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第2話 三姉妹

 放浪の魔法剣士ユウィン=リバーエンドが、王都唯一にして最大の建造物トロンリネージュ魔法学院に迎え入れられる2週間前の出来事――辺境の色街ブルスケッタから戻ったユウィン達は、アンリエッタの親友シーラ=アテンヌアレーを王家の庭ロイヤルガーデンに埋葬した――彼女達が何気ない会話を何度と繰り返したこの庭に。


「良い夢を……迷子のお嬢さん」


「シーラ……私と友達になってくれて……ありがとう」


 アンリエッタ=トロンリネージュ皇女、彼女は親友を殺した魔人への恨みが消えたわけではなかったが、後悔に囚われ立ち止まることをやめ、一回り成長した清々しい笑顔で親友を見送る。

 冬の空気は冷たかったが温室の園庭にはガーデンシクラメンやマーガレットの仄かな香りと、太陽の養分を精一杯吸った白いバラが美しく咲き乱れていた。あのお日様のような笑顔の娘にはピッタリの場所だろう。親友の墓を見つめながら膝をつくアンリエッタ皇女の背中を見ながら、ユウィンは自分の役割の終わりを感じていた。 


「さぁ、そろそろ行きましょうかユウィン様」


「もう良いのか」


「はい、くよくよしていたらシーラに怒られちゃいますから」


 最後にシーラに合わせて小さく、そして華やかに造らせた青銅の十字架クロスに小さく「またね」と小さくつぶやいてから。日が沈む前の夕日を背に、アンリエッタはユウィンの方に向いて立ち上がる。


「ユウィン様、夕食をご一緒頂けませんか?」


「あぁ…ありがとう」


 2人は園庭の出入り口である、温室に向かってゆっくり歩き出した。


 (ここでの生活は悪くなかった)


 何十年ぶりかの本当に人間らしい規則正い生活――魔人共を狩りながら世界中を只々周っていたユウィンにとって、アンリエッタの用意してくれた1室での数週間――トロンリネージュ重臣の手引きによって王都内に18体もの魔人とその配下の魔族が侵入し、4千人以上の死者をだした痛ましい事件――これはのちに【王都の冬】と歴史に記される事になる。

