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召還

「...起きろ、起きろって!」

誰かが体を揺らしている。なんだろう、聞き覚えのあるような声だ。

「やばいって、絶対怪しいですよ」

別の声で誰かが話しているのが聞こえてくる。

「だからってこのままじゃ皆やられちゃうだろ」

「もういやー」

女の子の声も聞こえてくる。

まぶたを開けると小学生くらいの男の子が2人と女の子が2人いるのが見えた。

いきなりのことに驚いて声を上げる。

「なんなんだよ、お前ら。ここは僕の家だぞ!」

その瞬間、子供達は、えっという顔をする。

「やっぱりやばいよー、逃げようよー」

「だから、こいつになんとかしてもらうしかないだろ」

「もういやー」

子供達が一斉に騒ぎ立てる。

「一体なんなんだよ!まったく、人の家で。。。」

起き上がって周囲を見渡すと、声を失ってしまう。

「どこだよ、ここ」

周囲を見渡すと、黒板、たくさんの同じ形をした木製の机、そして壁に掛けられた無数の習字。

「学校だよ」

おずおずと女の子がぼくに答える。

「それは見ればわかる。なんでここに僕がいるかってことだよ」

女の子は僕の声を怖がって後ろに下がる。

「それは僕達が呼んだからですよ」

メガネを掛けた少年が僕に話しかけてくる。

「呼んだって?どういうことだ?」

「だから、その魔方陣でですよ」

少年は僕の足元を指差す。

目線をおろすとそこには確かにチョークで書かれた魔方陣が見える。

「いや、よく理解できないんだけど。。。」

こいつらの言っていることがまったく理解できない。

だけど、こんなことが昔あったような気がする。

それもかなりの昔に。

「なんだよこいつ。ちっとも役に立たないじゃん。つーか、何普通の人間じゃん」

「え、僕が悪いんですか?この召還魔方陣が成功しただけでもすごいことなんですよ!」

「でも、ただの人間じゃん」

「それは。。。」

男の子二人が言い争いを始めてしまう。

「ちょっと待って、そんなことしている場合じゃないでしょ」

肩口まで髪を伸ばした女の子が二人を止める。

「あのね、お兄さん。私達を助けて!」

少女が僕に手を合わせてお願いをしてくる。

「一体何から助けろっていうんだ」

状況がつかめなくて僕は少し声を荒げてしまう。

「「お化けから!!」」

他の三人も含めて声を合わせる子供達。

「なんだよそれ」

いよいよ、わからなくなってしまうが、僕はこの時にはっきりと思い出した。

最高で最悪だった夏休み。

そう、小学校6年生の時の夏休みの思い出を。

あの当時、僕の通う小学校ではオカルトブームが起きていた。

そのブームに漏れず、僕もクラブ活動のなかで入った文化クラブという学校の文化を調べようというクラブを勝手に心霊クラブという名前でよび、そこに集まったメンバーと学校の怪談について調べていたのだった。

きっかけは文化クラブに保存されていた古い冊子に書かれていた文書を見たことだった。

文化クラブには先人の記録が残されていて、その中にはだいぶ古いものもあったのだ

そして、その一冊に書かれていたのが、僕達の通っていた戸世田小学校にまつわる怪談話をまとめたものだった。

最初は面白半分で読んでいたのが、その内容が具体的で細かく書かれていたので、引き込まれてしまった。

結果、その内容を他の文化クラブメンバーに見せたところ、僕以外の3人が共感して一緒に心霊クラブという名前でその怪談話の検証をしようということになった。

実際面白半分でそんなことは無いだろうと思ってはじめた活動だったが、僕達はそれは甘かったと痛感したんだ。

なぜなら、その冊子に書かれていた内容はすべて事実だったし、実際にお化けに遭遇してしまったから。

お化けに遭遇した小学生が機転を利かせて危機を乗り越えるなんていうのは漫画の話であって、実際にそんな状況にあったらどうにかなんてできるはずがない。

僕達は藁をすがる思いでいちばんオカルトに詳しかった「翔太」に召還魔方陣を書かせて召還をしたんだ。

奇跡的に召還魔法は成功。

そう、そしてそのとき出てきたのはさえない顔した普通の人間だった。

でも、その人が僕らを助けてくれた。

そんな大冒険。


って、この状況はつまり、小学校の僕らを助けてくれたあの人は僕だったってことかい!

おいおい、お化けなんて倒せないぞ。霊感ゼロ、なんか魔術とか使えるわけでもない普通の大学生だよ。

どうしろっていうんだよ!

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