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九話 三人での自主練習と桐華と模擬戦。

非常に遅れて申し訳ありません。

12月に入る少し前からかなり忙しくなってまして全然投稿できませんでした。

ただでも、5分の1ぐらいはモンハンや艦これの所為です。


今日の更新はモンハンの鯖が落ちたからやる事がなくなって更新したのではありませんよ、ええ絶対に。




追記、出来るだけ更新するようにしますが今月は恐らく不定期になると思います。

「他にはどんなタイプの『漢字保有者』がいいかしら」


 せっかくパーティを組んだので一緒に帰ろうと桐華に誘われ、三人で歩いていると校門出た辺りで桐華が口を開いた。


「他だと遠距離火力か支援系がいいんじゃないか?」


「やっぱりその辺よねー」


「遠距離火力?支援系?」


 彰が意味が分からないといった顔で聞いてくる。


「遠距離火力ってのは武具系の『弓』や『銃』とか術系の『漢字』を持っている人の事だな」


「で、支援系は他人を治すことができる『癒』とかの『漢字』を持っている人の事ね。遠距離火力は文字通り遠くから攻撃できる人で支援系は攻撃はできないけど味方をサポートできる人って覚えておけばいいのよ」


「なるほど」


 俺と桐華の説明に理解したように頷く彰。


「それで桐華、他のメンバーのアテはあるのか?」


「正直に言えばないわね。剣斗は?」


「無い。つーか、まだお前等しか知らないし」


「俺も無いぞ」


「彰も無いかー。ならとりあえず良さそうな人を見つけたら誘うってことでいいか?」


「さんせー」


「そうしましょうか」


 彰と桐華も賛成してくれたので、俺は先程から考えていた次の話題を切り出す。


「それでさ、俺はこの後練習しに出かけるんだけど二人共一緒にどうだ?」


「練習って?『漢字』の?」


「もちろん」


 そう聞いてくる桐華に短く答える。


「剣斗が学校から帰った後いつもどこに出かけてるなーって思ってたけど。練習しに出かけてたのか」


 なるほど、と疑問が解けたような顔をする彰。


 「でも、どこで練習してるの?学校の練習場はまだ使えないじゃない。かといって学外の練習場を使いにも割引券が無いと高いし」


 その代わりに桐華はますます疑問に思ったようで俺に問いかけてくる。


「と、思うじゃろ?じゃがな、儂に秘策があるのじゃ」


 俺は冗談めかしに老人っぽい台詞を吐きつつ思わせぶりな笑いを二人に向けた。






―――――






 一旦寮に帰り準備をした二人と寮のロビーで待ち合わせると俺の案内でいつも練習場に移動した。


 「結構歩いたけど、こんなところに練習場なんてあるの?」


 「あるぞ、見た目はちょっとアレだがその分値段は安いぞ」


 俺の言葉に納得したようで口を閉ざす桐華とは反対に今度は彰が口を開いた。


 「そこの場所も剣斗の兄貴から聞いたのか?」


 「おう、兄貴から教えてもらったんだ」


 「なるほどねぇ」


 などと半信半疑の桐華と『漢字』を使えるということでどこと無く楽しそうな彰を連れて歩くと練習場についた。


「うわぁ、ボロい」


 桐華から率直な一言がこぼれ出るが、事実なので否定はしない。二人を引き連れてトタン小屋でいつも通り新聞を読んでる爺さんに受付してもらう。


「今日は三人です。今日もこれで」


 割引券を財布から出して渡す。


「はいよ、今日は三人か。なら三人とも学生証をここにタッチして、それじゃあ今日も三時間で三番ね。はいこれ鍵、終わったら返しに来てね」


 鍵を受け取ると三番の倉庫へ移動する。


「さっきの割引券が秘策なの?」


「そういうこと」

 

 彰と桐華に先程使った割引券の値引き額とここの使用料金を教える。


「なるほど割引額と使用料金が同じなのね」


「それの割引券も兄貴から?」


「あぁ、兄貴達は使わないからってくれた」


 受付で貰った鍵で倉庫を開けて中に入ると見慣れた光景が広がっていたが。


 「中もボロいわね。まぁ、練習できるんだから文句は言わないけど」


 「へー、中はこうなっているのか」


 初めて来た彰と桐華の口から感想がこぼれ出る。


「さて、なにからやるか」


「俺はその辺分からないから二人に任せた」


 俺のフリに彰が一番に丸投げで返した。


「なら、まずはお互いの『漢字』を見せ合うか」


「それがいいわね、私は遠くから見たけどやっぱり近くで見たいし」


 荷物を置いた俺達三人は練習場の中心に集まった。


「じゃあまず俺からだな、『傀』!」


 俺の掛け声にしたがって人間大の木人形が作られた。


「へー人形ってこうなっているのね」


 コンコンと木人形の胴体をノックする桐華。


「じゃあ次は俺だな。『獣』!」


 彰が叫ぶと同時に彰の右手の爪が鋭く伸びていく。


 「これが彰の『獣』の効果なのね」

 