 その事件の功労者、トロンリネージュ第1騎士隊長ユーリ将軍はその功績を認められ中級貴族まで栄進した。

 そして侵入した魔人とその使徒の殆どを1人で倒した男。魔人殺しの剣を持つユウィン=リバーエンドは国賓に迎え入れられ今日に至る。

 平民で、かつ自国の人間でもない不吉な黒ずくめの流浪人を城内であそばせておくことに、貴族達は苦い顔をしていたが。


「昨日のお酒、気に入られてましたよね……ご一緒しますね」


「あの蒸留酒か、君はやめといた方が良いんじゃないか。この前の様に燭台に説教する事になる」


「う……あれは初めての経験でした」


「そのあと俺は、あの性悪執事に嫌味を言われたよ」


「でもお酒って、なんだかこう、たまらない瞬間がありますね」


「おいおい」


「ユウィン様が私にお酒を教えたんですから、責任取って頂きませんとっ」


 この数週間の彼女との夕食や他愛もない会話を思い出しながら口元を緩める。

 最後に気に入っているここのピクルスでも頂いて、この未熟な王女の幸せを願い、そしてサヨナラとしよう。

 そう思いながらアンリエッタ=トロンリネージュの後姿を眺めた。


 ふと、先を歩いていたアンリエッタが足を止める。


「先日、影の中に相棒さんがいらっしゃると言われていましたよね?」


「ん……あぁ」


「先日のお礼を言えてません……遭わせて頂けませんか」


 こちらを振り向いて微笑む。

 かなり変な事に聞こえるだろうに少しも訝ったり流したりせず、そのままの意味で、前に言った他愛もない一言を憶えていたようだ。

 律儀な娘だなと嘆息する。


「……しかし」


 かなり驚くだろう。


「お願い致します」


 先程までの時間の名残で、やや悠久を感じさせる笑顔だ。

 どうもこの娘のお願いは苦手だった。非常に断りにくい気持ちになるのだ。


ディ、構わんか」


『イエスマスター。ディも直接お礼がしたいと思っておりましたので』


 お礼? 疑問はあったが、まぁここなら誰も見ていないだろうと自分の影に視線を落とす。


「顕現を許可する」


 影が園庭に大きく広がり、その中から巨大な竜が出現する。頭には黄金の角が6本、大きな4枚の翼、全身黒に光り・・・・輝くドラゴン――特殊術式によりユウィンの剣ラグナロクに憑依している竜であり、主人の魔法の演算補助をする役割を担う。


ディ…いつもの人型でいいだろう」


『自己紹介は必要でしょ? マスター』


 ドラゴンの姿で顕現したディは、次の瞬間輝きを放ち人型に収束――深い黒、エプロン迄も全て漆黒に染まったメイド服に身を包んだ、長く文字通り黒光りする髪をなびかせた女子に姿を変えた。

 高位のドラゴンは人型である――ドラゴンの状態より動きが制限されず、力も損なわれないのだ。ちなみに喋り方とメイド服は自前、主人に仕えるのだからと、良く分からん理由で勝手に仕様としている。


「俺はディと呼んでいるがこいつの真名はバハムート=レヴィ=アユレスと言う」


「バハムート……古に伝わる伝承で聞き及んでおります。もしや……」


 普通驚くと思うのだが少しの動揺もなくディに笑顔を向ける皇女アンリエッタ。流石に肝が据わっているとユウィンは再び嘆息する。


『トロンリネージュ皇女アンリエッタ様。マスターに良い生活を提供頂き、ありがとうございます。大陸最北端ドラゴン領ソーサルキングダム元領主、バハムート=レヴィ=アユレスと申します』


 給史服のスカート優雅に広げ、元とはいえ一国の王であったとは思えない甲斐甲斐しい一礼をする。その主人はというと「お前は俺の母親か」と無表情に内心では呆れていたが。


「こちらこそバハムート……竜王様。アンリエッタ=トロンリネージュと申します。この度はユウィン様と共に王都を救って下さり、本当に御感謝を申し上げます。ありがとうございました――若輩者ではございますが我が国を代表してお礼申し上げます」


 竜国の王に負けない優雅さで人間領最大国家代表アンリエッタ=トロンリネージュ皇女は堂々たる一礼で返した。


『丁寧な挨拶痛み入ります。しかし今の私はただのマスターのツルギでございますので。アンリエッタ様、呼び名はディで構いませんよっ』


「では…… ディさん。私の事はアンリエッタと読んでくださると嬉しいです」


 これからも宜しくお願い致します。

 美しい長い髪をなびかせる2人の女性は笑顔を向け合った。


『了解ですアンリエッタ。これからもマスターの規則正しい生活、宜しくお願い致します』


「はい、お任せて下さいっ」


 これからも? アンリエッタと竜一匹は本人の居る隣で契約を履行し、勝手に実印を押すが如く契約締結を進めている。おいおい何で息が合っているんだ、この1人と1匹は……几帳面同士だからだろうか。


「アンリエッタ、俺は夕食後……」


 ここを離れようと思う。

 そう言いかけたのだが、アンリエッタはこのセリフが来る時の為に事前に準備していたかのようにユウィンの言葉を遮る。


「それでユウィン様? 折り入ってお話があるのですが……」


 あぁ困った。またこの顔だ……わざとやってないかと本日三度目の嘆息をする。


「ユウィン様さえ良かったら、ジルベルスタイン校長に遭って頂けないでしょうか」


 ジルベルスタインとはトロンリネージュ魔法学院の校長である。無論何のことかは解らない。


「校長? いやアンリエッタ、俺は人の多い所にあまり長居をするつもりはないん――」

ディさんがここを気に入って下さって本当に嬉しです」

「こいつは関係なく俺は辺境へ――」

「辺境!? ブルスケッタでは本当ににありがとうございました。私……」


 そう言って恥ずかしそうに俯きて顔を赤らめる。

 

