14話 伝説のファンタジックトリックスター
ゆにです!
今回で蘭忌妃編、最終話です!
楽しんでいってくださいね!
「何をしているんだ…!」
桐木の拳が震えている。
苛立ちと焦りが混ざった表情だった。
「ねえ。」
琉妃は静かに声をかけた。
「あなたは戦わないの?」
「こんなところで、戦力を削ぐわけには行かねえからな。」
桐木は吐き捨てるように言いながら、鋭く睨んだ。
「なのに…お前ら何者だ!」
「んー。」
琉妃は少しだけ考える仕草をした後、頭を掻いた
「あっちが蘭忌妃で、俺は……なんて言えばいいのかな。」
一瞬の間
「"伝説のファンタジックトリックスター"だなんて呼ばれてるかな。」
「……は?」
空気が止まった。
「まあ、そう言う事。」
「お前が…あの…?」
桐木の目が見開く
「まじかよ!」
蘭忌妃が横から声を上げた
「ごめんね蘭忌妃。
別に隠してたわけじゃないんだ。
ただ言う必要がなかっただけ。
でも……君にはなんだか話したくなってさ。」
「いや、全然いい!
むしろ会ってみたかった!」
蘭忌妃は心底楽しそうに笑う。
「どおりで強いわけだ!」
一方、桐木は震えていた。
「見つけた……。」
低く、絞り出すような声。
「ついに見つけたぞ……。
あの戦以来、どこにいるのかもわからなかった。
むしろ本当にいるのかも…。」
「俺もお前のことを探ってたんだけどな。」
蘭忌妃が肩をすくめる。
「全然情報出てこなかったぞ?」
「日暮さんに隠してもらってるからね。」
琉妃がさらりと言う。
「ネットに上がってる情報も、全部あやふやにしてもらってるらしいよ。」
「なるほどな……よくわからんけど。」
蘭忌妃は苦笑した。
「ーーさあ。」
桐木が剣を構える。
「勝負しようぜ。お前の首、斬ってやる。」
「いいよ。」
琉妃は自然体のまま答えた。
「でも、負けるつもりはないよ。」
「お前の戦いの続き、見せてくれよ。」
蘭忌妃の口角が上がる。
「英雄が最後まで戦う姿ってやつをな。」
次の瞬間、桐木が踏み込んだ。
だが。
カンッ!!
テーブルの上の食器が弾丸のように飛ぶ。
「ぐっ……!」
血で視界を遮られ、動きが鈍った。
「ほんと、トリッキーだな…!」
続けてフォークが一直線に飛ぶ。
「いってえ…!」
わずかにかすめる。
そして次の瞬間。
コツン、と。
桐木の首元に木刀が当てられていた。
「はい。チェックメイト。」
「なっ……!」
桐木の背筋に冷たいものが走る。
「なんて強さだ…。
こんなに鍛え上げた俺たちでも敵わないのか…。」
咄嗟に剣を振り、距離を取る。
「だがこれは殺し合いだ!甘えた方が負ける!」
「そうかもね。」
琉妃は淡々と答える。
「でも俺は、最初から殺すつもりはないよ。」
「腑抜けが……!」
桐木が吐き捨てる。
「木刀しか持ってきてねえカスが!」
「ーーそう見えるよね。」
言葉と同時に、攻撃を受け流した。
「なんだよこいつ…!」
距離をとったその瞬間。
「なっ!」
短刀が桐木の方へ飛んでいった。
避けたーーはずだった。
「っ…!」
肩に浅く刺さる。
「いってぇ……!」
「あれ、その程度?」
琉妃の声はどこか軽い。
「ふざけた強さだ…。」
桐木は歯を食いしばる。
「こんなの…勝てるわけねえ……。」
「あらら。」
琉妃は首を傾げた。
「腑抜けはどっちかな。」
「どうしてだ。」
蘭忌妃は口を開いた。
「どうしてそんなにこいつを憎んでる。」
その場は沈黙していた。
そして。
「こいつらのせいで……!」
桐木が叫んだ。
「俺たちは変えられたんだ!」
拳が震えている。
「悪いことは好きだった。
でも、命を奪いたいわけではなかった。
ただ軽く、悪でいれたらよかったんだ。」
声が次第に崩れていく。
「なのに……強そうだからって理由で戦に連れて行こうとされ、断る権利もなく鍛えさせられた!