 爪の硬さを確かめるように触ったり叩いたりする桐華。


「さて、最後は私ね。『剣』」


 桐華の声に反応して桐華の右手に剣が作られる。剣の長さは八十センチほどで特に凝った装飾も無く鈍色に光る無骨なロングソードだ。


「ほぉーこれか」


「へーすごいな」


 俺と彰が桐華のロングソードを見せてもらう。


「どう?これが私の『剣』よ、凄いでしょ」


 桐華が自信満々に言うが確かにこれは凄い。俺も感知は余り得意じゃないけれど、それでも分かる。桐華の作り出したロングソードが字力で強化されているのだ。


 出力も精度もさほどではないが、それでも年齢が十五の少女がするには十分すぎるほどだ。入学前によっぽど良い教師に出会って相当訓練したのか、それともよほどの才能があるのか、どっちなのだろうか。


 それにこの程度の強化をしていて息が切れないのは、ある程度の字力がある証拠だな。これも高一にしては異様な量の字力だ。


 まぁ俺の言えたことじゃないけどさ。


「それで剣斗と桐華、この後はなにをするんだ?」


「うーん、剣斗は普段どんな練習してるの?」


「一人だから人形を動かしてるだけなんだよな。桐華ってどのくらい『剣』を維持できる?」


「うーん、試した事は無いけど一日ぐらいなら持つんじゃないかしら」


「なら、俺と模擬戦しようぜ。彰はどうする?」


「俺か。なぁ剣斗、初心者ってどういう練習するんだ?」


 いや、俺に振られてもな。俺は実戦で慣れろ、としか言えないし。ましてホントにそんなこと言えるわけない。


「分からん。ということで桐華何か知ってる?」


「『漢字』をずっと使い続ける練習ね、私のときもそうだったし。逆に剣斗はどうやって練習してたの?」


「そういえば俺は兄貴に『漢字』の使い方を教わってから、ずっと人形を動かせてたな」


 まぁ『漢字』の使い方自体は元々知っていたんだけど、それも言えないしなぁ。


「剣斗も同じような練習じゃない。彰は当面は『漢字』を使ってそれを維持する事が練習かな。始めは字力が少なくてすぐにキツくなるけど、徐々に字力が増えて長時間維持できるようになるわよ。その辺は体力と一緒ね。自分の限界手前まで使って休む、の繰り返しよ」


 なるほど、と頷いた彰は早速『獣』を使って自分の爪を伸ばした。


「この状態でずっと維持してればいいわけか」


「そうなるわね。後はきつくなったらすぐに止めて少し休憩する事。字力は使いすぎると気絶するから」


「じゃあ、そろそろ始めるか。彰は端っこにいてくれよ。危ないから」


 彰が練習場の端に移動したのを見計らって再度木人形を作り出す。


「私の『剣』は間引いた方が良い?」


 俺の対面にいる桐華がそんなことを言ってきたが俺は断った。


「木人形しか狙わないなら真剣でも大丈夫だ」


 というか『漢字』で作る剣の刃を間引くのは地味に難易度が高いんだけどな、もうそんな事もできるのか。


「なら真剣のままでいくよ!」


「おう。彰!合図出してくれ!」


 離れたところにいる彰に開始の合図を頼む。


「始めっ!」


 彰のそんな声を合図に俺(木人形)と桐華の模擬戦は始まった。


「やぁああっ!」


 桐華がどれくらいの力量か分からないので始めは受けようと決めていたので、始めの合図と共に斬りかかって来た一撃を木人形は腕をクロスさせて受けきった。


 その後も受けを中心に木人形を立ち回らせる。そして時折隙を見て反撃する。


 そのな攻防をいくつかしている内に桐華は木人形の動きを見切ったらしく、木人形の拳を余裕を持ってかわした桐華は返す刀で一太刀木人形に入れる。


「せいっ!」


 だが俺の木人形も字力で強化してあるので、桐華の斬撃を弾く。


 見てる限りだと桐華は『漢字』の使い方の訓練だけじゃなくて、戦闘の訓練も受けた事があるみたいだな。


 しかもこの動きは見たことあるぞ。仲間だった『十勇士』の一人が使っていた剣術に非常に似ている。


 そいつが習っていた何とかいう剣術を元にして自身の妖魔戦での経験を加えた『漢字保有者』としての動きを彷彿とさせる動きだ。


 確かあいつは暇があれば部下に剣や槍といった武具系の『漢字保有者』を集めて自分の戦い方を教えてたからな。剣以外の武器でも間合いの取り方や歩法を覚えるだけでも生存率が違うからって理由で武具系の『漢字保有者』として目覚めた新人は皆とりあえず放り込まれてたっけ。


 たぶん桐華はその教えを受けた誰かから教えてもらったのだろう。


 桐華の戦い方に若干の懐かしさのようなものを覚えながら俺は木人形の動くを受け中心から攻守のバランスが良い戦い方に変化させる。


 ここ何日かの個人練習で木人形の動かし方は分かってきた。木人形の動かし方も、木人形を作るとき同様イメージ次第なのだ。俺の戦い方は前世の一橋健二として妖魔と戦った拳主体の戦い方しか知らないから木人形の戦い方も当然そうなる。ここでいきなり木人形に剣を持たせて戦わせても俺が戦い方を知らないから上手く木人形を操れずに結果として弱くなってしまうだろう。