「いや君が礼を言うのは親友だ。俺は君を連れて行っただけだ」


「いいえ。ユウィン様のおかげでもあります」


 彼女は月の女神のような笑顔を向けてくれる。

 そして何かを思い出したかのようにハッという顔になった。


「私あの時のお宿代お支払いしていません! 」

「あんなもの高々しれている。構わんさ」

「そういう訳にはいけません。ユウィン様、旅に金銭は必要ですよねっ」

『マスター、先日の魔薬の支払いで残金が殆どありませんね』


 横からクールな口調で竜王が口を挟む。


ディよ、何故邪魔をする)


 アンリエッタの口元が少し緩んだ気がするのだが気のせいだろうか。


「まぁ大変です。実は魔法学院で優秀な講師を今探している所なんです」

「講師? そうなのか大変だな君も……だがそろそろ此処を」

「それに見合う待遇は致します」

「俺は住民権も無い男だぞ」

「ここが現住所では如何でしょう?」

「全くよくないだろ」

「駄目……ですか?」


 上目遣いだ。

 ユウィンに限らず、この美しい皇女にここまで言われて断れる男性がいるだろうか。そんな恐ろしい程の愛らしい表情で見上げるアンリエッタを見ながら思う。この女は策士のがあると。


「君には……まいるな」


 どうゆう事かアンリエッタのお願い顔は……ユウィンを断れなくさせるようだ。


 皇女と竜1匹における契約はそのまま履行し締結のまま、【王都の冬】を退けた魔人殺しの英雄、ユウィン=リバーエンドは魔法学園の臨時講師となった。




 ◆◇◆◇

挿絵(By みてみん)





 独りで学校に通い、独りで帰宅する。そんな学生は周りからどんな様子に映るだろう。どんな学び舎にもクラスに2~3人はいるかもしれないと思うだろうか。しかし、彼女ほど目立つ学生が俯きながら帰路を歩むのは珍しいと言えた。


(ただいま今初登校から帰りました……お母さん)


 俯きながら胸中で帰宅を報告するシャルロット=デイオール16歳――トロンリネージュ魔法学園の新一年生であるこの少女は、貴族の最上位、侯爵家の娘である。

 男の子を思わせる髪は毛先を散らせたうなじ迄のショートボブ。身長は成長期が止まってしまったようで低い。同性が見ても抱きつきたくなるような、小動物の様ないで立ちで幼く見えるが、そのスリムなボディに非常にバランスの悪い、大きな胸が目立つ美少女だった。


(シャルロットは16歳になったよ。 無事……学園生になったよ)


 トロンリネージュ城に隣接した一等地にデイオール家の屋敷はあった。屋敷の敷地は広く、外の門から屋敷に入るのにも歩いて5分はかかる。そんな敷地を俯きながらゆっくり歩いてた。


 彼女の母親は去年亡くなっており、父親に呼ばれてここに引っ越してきたのである。

 去年まで父親が買ってくれたという郊外の小さな古い家に母と住んでいた。父の愛人であった母親が買い与えられていた家で、非常に粗末なものであったが、シャルロットはそんな下街の生活がそこそこ気に入っていたのだ。しかし今の屋敷は前の家とは全く規模が違い大きく、まだ慣れず落ち着かない。自室も広く落ち着かない為、彼女の居場所は父親の今は使っていない地下の書斎である。


 門から屋敷に行く迄の美しく、手入れされた園庭を歩きながら登校初日の魔法学院での出来事を思い出していた。


(今日の先生にはびっくりしたけど……何か、温かかったなぁ)


 今日の騒ぎを思い出しながら独り微笑むが、すぐに表情に影が落ちる。どこか泣きながら笑っているような乾いた微笑みを浮かべる。


(でもやっぱりボクは駄目だなぁ……誰ともお話しできなかった)


