桐華の方が『漢字』について詳しいし、『漢字』を使っている時間も長いんだから、早く終わりそうじゃん。なぁ剣斗?」


「というか、たぶん桐華は身体強化できるだろ」


 昨日武器強化と併用して身体強化してたのは見えたし。


「昨日の動きはどう見ても常人の動きじゃなかったしな」


 俺がそう指摘すると桐華はすぐに認めた。


「そりゃあ、出来るわよ。というか剣斗、アンタはどうなのよ?」


「俺?出来るわけないだろ、やったことも無いんだし」


 まぁ、この身体になってからはやってないだけでやれば出来るんじゃないかなってきはするけどさ。


「とりあえず桐華、一回お手本見せてくれないか?」


「分かったは、よーく見ててね」


 桐華はそう言うと俺達から少し離れてリラックスした体勢になる。すると桐華の左の上腕から字力が溢れ出てきたのがわかった。溢れ出てきた字力が桐華の全身に浸透するように行き渡る。


「うん、こんな感じね。分かる?」


 字力による身体強化が終わるとこちらに近寄ってくる桐華。


「うーん、見た目は何も変わってないぞ?」


 彰が何度も桐華の全身をくまなく見るが良く分からないらしい。


「まぁ、字力って見えないし仕方が無いか。ちょっと手握ってみてくれる?」


 そういって桐華が彰に右手を出すと彰もは握手するように桐華の手を握った。


「こう?」


「そうそう」


ギリッ。


 桐華が彰の手を軽く握り返すと、彰がいきなり痛がり出した。


「イテッ!イテテテテッ!」


 すぐにパッと桐華が彰の手を離すと、彰は自分の手を押さえた。


「こんな感じよ。どう?強化されてるのが分かったでしょ」


「あぁ、わかったよ。ホントに強化されてるんだな」


 彰が握られた手をプラプラを振りながら頷いた。


「剣斗はどうする?試してみる?」


「遠慮しとくわ、痛いのは嫌だし」


 桐華がニタァと笑いながら俺にも振ってくるので、即お断りする。


「ほう、竜胆はもう身体強化までできるのか。合格だな」


 いつの間にか木下先生が近寄ってきていた。


「あ、先生。私が一番ですか?」


「そうだが、それがどうかしたか?」


「いえ、なんでもありません」


 とは言いつつも嬉しそうな桐華である。


「確かにお前が一番だが、まだまだ強化の精度が甘いぞ。それぐらいの強化ならば今の半分の字力でやって見せろ」


「は、はいぃー」


 一番に出来たというのにいきなりダメ出しを食らって、うなだれる桐華は放っておくことにしたのか木下先生が俺と彰を見た。


「藤堂と鳥居はできたのか?」


「俺はまだまだ全然っす」


木下先生の問いに彰が即答すると、次は俺に視線を向けてきた。


「こんな感じっすか?」


 俺は右手の『漢字刻印』から字力を引き出した。


「ほう、藤堂。お前も早いな、合格だ」


「あざっす」


「鳥居は藤堂と竜胆から教えてもらうようにな。藤堂も竜胆から字力の纏い方を教わっておけ」


「はーい」


「うぃっす」


 そう言うなりすぐさまに立ち去り他の生徒の所に行く木下先生。


「よかったな桐華、お前が一番だってさ」


「でも、まだまだとも言われたけどな」


「彰、あんたって一言余計に多いわね」


 一言多かった彰が桐華に小突かれる。


「うぐっ。それより二人共さ、字力の引き出し方を教えてくれよ」


「うーん、感覚だから俺ははっきりとしたことは言えないなぁ、桐華は?」


「私もなのよねぇ、私は左腕にある『漢字刻印』から字力を引き出すイメージなんだけど。剣斗は?」


「俺も同じようなイメージでやってるな」


「ならそれでいきましょうか、彰って『漢字刻印』はどこにあるの?」


「俺は左のわき腹だな」


 そう言って右手で『漢字刻印』がある場所を押さえる彰。


「その『漢字刻印』がある場所に彰の字力の源泉があるのよ。そこから字力を汲み出す、イメージかな。始めは目を瞑って集中したほうがいいわよ」


 彰は言われた通りに目を瞑って集中しはじめた。そのまま彰は無言になり、俺達も彰の邪魔をしないように無言になり数分。


「全然わかんねぇ」


 いきなり目を開けた彰が座り込んだ。俺等も釣られて座り込むと桐華が口を開いた。


「まぁそうでしょうね、私も相当時間がかかったし。俺出来ないとか言いながらやってみたら出来る奴が頭おかしいのよ」


「俺のことか?」


「そうよ、アンタの事よ。アンタは何でそんな簡単に字力が引き出せたのよ」


 桐華からジト目で睨まれる俺。


「うーん、なんでって言ってもな。俺の漢字は『傀』だろ?」

二人が頷くと三人で三角形を描いて座っている真ん中のスペースに三十センチ程の木人形を作りだす。


「人形ってさ、作るときだけじゃなくて操るときにも字力を使うんだよ。始めは長時間使ってると漠然と疲れてくるから字力の使いすぎかなーって思ってたんだけどな、その内右手の甲から字力が流れていくのが感じられるようになってさ、それでだな」

 

 人形を操りながら説明する。


「なるほどね」


「そんな感じなのか」


 彰が、まだいまいち分かってないようなのでもうちょいヒントを渡す。


「彰、『漢字』使ってみ。それで字力の流れを感じるんだ」


「おぉ、そうすればいいのか」


 彰は早速『獣』を発動して右手の爪を鋭くする。


「どうだ、分かるか?」


「うーん、体から何かが減るのは分かったんだけど、どこから減ってるのかが分からない」


 彰はまだ字力量が少ないからすぐに感じ取れると思ったんだけどな。


「彰、知ってるか?その爪って更に長く伸ばせるんだぜ。伸ばしてみろよ」


「おう」


 彰が集中して少しすると彰の右手の爪が更に長くなる。


「ホントだ長くなった」


「だろ。今爪を長くした時に字力がどこから流れているか分かったか?」


「うーん、まだ。でも、何となく字力が右腕を流れてるのが分かった気がする」


「そこまで、分かればもうちょいだろ」


「そうね、後もう少しよ」


 俺と桐華の言葉に、元気付けられた彰は目に見えてやる気を出したのであった。




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