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理科準備室


「僕たちは結局終わらない一週間を続けることになってしまったのです、それでもその奇妙な状況を何とかしたいと思ったわけです。例の智子さん憑依事件がきっかけであることは全員薄々わかっていましたし、暗黙の了解というやつですか?まあ思いっきり話を進めるためのキーワードは、全員が目にしているわけですし、その通りにするしかないということで意見はまとまりましたよ。そりゃあ深夜0時に理科準備室になんて行きたくはないですよ。こんな恐ろしい事態でなくても、誰だってそんないわくありげな、いかにも何かが出そうな、そんな場所に行きたいわけがないです。でも僕たちはそうするしか道が無いと思っていましたし、実際そうだったんだと思います」

「そして、その結果がこれか…」

うつむきながら聡は続けた。

「ええ、ええ、そうですよ、そうです。僕たちは手に手にバットやら、金槌やら、竹ぼうきやらを持ち寄って、戦いの準備をして学校に集合したんです。親にばれないようにするのは結構骨がおれましたけど、それどころではなかったですしね。正直、学校に集まったときは武器を持っていたということや4人でいたこともあったんでしょうかね。かなりイケるんじゃないかと、もしお化けが出てきても退治できるだろうなんて考えていましたよ」

それはとても小学生らしい発想に見えたし、怖いもの知らずというやつだろうか。考えが甘いというしかないなと思う。

「まあ、それはそれは甘ちゃんな考えだったってすぐに気づかされたんですけどね」

僕の気持ちを代弁するかのように聡は告げる。

「ちょっとした冒険心みたいなものをもって、夜の学校に侵入して理科準備室に向かったわけです。学校へは何か所か下校前に窓ガラスのカギを開けておいて準備をしておいたんです。運よくカギを閉め忘れてくれた1階の図書館の窓から侵入させていただきました。これがうまくいったものだから僕らはさらに調子に乗ってしまったんですけど」

「勢いにのった僕らは3階の端にある理科準備室へと向かったわけです。理科準備室に入るときは緊張しました。健太がドアに手をかけて思いっきり開いてくれなかったら、たぶん僕一人だったら一生開けられなかったかもしれません。あ、ちなみに健太っていうのはいま担いで運んでいただいた気絶しているそこの奴なんですが」

聡は健太と呼ばれた過去の僕を指さしながら言う。

「こうなってしまうと只のへなちょこですけどね。いうことはデカいけど、いざというときに役に立たない奴なんですよ、この人は。まったくダメダメですよ」

はっと、両の手のひらを上空に向けて、アメリカ人が映画などでよくやる呆れたなという感情を表現するジェスチャーの真似事をする聡。

やれやれだぜ、という言葉が似合いそうなその表情は、一言で言えばむかついた。

こいつ人が気絶しているときにこんなこと言ってたのか。

「扉を開けてから僕らは理科準備室に一人、また一人と入っていったわけです。それは恐ろしいですからね。そろりそろりとなるべく音をたてないように。全員が部屋に入ってから、周りを見回しましたがその時点では特に異常はどこにもありませんでした。でも深夜0時を回った時ですかね。それまで探索して異常がなかったはずの場所からカタっという物音がしたんです。僕らは全員カッチコチになった机にしまわれっぱなしのコッペパンみたいに固まりました。そして恐る恐るその音が鳴った方向に目を向けたんです。気のせいだということにしたかったんですが、そういうわけにもいきませんでした。音は繰り返し、間隔を短くしながらなっていましたし、何よりその音にあわせてあり得ないものが動いていたんですから。もうお分かりかと思いますが、さきほど僕らを追ってきた人体模型です。必死で逃げだした僕らは空き教室を見つけるとそこに入って、一か八かの賭けに出たんです。僕が普段から愛用している「初心者のための召喚術」を試す機会があるなんて夢にも思ってはいませんでしたよ。結果は今の状況です。結局逃げまわっていることにはかわらないんですけどね」

恨みがましい目つきをこちらに向ける聡の視線を交わしながら、今の話と過去の記憶をつなげていく。

所々あやふやなところはあるけど、おおむね僕が記憶しているものと同じだ。

まあ、気絶した以降のことはもちろん記憶にないのだけれど。

しかしあの人体模型を一体どうしたものだろうか。

記憶にないのでどうやって退治したものか、まったくわからない。

僕に霊能者のような才能がないのはよくわかっているし、この状況かなり詰んでるだろ。

まあ、とりあえずここは。

「よし、逃げるぞ!!」

僕はこれでもかという位の力強さを込めて宣言したのだった。

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