 彼女はあがり症であり、自分の背丈の割に大きな胸にもコンプレックスがある。更に両親の愛に恵まれなかったシャルロットは、自身の価値を非常に低く見ている癖があった。


「お話出来たとしても、ボクみたいな暗い子と仲良くなってくれる子なんてきっといないよね……」


 玄関にたどり着かないようにゆっくりと歩きながら独り俯く。

 大きな玄関口の扉迄歩みを進めた時、扉がひとりでに開かれた。


「お帰りなさいませ。シャルロットお嬢様」


 この広い屋敷を1人で任されているデイオール家の執事、カルヴィン=クラインが扉を開いたのだ。年の頃30歳の男性であり、少し冷たい印象を匂わせる彼は、躊躇するシャルロットを屋敷に迎え入れる仕草で優雅な出迎えの姿勢をとった。


「カ、カルヴィンさん …… ボ、ボクなんかの為に毎日出迎えてくれなくてもいいですよっ」


「いいえお嬢様、これも私の勤めでございます」


 表情を全く変えず執事は答える。

 シャルロットは本能的に、この冷たい印象の執事が苦手であった。彼女は母親と父親に気に入られようと、幼少の頃よりずっと”当り障りのない良い子”を演じてきた――故に冷静沈着な”完璧な執事”を演じているように見えるこの男に同族の不快感を覚える。

