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第11話 知ってましたか?

 

「見られたらしかたねぇオレは鴉だ! この名を聞いたからには必殺だぜオマエは」


「そういうのはな少年、殺してから言うものだ」


「吹くじゃねぇかよ学校の先生ぇがよぉ!」


 錆びた釘ラスティネイルの古い仕来りシキタリ――字名を他門派の相手に教える事は”必ず殺す”事を意味する。その自信と言葉はハッタリではない。


「ハッハー こちとら邪魔に邪魔されて鬱憤が溜まりまくりなんだよボケがぁ楽しませてくれよぉ!」


「口だけでは無さそうだ」


 この男のランクは3位――近接戦闘人類最強と言われる傭兵王国ゼノンの上位傭兵ラスティネイル。言わば世界で五指に入る実力者であるのだから。


「セドリック皆と一緒に園庭へ――敷地内からは出るなよ」


 霞仕上げの村雨が部屋の明かりでヌルリと光る。

 ユウィンの小太刀はラスティネイルの先制攻撃を弾きつつ防御特化の正眼に構え直す。


「はい先生任せて下さい」


「逃げろ」と指示しなかったのはまだ伏兵が残っている可能性がある事と眼前の少年の気配が(・・・)読めなかった為だ。


 自分の視界の届く範囲に生徒を置きたかった。


 セドリックは放心状態のシャルロット含め、体力の著しく消耗した友人2名に肩を貸しながら部屋からの脱出を試みようとしているが。


「ハッハ逃がすかよバァ~カ!」

「魔人剣――こう!」


 ゼノン流交殺法黒派心の技《暗歩デフォ》――カルスの姿が消えた。それと同時にユウィンは小太刀で居合の構えを取っており全方向全てにオーラの衝撃波を叩きつける。


「ヌルいぜぇ!」

「厄介だな」


 ――放たれた衝撃波を手刀で両断しながら、生徒達に迫ろうとしていたカルスの姿がユウィンの右斜め方向に現れた。


(またか……これは一体)


 再びの違和感――この少年の気配を感じないのだ。感覚超過”技の武装気”を展開している筈なのに相手の気配が感じ取れない故の違和感。


(つぅ――いつの間に)


 ユウィンの肩に激痛が走る。

 気付かない内に寸鉄が突き刺さり、動脈から勢い良く血が吹き出した。


「セドリック急げ!」


 振り返りユウィンが叫ぶと同時にカルスの姿が再び消え、背後に現れる。


「やっぱアンタ弱いわ」

「剛魔人け――」


 ――スシュッ!


 振り向きざまにカルスに切り込むはずだった利き腕が宙を舞った。


 ――ドッ…ギンッ


 村雨と右腕が音を立てて床に落ちるが攻撃はまだ止まない――秋先の豪雨のような手数。


「オラオラオラオラハハハ!」

(捉えきれん――速過ぎる)


 更にカルスは余裕の表情でユウィンの腹部目掛けて蹴りを刳り込ませてくる――よもや、それはジェットコースターに乗りながら針に糸を通すほどの正確さで防御すり抜け迫りくる。


「行くぜぇ廻鎌ローラント!」


 とっさに上半身のみを回転させて上空に飛び、同時にカルスの肩に蹴りを入れて後方に飛ぶ――部屋の入口付近でもたついている生徒たちの所まで退避して一息つく。


(まずいな……今ので躱せないとなると俺の身体能力では捉えきれん)


 紙一重で躱したつもりだったが、左脇腹が深く切り裂かれて出血していた。一旦間合いを取れる位置についたが、どうしたものかと嘆息する。感情の乏しいユウィン=リバーエンドに動揺で剣を鈍らせる事はないが、事態が好転するわけではない。相手の身体能力は自分より高いのだから。