あんな屈辱を味わったんだ!」
「そっか。」
琉妃がゆっくりと口を開いた。
「それは、悪かったよ。」
責めるわけでもなく、ただ受け入れる声色。
「でもさ、聞いてほしい。」
一歩近づく。
「戦い方は一つじゃないよ。」
木刀を軽く掲げる。
「俺はさっき、君を殺さなかったでしょ?
この短刀だって深く刺さっていない。
簡単でいいんだよ。少し意識するだけで。」
まっすぐな視線。
「戦いの中でも、人を生かすことはできる。」
「……そんなことが」
桐木の目が揺れる。
「できるのか…?」
「完全には無理かもしれないけどね。」
琉妃は少しだけ笑った。
「でも、目指すことはできるよ。
君がやってきたことは無駄じゃない。
その屈辱も、きっとどこかで役に立つ。
だから……信じてみてよ。」
長い沈黙が続く。
「……そうか。」
桐木は深く息を吐いた。
「そう言う戦い方も……あるよな。」
「俺たちは、止めにきただけだ。」
蘭忌妃が言う。
「それ以上でも、以下でもねえ。」
「悪いね…。」
琉妃が桐木の肩に指をさす。
「痛くない?」
「痛いに決まってんだろ。」
桐木は苦笑した。
「でも………なんか分かった気がする。
目の敵にしてた存在が、悪ではないって。」
大きく息を吐く。
「少し…楽になった。」
「そっか。」
琉妃が頷く。
「……俺、罪を償う。」
「俺は警察じゃないからさ」
琉妃は軽く肩をすくめる。
「自分で行きなよ。多分その方がいい。」
「…あぁ。」
桐木は小さく笑った。
「お前と話せてよかったよ。
このままだったら、ずっと間違ったままだった気がする。」
振り返る。
「また会えるといいな。今度は……笑って話せる形で。」
「うん。またいつか。」
――――――――――
数時間後
夜の街を歩きながら、蘭忌妃が口を開いた。
「…よかったのか?」
「何が?」
「とぼけんなよ。なんで自首させたんだ。」
「だってさ」
琉妃は街の明かりに照らされた空を見上げる。
「原因。俺にもあったしさ。
悪いやつでも、ちょっと同情してしまうんだよね。」
「それが正しいとは限らないけどな。」
「知ってる。」
少し笑う。
「俺、別に善人でもないし。
どちらかと言うと悪人。
国を壊しかけたんだからね。」
「まあいいか!」
蘭忌妃が急に明るくなる。
「それよりさ、お前と出会えてよかったぜ!
まさか"あの6人"の1人だったとはな!」
「そう言うと思ったよ。」
「強い理由はわかったけどさ!」
蘭忌妃がニヤリと笑う。
「多分俺の方が強いな!」
「へぇ。」
琉妃も笑う。
「じゃあ、力比べやる?」
「お前は100人目だ。」
蘭忌妃は指を鳴らす。
「しばらく待ってろ。」
――――――――――
別の場所
2人の様子を遠目で見ながら、悠尋は静かに呟いた。
「蘭忌妃…。
恋助と同じく、我竜ほどの力を持つやつか…。」
夜風が吹き抜ける。
「強い奴ってのは、やっぱり強い奴に引き寄せられるのかもな……。」
蘭忌妃編も終わり、主要キャラクターはだいぶ出揃ってきました。
ここまではキャラクター紹介みたいな話でした!
次回からも話は進んでいきますので、よろしくお願いします!




