10話 伝説のスピードアタッカー(鳴上恋助編)
ゆにです!こんにちは!
今回の話は
鳴上恋助編の最終話となってます。
「ならお前の後ろにいる女の子は何だ。」
「…!」
里林は俊音の言葉に大きく目を見開き驚いていた。
「お前の子供か?」
さらに里林は黙り込んだ。
それを見て俊音は言った。
「そうなんだな。」
沈黙が続く。
次の瞬間、里林は怒鳴った。
「ちげえよ!あんな子供は知らねえ!」
恋助が肩をすくめた。
「あらら、切り捨てたか。最低な発言。かっこよくないよ。」
里林の拳が震えた。
「あの子は…!」
「あの子は何…?」
恋助は静かに問い返す。
里林は歯を食いしばり、語り出した。
「子供にはわかんねえよ。親の気持ちなんかな。
片親だけで子供を育てる大変さなんかな。」
声はだんだん震えていく。
「俺の嫁は…あの子を産んで3ヶ月で死んじまった。
俺1人じゃ…あの子を育てることができない。そう判断したんだ。
その時の俺はどう捨てよう、どう逃れよう…ずっとそう考えていたんだ。」
恋助は黙って聞いている。
「でもその時ふと、俺の嫁が頭に浮かんだんだよ。
俺は見てた。腹を痛めながら必死に産んでいた嫁の姿を。
俺は見ていた。娘を可愛がる嫁の姿を。」
里林は拳を握る。
「俺は何てことを考えてるんだ…って思った。
だから俺は心に決めたんだ。
娘を幸せにさせよう。裕福な暮らしをさせてやろうってな。だが。
俺には金がない。
働いても働いても、娘には何もしてやれない。
構う暇もなく、飯すらまともに食わせてやれない。」
だんだんと声が荒くなる。
「これだけ一生懸命働いても、まともな親にすらなれない!
親って何だ!どうすれば理想の親になれる!?」
そして里林は静かに言った。
「……だから娘のために金を奪ったんだ。」
恋助は少しだけ目を細めた。
「理想の親かどうかは、子供にしかわからない。」
そして後ろにいる女の子を見た。
「あの子はあんたの帰りをずっと待ってたはずだよ。」
「お前に何がわかんだよ。」
恋助は少し笑った。
「俺だから分かるんだよ。」
少しだけ視線を落とした。
「あんまり言いたくないけどさ、俺も親がいないんだ。両親ね。
俺を産んですぐ死んだ。
お前のところと同じだ。」
静かな声だった。
「でも俺は、俺の両親の元に生まれて幸せに思う。」
里林が驚いた顔をする。
「お前は親からの愛情を何ももらっていないんだろ。
それなのに何で幸せだと思うんだ。」
「俺には兄がいるんだよ。」
恋助は深く目を瞑った。
「兄は曲がっちまったけど、昔の兄は好きだった。
そんな兄に巡り合わせてくれたことに、俺は感謝してる。」
そして里林を見た。
「ただ子供が曲がらぬように、見本になっていくのが親だ。
信じてみたらどうかな。子供の想いを。」
里林はしばらく黙っていた。
やがて小さく笑う。
「そうか…。」
だがその笑みは寂しかった。
「でも解散しようだなんて、今更遅い。
今やこんなにも手下を連れ、ましてや犯罪者。
もう娘の元には帰れない。」
恋助は少し里林に近づいた。
「確かにそうかもしれないな。
でも子供ってもんは、親の帰りを待ってるものさ。」
少しだけ笑う。
「俺のようにな。」
里林は目を閉じた。
「そうだな…。その言葉を聞いて、心が晴れちまった。」
恋助を見る。
「ありがとな。僕。
俺は自首する。」
後ろの娘をチラッとみた。
「娘に伝えてくれないか?
