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僕の名前は是重 宏隆。
あこがれの消防士になって、2年目。
1年目はほとんど消防学校に行っていたから、実質1年目みたいなものだけど。
だから、勤務する弐之町出張所では新人扱い。
まだまだ不慣れだし、勉強しなければならないこともいっぱいあって、
新人扱いも当然かな、と思うところもあるけれど、
早く一人前になって、先輩達を助けたい、
そう決意する、今日。
「決意はいいけどさ、脚引っ張るのだけは、かんべんな」
早速、茶々を入れながら、横を通っていったのは、細江先輩。
ホストになれるような、イケメン。
消防士やってるのが、もったいないような。
もう結婚してて、子供もいるけど、それでもファンがいるらしい。
バレンタインのチョコは食べきれないそうだ。
「でさ、今日、女の子が来るの、知ってた?」
細江先輩はこういう情報もすごい。
先輩の情報によれば、S市消防局本部、まあ、いわば、消防の大本締めみたいなところだけど、
そこから、異動になってくる女の子がいるそうだ。
「もう一人、増えるんですか?」
あっちで声を上げたのは、末真先輩
ちょっと横に広いのが、体型上の問題だけど、気はいいし、なんといっても体力は自慢できる。
「三人目ですよ。現場でこんなに多いところはないんじゃないですか」
そうなのだ。もう既にこの出張所には二人の女性職員がいる。
「いいんじゃない。男女平等、雇用機会均等法の時代なんだしさ」
太江機関員はポンプ車の運転手だ。
もちろん、運転だけじゃなくて、ポンプの操作や管理など、一手に引き受けている。
ポンプ車のことなら、任せてくれっていうこと。
そうそう、二人の女性のうち、一人は僕の属する係、
警防第1係の係長、黒内 綾佳さん。
消防士長でもある彼女は、オレの属する小隊の隊長でもある。
つまり、彼女が「走れ!」って命令したら、「止まれ!」がくるまで、走り続けなければならない、
そういう偉い人なのだ。
綾佳さんは美人だ。
だけど、それ以上に仕事が出来る。
沈着冷静。判断は的確。慌てた姿なぞ見せたことがない、という噂も、あるぐらい。
実際の彼女を見ていると、それも納得してしまう。
男性のみならず、女性ファンもいるというぐらいに、仕事が出来る女性なのだから。
もう一人の女性は隣の係、
警防第2係の上気多 千重美さん。
同じ消防士。つまりポンプ隊員。
あだ名がチミさん。この人は男性に人気がある。
俗に言う、「巨乳」の持ち主。
まあ、それ以上に、歯に衣着せぬと言うか、ちゃらんぽらんというか、
思ったことは口にしなければならないという信条の持ち主というか、
それでも後腐れがなく、サバサバした性格が受けるんだろう。
僕もだいぶイジられたけど、それでも苦にならなかった。
朝の引継が終わり、各部署の点検も終了。
この出張所の所長、稲越 翔太郎がのそっという感じで前に出る。
いつもニコニコしていて、のんびりというイメージなのだが、
この人が真価を発揮するのは現場に出たときだと、先輩達から聞かされている。
まだ、その時に遭遇したことはないけれど、いつかは見てみたいと思っている。
綾佳さんから整列の声がかかった。
「いよいよ、ご対面かな」
細江先輩がニヤリとする。
整列した僕たちの前に、綾佳さんと現れたのは、小柄な女性だった。
第一印象は「ちっちゃ~」だった。
背が低い。150cmぐらい。
横の綾佳さんは、女性でも背が高い方。
僕が170cmあって、僕より少し低いぐらいだから、165ぐらいあるんだろう。
その綾佳さんの肩ぐらいの身長だ。
ヘアスタイルはショート。ちょっと茶色入っているのかな。
綾佳さんが長い黒髪を後ろで結んでいるのと対照的。
「胸がねえ」
隣でボソッと細江先輩がつぶやいた。
よく言えばスレンダー。悪く言えば、貧乳。
さすが、先輩は見るところが違うな、と感心した。
消防の制服はもともと胸を強調するようなモンじゃないけど、
それでもまったく揺れない胸というのも・・・・
いや、そのぐらいにしておこう。
「チミならもっと揺れてた」
先輩、もういいって。
でも、僕が一番引かれたのは、身長でも胸でもなく、その瞳だった。
その瞳を見たときの印象、なんと言ったらいいんだろう。
月夜の晩に池を見ているような。
暗くて、深いのか、浅いのか、まったくわからなくて、ただ暗い水があることは分かって、
入ればそのまま深みにはまりこんで、もう出られなくなるような恐怖感がある、
そんな印象だと言ったら・・・かえってわからないか。
とにかく、瞳を見たときの印象は、「深くて暗い」だった。
消防とTPSDというアイデアを思いついたのはよかったのですが、
どっちもど素人の作者にとっては、資料集めだけで時間をとること。
まだまだ勉強中です。
おかしなところがあるかもしれません。勉強不足と言うことで笑ってお許し下さい。指摘下さると有り難いです。