「全く期待ハズレだわアンタ索敵武装気アスディックに頼り過ぎだっつの」


「そいつは耳が痛い」


 右腕と左脇腹から血が流れ出し紅い水溜りとなっていた。ユウィン=リバーエンドは血液の溢流など全く気にもせず相手を分析――先程からこの少年の動きが全く見えないし感じない。技の武装気”索敵武装気アスディック”は周囲にオーラで張り巡らせ、ソナーの様に相手の位置を把握する――相手はそれに掛からない・・・・・


(何かがあるという事か)


「暗部には”隠密ステルス”って術があんのよ」


「ベラベラよく喋る暗殺者だな」


「何いってんだバーカ。今から死ぬ奴に何教えても自由じゃんよ」


「……あぁそういう事か」


「せ、先生!」


 部屋を出る寸前のテッサが叫ぶ。

 腕を落とされ、真っ白なシャツが血だらけの教師に向けての不安気な叫びだ。


 だがユウィンは生徒達を心配させまいと、戦闘中にも関わらずテッサに振り返りギコチナイ笑顔で答える。


「安心しろ君らの先生はちょっとだけ頑丈なんだ。あとででシャルロットも連れて飲みにでも行こうか」


「先生……アタシら学生です」


 テッサはそのあまりの下手な笑顔とセリフに苦笑する。そしてセドリックは見かけによらずの力で三人を抱えあげ部屋を後にした。


(良し、後はコイツを何とかする)


  相手に向き直るが。


「馬鹿なんかオマエ?」


 振り向いた時には既に敵は眼前にいた。

 ユウィンの心臓目掛けて貫手を解き放つ。


(もう――少し)


「死ねや貫手絶杭スピアハンドスティンガーぁ!」


 ――グドッ


 渾身のスピードで体を捻る。

 カルスの貫手は反対の右胸に深々と突き刺さり、既に真っ赤になってしまったシャツが更に切り裂かれ、致死量の血液が噴射している――にも関わらず、ユウィンの表情に変化はない。


「ハッははははは!」


 カルスは右胸に突き刺している貫手をそのままに、掌に集中した武装気ブソウオーラを更に強化して心臓まで横一直線に両断しにかかっていた。


「終わりだ先公――横薙断刃サイドウェイセイバー!」

『Run――マスター行けます!』


 ディの声がシャルロットの部屋に響いた時、ユウィンの術式が解凍される――この時を待っていたのだ。


「あぁ!? 腕が動かねぇだと」

「翔けろLv4退魔光弾アナー=ジイ」


 ユウィンに残った左手が閃光を放つ。

 放たれたのは無数の光弾――連続発射されたマジックミサイルは、部屋にある内装を巻き込んで大爆発を起こし四散する。この魔法は誘導式ミサイルを発射するLv4――敵の攻撃が速過ぎる為、魔法を演算する時間がない。敵の動きを止めてから放つようにデバイスに圧縮させておいた魔法であったが。


 ……ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「オマエ狙ってやがったな……それに魔法使いだったとはよぉぉ」


 やるじゃねえか。

 笑ってはいるが警戒色を強めたカルスは表情とは裏腹に間合いを一度離している。


 村雨を拾い上げ、再び片手で構えを取った。


(……回避不可能なマジックミサイルを避けたか)


 人間の限界速度を超えている。


「やるねぇ……若造」


 貫かれた右胸と切断された右腕を止血させつつ……ユウィン=リバーエンドは口元を歪めた。



 ◆◇◆◇



「この状況は……どうしたものですかね」


 セドリックは額に汗を浮かべる。

 やっとの思いで友達3人を抱え、広いデイオール邸の正面玄関まで来たのだが障害となる者が現れたからだ。


 ざっと眼だけで周囲を見渡せば――床、この家の長女と思われる遺体が静かに横たわっている。左右、今にも崩れてきそうな屋敷の壁、逃げ出せるほどの窓もない。正面、目指す玄関出口に立ち塞がる執事が一人、この状況で慌てもせず一人で。


