9話 理解不能(鳴上恋助編)
ゆにでございます。こんにちは。
9話まできちゃいましたね。
ぜひ読んでいってください。
ヤクザのたまり場があると言う葉里の薄暗い跡地の奥。
古びた建物を見上げながら悠尋が小さく呟いた。
「ここがヤクザの本拠地…。」
日和が周囲を見渡す。
「どこか裏口ねーかなぁ。」
その時だった。
「おーい!誰かいねーかぁ!」
夜の静かな空間に、恋助の大声が響き渡った。
「ちょっと何してんの!」
弘明が慌てて恋助を止める。
「潜入だろ?このアジトに突撃すんだろ?」
「この人潜入の意味わかっていない絶対!」
日和がため息をつく。
「まったく…。」
すると建物の奥から人が現れた。
「なんだてめぇら。」
恋助が胸を張った。
「見てわかる通り、潜入しに来た!」
恋助の謎の発言に俊音はニヤけ、そのほかは、頭を抱えた。
「潜入って…潜入する前に相手にバラしちゃいかんよなぁ。」
「本当ですよ。」
弘明が真顔で相手の発言に同意した。
相手の男は眉をひそめた。
「ここはガキが遊びで入ってきていい場所じゃねーんだよ。」
「ガキじゃねーよおっさん。」
「おっさん…?」
男の顔が怒りで歪む。
「俺にそんな口答えしたからには子供であっても、タダでは済まさんぞ!」
次の瞬間、周囲からヤクザの集団が一斉に近づいてきた。
琉妃が恋助をチラッと見た。
「ちょっと恋助さん。これどうするおつもりで?」
「倒せばいいんだろ?」
恋助が拳を鳴らした。
「こいつら倒して中に入ろうぜ。」
その発言に悠尋は苦笑した。
「しょうがない。」
次の瞬間。
恋助が一歩踏み込むと、ヤクザを一瞬で叩き伏せた。
数秒後、地面には倒れた男たちが転がっていた。
「お前…強いな…!」
日和が思わず言う。
恋助は得意げに胸を張った。
「なんせ俺はーー」
「自称。」
横から俊音が即座に言う。
「さいきょーだからな!っておい誰だ自称って言ったやつ!」
「さ、中に入ろうぜ。」
俊音はさっさと建物へ向かった。
「俺が先に行くぜ!」
恋助が俊音を抜き去り、建物の中へ飛び込んだ。
「あ、おい!俺が先なんだって!」
俊音が慌てて追いかけた。
残された空介が困った顔をする。
「もうちょっと慎重に行こうよ…。」
悠尋は肩をすくめる。
「初っ端から作戦駄々崩れだな。」
日和も呆れたように言った。
「本当にな。先が思いやられるな。」
――――――――――
建物奥の廊下
「先が暗いな…。」
恋助がボソッと言う。
「本当だな。」
俊音が答えた瞬間。
ドンッ!
恋助が何かにぶつかった。
「うわっ…何だ!?」
バタンッ!!
背後で大きな音を立てて扉が閉まる。
「びっくりしたあ!」
次の瞬間、天井のライトが一斉についた。
部屋は一気に明るくなる。
「明るくなった。」
俊音が周囲を見渡した。
恋助は慌てて振り返った。
「おい!みんながいねーぞ!俺らを置いてどこに行っちまったんだ!」
「暗いんだから集団行動が普通だろ。」
「5人揃って迷子とか、おっちょこちょいだなあいつら。」
ここでも頭のおかしい会話が繰り広げられた。
「つーかさ、あんたら何なんだよ。」
2人はヤクザに囲まれていた。
その中心から1人の男がゆっくりと歩いてくる。
「その口の聞き方はないんじゃねーかなあ。僕ちゃん。」
「きもっちわるいな。」
俊音は顔をしかめる。
「僕ちゃんって言葉使うやつ。馬鹿しかいねーよな。」
「そんな事ないですよ!里林さん!」
部下が慌てて言う。
「てめえら里林さんになんて口聞きやがる!」
大勢の男達は殺意むき出しだ。
「やめろ。」
里林は手を挙げてその場を制した。
「いいんだよ。俺はどんなに馬鹿にされようがな。」
そして2人の前に札束を放り投げた。
「これをやろう。」
「悪いけどいらない。」
俊音が即答した。
「人の金だろ。」
「真面目だね。いいねそう言うの。」
里林はゆっくり近づいた。
「僕ちゃんらももう、天下は何で回っているか分かるだろう。」
里林は札束を拾い上げる。
「お金はな、全てを変えるんだよ。人の価値も、生き方も。何でも望むものが手に入る。素晴らしいと思わないか?」
「何を言ってるんだこの人。」
「さあわかんね。」
里林は笑った。
「僕ちゃんらも欲しいだろ?
己のままに、欲に正直に生きられるんだ。
さあ受け取れよ。つまらない人生はこれで終わり。
これからは全てを楽して、欲だらけの楽しいだけの人生が待ってるんだ!」
恋助は首を掻いた。
「悪いけど!
最初から何言ってるのか理解できねーよ。」
「俺も知らん。」
里林の表情が変わった。
「頭わりーんか僕ちゃんら。
引き込もうと思ったけど無駄だったみたいだ。」
恋助はニヤリと笑う。
「馬鹿は誇りだ!」
そして目を瞑り、小さく呟いた。
「天才の隣に立てるのは、馬鹿だけだよ。」
一瞬、恋助の表情が曇った。
「なあ…兄ちゃん…。」
小さな声だった。
「恋助?」
「いや、何でもねえよ。」
恋助は顔を上げた。
「戦おう。」
「あいよ。」
里林が手を握った。
「お前達。全力で相手をしてやれ。殺しても構わん。」
「はい!」
ヤクザ達が一斉に襲いかかる。
(もう…あの時の絆はなくなった…。)
恋助は心の中で呟いた。
「考え事か?」
俊音が言った。
「いや!」
恋助は笑った。
「気楽に行こうぜ!」
「こっちのセリフなんだけどな。」
俊音が戦う姿を見て、恋助はふっと微笑んだ。
「へぇ…。」
里林は感心したように言う。
「強い…子供なのに強い…!」
「お前は戦わないのか!」
俊音は叫ぶ。
「俺は戦わん。」
里林は静かに言った。
「俺は未来を見据えてるからな。」
恋助がニヤけた。
「俊音。俺こいつの企み分かったわ。」
「どういうことだ?」
「あそこを見ろ。」
俊音は、恋助の指差す方向を見つめた。
「子供?小さい女の子だ。」
恋助は小さな声で話した。
「どうやら敵さんが夢中になるのにはさ、この先に理由があるかもしれないな。」
俊音は里林を睨んだ。
「おい。お前は何で人から金を奪うような真似をするんだ!」
里林は静かに答えた。
「金しかねーんだよ。俺が生きる理由が、もう金しかねえ。」
「違うな。」
俊音が言う。
「強がんのも大概にしろよ。」
そして指を伸ばした。
「ならお前の後ろにいる女の子は何だ?」
「…!!」
里林は目を大きく見開き、驚いていた。
敵さんの後ろには女の子がいるみたいですね。
次回 『伝説のスピードアタッカー』




