表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の姫はその双肩に運命をのせて  作者: 藤宮彩貴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/50

キール編その1 募る感情の行方

国使の身の上でありながら、気ままな逃避行を続けるディアナとグリフィン。そのとき、第三王子のキールの思いは? 嫉妬と復讐に満ち満ちた、キール視点の番外編第二弾です。

「ぜったいに許さない」

 自分をまあ、よくも出し抜いてくれたものだと、ルフォン国・第三王子のキールは思った。心の中で剣を研ぐ、そんな思いである。

 許せないのは、銀の国からの客人・ディアナ。それに第二王子のグリフィン。ディアナはキールの遊び相手になるからいいとして、グリフィンの身はいっそのこと切り刻んでしまいたくなるような、残忍な気持ちにさえ駆られる。

 先に、好意を寄せたのは、自分なのに。グリフィンは、見事に姫をかっさらってくれた。

 ああ、姫。姫、姫。銀の姫よ。キールは祈った。


 今朝早く、グリフィンはディアナを連れて電光石火的で旅に出た。ルフォンの国使として。目的地は、ディアナの故郷・銀の国……プレイリーランドである。ルフォン城の下に、大きな銀脈が発見された。それを発掘するために、銀の国の協力を要請するというのが目的だった。これまで、グリフィンは国政にいっさい関係してこなかったが、銀の国絡みのこの懸案には、なぜか積極的に首を突っ込んできた。

 ひとことで言って正直、うざい。

 これまで、グリフィンは妾妻の子として立場をわきまえ、万事控え目に生きてきたのに、ディアナが現れた途端、やたらと介入してくるようになった。許せない。

 本来、ディアナはルフォン国の王太子・ロベルトのためにわざわざ隣国から輿入れしてきた高貴な姫。けれど、ルフォン側の事情……王太子が先んじて妃を娶ってしまうという珍事が発生し、ディアナを王太子妃として迎えることができなくなったしまった。それでも、ディアナの背後にある銀の国の援助は欲しい。ディアナ姫をルフォンに引き留めるために、新たな政略結婚が必要だった。

「王太子との縁組が破談なら、王位継承権第二位のキールさまが銀の姫を手に入れる権利があるってのに」

 城下の町にもお忍びでよく出入りしているキールは、王子にあるまじきぞんざいなひとりごとを吐き出した。腹黒王子。これが、キールの本性である。

 現在、グリフィンとディアナは行方不明である。どうやら、ふたりだけで『国使の先発』という逃避行を続けているらしい。グリフィンの管理している厩から馬が一頭、いなくなっている。

「ききき、キールさま……」

 すっかり置き去りにされたディアナの侍女が声を震わせている。ディアナの行方でも知っているのかと考え、馬車に同乗させたけれど、まったく使い物にならなかった。もう、面倒だった。かわいい王子の仮面をかぶるのはやめた。キールは侍女の緊張を無視する。ぼんやりと、窓の外を眺めた。

 ……あの唇の感触はとてもよかった。

 キールは思い出す。ディアナに治療してもらったときのことを。

 姫は世間慣れしていない、お姫さまだ。もともと、銀の国は小国とはいえ、長い間独立を保ってきた歴史ある国。それもこれも、銀の産出が国を支えているからだ。近隣諸国に何度も銀鉱を狙われたけれど、国内の結束が固く、打ち破ることはできなかった。ゆえに、銀の国の正体は謎に包まれている。

「一説によると、国内での銀の産出が落ちているから、大国の庇護を望んでいるとか」

 国境を隣接する、ルフォンとプレイリーランド。同盟結婚は、両国にとってよい話だった。ルフォンは拡大路線を推し進めている。銀の国の技術が手に入れば、ルフォン国内でも良質の鉱脈を堀り当てられる可能性が高まる。地つながりの両国は、気候も風土も似ている。おそらくは、地質も。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