 明らかに堅気の気配ではない。


「デイオール家の執事さんですか? そこに立たれていると出られませんが」


「申し訳ありませんが貴方達をここから出す訳にはいきません」


 執事カルヴィン=クラインが肩を鳴らす。


「貴方達とあの新任教師、デイオール家の者は死んで頂けないと困るんです」


「始めからそういう話なのですね」


 いつもは冷静沈着なセドリックの顔にも怒りが差し込んだ。


「お前達と教師は別だ。邪魔をされて正直ウンザリなんだよ」


 口調が変わる。

 執事は「演じる」事を辞めたのだ。

 本来の姿”サギ”と呼ばれる暗殺者の姿――他者をあざむく、不法行為、財産上の利得を得る者という意。それが王都の闇ルシアンネイルのサギという男である。


オレの計画は完璧だったんだよ。ラスティネイルの餓鬼が下らん性欲を出すからこうなった……全くもって忌々しい」


「な、何!? お前達シャルロットさんに何をした!」


「勝手に想像しろ蒼炎に気付かれてもつまらん。無駄に動くんじゃないぞ(わっぱ)共、そうすればあまり痛みは無く殺してやるから」


 抱えている衰弱した三人を床に降ろして、セドリックは接近する執事を鋭く睨みつけた。いつも浮べる爽やかな笑顔が完全に消え失せている。


「フッ……シャルロットさんは心を閉ざし、アベルとテッサさんは足腰立たないほどに疲弊しています。僕が居ない間にあった出来事は恐らく……想像を絶する」


「バカ言えワッパ、こんな事王都の暗黒街では日常茶飯事だ」


「こんな怒りを憶えたのは生まれて初めてです」


 セドリックの長い髪が風で逆だった。

 彼は風魔法の使い手――電気と風力を司どる。


「よ、よせセドリック」 

「さっきの奴には及ばないけど……アイツも強い」


 衰弱している友人二名が地べたに這いつくばりながらセドリックを止める。しかし彼はゆっくり振り返り、いつもの爽やかな笑顔に戻った。


「ご心配なく、もう仕掛けは終わってるんです」


「な、何ぃ!?」


 いつの間にか玄関ホールの空間全域に静電気が発生していたのだ。埃と静電気がスパークして青い閃光が多々発生している。


「これは雷の魔法言語、この数を短時間で……?」


 執事は動けない。

 これは風のLv1現魔法ベーシックサンダーグレイン――接触発動型地雷術式。触れると発動する雷球の魔法言語である。しかし部屋一面に張り巡らされたその数百発余り、これを瞬時に発動させた構成速度は尋常ではない。


 彼は生まれ持っての風魔法の使い手にして、王を守護する騎士の一族。王都の闇ルシアンネイルとついを成す王都の守護者ミスティネイルの男――セドリックブラーヌ。


「僕の真の名はセドリック=イザナギ=ブラーヌ。魔法演算速度なら世界最速を誇る一族の末裔です」


「……イザナギの子孫だと」


 アーサー=イザナギ=トロンリネージュ。

 トロンリネージュ初代国王にして、魔法言語を開発したイザナミのパートナーだった男。


 執事の顔が歪んだ。

 計画は大幅に遅れている。かと言って周囲に張り巡らせた雷球に触れる事は深刻なダメージを意味する。


「力を……隠していたのはシャルロットさんだけではありません」


「チィ……学生無勢が!」


 執事が叫ぶと同時に呪文詠唱に入った。

 …凍れ大気よ纏え蒸気よ、生命の泉に揺蕩いし…


「ぐ、やらせるか!」

 ……風を集いし者共よ、我が敵目掛けて飛べ叫け…


 一方セドリックは口元から血を流しながら胸を抑えつつも、カルヴィン以上のスピードで詠唱を完了――解き放った。


『Lv2雷矢サンダーアロー!』


 バッババババ――


 魔法を放ったセドリックは急いで三人を再び抱き起こした。


「今のうちに! 僕の許容量キャパシティでは完全に倒すまでとはいきません」


「セドリック今のは?」


「忘れて下さい既に僕の魔力は空ですので……グッ」


 最後に放った魔法は学生には荷の重い高位魔法”Lv2精霊魔法アセンブラ”。だがセドリックという男は執事を敵と判断した瞬間、即座に敵を根絶させる為に周囲に策と魔法言語を張り巡らせていたのだ。しかしいくら構成速度が速くとも彼の魔力許容量キャパシティは常人レベル。キャパを超えてしまった魔法粒子はセドリックの寿命を縮め、口内に血が逆流している。


