小さな村、パスピエ
この国には魔力を持っている人と持っていない人がいる。
持っている人は偉くて、持ってない人は偉くない。
これがこの国の当たり前。
「俺たちは後者なのか?タオ」
「まぁ、そうね。」
「やだ!私も魔力ほしいもん。」
「そうだそうだ!」
「どうして?
魔力なんかなくてもなんでもできるじゃない。」
紅茶色の髪の少女の周りにはまだ10もいかないくらいの幼い子ども達が集まっていた
「だってあいつらは、重い物も自分で持たなくて運べるんだろ?」
「畑仕事しなくても食べ物が食べれるんでしょ?」
子ども達の問いに少女は微笑んだ。
「ザノンおじさんは小さな頃から重い物を持っていたから村の人を悪い人から守ったわ。力持ちだったの。」
「そうなのか?」
「ええ。
それにマッセおば様も。村のみんなで一生懸命作った野菜の料理の方が、ロゼットで食べた高級な料理より100倍美味しかったって言ったのよ。」
「ほんとにぃ?」
「ほんと。」
私たちの村はみんな魔力を持たない「ペスカ」。
と言っても魔力を持つ人なんて首都にしかいない。
それに少しの魔力を持つ人を合わせても全体の5パーセントに満たない。
魔力を持つ物は「ノーブル」と呼ばれ
この国では彼らがルールだった。
「悪いわねぇ、タオちゃん。
チビ達の相手してもらって。」
「いいえ、私こそ、本当にありがとうございます。
おじいちゃんがきちんとした治療を受けられるのは
おば様達のおかげなんです。」
「何言ってんのさ〜、あんたのじいさんがこの村唯一の医者なんだ。早く元気になってもらわないとね!」
「タオ!準備できたよ。」
遠くの方でマナおばさまの声が聞こえた。
「おばさま!今行きます。
それじゃあ、私はこれで。今からおじいちゃんのお見舞いにいくの。」
「おお。行っておいで。気をつけて行くんだよ。
カルロ先生によろしく伝えといておくれな。」
「はい。」