「くっ」


 木人形が攻撃の回数を増やしたために、剣で防御する事が多くなった桐華からうめき声が漏れ出る。そんな劣勢状態に比例してロングソードの強化も段々と弱まっていく。


 強化に割ける字力はあっても割ける意識がないのだ。そんな劣勢を覆そうと後ろに跳んで距離を取るとロングソードを構えなおして、再度ロングソードを強化するために字力を注ぎ始めた。


「次は本気の一撃いくからねっ!」


その言葉と共に大技の準備をする桐華に真っ向から受けて立つように俺も応える。


「こいっ!」


 桐華と競い合うように俺も木人形に字力を注いでいく。


 桐華は先程よりも倍以上多い字力でロングソードを強化すると一直線に向かって木人形に駆け抜けていき、ロングソードを振り下ろした。


「やぁっっ!!」


 俺はロングソードの剣線に合わせるように字力で強化した木人形の両手を交差させて迎え撃つ。ぶつかり合う一瞬、剣と木がぶつかり合うにしてはおかしな程の轟音が周囲に撒き散らされた。


 一拍の間を置いてから俺が覗き込むと、俺の木人形は両腕が粉々に破壊されていた。






―――――






「いやー負けた負けた」


 模擬戦を終えた俺達はまた練習場の真ん中に集まって反省会をしていた。


 桐華は模擬戦に勝って得意顔だ。


「ふっふっふ、私の勝ちね!」


「でも桐華も剣斗も凄い戦いだったよな!剣斗の人形も人形とは思えないほど自然に動くし!桐華の戦い方も凄かったし!」


 そう言った彰は字力を使いすぎて疲れたのか既に『獣』は発動していなかったが、始めてみた『漢字保有者』同士の戦いに興奮具気味だ。


「そうかな?」


「そうね、正直剣斗の人形がここまで戦えるなんて思ってなかったし、予想外だったのは確かね。私も模擬戦で本気で強化する事になるとは思ってもみなかったし」


「ほら桐華もそう言ってくれてるんだし、剣斗も凄かったんだって」


「ありがとよ。そういえば桐華も結構戦えたんだな」


 俺の今回の敗因は木人形の字力による強化の練度の低さとその状態で桐華に真っ向勝負を挑んだ事だな。それに俺が人形じゃなくて自分の|得物(拳)で戦えてたら俺が絶対勝ってたはずだ。


「私もここに入る前に戦い方とか教えてもらったからね」


「へー、俺は兄貴だったけど桐華は誰に教えてもらったんだ?」


「私の場合はお母さんね。結婚する前はお母さんは妖魔対策庁で隊員してたらしいんだよね」


 なるほど、桐華は母親から教えてもらったのか。桐華の母親ってぐらいだから、どんなに早くても三十半ば以上だろ。そうなると俺が知ってる人物の可能性もあるな、竜胆か。そんな苗字のヤツいたかな。いや、でも結婚したらな苗字が旦那の苗字に変わってる可能性もあるから、旦那が一般人だったら分からないか。

折を見て桐華から少しずつ聞いていくのもいいかもな。


「それで、剣斗って......聞いてる?」


 考え事がちょうど終わったところで桐華に話しかけられた。


「ん?あぁ、すまん聞いてなかった」


「ちゃんと聞いてなさいよ。初めから言うわよ、パーティを結成するには担任を通してパーティの申請をしなきゃいけないの。それでパーティの申請を受け付けてくれるのが五月のゴールデンウィークが終わった後になるのよ。だからパーティ申請するまで他のパーティになびいちゃダメだからね」


 なるほど引き抜きに警戒しろってことか。俺が『漢字刻印』を二つ持っているのがバレると取り合いになるかもしれないけど、『傀』だけならちょっと珍しいだけだから、そんなに注目されないと思うんだけどな。


「わかったわかった、それより桐華の方が強いんだから引き抜かれるなよ」


「何言ってるの?このパーティのリーダーは私なんだから引き抜けるわけ無いでしょ?」


ん?あれ?


「いつの間にリーダーなんて決まったんだ?」


「それこそ何言ってるのよ、私が剣斗の彰を誘ったんだから私がリーダーに決まってるでしょ」


なるほど、俺達は桐華が作るパーティに入ったって形になっていたのか。


「彰はそれでいいのか?」


「いいもなにも、俺じゃ『漢字』の事は全然分からないからな。ここはそれに詳しい桐華か剣斗がに任せるしかないって」


「ならいいか、頼むぞリーダー」


「リーダー任せたぜ」


「私に任せなさいって」


 俺と彰に呼ばれたリーダーという単語が嬉しかったのか、桐華は得意げに胸を張るのであった。


 膨らみかけの胸を張られてちょっと眼福だったのはここだけの内緒である。




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