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鬼にアイジョウ取らる  作者: カズツグ
―100年越しのプロポーズ―
7/27

2年後の朝

今回から第二章へ突入です!視点が変わりますのでご注意ください。

  



 神々しく夜空を照らす月の下。波の音だけが暗い海岸の中響いている。

 二亜はそんな空間が堪らなく好きだった。一歩一歩歩いた足跡が迫り来る波によってかき消されていく。

しかし、振り返ると以前いたもう一人の影はなく、二亜は歩くのを止めた。



 翌朝。

 目を覚ました二亜は涙を流していた。何故だかは分からないがずっと泣いていたのだろう。頬に触れれば涙が乾いて固まっている感触があった。

 起き上がって外を眺めていると、不意に映った窓ガラスにはなんとも言えない酷い顔が目に入る。涙は零れ、ずっと泣いていたせいで目は赤く腫れ上がっていた。

 二亜はそんなことは気にも留めず零れた涙を軽く拭い、急いで着替えて部屋を後にした。


「二亜ちゃん、おはよう」

 部屋を出て少し歩くと外から凛とした声が聞こえた。その聞き慣れた声に振り向くと庭に紫星がいた。

 紫星―彼は人間でありながらある事件をきっかけに二年前からこの家に滞在している。唯斗の印花を持つパートナーでもある。

 鬼と違い、人間というものは成長が早いものでたった二年という年月で紫星の雰囲気は随分と変わった。二年前、初めてこの家に訪れたときは全てのことに不安を抱いていた。それが今ではここにすっかりと慣れ、楽しい毎日を過ごしているようだ。

 外見も変わった。少しばかりだが背も伸びている。髪もあの日以来伸ばしており、その髪は腰辺りまでとなっている。そのエメラルド色に青いリボンが良く映える。

「はよ」

 そう軽く挨拶をして二亜は再び歩き始めた。しかし、それは紫星の手によって阻止される。

「何?」

 二亜が尋ねても紫星は何も答えない。

 二年前、二亜は紫星が嫌いだった。特に理由はなかったが唯斗が彼に構っていることが気に入らなかったのだ。今はいろいろあって和解したがやはりこの男のことを好きにはなれない。

「僕、ご飯作りに行くんだけど…」

 その言葉を聞くと紫星はあっさりと手を放してくれた。お腹が空いていたのだろうか?そう思った二亜は急いで台所へと向かった。

「……二亜ちゃん、また泣いていたね」

「最近はずっとこんな調子だよ。海岸にも頻繁に行くようになったし」

 紫星の呟きに、木の上で寛いでいた唯斗が答える。

 唯斗の目には二亜の背負っているものがとても大きく、今にも潰れてしまいそうに見えた。


 台所に着くとそこには既に先客がいた。

「あっ二亜だ」

 そう声を発した本人は気にせず料理を再開した。

 紫苑―鬼の一人で紅蓮の瞳を持つ少女。一見華奢な体つきに見えるが力に関しては二亜をも凌ぐ強さだ。

「……何をしている」

「見て分からないの?朝ごはん作ってるんだけど」

「…お前は卵焼きを洗剤で焼くのか?」

 紫苑の手元には数個の卵とフライパン、そのフライパンに明らかに今から入れようとしている食器用洗剤。まだ焼かれていなかったことが不幸中の幸いだ。

「え?だって『油』って書いてあるし…」

「『油』もよく落ちる洗剤となら書いてあるけど?はぁ…お前は料理すんなって言っただろ」

 彼女の料理の下手さは鬼の中でも有名だ。しかし、誰もここまでとは思わないだろう。その上、見た目だけは一流料理店と並ぶほどだ。初めて食べる者は皆その見た目に騙される。

 溜め息をついた二亜は紫苑からフライパンを取り上げ油を敷き、手際よく卵を割っていく。割られた卵は菜箸によって白身と黄身を混ぜ合わされ、綺麗な黄色を生み出す。

「紫苑、皿とって」

 素早く卵を巻き、渡された皿に乗せ包丁で均等に切り分ける。見た目は紫苑ほどにはいかないが家庭に出される素朴な卵焼きが出来上がった。

「これが卵焼きだ」

「あたしの方が美味しそう」

「見た目だけならな。お前の作った料理でどれだけ病院送りになったと思ってんだ」

 今まで紫苑の料理を食べて体調不良を訴えた者は数え切れないほどいる。二亜もそのうちの一人だ。原因を突き止めようと食べかけのアーモンドケーキとやらを調べたらなんと青酸カリが出てきた。自分が鬼でなかったら間違いなく死んでいたという事実に二亜は意識を失いそうになった。

 何をどうしたら間違えるのかを聞くと「アーモンドの匂いがしたから」とだけ答えていた。それ以来二亜は紫苑を台所に近づけることを極端に避けている。彼女の料理を食べても平気なのはおそらく唯斗くらいだろう。彼は食べられればなんでも食べるという強靭(きょうじん)な胃袋の持ち主だ。美味(うま)かろうと不味(まず)かろうと胃に入れてしまえば同じらしい。

「残りは僕が作るから、お前は唯斗と紫星を呼んで来い」

そう言うと不満そうな顔をしながらも紫苑は二人を呼びに行った。

家族なんてまともにいたことはないが娘を持つ母親とはこんな心境なのだろうか。

二亜は二度目の溜め息をつきながら残りの朝食作りに取り掛かった。


 自分は料理をよくしますが洗剤を入れたことはさすがにありません。ただ、味噌汁を作る時に出汁を入れ過ぎて凄い量を作るはめになります。

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