後に続くもの
僕はきっと、ずっとずっと一緒にいたかったんだ。
そう思ったのは僕自身なんだ。
冬の星空の下、僕は一年上の九条先輩と天体観測にきていた。
寒くないように体をくっつける。
九条先輩の左手が僕の右手を握っている。
やわらかくて、あたたかい。
九条先輩は僕の顔を見て楽しそうに言った。
「前回の復習よ。プレヤデスとは、何でしょう?」
「えっと、おうし座の〝すばる〟ですよね?」
「正解よ。じゃあ、同じおうし座の、プレヤデスよりも少し遅れて日周運動をしている星の名前は何かしら?」
僕は考えた。頭の中の天体をぐるぐる回す。けれども見つからない。
様々な星が流れ星のように流れ、消えていく。
「わかりません」
「ダメね。しっかり復習しなくちゃ。答えはアルデバランよ」
「初めて聞きましたよ」
「そうだったかしら? 前に言ったと思うのだけれど。
それじゃあ今日は、プレヤデスとアルデバランについての物語よ」
僕の星に関する知識はすべて、九条先輩から教えてもらったものだ。
横に三つ並んだのが目印のオリオン座
その下でうずくまっているうさぎ座
ちょっと変わったのではエリダヌス座
僕は横目で九条先輩の顔を見ると、九条先輩は僕をじっと見ていた。
そして静かに口にした。
「アルデバランは可哀相だ。あぁ、可哀相だ。本当にかわいそうだ……。
僕も可哀相だ。あぁ、可哀相だ。本当にかわいそうだ……。
アルデバランはこれからも僕の後に続くだろう。
ずっと僕の背中を見続けるだろう。
何年も何年も、僕の背中を追いかけるのか……
同じ日々を送れないのに、ついてくるのか。
あぁ、どうか……――」
九条先輩は泣いていた。
「九条……先輩……?」
「これは、プレヤデスの気持ちよ。
アルデバランは通称〝すばるの後星〟と呼ばれているわ。
まるで私たちみたいね。先輩と後輩の関係によく似ているわ」
僕は九条先輩の語る、創作星物語が好きだ。
いつまでも聴いていたい。
ずっとこのまま、一緒に星を眺めていたい。
僕はこの時間が大好きだ。
なのに……今日は、これ以上聴きたくないし、居たくない。
「私はあなたより一年先に卒業してしまうわ。会えなくなるのは寂しいけれど、絶対についてきてはダメ」
「えっ……」
「あなたはあなたの道を歩んでほしいの。私はいままで、あなたを連れまわしてしまったわ。勝手なことを言っているかも知れない……。けれど、お願い……」
僕はきっと、ずっと続くと思っていたんだ。
幸せな毎日がずっと……。
僕の頬に九条先輩の手の平が触れた。
指が震えてる。
「僕は、アルデバランになってはいけないんですか……」
九条先輩は小さく頷いた。
僕はきっと、忘れることはないだろう。
いつまでも残っている。この温かさが――
――ありがとう
読んでいただきありがとうございます。
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