「僕の技量で、あの執事に魔法を直撃させるのは難しかったので……」


 執事がその場を動かない様に誘導したのだ。

 策士セドリックはいつもの笑顔に戻り、まだ放心状態のシャルロットを見つめる。


「君にどんな過去があろうと、僕は貴女の騎士ですから」


「オイシい野郎だぜ全く」


 アベルがニヤリと笑うが――この後の展開は全くオイシくなかった。気配を察したテッサの顔が歪む。


「セドリック避け――」


 ズドォッ!

「ぐぁぁあああああ!」


 テッサが気付いた時には時既に遅く、氷の矢がセドリックの肩を貫いていた。激痛で4人もつれるように倒れこむ。


「所詮お前らは子供……玩具の兵隊だ。己が水の属性でなかったら危なかったがなぁ」


 氷の鎧を纏った執事が倒れ込んだセドリックの眼前に歩み寄る。Lv2精霊魔法言語『氷霜結界アイスシェル』と武装気ブソウオーラの混合技。彼は魔法を使えるゼノンの暗殺者にして中位傭兵カルヴィン=クライン――暗部の欺く者サギと名高い男。


「だが少々驚いたぞわっぱ


 シャルロットに覆いかぶさるように倒れているセドリックの脇腹をカルヴィンは力の限り蹴りつけた。


「オガハッ」


「そんなにお嬢様を守りたいのか……お前ら」


「セドリック!」

「逃げな! セドリック」


 まだ立てないアベルとテッサが叫ぶ。

 セドリックは吐血し、血の滴が虚ろな目をしたシャルロットの頬に伝う。


「生まれてこの方、虐待と暴行ばかり受けてた汚れたお嬢様を」


 フッ……セドリックは苦痛を顔にも出さず笑顔を作ってカルヴィンに向き直る。背中でシャルロットをしっかり守りながら。


「そうですね……確かに初めは胸に興味を持っただけでしたよ」


「思春期だものなぁ」


 ドッ…! 更に脇腹を深く蹴り込まれる。


「っ……彼女の哀しそうな笑顔は僕の心をどんどん引きつけました。っ……正直な話……貴方と違って品がいいので僕はモテますし空気も読めますから……」


「それは良かったな色男」


 ドスッ!


「っっ……ブフッ…解ってたんですよ……シャルロットに辛い過去と今がある事を……」


「これはお嬢様が招いた事なんだぞ? お前達はワザワザ巻き込まれた」


 ドドスッ…! セドリックの腹部には既に血が溜まり真っ黒に染まっていた。が、彼は氷の姫シャルロットの前から一歩も動かない。


「ぼ、僕の一族にも王都の闇の噂は伝わっています……恐らく元々デイオールの者でないこの娘は……自分の身を犠牲として父親を止めるつもりだったと推測します……」


 王を影から守護する一族ミスティネイル、王都の闇ルシアン所属のカルヴィンは一瞬口元を歪めた。


「誰からも愛されなかった生きるのが下手な唯のガキだ……子供が集まって同情したのが運の尽きだったな」


「同情で……ここに居る3人は出会って一ヶ月程度の姫に命を賭けたり……しません!」


「……セドリック」

「アンタ」


 アベルとテッサが必至に魔法を演算しようとするが、鴉の異常な気当りを受けている彼らは脳の中央演算処理神経が上手く働かない。黙って見ているしか無いこの状況に涙を浮かべ唇を噛みしめる。