 今日学園で出逢ったあの新任講師は、表情の作り方が異常に下手で不器用そうだったので逆に好意を持ったのだ。


「しかしお嬢様。淑女として、その言葉遣いは直して頂けませんと」


「でもボク……」

「……(わたくし)と、お嬢様」


「わ、わたくし……でもボク…あっ…… え~っとこれは子供の時からの癖になっていて急には」


「受け賜りました。努力頂ければこのカルヴィン幸いで御座います」


「うん……あっ…はい」


 顔を朱に染め俯きながら屋敷に入ると、丁度プライドの高そうな女性が巨大な玄関ホールの階段を降りてきた所でシャルロットと視線が合う。


「あらシャルロット帰って来たの。またそんな下を向いて歩いて……鬱陶しい子ね」


「あ……只今帰りました。じゃなくて、御免なさいお義姉(ねえ)様」


 美しい顔立ちをしているが、表情全体から”キツそうな女”が出ている腹違いの義姉、ディアンヌ=デイオールは階段からシャルロットを見下しながら言い放つ。


「貴女は今はデイオール家の娘なのよ! 貴族らしく振る舞わなければ私達までいい笑いものよ」


 理由は解らないが何かとシャルロットを目に仇とばかりに罵声を浴びせる義姉だが、逆にシャルロットは解りやすい性格であるディアンヌの事を嫌いでは無かった。


「背筋を伸ばして、しゃんとしなさい!」


「は……はいお義姉様」


「ねぇカルヴィン! お父様は何故今日も帰って来ないの。貴方何処に行ったか知っているのでしょう!?」


「いえディアンヌ様。この度は私も伺っておりません、お忙しい方ですので」


「嘘おっしゃい! 地下でコソコソと話していたのを知っているのよ!? 」


「執事は嘘をつきませんお嬢様、本当に私は存じ上げないのです」


 執事は機械のように表情を変えず淡々と言い放ち、シャルロットがこの場の空気にオロオロしていた時、別の方向から声があがる。


「あらあらディアンヌ姉様、私のお部屋まで声が響いていますわよ」


「あ……エステル義姉様、只今帰りました」


 シャルロットはもう一人の義姉に鞄を前に両手で持ちながら頭を下げ挨拶する。

 エステルと呼ばれた義姉は、長女ディアンヌとは対照的に、シャルロットに非常に友好的な笑顔で返した。

 そのエステルに向けて長女のディアンヌは鋭い視線を向ける。


「エステル、アンタ知らない? お父様がどこに行ったか」


「カルヴィンさんも知らないのに、私が知る訳ないじゃない~あ……そんな顔しないで姉様、美人が台無しですわ」


 キツそうなディアンヌに対して、ニコニコおっとりした口調で話すこの三姉妹の次女、エステル=デイオール。

 いかにも温室育ちそうな、それでいて頭の切れそうな女性である。


「なんかイライラするのよ。この娘見てると!」


 言いながらもディアンヌの機嫌の悪さが緩和していた。エステルのゆっくりの口調に感化されて少しクールダウンしたようだ。


「あらあらそうなの~? 私はロッテちゃん見てるとポ~っとしますわ~ 初めて出来た可愛い妹ですもの~」


「フンあっそ」


 ロッテとはシャルロットの愛称である。自分の世界に入っているエステルをジト目で流し、ディアンヌはシャルロットに向き直る。


「シャルロット! デイオール家の者としてもっと自覚を持ちなさい」


「は……はい」


「顔を上げなさい、シャルロット! 」


「は、はいゴメンナサイお義姉様……」


 しかし一瞬ディアンヌに向き直ったシャルロットは、またすぐに俯いてしまい、ハッとなってもう一度顔を上げる。

 それを見て長女は空気を目一杯吸い込んで溜息をついた。


「もう、お父様は何故こんな子拾って来たのよ」


「お父様はいつもはああ・・だけど優しいから」


 エスエルの一言にディアンヌは一瞬次女を睨みつけ、きびすを返して自室の方に足早に歩いて行く。長女を笑顔で見送った後、次女エステルはシャルロットに笑顔で向き直り優しく微笑んだ。


「ロッテちゃん、姉様は本心で言っているんじゃないわ、最近便秘気味みたいだからウフフ」


「ディアンヌ義姉様はボクがここに来た時は優しかったもの。きっとボクが何か気に触る事をしたんだよ」


 それに釣られてシャルロットも苦い笑顔になり、首を振って解ってるという仕草をする。健気にそう言う妹をエステルは玄関ホール2階の階段を足早に駆け下りギューっと抱きしめた。シャルロットより背も胸も大きなエステルが末っ子をその豊満な胸で挟む。


「く、苦しい、よ、エステル義姉様」


「可愛いわ~ロッテちゃ~んもう食べちゃいたい~」


 末っ子のオデコにキスした後頬ずりしながら、そのままシャルロットの瞳を覗き込みながらとても嬉しそうに質問する。


「ロッテちゃん学校どうだった?」


「う、うん 楽しかったよ。へ、変な先生だったんだ……です」


 やっと落ち着いたシャルロットは長女に言われたデイオール家の自覚とやらを持つことに奮闘したのであろうか、言葉遣いを直しながら答えた。


「お姉ちゃんの部屋で聞かせて?」


「う、うん」


 エステルは今までのやり取りを完全に無表情で見ていた執事に「紅茶とお菓子を私の部屋へお願いします」と伝え、シャルロットの手を引いて自室の方に歩き出した。

 末っ子はいつも自分の味方をしてくれる次女が好きだった。でも自分でも何故だか解らないが、この義姉に顔を近づけられると、どうしても固まってしまうのだ。

 執事カルビィンは「受け賜りました」と一言、給仕室の方に歩いて行った。


 デイオール家に暮らすは一族4人と執事が1人。


 当主 ドミニク=デイオール

 長女 ディアンヌ

 次女 エステル

 三女 シャルロット


 ドミニクに妻は居らず、この姉妹は全員母親が違い・・・・、父親としか血が繋がっていない。そして3人の姉妹の母親は全員亡くなっていた。


 こんな事がありえるのだろうか。

 シャルロットにとってこの屋敷は落ち着かない

 彼女の居場所は父親の今は使っていない地下の書斎であった。


 無表情な執事は給仕室に入り、扉を閉めた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] デイオール家の内情は当主不在の中、極めて複雑なのですね。シャルロッテちゃんがどうなっていくのか、とても興味を引かれます。口調と儚さも相まって、とても魅力的なキャラクターですね。アンリエッタ…
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