ほんのわずかでも、俺の帰りを待っててくれないかって。」
「自分で伝えなくてもいいのか?」
「いいんだ。
里林は微笑む。
「次目を合わせて話す時は、丸くなって、愛を伝えるとするよ。
親として。」
恋助が少し笑う。
「どうやら娘の方が、あんたを好きみたいだぜ。」
その瞬間。
「パパ!」
娘が走り出した。
里林に飛びつく。
「私ね!待ってるから!ずっと待ってるからね!」
里林は驚いた顔をした後、優しく笑った。
「あぁ。」
娘の頭を撫でる。
「待っててくれ。
それじゃあな。」
そして歩き出す。
全てが平和に片付いた。
ーーそう思っていた。
その時部下の1人が叫んだ。
「どこにいくんですか…。ふざけるな!」
「警察だ。お前らにも迷惑かけたな。俺は自首する。」
部下の1人は声を荒げて言う。
「待ってくださいよ。だったらあんたについていった俺らは…一体どうなるって言うんだ!」
里林は部下の方を見て、優しく言った。
「お前らはまともに生きろ。俺がいなくても生きていける。」
部下の呼吸がだんだんと荒くなる。
「ふざけるな。ふざけるなふざけるなふざけるな!」
次の瞬間。
部下の剣が里林の胸を貫いた。
それをみていた2人は焦り出す。
「ちょ!何してんだよ!」
「君は少し離れてて…!」
俊音は女の子を避難させる。
「お前…!」
恋助が部下を捕える。
「何であいつを刺した!」
恋助が部下に怒っている。
里林は微かな声で言った。
「いいんだ…そいつを許してやってくれ…。」
「でも…!」
「俺が招いた事だ。」
ガシャン!!
勢いよく扉が開いた。
「無事か!2人とも!」
みんなが扉を開いて駆けつけてきた。
「空介!こいつの治療を!他の奴らは救急車を呼んでくれ!」
俊音が指示を出すが、里林はその指示を止めた。
「救急車はいい…。
俺はお前らが思ってるみたいに…あの子の愛を感じられた今。
気持ちよくこの世を去りてえ…。」
それを聞いて恋助は大声で叫ぶ。
「何馬鹿なこと言ってんだよ!あんたは会うんだ!
生きてあの子の元に帰るんだろ!」
「最後まで俺を助けようとしてくれるな…。
俺は今…清々しく…」
会話の途中で、里林は息を引き取った。
「今治療を…!」
恋助が空介の腕を掴み、首を横に振った。
「もういいんだ。もういい…こいつは今。すごく幸せらしい。」
そしてみんなはアジトを出た。
誰の言葉も聞こえず、空気はどんよりしていた。
最初に口を開いたのは恋助だった。
「なんか…ものすごく濃い1日だった。
お前らいつもこんなことしてんのか?」
次に口を開いたのは俊音だった。
「こんなに濃いのは俺も初めてかもしれん。」
「そっか。もう無いといいな。
人の心は、案外弱いものだからな。」
「それでこの子はどうするの?」
琉妃の後ろを里林の娘が歩いていた。
「俺らは子供だから面倒見きれねえしな。」
「私の親に相談しようか?」
「いいのか!?」
「うん!親に聞かないとわからないけど…。」
珠架が引き取ろうとしている。
「助かるぜ。女の子!」
「うん!」
「それともうひとつ…。」
恋助が俊音に剣を向ける。
「俺と戦え。伝説のスピードアタッカー。」
「え、何でそれを…?」
「さっきまでの戦いを見て分かった。
俺はお前に興味がある。もっと知りたい。」
恋助に正体がバレてしまった。
「仕方ない。俺もお前のことを知りたいと思っていたんだ。」
「って事は勝負してくれるって事だよな!」
「そういうことで。」
2人のテンションが上がっていく。
日和が恋助の前に木刀を投げる。
「まあまて、こいつが必要だろう。」
恋助が木刀を拾う。
「さあ、勝負しようぜ。」
「あぁ!」
2人の木刀がぶつかり合う。
――――――――――
そして翌日
ゴンッ!バタンッ!バリーンッ!
玄関が派手な音を立てて壊れた。
「おーーーーーい!俊音!」
「鍵!鍵!締め忘れ!」
「違う。壊れてる。」
「またかよ!」
部屋の奥から俊音が歩いてくる。
「朝っぱらからうるっさいなあ。
何時だと思ってんの?」
「しらん!」
「4時だよ4時!みんな寝てんだよ!近所迷惑だろうが!」
恋助は元気いっぱいに言った。
「まあいい!さあ出かけようぜ!
まだ見ぬ世界の向こうまで!」
「眠い。行かねーよ。」
「さあさあ行くぞ!」
「ちょっと…!」
恋助は俊音の腕を引っ張る。
「さあさあ出発だ!」
2人はそのまま外へ飛び出していった。
残された部屋で、日和がため息をつく。
「相も変わらずやかましい奴だ。」
琉妃が笑う。
「あー言う人ほど、俊音と気が合いそうだよね。」
悠尋が頷いた。
「友達ができてよかったな。」
――――――――――
外では
「遅いぞ!」
2人は顔を見合わせる。
「「全く…手間がかかる奴だぜ。」」
いかがでしたか?
そう言えば、里林岩寺の娘の名前は、**里林凪繋**というらしいです。
無事になしゅかの家で引き取ったようです。
さて次回は 『蘭忌妃編』開幕です
次回 『天才武術師現る』