「あぁそう――かい!」


「ぐっ――ふぁあ」


 遂にセドリック蹴り飛ばされ、放心状態のシャルロットは独りになる。変わらず虚空を見上げ座り込んでいた。


 カルヴィンはシャルロットに掌を掲げながら反対の手で胸ポケットに手を入れる。何かを取り出そうとしているようだ――だがその時セドリックがカルヴィンの後ろからしがみついた。


「全く鬱陶しい――玩具の騎士殿だ!」


 ゴッ!――ビシャ


 セドリックの整った顔を氷で硬化した拳で殴りつけた。額が割れ鮮血が飛び散る。しかしそれでもセドリックは退かず、もう一度シャルロットに覆い被さる様に倒れこむ。


「……貴方はやっぱりモテないでしょうね……女の子を全く解ってない……言葉が軽いんですよ」


「解ったよ、そんなに先に死にたいならお前から始末してやるよ」


 カルヴィンの掌が凍気が集まる。

 あぁ……あの術式構成は氷の槍、恐らく助かりませんねぇ。全く参りましたよ僕って奴は、シャルロットさんの意識がないのに良いカッコしても意味が無いじゃないですか。……でも、後悔は不思議とありませんね。何なのかこの気持は……。

 彼女の頬に手を添えた。


「……お、起きて下さいシャルロットさん、きっと……きっと貴方には幸せな未来が待っている。たとえそれまでの道が険しくても……僕達が君を護りますから……」


「お嬢様は死を望んでいる……残念だったな」


 カルヴィンの術式が完成してしまう。


『Lv1アイスジャベリン!』


 氷の槍が放たれた。


「初めて好きになったんだ……お前っ! お前なんかにこの娘の何が解る!」


 叫びながらセドリックはシャルロットを抱きしめた。


 ――ドドドスッ


 叫びも虚しく……シャルロットを抱きしめるセドリックの背中に氷の槍が突き刺さる。大量の血を流しながらもセドリックは濁ってしまったシャルロットの瞳を見つめていた。


(ぼ、僕の血を媒介にして……ひ、一つだけ……最後の魔法を……)


 彼は精神世界に閉じこもってしまった氷の姫を呼び起こす為に命を賭けた。シャルロットを正気に戻す事のみに己の命を賭けたのだ。


(劣化版Lv4……霊子……操眼……どうか、どうか悪い夢に負けないで……)


 守護するものとして生まれた……彼の生き様。


 …………ポタッ


 シャルロットの瞳がセドリックの魔力を帯びた鮮血で紅く染まった。


(最後……これがきっと最後の…‥言葉に……なります)


 セドリックはシャルロットの唇にキスをしようとする……が、彼の唇は彼女の唇を通り抜け、額に優しく触れる。

 小さく「やぱり本気の相手には」おどけて笑い。


「僕は……意外と小心者でして…知らなかった…で…しょ……?」


 愛しの姫に最後の言葉を伝える。

 そこでやっと気付いた。何で自分はこんな辛い思いをしているのか


(あぁ…やっぱり…伝えられなかった…僕は不器用だな……君と一緒……)


 あぁそうか。そこが好きに……なったのか……。


 騎士は姫を守るように倒れる。


 僕は誓います、貴方の騎士になると。

 きっと貴方にはもっとこの先……幸せが待っていますから。


 それまでが……貴方を守りますから。



「セドリック=ブラーヌァァァァァァアああ!」


 アベルは叫び、テッサは涙に頬を濡らし、執事は大きな声で笑い、助けは来ない。


 だが、シャルロットの瞳からセドリックの返り血……鮮血の涙が流れていた。――そして騎士セドリックの魂の声は、氷のプリンセスの心に届いたのだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 素晴らしい幕引きでした。とても劇的で良かったです。前半部分のツワモノ同士の高度な駆け引きもまた手に汗握るものがあって、読み応えがありました。どのように事態が推移していくのかもまた、先行きが…
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