第6話 敗北とバイトと、夜の立ちゴケ先輩
1. 惨めな朝とバイトの夜
夜が明けた。ジョグを自宅アパートの駐輪場に押し込み、翔也はシャワーを浴びた。鏡に映る自分の顔は、惨敗の悔しさと過呼吸の疲労で、青白い。
(6位……能力を使っても、あの二人に全く敵わない)
特にディオの男の**「純粋な速さ」は、「ライド」**という異能を持つ自分を真っ向から否定するようだった。RZ250への道は、さらに遠く険しくなった。
その日の夜。翔也はいつものコンビニの5時9時のシフトに入った。ここは、わずかながらの**「RZ250貯金」**を稼ぐための、現実的な戦場だ。
2. コンビニの立ちゴケ先輩のバイク
深夜の客足が、途絶えた頃、店の前に重低音の図太い排気音と共に一台のバイクが滑り込んできた。
『ボボボ、ボーボンッヴォーボボボ〜』
「おっ、早速乗ってきたんスね、シュンさん!」
声をかけたのは、バイトリーダーの大学生、シュン。彼は自分のバイト代を注ぎ込んだ愛車、GPz400R(ninja )。黒と赤のカラーリングにヘッドライトを黄色にし、艶消しの黒の集合管をつけたカスタムバイクに乗っている。
そのバイクは、コンビニの入り口に駐車しようとして、、グラッとよろめき、
立ちゴケした。。
「クソッ、慣れねーんだよな、これ。翔也、ちょっと見て見ぬフリしてくれ」
シュンは苦笑いしながらバイクを起こす。
能力なんて無くても、先輩は楽しそうにバイクに乗ってるな……)
翔也はその姿に能力に頼りすぎて純粋にバ
イクを楽しむ心を失いかけている自分を見た気がした。
「ま、バイクは転ぶもんでしょ!」
、翔也はおでんの補充をしながらそう返した。
3. 進路と目標の明確化
休憩中、シュンが将来の話を振ってきた。
「翔也、高校卒業したらどうすんの? オレは来年就活だわ」
「……調理学校、通おうかと思って。夜は居酒屋でバイトするつもり」
数ヶ月後、つまり卒業後の進路を具体的に語ることで、ショウヤはRZ250という目標を現実的な貯金計画に乗せようとしていた。調理の仕事を選んだのは、手に職をつけつつ、夜間に稼げる場所を探すためだ。
「居酒屋か、夜は稼げるぞ。まぁ、調理も大変そうだけど頑張れよ」
シュンは励ましつつ、ふと真面目な顔になる。
「しかし、お前のジョグ、なんであんなに速いんだ? こないだ夜の帰り道で見たけど、おかしいだろ、あのカーブの曲がり方」
**「ライド」**の能力を疑う視線。しかし、シュンは異能者ではない。翔也は「たまたま調子が良かった」と笑って誤魔化した。
4. 暴走族の匂い
シフトを終え、夜の路地裏をジョグで帰宅する途中。
見覚えのある、ボロボロのオンボロ車(黒のセドリック)が道の端に停まっていた。その横で、地べたに座ってタバコをふかしている男がいる。髪は金髪に染め、肩には派手な刺繍の入った特攻服を羽織っている。
ケンジ。中学時代の同級生だ。高校へ進まず、当時から**暴走族「夜光虫」**に出入りしていた。
「……ケンジ?」
翔也がジョグを停めると、ケンジはタバコを地面に投げ捨て、汚れたスニーカーで踏みつけた。
「おー、翔也じゃんか。まさかこんなとこで会うとはな。まだそんなボロい原チャリ乗ってんのかよ」
ケンジの視線が、翔也のジョグから、そして高校の制服姿を連想させる私服へと移る。その顔には、闇レース会場で見た黒スーツの男たちとは違う、**もっと生々しい「悪意」**が張り付いていた。
「な、ケンジ。俺らと一緒にやらねえか? チームは人数欲しいんだよ。お前、走りは速かっただろ?」
暴走族への**「誘い」**。
それは、闇レースの刺激とは違う、日常を壊す誘惑だった。翔也は、RZ250のために稼がねばならない現実と、暴走族に堕ちていく旧友の間で、息を呑んだ。




